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第2回 組織の経済学 2015年3月7日
オリエンテーション:自己紹介
 グループでそれぞれ自己紹介をお願いします
 お名前
 お仕事
 参加の動機 等
2
オリエンテーション:前回の復習
 古い経済学
 企業=利潤最大化を行う経済主体であり、イン
プットからアウトプットへの変換を行う
 どのように変換するのかは説明されない(ブラッ
クボックス)
3
インプット アウトプット
企業=ブラックボックス
オリエンテーション:前回の復習
4
 組織の経済学
 ビジネスにおける組織デザインや慣行の合理性を
経済学の観点から検討
 ケーススタディ中心の経営学と補完関係
オリエンテーション:前回の復習
5
市場 組織
境界
オリバー・ウィリアムソン
→2009年 ノーベル経済学賞
内製化?アウトソーシング?
オリエンテーション:前回の復習
内製化(垂直統合)の理由
関係特殊資産への投資促進
ホールドアップ問題のリスクを低減
知的財産権の保護(社外流出の防止)
外部化(アウトソーシング)の理由
業者が規模の経済性を発揮することで費用削減
業者が学習効果を発揮することで費用削減
(内部取引価格ではなく)市場メカニズムの導入
組織内コーディネーション(間接)費用削減
6
オリエンテーション:前回の復習
(過去の)日本的経営にも経済合理性があった?
終身雇用・年功序列
株式の持ち合い、メインバンク
自動車メーカーが部品メーカーをケイレツ化
経済合理性がなければ継続しない
Japan as No.1
キャッチアップ型の経済成長を行っている時期の
環境には適応していたが・・・
7
オリエンテーション:前回の復習
8
組織は重要か
中央集権型組織 vs 分権型組織
− 中央集権組織の課題
• タイムリーに正しく伝えることができるか
• 暗黙知をどう伝えるか
• 環境(情報)に適応するまでにタイムラグが発生
− 分権型組織の課題
• 個別最適に陥りがち(タコツボ化)→全体戦略と
の整合を図るための調整費用が高くなる
オリエンテーション:前回の復習
9
経済組織と効率性
インセンティブ
組織の定義(なぜ個人ではなく組織を作るのか)
− 契約の束
− 取引費用の最小化
オリエンテーション:前回の復習
10
経済組織と効率性
取引の特性
− 資産の特殊性(ホールドアップ問題)
− 取引の頻度と継続期間
− 不確実性と複雑性
− 成果測定の難しさ
− 他の取引との連結性(外部性)
マッチング
組織の経済学 目次
1. 組織は重要か
2. 経済組織と効率性
3. コーディネーション:市場と組織
4. 計画と行動のコーディネーション
5. 限定合理性と私的情報
6. モラル・ハザードと業績インセン
ティブ
7. リスク・シェアリングとインセン
ティブ契約
8. レントと効率性
11
9. 所有と財産権
10.雇用政策と人的資源のマネジメン
ト
11.内部労働市場、職務配置、昇進
12.報酬と動機づけ
13.経営者および管理者の報酬
14.投資とファイナンスの古典的理論
15.金融構造、所有、コーポレート・
コントロール
16.企業の境界と構造
17.経営・経済システムの進化
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
古典派経済学(18C~19C) :A・スミス、D・リ
カード、J・S・ミル、K・マルクス
労働価値説:商品の価値=労働の量
− 第一公準:労働の限界生産性が実質賃金に等しく
なるように雇用量(労働需要量)が決定
− 第二公準:労働の限界不効用が実質賃金の限界効
用に等しくなるように労働供給量は決定
セイの法則:供給されたものは需要される
− 需要を増やすには供給を増やせばよい
12
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
新古典派経済学(19C後半~):W・ジェヴォンズ、
C・メンガー、L・ワルラス、A・マーシャル等
効用価値説:商品の価値=効用の大きさ→マーシャ
ルによって労働価値説と効用価値説が統合
市場メカニズム
− ワルラス均衡:各経済主体は価格だけを知ってい
れば良い(商品間の代替率や生産性等は価格に織
り込まれる)
− 情報の効率性:社会主義経済と資本主義の比較
(ハイエク)
13
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
新古典派経済学(19C後半~):
− ケインズによる批判
• 新古典派経済学では、調整過程の摩擦的失業や自
発的失業以外の失業は存在しない、と想定
• ケインズは労働供給における名目賃金の下方硬直
性(最低賃金)を指摘
総需要が完全雇用を下回る水準の場合には財政支
出によって有効需要を作り出す必要がある
14
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
比較制度分析(1990年代~):
ゲーム理論を発展させた複数の経済均衡モデル
− 進化論的アプローチ
− 経路依存性→アメリカ型、日本型等
15
他のプレーヤーの行
動を予想
戦略 均衡
明文化されていない
内生的ルール
(出所:青木昌彦の経済学入門)
個人 集団
ゲーム
制度(システム)
完全競争→全ての情報は価格に収斂するための条件は
多数の参加者:取引規模は小さく、プライステイ
カーであり、価格を操作できる人は存在しない
全ての財・サービスは同質であり、差別化されてい
ない(代替性が確保されている)
完全情報:全ての商品の性質と価格を理解している
市場への自由な参入・退出
16
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
グループディスカッション
航空券のオーバーブッキングの対策として、どの
ようなものが考えられるか?その理由は?
17
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
オーバーブッキング対策
急がない客に対価を払って別の便に移ってもらう
− 客に50ドル、100ドル、150ドル等を選択させて、
低い価格を提示した客から優先的に別の便に振替
その他の例として、混雑税(ロンドンで特定の時間
に市内に車で乗り入れる場合に課税される)等
18
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
価格差別→ホテル等のRevenue Management
一物一価ではなく、顧客毎に異なる価格設定
他には・・・
ピグーによる分類
− 完全(一級)価格差別:一人ずつ異なる価格設定
例:メトロポリタン美術館(Pay as you wish)
Amazonが顧客別の価格差別を試みた
− 二級価格差別:顧客の嗜好に合わせた価格設定
例:数量割引、セット割引、抱き合わせ販売
− 三級価格差別:顧客の属性に合わせた価格設定
例:学生/シニア割引(需要の価格弾力性が高い)19
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
需要の価格弾力性
需要の変化率(%)÷価格の変化率(%)
− 1より小さい→生活必需品
− 1より大きい→ぜいたく品
• 需要の価格弾力性が0.5の商品を作っているメー
カーにとって、消費増税に便乗して値上げを行うこ
とは(短期的に)合理的か?
20
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
グループディスカッション
サンタモニカ(カリフォルニア州)における家賃
統制(市場価格より低い家賃に抑制)の結果とし
て、どのような問題が発生したか?その理由は?
21
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
価格統制:供給曲線の左方向へのシフト
新しい賃貸住宅の建築が抑制され、既存賃貸住宅の
補修等も行われない→供給量不足
− インドの電力市場(政治的背景から市場価格より
も低い電力料金)も同様→慢性的な電力不足
貸倒リスクの高い低所得者に貸す誘因がない(ホー
ムレスの増加)→同じ価格なら安定収入の人に貸し
たい
− 消費者金融でも同様の議論あり
借家人の移転を妨げる→他の地域に移転=家賃UP
家賃統制をモニタリングする行政機関の肥大化
22
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
市場の失敗
独占・寡占
規模に関する収穫逓増
− 規模の経済性(大量生産の方が費用が安い)
− 限界費用が数量増加に対して逓減⇒供給曲線が右肩
下がり⇒需給が一致する価格が存在しない
外部性(取引の当事者以外への影響)
− 正の外部性:果樹園と養蜂
− 負の外部性:公害、騒音
情報の非対称性
23
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
独占・寡占
レント(経済地代)
− 参入が規制されることによって生じる超過利潤
• 供給曲線が垂直(価格をコントロールできる)
• ロビー活動=政府に独占を認めてもらう(レン
トシーキング)
24
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
25
関係特殊的投資(復習)
顧客専用の設備への投資
− 取引が終了すると費用を回収できない=埋没費用
− ホールドアップ問題を引き起こす
• 過少投資に陥りがち→垂直統合のM&Aが行われる
理由の1つ
一方で、実際のビジネスケースではサプライヤーが
自ら関係特殊的投資を行うケースも散見されるのは
なぜか?(グループディスカッション)
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
26
準レント
短期的に供給曲線が垂直(長期的には右上がり)
− 専用設備への投資=自社しか部品供給できない(ケ
イパビリティ)
− 競合他社が同様の設備投資を実施するまでは独占的
地位を獲得
• 売価の値上げも可能(超過利潤)
買い手は複数社購買を原則とすることで、サプライ
ヤーによる過度な準レントの追求を防止
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
27
M.ポーター:ポジショニング(SCP)とJ.バーニー:
ケイパビリティ(RBV)の共通点は?
いかに独占状態を作って(準)レントを獲得するか
− 市場に「それ」しかない=ポジショニング派
• 差別化/コストリーダーシップ戦略
産業属性に注目(Five Forces)
− 市場で「ウチ」しかできない=ケイパビリティ派
• VRIO分析:個別企業の競争優位の持続性に注目、
歴史的な背景(経路依存性)や企業文化(社会的
複雑性)、ブランド等によって模倣困難に
28
休憩タイム
外部性への対応
コースの定理
− 情報が完備されており、取引費用がゼロで、所
有権が確定していれば、私的な解決が可能(当
事者間の交渉で外部性は内部化できる)
• 実際には困難→公的な解決が必要
29
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
グループディスカッション
煤煙問題
− 工場は年間2,000万円の利潤を得ている
− 近隣住民(5人)は1人あたり年間250万円の損害
• フィルター費用(年間500万円)を負担すれば損害は
ゼロ
工場側に負担を求めるべきか、住民側に負担を求め
るべきか?
交渉が決裂する場合はどのようなことが考えられる
か?
30
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
コースの定理
社会全体としての差異はない
− 工場側が負担する場合→合計1,500万円
• 工場:2,000万円-500万円=1,500万円
• 住民:0万円
− 住民側が負担する場合→合計1,500万円
• 工場:2,000万円
• 住民:-500万円(負担しなければ-250万円×5人=
-1,250万円なので、負担のインセンティブあり)
− ただし、分配には差異あり
31
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
交渉が決裂する要因=取引(交渉)費用が大きい
フリーライダー
− 住民負担の場合に、他の誰かが費用を負担すればよい
と考える(3人以上がそう思えば交渉成立せず)
ホールドアウト
− 工場負担の場合(更に、住民側全員の同意が得られた
場合に限って操業可能という条件の場合)、4人まで
同意した後の最後の1人には実質的な拒否権=フィル
ター設置費用を超える多額の補償を工場側に要求する
場合あり
32
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
グループディスカッション
共有地の悲劇(ギャレット・ハーディン)
− 共有の牧草地に酪農家が好き勝手に牛を放すと、草
が食べつくされてしまう可能性がある
• 解決策は?
33
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
外部性への対応
法的に所有権/財産権を確立する(例:区分所有)
− 回遊性の海洋資源の保護においては譲渡可能な漁獲量
配分制度を設定することで財産権を確立
政府が管理する
自主的な共有資源の管理(Commons)
− エリノア・オストロム(2009年ノーベル経済学賞)
• 入会地として利害関係者が共同で管理する
• 機会主義的行動=コミュニティ内で罰(仲間はずれ)
ゲーム理論(繰り返しゲーム)における均衡
34
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
集団モニタリング
グラミン銀行
日本(江戸時代):村単位の徴税(村請)→納税後の
余剰を利用して灌漑施設等を整備
− 村に対する帰属意識の高まり
• 相互扶助→フリーライダーを防ぐための「村八分」
中国(清朝):(東部や東北部の都市では)相互の信
頼関係が希薄、家族の間でも他人に接するような取引
形態(例:子供への資金援助に担保を取る)
• 個人の評判が重要→面子やグアンシ(コネ)を重視
35
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
グループディスカッション
12~13Cのシャンパーニュの大市(定期市)
− レコンキスタ以前のジブラルタル海峡は通行困難
− ヴェネチアやジェノバ、マルセイユからローヌ川
を上ってシャンパーニュ地方を中心に、ハンザ同
盟(北欧)の商人と交易
• 裁判所は存在するが、強制力がない
• 初めて会った商人と取引したいが、素性が分から
ない(取り込み詐欺が怖い)
• どのような解決策が考えられるか?
36
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
Law Merchant
裁定と信用情報を蓄積した第三者機関
− Amazonのマーケットプレイスと同じ仕組み
• 取引が正常に履行されない場合、Law Merchantに
訴える→裁定に従わない場合、その記録を保存
記録はだれでも参照できるので、初めて取引す
る相手の信用情報を確認できる
37
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
外部性への対応
公的な解決の例:ピグー税 → 外部性の内部化
− 負の外部性(公害等)が存在する場合
→生産者の限界費用<社会全体の限界費用
− 生産が過剰になってしまうので、限界費用が等しく
なるまで生産者に課税する
38
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
グループディスカッション
アルコールに関する課税(酒税法)に関して、消
費税のような従価税ではなく従量税が採用されて
いるのはなぜか?
39
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
酒税→お酒=負の外部性が存在
従価税を採用した場合、数量/アルコール度数当た
りの費用が安いお酒の方が相対的な費用が下がる
− アルコール摂取量の増加→依存症患者の増加
種類によって需要の価格弾力性は異なる(出所:Siu
Fai Leung and Charles E. Phelps,1993)
− ビール:0.63(必需品)
− ワイン:1.0
− 蒸留酒:1.5(ぜいたく品)
アルコール依存症=需要の価格弾力性が低い
40
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
組織内部における市場メカニズム
事業部制組織における移転価格
− 適切な価格設定(競争環境にある市場価格を参
照)が意思決定において重要
− 内製化すべきか、外注(アウトソース)すべき
かを判断
41
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
グループディスカッション
大学の学生寮は年齢やくじ引き等の複雑な仕組み
によって割り当てられる
− 入寮の権利をもっとも高く評価する学生に部屋
を割り当てる市場メカニズム(例えば、公共工
事を受注するための一般競争入札のような仕組
み)を用いない理由は?
42
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
学生寮=教育の場
効率性のみを追求している訳ではない
多種多様な人との交流を促進
入札等で価格メカニズムを導入すると入居者に偏
りがでる可能性
43
第3章:コーディネーションと動機付けに
おける価格の役割
情報効率化:ハーヴィッツの規準(必要な情報量)
N個の生産単位に生産数量(ノルマ)や価格等、K種
類の情報を伝えたい
− 社会主義の場合(政府→国営企業のケース)
− 資本主義の場合
• 価格のみ→価格に応じて各自の生産数量が決定
44
第4章:計画と行動のコーディネーション
政府
国営企業 国営企業 国営企業 N個
K×Nの情報量
第4章:計画と行動のコーディネーション
資源配分
デザイン属性:最適解が分かっている場合、市場メ
カニズムよりも中央統制が適する場合がある
− シンクロナイズ問題
• 中央が適切な価格を決定して、コストをかけずに
伝達した方が最適な資源配分が実現
ボートレース(コックスとクルー)
オーケストラ
45
第4章:計画と行動のコーディネーション
資源配分
シンクロナイズ問題の課題
− 中央が適切な情報に基づき、適切な価格決定は困難→
価格に歪み
− 個人への情報伝達コストが大きい(時間もかかる)
− 個人が価格に対して正しく反応しない可能性も 等
46
第4章:計画と行動のコーディネーション
資源配分(続き)
デザイン属性:最適解が分かっている場合、市場メ
カニズムよりも中央統制が適する場合がある
− 割当問題
• 救急車の配車を価格による市場メカニズムで対応
する場合、複数の救急車が現場に向かったり、1
台も配車できない場合がある→中央統制が必要
47
グループディスカッション
戦時中やオイルショック時に配給が行われる理由
は?
48
第4章:計画と行動のコーディネーション
配給
急激な供給不足による物価高騰を受けて、生活必需
品が一定以上の所得者に集中しないように
− 割当問題
• 最小限の消費量を確保できるように有償配給
配給を受ける権利の売買:配給切符(例:米)を
譲渡可能にすれば、配給価格よりも限界便益が低
い(ダイエット実施中)消費者は、より限界便益
が高い(育児中の家族)消費者に配給切符を譲渡
することで全体としての消費者余剰が拡大
49
第4章:計画と行動のコーディネーション
資源配分
イノベーション属性
− 新製品開発や新市場進出等、未経験の事業を行う
場合、現場の人たちには情報が入手できない場合
がある→中央によるコーディネーションが必要
− 単純な市場メカニズムでは最適な行動が行えない
50
第4章:計画と行動のコーディネーション
補完性
補完財:相互に補完して効用を得る財(交差価格弾
力性が負の値をとる2つの財の関係)
− 例:パンとジャム
51
第4章:計画と行動のコーディネーション
グループディスカッション
1980年代、GMがリーン生産方式を研究し、トヨタ
を模倣(主に合弁企業であるNUMMIを通じて)しよ
うと試みたが、その成果は?また、その理由は?
52
第4章:計画と行動のコーディネーション
補完性
経営の各要素にも補完性がある
− フォード(T型)→単一製品、自動化(ベルトコン
ベア)生産、出来高給
− トヨタ→JIT生産、ケイレツ、終身雇用・年功序列
(職能給)
• 補完性があるため一要素だけを模倣しても機能し
ない
• システム思考、組織学習の重要性(暗黙知までは
模倣できない→ケイパビリティ)
53
第4章:計画と行動のコーディネーション
グループディスカッション
下記の違いは?
− 規模の経済性
− 経験曲線効果(BCGが提唱)
− 範囲の経済性
54
第4章:計画と行動のコーディネーション
規模の経済性
生産規模が大きい程、単位当りの固定費の負担が低
くなる
経験曲線効果
累積生産数が多い程、単位当りコストが下がる(累
積=時間の概念も入る)
− 習熟効果および専門化・標準化:作業手順や設備等
に改良が行われ、生産性が高まる
範囲の経済性
異なる製品(事業)を一緒に生産(運営)すること
で単品しか生産しない場合よりもコストが下がる
55
第4章:計画と行動のコーディネーション
コーディネーションにおける経営者の役割
何をすべきか、何をすべきでないか
ドラッカー「経営者に贈る5つの質問」
− われわれの使命(ミッション)は何か?
− われわれの顧客はだれか?
− 顧客に対する価値は何か?
− われわれにとっての成果(ビジョン)は何か?
− われわれの計画は何か?
56
第4章:計画と行動のコーディネーション
コーディネーションにおける経営者の役割
組織のデザイン
− どの意思決定について権限を委譲するか
• コーディネーションを必要とする関連部署が多い
場合は集権的に決定すべき
(ただし、詳細については分権化を行い、現場の
情報を活用する)
• イノベーション属性を含む場合は集権的に決定す
べき
57
第4章:計画と行動のコーディネーション
グループディスカッション
スイスの時計メーカーのコアコンピタンスとは?
日本の時計メーカーに対抗するために打ち出した新
しい価値とは?
58
第4章:計画と行動のコーディネーション
スイスの時計メーカー
コアコンピタンス
− 以前は正確な時刻を刻む機械式時計ムーブメント
• セイコーがクォーツ時計(小型、軽量、高精度)
を開発→市場を席捲
− 日本メーカーに対抗するため、シンプルでデザイン
性の優れた低価格のアナログ時計
• スウォッチグループ:各価格帯でブランド戦略を
展開(低価格→Swatch、中価格→TissotやRado、
高価格→OmegaやBureget)
59
第4章:計画と行動のコーディネーション
グループディスカッション
ソニーがCBSレコードやBMG(現ソニーミュージッ
ク)やコロンビアピクチャーズ(現ソニーピク
チャーズ)を買収した理由は?
60
第4章:計画と行動のコーディネーション
ソニーのエンターテイメント部門買収
過去のトラウマ→コンテンツを自社に取り込みたい
− 技術的にはVHS方式よりも優れていたβ方式で敗北
• 画質を維持するために録画時間を1時間に→映画を
録画できない→コンテンツ提供企業がVHSを採用
• レンタルビデオサービス→VHS製のソフトが普及
シナジー効果(範囲の経済)
− ゲーム部門はエレクトロニクス部門とコンテンツ部
門のシナジー効果が発揮された
• 半導体を任天堂に売り込み→拒絶→独自でゲーム
機を開発
61
第4章:計画と行動のコーディネーション
ソニーのエンターテイメント部門買収(その後)
ハンズオフ型の関与
− エンターテイメント子会社のコントロールが効いて
いなかった
逆シナジー
− コンテンツ部門を保有していたことがアップルの独
走を許した→アップルはコンテンツ部門を保有して
おらず、コピーガードには神経質にならなくて良い
• 音楽レーベルに働きかけを行い、MP3の音楽デー
タをiTunes上で流通
62
第4章:計画と行動のコーディネーション
ソニーのエンターテイメント部門買収(続き)
米国のサードポイントからコンテンツ部門のIPOに
よる独立を要求されていた
− 「ハードウェア事業とエンターテイメント事業には
シナジーが無い」
• TV、デジカメ、半導体、電池等を分社化する方向
で検討
− 「ディズニーやタイムワーナーと比べると収益性に
劣る(独立することで損益責任を明確化)」
63
第4章:計画と行動のコーディネーション
 現代企業の組織デザイン(ジョン・ロバーツ)
 青木昌彦の経済学入門(青木昌彦)
 経済学で現代社会を読む(ロジャー・ミラー他)
64
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