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<臨床の場における認知研究の存在意義>
聴覚医学が広い意味での認知科学に含まれることは異論がないだろう。
そもそも臨床医が認知科学に貢献できることは何か?中枢性聴覚障害を見つけたとて、治療まで現実にこぎつけるのは
現時点では難しい。となると、人間を対象とした貴重なフィールドワークを行う立場に徹するか。このフィールドワー
クは実際、医師という立場でないとできない「検査」がたくさんある。ただ、その「検査」の結果が治療として患者個
人の利益につながらないことも往々にしてあるので、医療従事者としての倫理が求められる(特に、「検査」の合併症
の可能性や、費用・保険に関して。医療は患者個人との契約であるから)。
<認知研究の層構造(その中で特に聴覚を扱うにあたってどんな注意点があるのか)>
スヴィエによれば、認知心理学は情報処理システムを記述するものであり、心的状態は心理学的説明体系のなかでしめ
る相対的な位置づけによって説明されなければならない。ある心的状態は他の心的状態と因果的に関連づけられ、また
何らかの刺激および生体反応に関係づけられるべきものなのである。よって心理学的説明は神経生物学的な説明から自
立してあることになる。
認知神経心理学者は心的操作の精細な構成と機能を記述するモデルを仕上げることに力点をおく。そして、神経生物学
的理論は、それがどんなものであろうとも、認知モデルの構成と過程とが脳内でいかに実現されているか示すことがで
きるものでなけらばならない、と考える。認知神経心理学者にとっては視覚の神経生物学であろうと、言語音声処理の
それ、あるいは顔認知のそれであろうと、およそそれらが機能的にどのように認知されているか記述するモデルなしに
は作ることもできるはずないのである。
心理学者は認知機能を分析する際、人間の認知の根本的特性を明らかにしうるような課題を見出そうと試みるので、こ
の根本特性を把握できるような十分に単純で明快な条件を見出すことが重要となる。こうした方法論を支える発想とし
て二つのものがある。
一つは認知がそれぞれ多少とも自立的な一群の下位システムから成り立つというもので、もう一つは各々の下位システ
ム自体がさらなる下位成分の集まりである、というものである。
機能分析の重要な役割は、下位レベルの分析に対して、実現すべき機能の定義を提供することにある。たとえば、単な
る物質的な分析レベルでは心臓は液体を押し出し音を出すシステムにすぎない。血液循環についての機能分析がないと 、
音を出すという機能が血液を循環させる機能にくらべて心臓の機能として重要な特性ではないこともはっきりしないこ
とになろう。
大部分の認知神経心理学者たちは、これらの機能の神経生物学的下部組織を解明するための知識に興味をもつにせよ、
生物学的な制約をアプリオリに用いないでもモデルの開発が可能であると一般に考えている。
この立場は、二元論と混同されてはならない。神経生物学的過程とかけ離れて心的宇宙が存在するというわけではない
が、心理的状態と神経生物学的状態とは必ずしも一致するものではなく、したがって、認知モデルの構成にあたり、生
物学的由来の制約にあらかじめ縛られる必要はない、というように考えられるのである。
もちろん、認知モデルというものが、さまざまな制約をもった人間という生体の行動を説明すべく構成されるものであ
る以上、いわば事実上生物学的な制約下におかれるのはまったく明らかなことである。人間の行動は、その処理可能な
記号の総数や範囲において制約されており、記憶システムの容量も制限されており、注意の範囲にも限界があり、行動
を発動するための効果器の諸特徴も決められているのである。
一方、分析レベルの独立性を重要視するこのような流れに対立して、脳の神経生物学的な機能分析は心的宇宙のあらゆ
る機能記述に優先する、という主張がある。たとえばチャーチランド(一九八六)の主張する排除的唯物主義という立
場がそれである。チャーチランドは、認知心理学の行使する諸概念は俗流心理学のそれと何ら変わるところなく、人間
の認識の近似的な記述を述べているにすぎないと言う。チャーチランドによれば、他の諸科学で特筆すべき進歩が不適
切な概念の排除によってなされてきたように、神経生物学的な理論の発展が俗流心理学の廃棄を要請するのである。こ
の極端な立場によれば、いつの日か神経生物学の進歩により心理学的説明をいっさい省略して脳機能の深遠な理解が可
能になる。この見方は、これはこれでまた、心的なものが単に生物的なものに還元され呑みこまれてしまう限りで、両
者の関係についての経済を述べていることになる。
 仮に認知心理学の現在の諸概念が近い将来多くの根底的な再編成を受けるということを認めるのに無理はないにして
も、この再編成がチャーチランドの意味での経済化で実現されるかどうかはまったく怪しいものがある。脳機能の物質
的な分析のみから認知機能の理論がつくれるとはとても思われない。
# しかし、定義の問題として、「聴覚」の場合は違う。
ABR の波形が正常であるから、あるいは PET で聴覚的に反応が見られるからといって、(a に相当)
「聴覚」が機能しているといえるだろうか。(a と b のどちらの立場をとっているか明確にしておかなければならない所
で、1つの社会に共通した定義としてどちらかがとられている)
 今後さらに検査法が発達したとしても、やはり本人が「聴こえた」ということを意志表示しなければ、聴覚を確認し
たことにはならない。(b の立場に相当?)
 これがもし仮に、人間が音を聴いたら必ずある種の反応を示す単純な化学物質であるとすれば(このような b 的な見
方を採用すれば)この反応の方を確認すれば音を聴いたことを確認したことになるだろう。
 つまり、どんなに a 的手法が発達しても臨床医学として、あるいは一般社会にその成果を還元する学問としては聴こ
えているかどうかを報告するとき b 的立場なしではいられないのか?
以上の精神と物質の関係をめぐる哲学的論争にかかわる両極端の態度の間のどこかに位置して、神経生物学と心理学の
境界では多様な研究実践が日々展開されている。医学者に限らず、意識して言葉を選んで考え、発信している人間なら 、
古代からその危険性に気付いていた難所であるが、重要な区別はおそらく、研究対象とした認知活動なり脳活動なりの
領域に応じてどのような研究手法をとるかという問題に帰着する。
認知的諸機能が脳でいかに表現されているか理解するというのが重要なことは誰にも異論がないので、この目的達成の
最良の手法をめぐって学派が分かれる。
感覚を扱う科学ならどんなジャンルでも、その立場を明確に設定しておかないと堂々巡りに陥ってしまう恐れがある。
「中枢性聴覚障害」の場合、聴覚に加えて言語がその対象になってくるので、よりいっそうの注意が必要である。
生物学的制約のアプリオリな導入を拒否することについて、神経心理学では、マーの提唱した説明レベルの自立性とい
う考え方に依拠して正当化することが多い。彼は情報処理理論が分析レベルにおいて三つに区別されうると述べた。
 最も高次のレベル、つまり機能レベル(マーは計算論レベルと呼んだ)はある課題が達成されるためにシステムがで
きなければならないことの手続きを問題とするものである。このレベルではシステムの可能な入力の集合に対して出力
の集合の写像関係を形式的に記述する。ここでは何に対して(どの目的のために)どの手段や処理が適切かが記述され
る。視覚の領域で例をあげれば、光のパタンを変換して、その後の行動を導く環境情報とするような、視知覚の諸機能
はこのレベルで定義されることになる。
① 第一に単純にプログラムがどんな機能(関数)を実現するかということで、入力と出力を結ぶ関係の記述にかかわる
問題である。
たとえば刺激の物理的変化と反応の変化との対応関係を調べ(これは精神物理学が扱うテーマである)、両者の関係を
抽象的、定量的に表そうとすることがある。一例をあげれば、感覚的刺激音の強度を組織的に変化させ、これに応じて
被験者の強度知覚がどう変化するかを測定して、刺激の物理的変化と反応特性という心理的変化との間に成り立つ法則
を示そうとするのがそれである。
 中間レベル、つまりアルゴリズムレベルでは処理の精密な性質を特定する。この水準で、用いられる表現およびアル
ゴリズム、つまり表現に対する操作規則が定義される。このレベルで入力から出力にいたる情報の流れを処理する諸段
階が記述される。
② 次の問題は、このような機能がいかなるアルゴリズムで実現されているか、ということである。ある機能を実現する
アルゴリズムはしばしば複数あるので、心理学者は被験者が与えられた条件のもとでどれを採用しているかを特定しよ
うとする。
③ 第三に、課題の変化によって、あるいはまた記憶能力、年齢、熟達度、などによってアルゴリズムがいかに変化する
かという問題がある。
 最後に最も低次レベルとして機械レベル(ハードウェアレベル)、つまり脳のレベルがある。ここでは中間レベルで
記述された規則や表現の実現を可能にする役割をになう具体的な物質構造が記述される。
④ 最後はこのアルゴリズムとその表現とが大脳でどのように実現されているかということを知ることにかかわる問題で
ある。ここでは情報処理過程がどのように物理的に実現されるのか、また処理される情報がどんな物質的基盤のうえで
表現されるのかが問われる。この問題はしばしば認知科学の分野外のものと見なされる
#ここはマーの原著からより具体的に引用する必要あり。
外界からの種々の刺激に対して、一様ではない反応を示すものとして捉えると、その人間の機能を解明使用とする科学
が成立する。(①から④の全てを含む)
 二つの研究上の態度を区分する別の視点として、一方を下降型(トップダウン)、他方を上昇型(ボトムアップ)と
呼ぶこともできる。
 下降型では、行動の機能記述から出発してそのシステムの機能実現のための成分構成を練りあげ、最後にそのような
アルゴリズムを可能にする下部構造や物質的機能を中枢神経系に探し求める(これが認知神経心理学の採用する研究方
略である)。
認知プログラムの a「大脳内実現の物質的条件を吟味すること」
 上昇型では、神経生物学的事象の単純な行動記述から出発し、それがより複雑な行動と関連した神経活動の記述や理
解に役立てられるようにしようとする。
b「認知論的水準での理論的洗練」
 
 どちらの行き方を取るかは動物神経心理学的モデルによる考察が可能な領域かどうかによって大きく左右されると言
えそうである。事実、動物で研究する伝統が根強い認知領域(たとえば視覚や単純な学習)では上昇型が数多くみられ 、
人間特有の認知領域(たとえば言語)では下降型を多く見かけるのである。
p109
神経心理学的検査により分析しようとする心的過程が、実際の状況においてどの程度まで含まれているのか、を決定す
る問題がある。当該の過程がまとまった自動化されたものであればあるほど、その過程は広範で多様な状況において、
まったく同じ流れで進行すると考えられる。逆に、高次の意識的な制御(トップダウン処理)が強ければ強いほど、状
況要因の影響が大きくなると考えられる。
p35
 神経心理学は人間精神の分析を進めるうえで神経生理学よりもはるかに微妙な位置に立たされる。というのも、神経
生理学ではある器官の機能を知りたければ選択的損傷を与えてその効果を見ようとすればよいのである。仮に動物のあ
る神経の役割を理解したければ、それを切除してその効果を確認する。そしてたとえば、ある脚の可動性が消失したな
らば、切除した神経が運動神経で、その機能は手術後マヒした脚の運動の支配であると結論することになる。さらに引
きつづいて同じ神経をさまざまな部位で手術して、部位間の比較から神経支配の経路を追跡するかもしれない。ここで
大事な点は神経生理学者の研究ではあらかじめ解剖学的な目途がたっていて分析を進めることである。機能を理解した
い神経について、あらかじめ、動物の神経解剖学的構造により見当をつけておけるのである。神経心理学が人間の認知
を分析しようとするときには、この切り札が(いまのところまったくもって)使えない。もっと正確にいえば、われわ
れは認知の「器官」がどこにあるか知らず、その構造も知らず、いくつの部分からできているのかについて何の知識も
なく、その部分の相互作用の在り方についても知らないのである。
#まさに認知機能の研究は運動機能や末梢感覚の研究に比べると障害物だらけのような様相である。これをなんとかく
ぐり抜けて、同じ位「科学的」あろうとする便法が神経心理学なのか。
この議論はもっと敷衍しておく価値がある。ひとつの反論として、こんにちでもわれわれは認知諸過程の背後にある物
質的構造について少なくともある程度はわかっていることは確かだというものがある。たとえば言語について考えてみ
ると、言語的活動を支える神経生理学的機構が大多数の右利きのひとでは脳の左半球に局在していると言っても大きな
誤りの危険を冒すことにはならない。もっと細かくシルビウス溝近傍の連合野が重要だといってもよい。また、シルビ
ウス溝外では視床、内包、尾状核、被殻、などの皮質下の諸構造やその近くの白質構造などの損傷によっても、口頭言
語産出障害、もしくは、おそらく注意力ないし覚醒水準の不安定に基づくものと思われる言語障害が起こりうる、とも
言える。しかしこうした局在性はかなり粗大なことにすぎず、言語活動のもっと下位の成分を問題にすると、明らかに
なっていることはあまりに少ないのである。たとえば、統語、語彙、音韻、意味などの処理にかかわる特定の領域など
について正確なことは何もわからない。仮に新しい医学上の造影技術が近い将来シルビウス溝近傍にこれらの処理に関
係した領域を特定することを可能にしてくれたとしても、((ここまでならカエルの脚の運動神経を剖出したにすぎな
い))解答すべき中心的な問題はそうした領域がどのようにして(いかなるメカニズムによって)特殊な機能を達成し
ているのかということなのである。
 認知を分析し細分化するにあたって、神経心理学的研究では、以上のような理由により、解剖学的な案内図に頼って
研究を進めることはできず、その進展は障害パタンを観察して、一つもしくは複数の障害のある下位成分を(神経の構
成ではなく)認知的構成のなかに位置づけようとすることによるのである。
#この方向のみで研究を進めると物(=神経の構成)と心(=認知的構成)という古典的二元論の1バリエーションの
域を出ないのではないか?
 実際、認知神経心理学者は認知的構成の下位システムに関する「機能障害」を探索する。こうした下位システムの存
在は一つの認知的機能の実現にあたって果たす役割によって定義される。したがって、ここで障害というのは物質的に
特定されるものではない(あるいは必ずしも特定されるべき性質のものではない)。このことは、最終的に機能の病変
がその基礎にある神経生理学的あるいは神経化学的変性によることが認められたとしても、依然としてそうなのである。
#構造の研究と機能の研究は別の次元という一種のひらきなおりがある。これは認知あるいは高次機能という分野では
避けられないことなのか?例えば分子生物学ではある分子の構造と機能はひとつかみで語られているようにも思えるが 、
やはり分子の「機能」と人間個体レベルの認知「機能」は本質的に意味が違うのか。科学哲学の古典的文献からこのあ
たりを探ればヒントが見つかるかもしれないし、また、新たな研究テーマも開けてくる気がする。
#『あらゆる学問のうちで生物学こそ、「人間の本性」とは何かという問題が形而上学のことばを使わないでも言える
ようにまえに、当然解決されていなければならないような問題の核心に、最も直接的に迫ろうとするからである。』 J.L.
モノー『偶然と必然』渡辺格、村上光彦共訳
ここで、例えば筋肉の「機能」とは、現在の科学では、「筋肉が収縮したり弛緩したりすること」と答えてもあるいは
「神経からの刺激によって活動電位を生じること」と答えてもよいであろうから、筋肉がその収縮・弛緩によって太く
なったり細くなったりするのを肉眼的に観察しても、あるいは筋電図をとってその活動電位を目で見ても、筋肉の機能
を確認したといってよいだろう。
(ここは④の「大脳」をそのまま「筋肉」に置き換えた記述だろう。そもそも筋肉に認知論的水準を持ち込むのは不可
能だから①から③は筋肉の記載には含まれないはず。「知識の層構造あるいは次元」とはこのこと)
「認知プログラムの a「大脳内実現の物質的条件を吟味すること」が b「認知論的水準での理論的洗練」に大いに影響を
与えるという原理的立場」から、こんにちでは認知研究者のなかにも脳内での実現の問題に直接ふみ込む者がますます
増加している。
 当初の研究目標は、一方に大脳の構造と機能を置き、他方に行動と心的操作を置いて、両者の間に分かりやすい関係
を確立しようとすることだった。これはそれ以後の発展を通じてずっと維持されつづけており、大脳局在論の歴史をな
している。研究の方法はもっぱら脳の損傷が行動と心的過程に及ぼす影響の観察によっていたようである。
 初期の骨相学ですらそれなりに一連の先覚的な主張があり、その一部は今日の研究にしっかり受け継がれている。た
とえば、心理活動は比較的自立した一群の下位要素に分解できる、という構想がそうであり、そのように分解された諸
部分は脳の別々の部位の局在的な構造に対応させうる、という考え方がそうである。
p28
 古典的な臨床解剖学的アプローチでは行動障害と損傷部位の関係に法則をうちたてることが目的であった。したがっ
て一方で行動の障害像を記述し他方で原因となる脳の損傷の様態を確定するための知見をうることが重要なこととなっ
たのであろう。
(中略) 脳損傷と心理学的障害の間に信頼できる関係を確立するにはただ単に二つの病理的状態の記述が正しいこと
だけではなく、この関係の規則性が要求される。このため研究者たちは脳損傷の部位や広さを基礎として大量のケース
を研究し、損傷の部位と神経心理学的症候群を関係づけようとしなければならなかった。
(中略) 症候群記述では心理学的障害像と脳損傷の関係は確率的なものとなり、ある症候群の構成成分の結合関係も
おなじことになる。たとえば、ブロカ型失語は左前頭葉の下前頭回後部という部位と隣接脳底部構造との損傷から生じ
ることが最も多い。このことはそれ以外の損傷部位からブロカ失語が生じないということを意味しないし、ブロカ型の
部位とされているところの損傷が自動的にその失語を生み出すことを意味するわけでもない。
(中略) 古典的な症候群はじつは一種の統計的な平均であり、一般的とはいえても必然的とはいえない原型なのであ
る。
認知心理学の中心問題の一つは、情報がいかなる形式のもとに表現されているかということである。これを取り扱う一
つの方法は被験者が、提示直後の取り込み段階でどのような表現形式をとり、時間経過や実験条件によってどのような
変化を示すか調べることである。このように分析してみると、刺激の知覚は符号化(表現変換)の段階をいくつもつな
げたものに分解できること、符号化の各段階は一時的な情報保持の形式(符号)をもっており、その特有な符号が後続
の処理系によって利用されていることが知られる。したがってこうした中間段階の符号化の各々の性質と特徴とを解明
することが研究の大きな目標の一つとなる。
もっと精密なモデルを仕上げたければ、工学者や情報科学研究者の方法に学んで、認知の理論に対応した詳細な処理プ
ログラムを作り上げ、それが人工的な次元でうまく動作するかどうか確かめるという方法がある。この実行プログラム
構成にあたって工学ではプログラムの実行内容と実行方法を図式(フローチャート)に表す。
この種の図式は認知心理学の研究ではますます頻繁に利用され、研究の一般的な枠組みとしての役割をになうようにな
りつつある。
認知心理学者の図式で最もありふれているのは四角形の箱を矢印で結んだものである。こんなものを描けば何か認知的
な働きに一面を理解したと言えるわけではもちろんない。大事なのは箱のなかでいかなる操作が実現され、矢印をどん
な情報が流れるかということなのである。しかしながら、初めてメスをいれるときの切り口は荒くとも生まれる影響は
無視できず、これが実験による検証を促すこともありうる。
ともあれこの種の図式や理論的主張が多くの研究を触発する枠組となって、そこから当初のモデルとの矛盾が数々もた
らされることにより、モデルの洗練、もしくは場合によるとモデル構成のより根本的な変更にいたることがある、とい
うことを強調しておきたい。
p26
したがって重要なのは、認知の構成成分のどれが損傷されるときに患者の呈するようなエラーパタンが生まれ、逆に、
どの成分の損傷ならそのエラーが生まれないのかということの吟味なのである。
p27
正常機能の実験的分析から出るモデルと病理的知見とのこうした絶えざる往復は、障害像と正常機能とをただ一つの枠
組内で説明しようとする狙いに根差している点で、理論の整合性と経済性への配慮の表われなのである。
p33
一般に認知神経心理学の諸研究は、知覚や言語のような認知の基本的な機構を対象としてきており、これらの基本機構
は種の成員全体が共有する認知上の遺産のようなものと考えられる。いわば、普遍性の公理であるが、この公理が認知
機能の全側面に適用できるものでないことは明瞭である。われわれの知覚機構は確かに一般法則に従い、種の全成員に
共有された認知的機構に支えられているだろうが、われわれの信念システムが文化や社会環境、さらに個人的経歴によ
って大きく影響されることも明白なのである。
Ⅲ 障害を「理解する」ための神経心理学的検査
 神経心理学の古典的検査の目的(障害を損傷部位に対応づける)は消失しつつあるのだが、認知的アプローチの影響
下で、神経心理学は、正常な認知機能のモデルに照らして障害を理解しようとする新しい機能をにないはじめている。
理解しようという営みは非実利的な知的活動であるが、それによって障害に対する再教育という神経心理学の新しい臨
床活動の礎石が築かれる。
 認知的な見方によって診断的な方法は根底からの修正を迫られている。患者を旧来の分類システムに割りふるという
ようなことは、もはや関心の対象ではないのである。たとえばこの患者がブロカ型だとか、これが失文法の徴候だとか
はもはや問題でゃない。ある障害(もしくは障害の集まり)に対して問題にすべきことはそうした障害の根底にどんな
欠陥(もしくは欠陥の集まり)があるのかということなのである。臨床心理学者はこうした分析をいわば「研究者のよ
うに」行う。つまり、彼はまず何らかのモデル(前章で紹介したような型のもの)から出発して、一群の組織的なテス
トを用いて、特定の患者でどんな成分(群)に欠陥がありどんな成分(群)が健全であるかを特定しようとする。すで
に前章でふれたことだが、臨床神経心理学者はこうしたケース分析を進めるときに、認知心理学的研究が解明した事実
によって補助を受けることになる。こうして、研究上重要な点をめぐる仕事の多くの部分がかなり容易に臨床的な領域
に適用されるということが生じるのである。
 この新しい見方において、どうかすると臨床家が陥りかねない落とし穴として旧来の分類体系を新しい体系で置換す
るだけで満足する、ということがある。たとえば読語ということについて、音声失読なのか表層失読なのか(それとも
それ以外の、視覚失読、注意障害、逐字失読、深層失読、半側失読など、前章で述べなかったものを含めて認知テスト
で特定できる限りの、いかなる失読なのか)を検査することに終わるかもしれない。こうした生き方は勧められない。
実際には、前章で見たように、音声失読といっても「一つ」ではなく「複数」あり、表層失読も「一つ」ではなく「複
数」あり、研究の進展とともにさらに新しい失読が登録されてくることが予想される。臨床場面ではむしろどんな機構
が健全でどんな機構に欠陥があるかを探り出すような組織的な調査をすることに専心すべきだろうと思われる。新しい
分類をねらうのでなく、障害そのものの理解に努めるのである。
p95
 この架空の例は、認知的な臨床分析が、参照モデルに沿って一連の問題をたどりながら、患者の検査を進めていく際
の論理的筋道を示すものである。われわれはこうしたやり方が近い将来臨床実践の場を完全に変化させるようになるこ
とを期待している。重要なのは、患者が認知的な意味合いでどのように行動するかの理解であり、患者が欠陥を露呈す
る認知活動においてどの成分に欠陥があり、どの成分は健全であるかについて、いかにして目録をつくるかという点で
ある。
p116
ただ、古典的な認知モデルにおいては、認知とは目標を追求し記号を処理する一般的システムであると見なしているこ
とを念頭において欲しい。記号こそが他の記号へと変換処理される対象だというのである。そして認知心理学の目標は
行動の背後にある記号と表現の性質の解明なのである。この処理システムは容量に限界があり、一部の処理は系列的に
組織されていると思われるので、あることを実現するために必要な時間を計ること(心的なクロノメトリー)で複雑な
プロセスを明らかにすることができる。こうした記号過程は中枢神経機能により支えられているのだが、記号に固有の
分析レベルで記述することができるものとされる。
<技術の進歩により認知研究のどの層が主力となるかが変わってきた>
第4章では、脳障害を解釈する上での「認知的な」視点の導入によって治療・教育の実践場面に生じる影響が分析され 、
今後の実践の在り方が展望される。脳内部の各種の造影技術(PET や MRI など)の進歩により「障害検出型」診断(a
で見つけた異常から b での異常を推定していくこと?)の意義が急速に失われ、かわって、認知モデルに基礎づけられ
た「障害解釈型」診断(b に基づいた a)の意義が増大していることが指摘される。
p86
Ⅰ 臨床神経心理学的診断
 約三〇年ほど前には臨床神経心理学の主たる役割は脳損傷患者の医学上の診断を補助することであった。この仕事は
当時の医療業務の一環であった。患者が神経科に入ると、神経科医は最初の臨床検査を行ってケースの輪郭を把握する 。
この診断のもとに彼は患者をさまざまな専門家の補足検査に送り、いっそう精密な診断と、脳損傷の性質、部位、およ
び広さについての情報を得ようとするのであった。補足検査は脳波、眼底、生理、エコー診断、など多岐にわたった。
そうした補足検査の一つとして、とくに大学付属病院では神経心理学的診断が行われた。
 神経心理学的検査の理論上の一般的前提は、脳の損傷部位と心理的な特殊障害つまり「症候群」との間に規則的関係
が存在する、ということだった。当時は、前頭葉損傷、ゲルストマン症候群、ブロカ失語、あるいは劣位半球症候群な
どの徴候を探索した、あの時代だった。実際、神経心理学は検査法をいっそう組織的にまた厳密に改良しながら、ブロ
カ以来神経学の要め石であった臨床解剖学の歩みをひき継いだのだった。
 このような医学的診断の補助という役割の神経心理学的研究には以下のような特徴的プロセスが含まれていた。
(1)患者の観察と特殊なテストによって集められた特殊な徴候やサインを組織的に蓄積すること、(2)文献に記さ
れた典型や症候群を再編成しこれらの徴候やサインと比較すること、(3)特定された症候群と最も頻繁に対応関係の
認められた部位への脳局在の仮説を設定すること、などがそれである。こうして神経心理学が直面する仕事は臨床像を
もとに既存の体系や分類から選択するという作業だった。この仕事は想像よりはるかに難しいもので、その理由は、障
害像がはっきりしないことが多く、臨床像も神経学の教科書に書かれているように明確なものはまれだったからである 。
神経心理学者たちは、観察事実と文献の記述との類似の度合いを評価しなければならなかった。疑わしいケースだと、
記憶にある個人的経験までも動員して選択した。大胆なひとはすぐさま決断できたが、慎重なひとだとどうしても決定
できずに、既成の病像名に「混合型」と付けてその場をしのぐことになったりした(たとえば混合型失語というよう
に)。このような逃げ口上は心理学者のためらいを覆い隠して、一人の患者を同時にいくつものカテゴリに割りふるこ
とを可能にするものであった。しかし歴史の経過とともに、経験を積んだ神経心理学者たちは、臨床的に無視しえない
価値をもつ仮説を提唱するようになってきた。この解釈的研究の結果は神経学者に注目され、その他の補助的研究の結
果と比較検討されて、やがて一種の総合化を経たうえで、症例の状態を規定している脳機能障害の性質や局在について
の見方を産み出していった。一連の証拠が整合的で充分に的を絞れるような場合には、神経学者は、必要とあらば、脳
動脈図のような積極的な補助テストを用いて、当初の診断の当否を再検討するようになったのである。
 この時代は神経心理学者の価値を高めた時代で、とりわけそれまで他の医学的研究が見のがしていた診断を提出する
に至ったことは意義あることだった! また各種テストの開発がじつに豊富に行われ、ある種の神経心理学者などは、
(1)脳の損傷の有無(「器質性」の診断指標をつくろうとした)、(2)損傷部位は左右どちらで、半球の前後部ど
ちらか、など、診断上のすべてのキー問題に対応しうるテストバッテリの創造を夢みたのだった。損傷の病因を問題に
するために構成されたテストバッテリさえつくられたほどである。使用されるテストはしばしば古典的な心理測定法か
らの借り物で、たとえばウェックスラーの知能尺度を用いて知能障害を調べたり、ロールシャッハテストを借りて器質
的障害のサインを見ようと試みたりした。しかし、神経心理学者みずからが、感覚運動的な障害のある患者の概念活動
や運動の緩慢化、注意障害や、言語、行為、認識の障害を充分考慮に入れ、工夫創造を加えて実際の臨床に適合するよ
うに構成した特殊なテストは、しばしば、より効果的であった。神経心理学者たちがこれらのテストで脳損傷を検出す
る可能性は、当時の医学的診断装置(とくに脳波計)のそれにくらべられるところまで進んだ、と言われるまでにこれ
らの診断機能は評価されたのであった!
 このような臨床実践の流れの根底にある理論は臨床解剖学に直接結びついていた。ブロカの研究やウェルニッケとリ
ヒトハイムの研究から生まれたこうした理論は、脳構造内にはっきり定義できる特定機能の中枢を分離し(灰白質局
在)、中枢間の連絡をになっていてその破壊が連絡切断を生み出すような連合路を分離しよう(白質局在)とするもの
である。この流派に対しては、症候群の分類や総数、それらの内部整合性や病因、脳機能的基盤などをめぐって諸学派
の論争がなされている。
Ⅱ 診断機能の衰退
 神経学者のかたわらにあって損傷部位の探索を援助するこうした「検出型の」神経心理学者はこんにちでは消え去る
傾向にある。というのは神経学者は、現代の医学的造影技術の強力な装置(PET、MRI などの各種スキャナ)を手にいれ
たからである。もはや脳損傷の存在とその主要な特徴(局在、広さ、性質、など)を確定するためには、こうした画像
があれば充分で、それ以上に神経心理学者がもたらす情報などに頼る必要はないのである。
 しかしながらこの検出という機能が臨床実践から完全に消え去ったというのは言い過ぎであろうし、医学的造影技術
がまだ足踏みしている分野では神経心理学のこの働きが発展しつづけている。たとえば、そうした診断的研究の対象と
して、痴呆の領域、発達障害の領域、それともっと一般的に精神医学と神経学の橋渡しの部分に位置する症候学の分野 、
以上三つの主領域がある。
(中略)しかし臨床実践の総体を見渡せば、先に述べた見方はおおむね正しく、医学的造影技術の発展とともに神経心
理学的検査の予測機能はその臨床上の効用の大半を喪失した。
 古い構造の神経心理学的検査を維持している数多くの臨床グループがいまも残っている。そこでは検査の機能はまっ
たく記述的であり、その記述が隠された神経病理的原因の検出に役立とうと立つまいと、ともかく患者の障害の「一覧
表」がつくられることになる。しかし見方を変えれば、こうした存続にも有用性がある。というのも、神経学がますま
す高性能の装置類を取り入れていく現状にあって、学問的豊かさをもたらしてくれる場が失われてしまいかねないから
である。つまり、認知や行動の特殊な障害を観察する場、言い変えれば、医者が患者たちと向き合って、部分的に破壊
されたこころの宇宙を理解しようと試みることのできる場である神経心理学的検査の存続には意味があるということで
ある。脳を直接観察する技術の発達により、神経学者たちがもはや患者について写真に写された脳損傷の残す「異常
な」影像、仮にそれがカラー化されていたにしても、その影像以外何も知らないという状態になる危険は高まっている。
p111
臨床解剖学や精神測定学のような古いやり方が神経心理学の臨床実践の分野から消失したと考えるのは誤りであるし、
また、消失することが望ましいわけでもないことに注意を促しておきたいと思う。研究レベルでは、脳の損傷部位と大
まかな神経心理学的症候群とを関係づけようとする古典的な行き方は優先性をなくした。しかしポズナー(ポズナーら 、
一九八二)やコスリン(コスリンら、一九九〇)のような研究者の影響のもとに新しい研究の動きが生まれてきていて 、
行動と認知過程の神経生物学的な基礎を、神経系の機能と組織についての知識の進歩と、脳機能のダイナミックな分析
を可能にする新しい技術とを、あわせて考慮にいれるような、まったく新しい土台の上に再構築しようと試みている。
コネクショニズムの研究から生まれた諸モデルに依拠する研究の流れが臨床検査にまで影響を与えるにはまだ至ってい
ないのだが、それでも、「認知的電位」と呼ばれることも多い遅い誘発電位の分析に基づいた研究の発展をあちらこち
らで見かけるようになっており、数年のうちに神経生物学的データを行動指標や心的事象の指標と統合するようなアプ
ローチが臨床実践に導入されることを想定するのも無理なことではないのである。
# こういった「診断とは何か」が変化してきていること、
その変化が技術の進歩に促されているように見えるが、実はそうではなくて
技術の進歩の背景には、認知機能について我々は何が知りたくて、またどういった説明が得られると納得するのかとい
う、それこそ認知機能の問題が潜んでいて堂々巡りの構造になっていることを明らかにしたい。
<モジュール性の説明>
((訳者あとがき))
脳の解剖学を重視した古典的な方法に対して、脳内部のさまざまな処理モジュールの配置関係(アーキテクチャ)を構
想し障害の由来を解釈する神経心理学のアプローチが対比される。(第3章)
p21
 「モジュール性」の公理とは、認知がいくつかの特殊化され相互に自立した情報処理系から成り立っているという仮
定である。ここで特殊化というのは処理する情報の型が特定のものに限られていることを指し、自立とは下位システム
の各々が他との関係なしに情報処理を行う遮蔽性があることを意味する。
 モジュール性の仮定では、たとえば、メロディを認知するシステムと音声言語を理解するのに介在するそれとはそれ
ぞれ独立に機能して、前者は音楽、後者は言語メッセージによってしか活性化されないというような考え方をする。こ
の場合もモジュール性の公理は病理学的に確認済みの多くの堅固な知見によって支持されている。すなわち、脳損傷に
より歌曲の認知ができなくなっているのに聴覚的に与えられた言語メッセージならば理解するという症例があるのみか 、
反対の症例、つまり、言語メッセージの理解がまったく、または部分的に障害を受けていても歌曲の理解は健全な症例
もある。このような解離症状、つまり別々に独立した症状が見られることは、処理が独立して相互に自立した二つのシ
ステムが存在することを示している。
p22
 マーは脳や精神のように複雑を極めるシステムは系統発生の長い過程を通じてモジュール性の強い方法で組織されて
きた可能性が高いと示唆するに至った。
p23
領域特殊性や機能の内的自立性(情報の遮蔽性)
 たとえば、モジュールの動作は強制的である。この意味は特定の刺激が提示されるとその処理は自動的に開始され、
いったん開始されれば主体の意志にかかわらず最後まで実行されるということである。
(中略) モジュールの情報処理は意識的な制御が及ばず、われわれは実行された処理結果を受け取ることができるの
みで、処理操作それ自体を知ることができない。
(中略) 他方、推論、意志決定機構、信念システムなどの高次機能はモジュール的でないとして、フォーダーはこれ
らは科学研究の対象外と見なしている。
(中略) たとえば、読語や書字においてはモジュールの重要な特徴がたくさん指摘されるが、これらは長い学習過程
をへて修得されるものなので、生得的機能とは到底言えない。他方、モジュール性は神経心理学がこんにちの段階でそ
れを示すことがうまくいかないでいるにしても、(推論)などの高次の中枢過程にまで同じように拡張されるべきであ
ると主張する研究者もいる。
p96
最後に、モジュール主義的な行き方では、注意や記憶において一般性の強い機能不全を呈する非モジュール的な障害が
あることを、つい忘れがちなものである。
<中枢性聴覚障害の具体的検討に関わる記述>
p24
 脳に損傷を受けた患者の示す行動は下位システムあるいは下位システム間の結合に部分的損傷を受けた情報処理シス
テムが正常に機能した結果として解釈できる、ということである。
(中略) たとえば、音声言語の意味の障害(「ライター」を「タバコ」、「チューリップ」を「ばら」というように 、
ある語を意味的に関連した別の語と錯語する患者)や文法の障害(文法的に逸脱した文をいう患者)は必ずしも意味記
憶や統語システムに損傷を受けているためと決まっているわけではない。透明性の公理の意味は、反応のパタンは(異
常な場合も健全な場合と同じく)、充分に分析すれば、一つもしくはいくつかの下位成分を失った機能系の正常な機能
の「可能な結果」として解釈されうる、ということにすぎない(ここで「可能な結果」というのは、計算論的に許容で
きることであり、正常な認知機能の正常な作用としてありうる場合、あるいは局所的に変化を被ったときに達成しうる
処理の総体の出力結果が、観察された障害パタンと両立すると考えられる場合を指している)。
p38
たとえば、音読、単語の復唱、発話、絵にかかれているものの名前を言う、といった例を考えてみよう。これらの言語
課題はみな口頭における語の産出活動を含んでいる。口頭による産出のモデルは一様ではないがみな口腔・発声運動プ
ログラムの処理段階を置いているので、この成分が障害を受けるとこれを含んだすべての活動に同時に障害が及ぶと理
論上予想されよう。障害併存の原理は理論的には確かに妥当なのであり、もしある患者が二つの別個の課題で同程度の
障害を示し、実験的なさまざまの操作に対して類似した応答特性を示すならば、その障害は、両課題に同一の仕方で適
用される共通処理成分の変性に基づいているとしてもよさそうである。神経心理学がその推論原理として障害併存に頼
るのにためらいを感じるのはおそらくこのやり方に特有の誤りのリスクによりものである。すなわち、障害併存は、た
だ単に二つの別個の認知システムに関与する脳構造が空間的に近接していて、そのためにしばしば一つの脳損傷が二つ
の領域に同時に及んでしまう、という事実の結果かもしれないのである。
#臨床医学の分野でその方法論についてここまでその限界を意識して自己制限を加えているものが他にあるだろうか。
p39
 カラマッツァ、ミッチェリおよびヴィラ(1986)は、その興味ある研究で、無意味語では読語も書字も復唱もみ
な障害を示すけれども、有意味語ではみな正しく処理できる患者について報告している。この研究の特におもしろいと
ころは、三つの課題でのエラーパタンが見事に似ていることを示した点である。この患者のエラーは用いた刺激の性質
に対応してどの課題でも本質的に同じ特性を呈し、(書いても、読んでも、復唱しても)刺激に対して一定の音声的関
係を維持していたのである。彼らはこのエラー構造の精密な類似を単一成分(音声の一時貯蔵庫つまり音声バッファ)
の障害によるものと解釈し、その成分が三つの課題で果たす役割を示している。
p43
このように書記言語が特殊な構造をもっていて綴りが間接的に音を表現するという事態は書記語の処理に明らかに影響
を与える。実際、規則に反した綴りの語も読めることを考慮すれば、読語ということが発音に際して字素・音素の変換
規則のみに頼ってなされているとは想定できない。
(中略)綴りの情報の表現方法と、それが書記語の理解と音声語への変換にどう利用されているかとは多年にわたって
読語の心理学の研究の中核をなしてきた。
p43
 読語障害あるいは「獲得性難読症」などといわれる障害は神経心理学ではつい最近まで古典的臨床解剖学の枠内で記
述されていた。こうした研究動向のなかで読語障害は原因となる脳損傷と関係させて失読症の一環として述べられたの
である。記述の仕方はときには構造言語学に基づいて行われ、障害が見られる言語学上の単位によって分類されて、た
とえば文字失読、語失読、句失読などと記された。またときには、視覚性障害とか言語性障害などの分類が主張される
こともあった。いずれにしても読語という過程の正常な活動に介在する心的な過程のモデルに依拠して分類されること
はなかった。
p45
彼らは正常な読語過程のモデルに従ってエラー分析を行ったのである。(中略)この正常者と患者との類似性は彼らに
とって、失読というものが正常な読語過程の部分的な破壊から生じることを示すものであった。そこで彼らは(心理学
の文献にある既存の理論を参照しながら)読語過程の記述モデルを提案した。このモデルは読語が二つの経路をへてな
されるとする。第一は(いわば視覚による読語で)語の視覚的形態認知から意味にたどりつく経路であり、第二は(い
わば視覚+聴覚による読語で)語の字素が(字素・音素変換規則の適用により)音素系列に変換された後にこの音素表
現から意味にたどりつく経路である。こうした仮定によれば、第一の経路で語の意味を把握するのは音素表現より先で
あり、第二の経路では語の音形式を組み立ておえた後である、ということになる。このモデルに基づいて彼らは失読症
患者の三つのタイプのエラーの解釈を提出した。
 視覚失読は書かれた材料の視覚的分析をになう処理過程がやられることから生じると考えられるし、意味的エラーと
字素・音素変換エラーはこれより後の過程で生じると考えられる。意味的エラーは字素・音素変換による経路が破壊さ
れて生じるもので患者はもはや語の視覚的形態に頼ってしか読むことができず、この視覚的経路の意味処理の不充分さ
からエラーが生じるのだろうと想定される。字素・音素変換のエラーを示す患者は逆に視覚的認知ができないので、ど
んな語でも字素・音素変換によって対処する。こうしてあいまいな綴り(いくつかの音素変換を許す場合)や不規則な
綴りなどでエラーをおかすことになる。
(中略)この研究がその組み立て方と内的論理において「認知論的アプローチの本質的特徴、つまり、まずエラーのパ
タンを精密に記述し、次にそのエラーについて正常な機能のモデルに依拠して解釈し、最後にその解釈を個々のケース
分析につき合わせる」という特徴をそなえていることである。
(中略)これらの発展のもう一つの特徴は、読み書きのできるおとなや学習中の子どもなどの正常者の心理学的研究の
知見と神経心理学の研究の知見を絶えずつきあわせようとする営みが出現したことである。
p47
検索法は熟知語の読み取りに用いられ、組み立て法は未知語や馴染みの薄い語の読み取りに用いられる。
p52
ここで大事なのは目録を総覧することではない。というのは、神経心理学に認知的アプローチを持ち込むことの意義は
読語障害の分類を一新することではないはずだからである。そうではなくてむしろポイントは、各々の読語障害のケー
スについて(障害像を複雑化する他の多くの障害が並存していないかぎり)、そのエラーパタンや残存機能が正常者の
読語機能モデルと一致する形で解釈できるか否かを調べるために、こんにちではモデル(これが複数のことも多い)に
基づいて吟味できるという点なのである。
p60
短期記憶が単一システムではないというのがそれで、少なくとも視覚成分と聴覚成分を区別することを考えなくてはな
らなくなった。実際、K・F は聴覚的に提示された言語材料の短期記憶への貯蔵では劇的な減退を示したのだが、文字で
視覚的に提示された言語材料だと正常に保持できたのである。
(中略)K・F は同じ聴覚的材料でも非言語的(動物の鳴き声、目覚まし時計、電話、鍵をかける音などの特徴あるもの
の音、など)なら正確に保持でき、欠陥は言語材料(文字、語、数字)に限られることが示された。
p64
たとえば数系列の記憶範囲は言語によって異なるという事実があるが、これは数詞の構音速度が言語によって異なって
いることに規定されている結果である。
p68
さらにここでも、神経心理学の知見はただ単に下位成分を識別するに止まらず、その構造の分析にも一役かうことにな
る。
p71
 数を言語学的見地から扱うことが正当と認められるのは、少なくとも言語で表現する形の場合、数も言語システムと
しての組織を有するという事実に基づいている。事実、数は語としての諸特徴をもっている。意味を有し(意味レベ
ル)、音声構造(音素レベル)と書記構造(字素レベル)を有し、また複数の語を組み合わせる数表現合成の統語法を
有するのである。
p114
 たとえば読語ということでは大部分のモデルが非語彙的な字素・音素変換の経路を仮定するのだが、変換規則の実際
の機能や規則が適用される単位の細部までを記述したモデルはほとんどないのである。
 研究を導いてきた一般の考え方は、まず最初に、全体の構成を位置づけ、第二に、多様な情報がどのように表現され 、
入出力機能(関数)がどのように計算されるかを解明する、という段取りが多かった。しかしこうした研究方針には異
論があり、研究者によっては、システム全体の構成を打ち立てるのとそこで作用する表現や計算の性質を明らかにする
こととは密接不可分のものであると考える。
p115
 サイデンバーグは、本書がこれまでたどってきたような神経心理学および認知心理学の、古典的分析もモジュール的
な分析も、もろとも批判する。彼は、口述内容の書字で規則的な綴りエラーを示すような患者について、この欠陥が
「綴り出力システム」に局在する損傷から生まれたというだけでは充分ではない、と強調する。というのは、綴り出力
システム内で情報がどのように表現されていて、それが口述内容の書字に際してどのように用いられるのか示されない
のならば、そう言ってみたところで、単にエラーが観察されたということと違いがないからである。ところで、もし認
知的構成が障害を「言い換えただけ」にすぎないとすれば、そこから理論上、得るところがないのは明らかである。し
かしこれに対して、少なくともいくつかのケースでは、エラーパタンを分析することで、エラーに含まれた情報構造に
ついて、いくつかの点を指摘するに至っている、という事実をあげて反論することができる。たとえば、書字エラーが
とりわけ母音に偏り、とくに単語のなかほどで起きやすいとすれば、綴り出力システムが文字の型を符号化しており、
しかも単語内の位置情報を含んだものである、と言えることになろう。ところが、サイデンバーグはこれに対してさら
に、そうした説明が場当たり的で、その病者の知見を理解するために作り上げられた説明でしかなく、独立した一般的
説明とはいえないと批判する。
●プールされた記述
現代の科学では、
人間はその個体の生存を維持したり、種を保存したりする他に、外界の刺激を
見たり(視覚)、聴いたり(聴覚)、触れたり(触覚)、嗅いだり(嗅覚)して、その各々の場合に何か反応を起こし
たり起こさなかったりする存在と考えられているが、その過程はあまりにも複雑で、個々人によって多様であるために
統一的に記述できない。
 そこで、聴覚医学の場合、音が耳に到達してから、人間であれば誰しも共通の処理を行うと考えられる段階を対象と
しているのである。ここで、この共通段階の終着点をどこにおくか考えてみると、やはり本人が何らかの形で「聴こえ
た」ということを意志表示してもらうしかない。
これは他の感覚医学についても同様で、有名なペンフィールドの実験でも、脳の活動の確認は最終的には本人が「見え
た」とか答えることによっている。聴覚医学は他の感覚を扱う科学と同様に、このような危うさを抱えているため、例
えば幼少児や詐病の場合、聴こえているのではないかと強く疑うことは可能だが、聴こえていないことを確定させるこ
とは原理的に不可能なのである。(言語のからむ中枢性はどうか?言語以外の中枢性は?)
ABR や蝸電図といった電気生理学的検査や PET などの画像診断によって患者が聴こえているかどうかを他者も判別でき
るようになったとも思える(a から b への方向)が、こう言えるのは感覚を扱う科学が扱う危うさに目をつぶっての上で
の話である。
また、脳の損傷が認知の細分された領域の選択的欠陥を生みだしうるという仮定は、中枢神経系における機能の独立的
組織化を前提にしなければ主張しえない。こうして、心的過程と脳機能との関係が認知神経心理学の最重要問題ではな
いとしても、脳機能の解剖・生理学的な明示化はどのみち必要にはなるのである。ところで、コスリンとファン・クリ
ーク(一九九〇)が言うように、認知諸機能は広範に分布する非特殊的な神経回路網の活性化によって支えられている 、
ということもありえないことではない。しかしながら、カラマッツァが強調したように、こうした異論は理論上または
仮説上のものにとどまり、事実の上では、脳損傷が認知の選択的障害を引き起こす例しか観察されておらず、こんにち
までのところ依然として機能的特殊化の仮説はもっともらしさを失っていないのである。
 神経心理学では脳機能それ自体は、分子、細胞、神経回路網、など、いくつかの異なったレベルで記述することがで
き、それゆえ構造と機能の広範な視野での比較が必要なことがいつも強調されてきた。この見解は過っていないが、マ
ーの示した分析レベルの自立性ということを充分に考慮にいれたものとは思われず、心理学的説明のレベルから脳機能
分析のさまざまなレベルへの橋渡しが想像以上に複雑になることを強調しているにすぎない。
 さらに、この論議にはコネクショニズムもかかわってきている、ある研究者たちは認知の計算論的規則を理解するた
めに回路網を構成している。また別の研究者たちは、コネクショニズムの回路網で、実際の脳の神経回路網がどのよう
に機能するか、そしてどのように行動を産出するかを理解できると考えている。この新しい分野は神経模倣学と呼びう
るものである。
#「診断とは何か」の変化が技術の進歩に促されているように見えるが、実は逆に、技術の進歩の背景には、認知機能
について我々は何が知りたくて、またどういった説明が得られると納得するのかという、それこそ認知機能の問題が潜
んでいて堂々巡りの構造になっている。

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