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加振器を使用した
鴨頭輝、岩崎真⼀、⽊下淳、藤本千⾥、松本有、狩野章太郎、⼭岨達也
東京大学耳⿐咽喉科学教室
マウス前庭機能検査システムの構築
Conclusions
Results
References
従来の方法に⽐べて、⼿技が非常に簡単であり、簡便に前庭機能を評価可能になった。
Summary of this Study
従来の方法に⽐して、非常に低侵襲な方法によって、前庭機能の評価が可能になった。
頭部に異物を固定する必要がなくなり、⼩さな個体や、⻑期的な評価が可能になった。
VsEP
90dB
80dB
75dB
70dB
60dB
50dB
2uv
2uv
1uv
1ms
VsEP
ABR
90dB
80dB
70dB
60dB
50dB
1ms
1uv
1ms
1uv
Rightrsiderdown
Leftrsiderdown
VsEP 80dB 1uv
1ms
Rare
Alt
Cond
VsEP 80dB
VsEP 75dB
70dB
65dB
60dB
55dB
1ms
2uv
1uv
ABRr8kHz 2uv
1uv
1ms
90dB
70dB
80dB
60dB
50dB
Figure 2 ⾳響障害後のABRとVsEPとの⽐較
Figure 3 VsEPにおける条件の⽐較
⼀般的なABRとVsEPとの⽐較Figure 1
Instruments
システムの外観
加速度計による加振機加速度波形
旭製作所
⼩型加振器 S-0105
PCB社
⾼分解能加速度計352C65
シグナルコンディショナ482A21
全体の様⼦。
左より、加速度計測用のオシロスコー
プ、誘発電位計測のための⽇本光電製
ニューロパック、加振器励起用のアン
プ、検体を設置する防⾳箱である。
防⾳箱内部の様⼦。
左より、加振器、加速度
計、騒⾳刺激用スピー
カ、頭部固定装置、検体
用の⾼さ調整台である。
刺激を交互に反転させた場合の波形⻘線:刺激波 赤線:加速度波形
加振器の接続の方法と振動方向
加速度
センサ
加振器
⾼さ調整台
振動の方向
マウスは腹臥位とし、ナリシゲ社製
マウス用頭部固定装置SG-4Nにて、
上顎・両側耳前部2カ所の計3点をピ
ンにより固定し、ナリシゲ社製の接
続治具を用いて、旭製作所製⼩型加
振器S-0105と接続した。
 マウスを始めとする実験動物の聴⼒は、聴性脳幹反応 (ABR) 等を用い
て簡便に測定できるのに対し、前庭機能については、回転検査による前
庭動眼反射の測定やカロリックテストによる眼振の緩徐相速度の計測と
いった⾼価な設備が必要である上に、全⾝⿇酔下では測定できない方法
が大半で、測定が非常に困難である。
 過去に報告された、実験動物の前庭機能の定量的な評価方法として、
short latency vestibular evoked potential (VsEP) がある[1]。VsEP
は、動物の頭部に加振器で繰り返し振動を与えることによって得られる
誘発電位を計測し前庭機能を評価する方法である。この方法は、ABRと
同様に、全⾝⿇酔下での末梢前庭機能の評価が可能という利点を有する
が、特別な手術が必要である、前庭のどの部分の機能を反映するかが明
確でない、⼀側前庭障害の評価が困難である、といった短所がある。
 本研究では、実験動物の耳石器機能、半規管機能を簡便かつ、精密に
測定できるシステムの構築を試みたので報告する。
Introduction
Materials & Methods
 本研究では、Jcl:ICRマウスを使用した。
 通常の動物用の⿇酔後、ナリシゲ社製マウス用頭部固定装置SG-4Nに
て、上顎・両側耳前部2カ所の計3点をピンにより固定し、ナリシゲ社製
の接続治具を用いて、旭製作所製⼩型加振器S-0105と接続した。
 刺激用の振動波形は、⽇本光電製ニューロパック MEB-2306 を用いて
⽣成し、1msの矩形波を出⼒した。波形は、加振毎に刺激波形を反転す
るモード、しないモードの両方を使用した。出⼒波形はアンプに⼊⼒
し、加振器を励起させた。
 加速度は、加振器に固定したPCB社製⾼分解能加速度計352C65にて計
測し、シグナルコンディショナ482A21にて電圧に変換した加速度波形を
オシロスコープで計測した。
 誘発電位は、通常のABRの計測方法と同様、頭頂部・両側耳後部に設
置した針電極を用い、加算平均(100回)記録し、その波形により反応の有
無を判別した。
 最大の加速度ピークを20gとして5dBずつピークを減少させて、閾値を
求めた。ABRとの⽐較のため、暫定的に 90dB = 20g (peak) として表⺬
した。ABRの⾳圧は dB SPL にて表⺬した。
 ノイズマスキングは100dB SPLホワイトノイズをスピーカより与える
ことで⾏った。
 ⾳響障害については、8kHz オクターブバンドノイズ 115dB SPL 2時
間を使用し、ABRとVsEPとを⽐較した。
 条件については、左側臥位・右側臥位についても計測した。
[1] Short latency compound action potentials from mammalian gravity receptor organs. Hear Res. 1999 Oct;136(1-2):75-85. Jones TA, Jones SM.
[2] Stimulus and recording variables and their effects on mammalian vestibular evoked potentials.
J Neurosci Methods. 2002 Jul 30;118(1):23-31. Jones SM, Subramanian G, Avniel W, Guo Y, Burkard RF, Jones TA.
[3] The adequate stimulus for mammalian linear vestibular evoked potentials (VsEPs). Hear Res. 2011 Oct;280(1-2):133-40.
doi: 10.1016/j.heares.2011.05.005. Epub 2011 Jun 2. Jones TA, Jones SM, Vijayakumar S, Brugeaud A, Bothwell M, Chabbert C.
 従来の方法に⽐して非常に低侵襲な方法による前庭機能の評価が可能になった。また、手技が非常に簡単であ
る上、頭部に異物を固定する必要がなくなり、⼩さな個体での評価や、⻑期的な評価が可能になった。
 今後の課題として、条件による波形の違いや、それぞれの由来に関する詳細な検討が必要である。
左図の⻘線がVsEP、赤線がABR (8kHz)。通常のABRのI波∼V波とは異なる潜時において陽性波・陰性波を認める。
右図、ABRと異なり、VsEPでは、加振加速度ピークの減少でも潜時は遅延せず、波⾼が⼩さくなる。
左図、⾳響障害後 (8kHz オクターブバンドノイズ 115dB SPL 2時間) のABR (8kHz)。閾値の低下 (80dB SPL) を認め
る。右図、VsEPでは、60dBにおいても反応を認め、⾳響障害による影響を認めない。
左図、80dBにおけるVsEPにおける、右側臥位、または、左側臥位の際の波形の違い。左右で潜時の異なる波形を認め
る。右図、臥位にて刺激を正のみまたは負のみまたは交互の際の波形の違い。⼀部に潜時の異なる波形を認める。

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