日本のがん医療の実状
• 外科医が中心のがん医療
• 減らないがん難民
• 治療の選択肢の増加(分子標的薬な
ど)による過剰な抗がん剤の継続
• 怪しげな民間クリニックの横行
• 医療者のコミュニケーション不足
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
日本医療政策機構2006年
日本の緩和ケア、緩和ケアチームの実態
• 外来予約を取るのにも1ヶ月以上待ちの緩和ケア病棟
• 外来緩和ケアを導入している施設が少ない
• 早期緩和ケアが大切ということで、化学療法を施行中から、ホス
ピスに紹介したら、「早すぎる、治療が終わってから来てくださ
い。」と言われた。
• コンサルテーションのみの緩和ケアチーム。処方しない。看取りも
しない、外部緩和ケアとの連携もしない。積極的治療に関する治
療方針には口出ししない。主治医に最終責任。
2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
亡くなる2ヶ月以内に化学療法していた患者の割合
2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
早期緩和ケア群(n=32) 対照群(n=25)
P=0.02
亡くなる2ヶ月以内の化学療法
亡くなる2ヶ月以内に化学療法なし
J Clin Oncol 29:2319-2326: 2011
亡くなる3ヶ月以内に化学療法していた患者の割合
(国立がん研究センター中央病院)
2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
n=255
P<0.01
亡くなる3ヶ月以内の化学療法
亡くなる3ヶ月以内に化学療法なし
47%53 %
Hashimoto, Katsumata et al. The Oncologist 2009;14:752–759
医師A(n=22)
医師B(n=24)
医師C(n=123)
医師D(n=68)
医師E(n=12)
医師F(n=6)
50%50%
51%41%
33%
67%
60%
40%
83%
17%
50%50%
亡くなる3ヶ月以内に化学療法をすることに影響した因子
~多変量解析の結果~
2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
Hashimoto, Katsumata et al. The Oncologist 2009;14:752–759
OR 95% C.I P value
緩和ケアの話し合いをしなかった
(緩和ケアへの紹介なし)
10.3 4.3-24.4 <.0001
身体症状を伴っていた 2.23 1.15-4.3 0.018
45歳以下 2.73 1.26-5.70 0.0008
男性 2.26 0.81-6.34 0.11
Provisional clinical opinion: the integration of
palliative care into standard oncology care.
1. 進行がんと診断された時から、標準的抗がん剤治療と同
時に緩和ケアを行っていくことは、患者・家族のQOLを向
上させ、無駄な抗がん剤治療を避け、延命にも寄与する
可能性がある
2. 治療医は、化学療法ができなくなってきてからでなく、進
行がんと診断された時から、ホスピスケアについての情
報提供、治療の目的(治癒でなくより良い共存)、(余命告
知でなく)予後について話し合うべきである
米国臨床腫瘍学会(ASCO) 2012
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
J Clin Oncol. 2012 10;30(8):880-7
早期の緩和ケアを実践するために
転移・再発した時点で以下の、話し合いを繰り返しすること
1. 病状の理解
• がんを治すことは困難であること
2. 意思決定支援
• 緩和ケア・緩和療法という治療オプションがあること
3. ACP(Advanced Care Planning)
1. 大切にしたいことは?楽しみにしていることは?(生活の質について)
2. 身の回りのことができなくなってきた場合、どこで(在宅・入院・ホスピ
ス)どのように過ごしたいか?(End of Life Discussion)
3. 余命宣告をしない(Hope the Best, Prepare the Worst)
4. どんな状況になっても見放さないこと(孤独にさせないこと、将来の約束)
2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
余命告知でなく、予後について話し合うこと
Telling prognosis(余命告知)
• 医師から患者への一方通行
• 「あなたの余命は○ヶ月です」
End of life discussion(予後に
ついて話し合う)
• 医師患者のコミュニケーション
• 緩和ケアの重要性
• 「身の回りのことができなくなった
場合に、どこでどのように過ごし
たいですか?」
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
臨床医が最も難しいコミュニケーションは?
米国臨床腫瘍学会Breaking Bad News シンポジウム1998
再発を伝える
がんの診断を伝える
積極的治療中止、緩
和ケアへの移行
終末期ケア(蘇生の有
無)の相談
その他
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
患者とのコミュニケーション技術
(わが国における患者の意向を基に作成)
悪いニュースを伝える方法 -SHARE-
Supportive environment (支持的な場の設定)
How to deliver the bad news (悪い知らせの伝え方)
Additional information (付加的な情報)
Reassurance and Emotional support (安心感と情緒的
サポート)
Fujimori et al. (2007) Psychoncology 16:573-81
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
内富庸介, がん医療におけるコミュニケーション・スキル 悪い知らせをどう伝えるか. 医学書院, 2007
コミュニケーション技術による患者への精神状態への影響
研修を受けた
介入群
(n=292)
平均値±標準偏差
研修を受けて
いない対照群
(n=309)
平均値±標準偏差
P値
不安* 4.83±3.75 5.17±3.42 0.333
抑うつ* 4.59±3.75 5.32±4.04 0.027
満足度** 8.58±1.62 8.35±1.74 0.095
信頼感** 9.15±1.28 8.87±1.54 0.009
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
30名のオンコロジストをコミュニケーション技術研修を受ける群と、受けない群に
ランダムに割り付け患者の精神状態を評価: 国立がん研究センターで施行
Fujimori, Katsumata et al. J Clin Oncol 32, 2014
*HADS:不安、抑うつを評価する尺度、数値が高いと悪い傾向
**数値が高いと良い傾向
Hope the Best, and Prepare the Worst
(最善を期待し、最悪に備えましょう)
患者
私は少しでも長く生きたいんです。
治療がうまくいってほしいんです。
最悪を考えるということは、あきらめて
しまうような気がするのです。
今後は、妻や子供のことが心配なので
す。
Ann Intern Med. 2003;138:439-443.
医師
私もそう期待したいです。○○さんにとって一番大切
なことは何でしょうか?
私も治療がうまくいってほしいと思います。もし治療
がうまくいったら何を大切にしたいですか?また、治
療がうまくいかなかったらどうするかということについ
て話したいのです。
○○さんの心配するお気持ちは理解できます。準備
をする、ということはあきらめてしまう、ということでは
ありませんよ。
大切なことを話してくださってありがとうございます。
奥様や子供さんのことについて、一緒に考えていき
ましょう。
Division of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
早期の緩和ケアを誰がやる?
2015/1/23 Department of Medical Oncology, Nippon Medical School Musashikosugi Hospital
がん治療医?緩和ケアチーム?緩和ケア医?
看護師?ソーシャルワーカー?
1. 役割分担でなく、役割をシェアする
こと(共同作業)
2. 主体的に関わること
チーム医療とは?