優良病・医院経営を目指して 事務部長による経営課題解決編 ~資格取得支援制度~ 特定医療法人谷田会 谷田病院 事務部長 藤井将志 以前、本コーナーで院外研修について無制限で参加できる仕組みを新たに院内で開始した、と書かせていただきました。今回はさらに仕組みをバージョンアップして、病院職員の資格取得を支援する制度を院内で検討し、開始してみました。多くの医療従事者は入職時に国家資格を所持しています。そのうえで、さらにスキルを向上させるため、上位の資格や認定をめざしている人も多いでしょう。例えば、看護師の認定看護師制度や、看護協会が提供するサードレベル認定などです。 このような個人に属する資格について、取得するための費用は個人が負担する、という医療機関も少なくないでしょう。その一方で、その認定要件があると診療報酬上評価されたり、提供する医療の水準が向上するなどの組織的なメリットもあります。組織に還元される資格に関しては積極的に取得支援をした方が良いのではないか、ということで仕組みを検討し始めました。 資格取得に必要な費用の一部を負担する、という意見もあったのですが、最終的には全額補助することを決めました。研修会場への旅費や宿泊費などの経費も全てです。さらに、資格取得のために勤務時間を使うことも認め、その間は給与も支払うことにしました。もちろん、誰でも勝手に利用できるわけではなく、所属長の推薦と幹部会議の承認が必要になります。これまでの勤務態度等も考慮して判断されることになるでしょう。仕組みの検討にあたり、いろいろな医療機関の制度も調べましたが、一部を補助していたり、職種や対象資格を限定しているところは多かったのですが、基本的にはそうした制限もなくして、より積極的に利用できる仕組みにしました。 ひとつだけ、厳しく条件としたのが、資格取得後の退職についてです。上位の資格を取得したら直ぐやめてしまった、というのでは話になりません。そこで、補助した金額や、有給で院外に研修した日数に応じて、資格後必須で勤務してもらう期間を設けました。例えば、10万円の補助をした場合、取得後2年間は勤務をすることなどです。もし、その間に退職をした場合は、補助した費用と院外で研修した日数分の給与を全額返還する、という厳しめの内容となっています。途中で結婚などをして転職を余儀なくされたら、などの反対意見もありましたが、提供する支援内容が充実している分、縛りも厳しく設定しました。もちろん、この仕組みを使わず、自分の有給休暇を使い、自費で資格を取得する分には何も制約はありません。 脱線になりますが、新たな専門医の仕組みが来年度から始まります。日本専門医機構のもとで各学会が要件を定めていますが、継続的な専門医育成の体制維持にかなりの労力がかかる規定が少なくないようです。指導医を取るための要件に加え、それを更新するためにも研修に参加したり、英語論文を発表したりといった内容です。こうした費用は医師の個人もち、としている医療機関は少なくないでしょう。しかし、専門医を育成できる医療機関であるためには必要な取り組みなので、やはり医療機関からの支援はあって当然だと思います。 今後は