(ニュース) 政府は10月22日、投資や知的財産など環太平洋経済連携協定(TPP)全31分野の詳細を公表した。日米など参加する12カ国は、政府などによる公共調達の市場を互いに開放するなど、域内の投資ルールに共通の原則を設ける。 (解説) 本稿でTPPをテーマとして取り上げるのは今回で3度目になる。初めて取り上げたのが2010年11月なので、かれこれ5年が経過したことになる。その間に政権も民主党から自民党へと変わり、首相も安倍首相が3人目である。これだけの月日をかけて、ようやく決着しそうだ。 協定の締結により私たちの生活に最も影響があるのは関税の撤廃である。国内の産業を保護する目的で日本に限らず世界中の国で、外国の製品を輸入する際は税金をかけている。例えば、日本に輸入する牛肉には現在38.5%の関税がかけられている。つまり、1000円の輸入牛肉を買った場合、385円分は税金による費用といえる。こうした関税を全貿易品目(9018品目)のうち95.1%について、最終的に撤廃することとなった。先の牛肉の例でいうと、段階的に削減され、16年経過すると9%になる。これにより輸入牛肉が大幅に安くなる可能性がある。 輸入したものだけではなく、日本から輸出するものにも相手国の関税がかけられており、それも撤廃に向けて協定に盛り込まれている。例えば、現在はベトナムに輸出される乗用車は83%もの関税がかけられており、同じ車でも日本で売る場合のほぼ倍の値段となってしまう。それが13年目に撤廃されることとなる。現地の人からすると13年後には日本車が8割引きで買えるのであるから、価格破壊が起こるようなものであろう。 TPPの中には関税に関すること以外にも、ビジネス関係者が外国で一時的に滞在する期間の延長や金融機関やコンビニの参入規制の緩和など、ビジネスを外国で展開する際の規制緩和が盛り込まれている。医療に直接関係することといえば、医薬品の特許による保護期間が8年間となったことであろう。メガファーマをたくさん抱える米国は特許期間が長い方が有利であり、12年間を求めていたが、最終的には8年間で決着した。今後は新薬の発売後、より短期間で後発品を販売することができる可能性が高い。その他、医療や介護、福祉、保険に関する直接的な内容は含まれていない。 さて、視点をTPPという言葉が初めてニュースに登場した5年前にさかのぼってみる。TPPに批准すると、国民皆保険が崩壊する、株式会社による病院経営が認められる、混合診療の解禁が要求される、なんてことが叫ばれた。医療の専門誌でもTPPは医療業界への黒船のように書き立てられていた。この間に行われた選挙の際にも、TPP批准は医療崩壊へとつながるから断固反対、のようなスローガンを掲げた候補者も散見された。振り返ってみると、いかに本筋からずれている議論をしていたかが分かるであろう。TPPの根幹はあくまで貿易品の輸出入関税の撤廃にむけた協定なのである。出来事の枝葉末節なことに振り回されるのではなく、大局を見極める目を持っていきたい。 (ニュース) 病気へのかかりやすさや体質などを判定する消費者向けの遺伝子検査ビジネスを手掛ける企業でつくる個人遺伝情報取扱協議会(CPIGI)が、一定の基準を満たした業者を自主的に認定する制度を創設し、10月26日から認