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窃符救趙①(魏の信陵君、割符を盗む決意を固める)
- 1. 戦国篇 第 25 集
窃符救趙①(魏の信陵君、割符を盗む決意を固める)
魏の信陵君(中)、秦の攻撃を受ける趙を救援するため、
わずか 300 人の食客と共に戦闘に向かおうとするが…
- 2. 第 25 集 窃符救趙①(魏の信陵君、割符を盗む決意を固める) -戦国篇-
―背 景―
BC 260 年、秦の昭王は白起(はくき)に命じて韓の長平(ちょうへい)で趙軍を破り、白
起は投降した趙兵 40 万人を生き埋めにして殺す。
勢いに乗った秦軍は、趙の都・邯鄲(かんたん)を包囲し、趙国は滅亡の危機にさらされ
ていた。そのため趙の公子・平原君(へいげんくん)は魏の安釐王(あんきおう)に救援軍
の派遣を要請する。
一方、安釐王の異母弟である信陵君(しんりょうくん)は、賢者を集めて天下の行く末を
語り合う賢公子であり、趙の平原君夫人の弟でもあった。
―あらすじ―
趙の平原君の救援要請に対し、魏の安釐王は将軍・晋鄙(しんぴ)と二十万の大軍を派遣
する。しかし、晋鄙軍は趙都・邯鄲に行かず、趙の国境で待機するばかり。これは秦との直
接対決を避けようとする安釐王の策略であった。この事を知った信陵君は、趙のために大い
に焦る。
しかし、当の安釐王は、客将・辛垣衍(しんえんえん)を相手に碁を打っていた。
そして「趙が秦と和解するために『先ず趙が秦に使者を出し、秦王を帝と仰ぐ』よう趙を説
- 5. 一方、秦の趙に対する攻撃は激しさを増し、信陵君の姉である平原君夫人は、兄である魏・
安釐王のもとを訪ね、必死になって救援を要請する。しかし、安釐王は、秦と戦うなど真っ
平ご免とばかりに拒絶する。
趙の平原君に嫁いだ妹
(左)の救援要請に渋い
顔する魏・安釐王(右)
ついに絶望した平原君夫人は、再度趙に戻ろうとするが、知らせを受けて駆けつけた信陵君
夫妻に止められる。
信陵君は、姉のため、趙国との友情のため、そして秦の全国統一の野望を挫折させ、将来
起こりうる魏への攻撃を防ぐため、王に再度援軍を要請する。が、それでも安釐王は首を縦
に振ろうとしない。
焦った信陵君は、ついに自分の食客 3 千万を連れ、姉と共に趙都・邯鄲に赴く決意をする。
その志を理解した信陵君夫人は「自分も一緒に趙に連れて行ってほしい」と夫に頼む。が、
死を覚悟した信陵君から「危険すぎる」と言われ、拒否されてしまう。
趙へ向かう準備で慌ただしい信陵君の屋敷に、一人の男が訪ねてきた。その男は、例の市
場で出会った肉屋の朱亥であった。朱亥は、単なる肉屋ではなく、飛び道具・鉄槌の名手で
あった。
頼もしい味方を得て喜ぶ信陵君。しかし、彼が一番頼りにしている侯贏は、いつまで経って
も現れない。
- 6. 飛び道具の腕前を信陵君(左/背中)に
披露する朱亥(右)
ついに趙へ出発する信陵君。彼を乗せた馬車が魏の城門を通ると、見送る人々の中に侯贏
の姿があった。信陵君は喜び、趙へ一緒に行ってくれるよう頼むが、侯贏はきびすを返して
向こうへ行ってしまう。そこで信陵君は、侯贏を家まで追いかけるのだが、彼は「死地に赴
く人間には用がない」とばかりに信陵君を追い返す。
仕方なく侯贏ぬきで出発した信陵君だが、日頃侯贏に対して礼を尽くしてきた彼には、侯
贏の態度が理解できない。思い余った信陵君は、馬車を返し、再び侯贏を訪ねる。
侯贏(左)
に礼を尽
くす信陵
君(中)
右後ろは
朱亥
- 7. すると、侯贏は門の前に立ち、笑って言う:
「私は貴方が戻って来られるのを知り、ここでお
待ちしておりました」
信陵君が「今回の趙行きに対する意見」を問うと侯贏は言う:
「貴方が、たった三千の食客を引き連れて秦の大軍に当たろうとするのは、ちょうど玉子を
石にぶつける様なもの。なるほど後世の人々は貴方を『身を捨てて仁を成した義士』と評す
でしょうが、三千の食客達、そしてその家族は一体どうなるでしょう?三千人の命は、貴方
の名誉の為にあるとお考えなのではないでしょうね」
その言葉を聞いた信陵君は非常に恥じ入る。そして自分の取るべき道を指し示して欲しい
と侯贏に頼む。それに対して侯贏は「上・中・下の三つの策を授けますので、その中からお
選びください」と言う:
「貴兄・安釐王を殺して王位を奪い、魏の全軍を統率して趙を助ける、これが上策です」
しかし、兄想いの信陵君は断固としてその策を退ける。すると侯贏は続けて:
「安釐王から割符を奪い返し、将軍・晋鄙と交代して二十万の軍を動かして趙を助ける、こ
れが中策です」
「しかし、兄は割符を隠しもっており、容易に取り戻せないでしょう」と信陵
君が言うと、侯贏は言う:
「割符は王の寝室にあります。そして王の寝室に出入りできるのは廬姫だけです。貴方は以
前廬姫の父の仇を討ってやり、廬姫は貴方のためなら何でもするでしょう。彼女に頼んで割
符を奪いなさい。また、もし割符を手に入れても晋鄙が貴方の命に従わない場合は、急を要
しますので、朱亥に命じて晋鄙を殺し、軍を掌握するべきです」
その話を聞いた信陵君、廬姫と晋鄙の命を殺めかねないその計画に躊躇する。すると侯贏
が言う:
「廬姫・晋鄙二人の命と食客三千人の命、そして趙の領民千百万人の命とでは、どち
らが大事なのですか?....食客三千人で十万の秦兵に当たるというのは、私が見るところ一
番まずい策(下策)ですね。どの策を取るかは貴方にお任せします。どうか十分お考え下さ
い」
そう言って侯贏は去って行く。後に残された信陵君と朱亥。朱亥は信陵君に向かって「ど
ういたしましょう?」と聞く。その言葉に我に返った信陵君、ゆっくりと立ち上がって、自
分に言い聞かせるように呟く:「割符を奪い、趙を助ける(窃符救趙)...」