1. 戦国篇 第 8 集
商鞅変法③（衛鞅、魏を攻撃する）
自分の故国・魏を攻撃するために指揮をとる
衛鞅(中央/赤いマント)

2. 第８集 商鞅変法③（衛鞅、魏を攻撃する） -戦国篇-
―あらすじー
強国となった秦に威圧された魏の恵王は、秦と和睦するため、公子昻（こう）と共に秦の
孝公に会いに来る。それを出迎えた衛鞅（えいおう）は、恵王に対し、「もし私を採用して下
さるなら、秦と同様、魏も強国にしてみせましょう」と言うが、相変わらず傲慢な恵王は、
それを鼻であしらう。
その後、衛鞅は久しぶりに会った公子昻に挨拶し、衛鞅の恋人である韓女が公子昻に世話
になっている礼を述べる。ところが、公子昻は、意外なことを言う。つまり、韓女はずっと
公子昻の屋敷に住まわせていたが、数日前、恵王が彼女を養女として引き取り、なんと秦の
孝公への貢物にしようと企てていると言うのだ。
驚き慌てて韓女のもとに駆け出す衛鞅。しかし、韓女は既に孝公の前で舞を披露し、孝公
に気に入られてしまった。
「ワシと一緒に宮殿に帰り、
酒を飲もうではないか」と韓
女(左)に言い寄る孝公(右)
そのため、衛鞅は、恋人を目の前にしながら、手を出すことはもちろん、親しげに話しかけ
ることすら出来なくなる。
その苦しい状況を払いのけるかの様に、衛鞅は、軍隊の調練に励み、魏攻撃を開始する。
そして義弟である烏醜（うしゅう）は、自分と母・姫娘（きじょう）を奴隷の身から解放す
るため、勇んで軍役につくのであった。
しかし烏醜は、戦功を挙げることなく戦死してしまう。

3. 敵の首をあげようと勇む烏醜
しかし、かえって敵に討たれ...
それを知った衛鞅は、重い足取りで姫娘にそのことを告げに行く。息子を亡くし、しかも自
分は一生奴隷のまま終わらなければならないと知った姫娘、大声を上げて泣き、自分の不運
を嘆く。その様子に、声もなく、へたへたと地面に座り込む衛鞅。
一方、秦孝公に見初められた韓女は、結局孝公の子を身ごもり、男の子を産む。その子は
樗里子（ちょりし）と言った。
韓女(左)と
樗里子(右)
そして韓女は、衛鞅を樗里子の先生として招こうと思い、かつて衛鞅を孝公に推挙した宦官・
景監（けいかん）にその事を打診する。が、景監は樗里子の師には衛鞅ではなく、趙良（ち
ょうりょう）がよいと言う。

4. ちょうどその時、当の趙良が現れ、衛鞅の暴政についていけなくなったため官を辞すると
言う。驚く韓女と景監。実は、衛鞅の作った法では、一人が罪を犯すと、周りに住む九世帯
が連座して処刑されることになっていた。そのため、処刑者は膨れ上がり、一度に 700 人の
斬首者が出た。
法を徹底させる
ため厳罰を執行
する衛鞅
後ろは、処刑され
て城壁から吊り
下げられた罪人
の首
そこで、処刑が行われた渭水（いすい）の水は真っ赤に染まり、それを執行した衛鞅は、大
いに恨みを買ったと言う。
反面、こうした厳しい法が執行されたお陰で、秦の秩序は保たれ、軍は強くなった。そし
て、秦孝公は、ついに周の天子より覇者としてのお墨付きをもらい、今まで秦を蛮族国家と
見なしてきた諸侯国からも、一目おかれるようになった。そこで孝公は上機嫌で衛鞅の労を
ねぎらうのであった。
しかし、当の衛鞅は、一向に心が晴れない。これだけ苦労して法を作り、軍を指揮したに
もかかわらず、母を奴隷の身から解放できず、烏醜を戦死させ、韓女を孝公に奪われる始末。
身分は左庶長（さしょちょう）から大良造（だいりょうぞう）、宰相へと トントン拍子に出
世したが、自分の思い通りにならない点から見れば、結局、奴隷と同じではないか？ 思い悩
む衛鞅。
そんな思いを断ち切るかのように、衛鞅は魏攻撃を続ける。BC 340 年、魏の恵王は公子昻
を大将として衛鞅の攻撃を防ごうとする。すると衛鞅は公子昻に手紙を送る：

5. 「私と昻様は、幼馴染の間がら。今、別々の君主に仕えているものの、戦うに忍びません。
できることなら昻様とは玉泉山で盟約を結び、お互いに兵を引きたいと存じます」
その手紙を見た公子昻は、大喜びで玉泉山に行こうとする。が、部下達は衛鞅に殺される
ことを恐れて猛反対。さんざん公子昻と議論を交わした末、部下の一人が言う：「そこまで仰
るのなら、玉泉山へお行き下さい。ただし、その前に、衛鞅から人質をとりましょう」
こうして公子昻から人質要求の手紙を受けとった衛鞅、誰を出すか思い悩む。すると弟子
の孟蘭皐（もうらんこう）が、是非自分を行かせてくれと言う。公子昻を捕虜にしようと決
めていた衛鞅は、孟蘭皐の身を案じ、行かせまいとする。
が、孟蘭皐には死ぬ覚悟が出来ており、秦国のため、師の衛鞅のため、自分の名誉のため、
是非行かせてくれと頼む。
人 質 と し
て 魏 陣 に
赴 く 許 可
を 衛 鞅
( 左 )に 願
う 孟 蘭 皐
(右)
そんな孟蘭皐を、涙ながらに見送る衛鞅であった。
（→「商鞅変法④」へ つづく）
―ひとことー
前回、「この DVD は衛鞅に対して非常に同情的に扱っている」と書いたが、今回その根拠と

6. して、衛鞅は「苦労して法を作り、軍を指揮したにもかかわらず、母を奴隷の身から解放で
きず、烏醜を戦死させ、韓女を孝公に奪われた」と説明している。
ところが、奴隷の母や弟（姫娘と烏醜）は架空の人物であるし、恋人役の韓女は、樗里子
を産んだ孝公の妃で実在の人物だが、衛鞅の恋人であったという史実は確認されていない。
結局のところ衛鞅は、架空の人物や架空の事柄を総動員して、やっと同情に値する人物に
なれるのだ。
有る意味では、司馬遷の衛鞅批判は、当たっているかもしれない。