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在宅療養支援診療所における組織マネジメント(村上典由) 在宅における抗がん剤の曝露対策の実態調査
- 1.
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在宅医療における抗がん剤の
曝露対策の実態調査②
第20回日本在宅医学会
宍戸結理、五島早苗、片山智栄、遠矢純一郎
桜新町アーバンクリニック
- 2.
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演題発表に関連し、開示すべきCOI
関係にある企業などはありません。
日本在宅医学会
C O I 開示
宍戸結理
- 3.
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背 景
■近年、在宅日数の短縮化に伴い、外来や在宅で
抗がん剤治療が行われる機会が増えている。
■昨年訪問看護ステーションを対象に抗がん剤曝露
の実態調査を行った結果、抗がん剤曝露に対する
知識は不十分で患者・家族への説明が十分に
行われていないということが判明し1)、
先行研究でもマニュアルの整備が重要である2)
と言われている。
参考文献1)在宅医療における抗がん剤の曝露対策の実態調査 五島早苗,宍戸結理他
2)訪問看護師の抗がん剤による職業性曝露の健康影響の認知と曝露防止策の実施状況,杉山令子,佐々木真紀子,長谷部真木子他
- 4.
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患者とその家族の尿サンプル全てから抗がん剤が検出
がん化学療法を受けていない家族の尿から、患者に投与された
ものと同じ抗がん剤が検出されたことにより、「患者の排泄物
を介した同居家族への曝露があると」と証明された。
参考文献:「在宅がん患者の化学療法に伴う抗がん剤人的環境曝露対策防止のための地域安全システムの構築」セコム科学技術不興財団
患者1 患者1の家族
シクロフォスファミド 170.10㎎ 152.0㎎
患者2 患者2の家族
シクロフォスファミド 140.93㎎ 1.81㎎
患者3 患者3の家族
5-FU 16.9㎎ 421.0㎍
- 5.
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目的・方法
(目的)
生活支援の場で多く関わっているのは介護士である
ことから、今回は介護士に焦点を当て、アンケート
を行った。
(方法)
世田谷区の介護事業所を対象にアンケートを作成し、
233事業所に依頼した。
5
- 6.
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職業性曝露に対する意識調査
職業性曝露を知っているか
使用している利用者に
関わったことはあるか
YES
65%
NO
35%
NO
72%
YES
28%
N=43 回答率18%
- 7.
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アンケート結果
Q.抗がん剤治療中の患者に対して気をつけていること
・抗がん剤治療の副作用について注意する
・安全・安楽に治療が受けれるように注意する
・確実に内服出来るように注意する
Q.抗がん剤曝露について知っていること
「曝露予防についての説明や指示について医療者側から何もなかった
ように思います。」
「避けるという意識はあったが、予防的に何を身に着けなければなら
ないか分からなかった。」
「病院からは説明が一切されておらず、いまさら言われてもと思って
いるので困っている。」
「在宅での抗がん剤の取り扱いについてぜひ情報をお伝え下さると
助かります。介護者の身体保護は重要です。」
- 8.
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事例 Fさん 80代女性 独居 認知症
・20XX年 看護小規模多機能居宅介護の利用開始
・20XX年 11月に悪性リンパ腫と診断
・20XX年 12月に入院し、R-CHOP療法開始
1月から外来での抗がん剤治療へ
看護小規模多機能居宅介護の介護士、当院のスタッフへ指導
・抗がん剤の曝露経路
・曝露による健康障害
・抗がん剤の種類による曝露対策の期間
・抗がん剤治療で起こりうる副作用症状
・想像しうる曝露経路・対策指導
8
- 9.
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介護士の抗がん剤曝露の意識の変化
怖いと思った
不安に感じた 神経質に
考えて
しまった
認識が
甘かった
最初は怖いと
思ったが手順を
踏めば大丈夫
インタビュー4人 20代~40代
曝露について
初めて知った
神経質になら
なくてもいい
とわかった
看護師に
相談すること
ができた
- 10.
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結果・考察
介護士における抗がん剤曝露・曝露対策に対する
認識・知識が不十分であることが分かった
伝え方によって、間違った解釈を与えてしまう
どのようにケア・環境整備するか戸惑った
医療者からの曝露対策に関する情報提供が少ない
⇒在宅での医療者・介護者だけでなく、
病院での曝露対策に関する知識、認識は不十分である
10
- 11.
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課 題
病院 医療
連携
介護
在宅
自宅と施設
の違い
患者・家族
パンフレット作成で一貫した
・共通認識・手技や方法
Editor's Notes
- #2 (名前紹介されなかったら)
桜新町アーバンクリニックの宍戸結理です。
在宅医療における抗がん剤の曝露対策の実態調査②を発表させていただきます。
- #3 この発表にCOIはありません
- #4 背景です
抗がん剤は近年開発が急激に進められていることや在宅日数の短縮化に伴い、外来や在宅で抗がん剤治療が行われる機会が増えています。
昨年、在宅医療における抗がん剤曝露対策の実態として、当院で世田谷区の訪問看護ステーションを対象に実態調査を行いました。
その結果、訪問看護師の 抗がん剤曝露に対する知識は不十分で、 患者・家族への説明が十分に行われていないということが判明しました。
抗腫瘍効果を発揮する薬物である反面、 抗がん剤そのものや、投与された患者の尿や便などの排泄物、 唾液や汗、 血液などの全ての体液に曝露することで、発がん性、 生殖毒性などの健康障害をもたらすことが これまでの研究で報告されており、マニュアルの整備が重要である と言われています。
- #5 実際外来で抗がん剤治療を受けているがん患者とその家族を対象に、化学療法48時間の尿中の抗がん剤量の測定、自宅環境における汚染調査を行った研究があります。
この研究から患者とその家族の尿から、投与されたものと同じ抗がん剤が検出されました。自宅のトイレの便座、床、ドアノブ、および洗面所の蛇口などからも検出されており、薬剤が含まれた尿や便の飛散や排泄処理を行った患者の手を介して汚染が広がったと考えられます。
また、直接曝露のリスクが有る医療従事者や病院内の汚染状況よりも、家族や自宅環境の曝露量が多いという結果も出ており、在宅療養の場でも曝露対策を行うことが重要だと言えます。
- #6 今回は在宅医療にて生活支援の場で多く関わっているのは介護士であるため、介護士に焦点を当て、世田谷区の介護事業所を対象にアンケートを行いました。
- #7 結果です。
233事業所にFAXし、回答を頂いたのは43箇所、回答率は18%でした。
実際抗がん剤を使用している患者に関わったことがあると答えたのは65%と多かったですが、職業性曝露について知っていると答えたのは28%と3割に満たない状況でした。
- #8 アンケートで介護士に抗がん剤治療中の患者に対して気をつけていることを尋ねたところ、抗がん剤治療の副作用について注意する、安全・安楽に治療が受けれるように注意する、確実に内服出来るように注意するというが回答がありました。
一方抗がん剤曝露について知っていることについて尋ねたところ、「曝露予防についての説明や指示について医療者側から何もなかったように思います」、「避けるという意識はあったが、予防的に何を身に着けなければならないか分からなかった、病院には説明は一切されておらず、いまさら言われてもと思っているので困っている」、「在宅での抗がん剤の取り扱いについてぜひ情報をお伝えくださると助かります。介護者の身体保護は重要です」という意見を頂きました。
- #9 実際の事例として、当院の看護小規模多機能居宅介護、以下かんたきといいます。の利用者を挙げさせていただきます。
Fさん、80代女性。独居で認知症の方です。
かんたきに利用開始後に悪性リンパ腫と診断され12月に抗がん剤治療が開始となりました。
1月から外来での抗がん剤治療に切り替わる予定であったため、かんたきで働く介護士、当院の医師・看護師にスライドに示した内容を共有しました。
- #10 介護士に抗がん剤曝露について説明した時は、曝露について初めて知り、「怖いと思った」、「不安に感じた」、「認識が甘かった」、「神経質に考えてしまった」というネガティブな回答が多くありました。
(押す)しかし曝露対策について説明し、対策方法を知ること、看護師に随時相談できること、パンフレットや書面で対応方法を確認出来ることで、「知れば怖くない」、「神経質になりすぎなくていいことが分かった」、「教えてもらったから大丈夫」と、恐怖、不安などというネガティブなイメージは緩和されたと全員が回答していました。
また今回介護士に説明したことで、抗がん剤曝露対策に対しての知識を得るだけでなく、「正しい知識を身に着けたい」、「しっかり把握しなくてはいけない」という意識付けが出来たと感じました。
- #11 結果・考察です。
介護士は患者が確実に安全・安楽に治療が受けられ、継続できるように配慮している一方で、抗がん剤曝露対策については認識・知識が不十分であることが分かりました。
今回はかんたきという看護師がいる環境であり、その都度確認・相談することが出来ましたが、シフトの関係で全員に説明することが出来ず、情報がまた聞きになってしまい、間違った解釈を持ち、恐怖や不安がより強くなってしまったということがありました。また実際曝露対策に関する説明をし、知識は得ても初めてのことであり、どのようにケア・環境整備を行うかに戸惑ったという声もありました。
今回の研究で患者が抗がん剤治療中であることを知ったのは、患者・家族、ケアマネージャーからがほとんどということが判明しました。
また病院側に生活における曝露対策方法を確認しましたが、スタンダードプリコーションのみで指導していることはないという返答でした。
このことから、抗がん剤曝露対策の知識・認識は医療者でも格差があり、まだまだ不十分であるという現状でした。
- #12 結果・考察より、抗がん剤曝露対策は、知識を伝えるだけではなく、ケア・環境保護等も含めた総合的な対策が重要であることが分かりました。
まずは共通認識、共通のケアを患者に提供出来るように、可視化された具体的なパンフレットを作成し、多職種の連携だけでなく、在宅・病院といった垣根を超え連携をすることで患者・家族へ正しい抗がん剤曝露対策を行うことが出来るようになるのではないかと考えます。