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Similar to 工学系研究者のための 心理学的研究手法ガイド: 研究計画から実施,成果公表まで (20) More from Masashi Komori (6) 工学系研究者のための 心理学的研究手法ガイド: 研究計画から実施,成果公表まで2. 自己紹介
• 大阪電気通信大学
情報通信工学部 情報工学科 教授
• 小森 政嗣(こもりまさし)
• 大阪大学人間科学研究科博士後期課程修了
博士(人間科学)
• HCG常設論文編集委員会幹事
• 電子情報通信学会「ヒューマンコミュニケーション特集号」
副編集委員長(2016年度〜)
• HCGシンポジウムプログラム委員長(2016年度)
• ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS)幹事
5. 「心理学」の非常にざっくりとした説明
• 心理学とは
• 行動と心理的過程についての実証的研究
• 人の行動に関する実証的研究のノウハウを蓄積している
• 心理学は大きく分けると3つの目的(予測・制御・説明)がある
• 行動の予測
• 人間の「変わらないところ」に着目する
• 行動遺伝学,進化心理学,etc.
• 遺伝的側面を重視する
• 行動の制御
• 人間の「変わるところ」に着目する
• 行動主義,臨床心理学,教育心理学,etc.
• 人間と環境の相互作用を重視
• 環境からどのように影響されるか
• 環境をどのように変化させるか
HCGの参加者が
興味を持っている
のは主にこれ
行動の
説明
19. 妥当性の問題ーその対処法ー
• 妥当性の問題への対処法その1
• 妥当性の問題が生じるのは多くの場合「従属変数」
• 人を対象とした研究の場合,従属変数は「制御」や「予測」の対象となる
「人の行動」であることが多い
• 一方独立変数は,「従来手法」と「提案手法」のように,研究者が操作す
る変数であることが多い
• 妥当性が厳しく問われるのは従属変数
ついつい独立変数に注力しがちだが,従属変数こそよく考えて作り込もう
• 妥当性の問題への対処法その2
• 基礎的な研究であれば,研究の作業仮説を予め明確にする
• システムやサービスを提案するのであれば,その利用文脈・目標・利用対
象を明確にする
• 仮説構築型の研究(質的研究やシステムの問題点の発見,利用文脈の調査
など)でも,もちろん研究の目的は明確に持つ
仮説や目標を吟味して研究計画をたてる
21. 妥当性の問題ーその対処法ー
• 妥当性の問題への対処法その3
• 既存の分析単位や尺度に則れば自ずと
構成概念が明確になる
• (複数の)先行研究を調査して,可能
であれば既存の分析単位・評価尺度を
使おう
• 構成概念の目新しさを売りにしない
心理測定尺度集
• 実験参加者の発話を「質問・回答・あいづち」の3種類に分類し,出現パタ
ンを分析した
架空の研究事例9(対面対話でのインタラクションの分析)
対話に現れる要素を網羅できていない…よね?
• ロボットの性格を評価させるため,「明るい/暗い」「フレンドリー/よそよ
そしい」の2項目に回答させた
架空の研究事例10(人型ロボットの性格をユーザがどう判断するか)
せめて『Media Equation』読んでから出直してくれ…
31. 人の特性を考慮する
②実験者効果
• 実験者効果とは
• 実験者が仮説や望ましい反応を知っていることで参加者に及ぼす影響
• 実験者の意図や希望,先入観などの期待が何かしらの示唆を与える
• 意図がなかったとしても,参加者に予期しない影響を及ぼしてしまう
• もちろん実験者(※オーディオマニア君)に,実験結果を歪める意図はない
が,実験者のちょっとした仕草,視線,抑揚などが実験参加者の判断に影響
してしまうことは十分に有り得る
• 実験を個室(この場合は防音室)で行い,実験中に実験者は退席する
• 参加者との過度のインタラクションを避け「あたたかく,自然に,
クールに」対応する
• 教示や実験に関する質疑は実験開始前に全て行っておく
• 10万円/5mの高級スピーカーケーブルや200円/5mのビニル電線などを比較
• 実験参加者は音楽を聴取し「音の良い方」を一対比較法により評価
• 実験者はオーディオ機器の操作に慣れた学生(※オーディオマニア)
架空の研究事例17(スピーカーケーブルの評価 ※実験者はオーディオマニア)
33. 人の特性を考慮する
③順応と文脈の影響
• 順序効果(キャリーオーバー効果)
• 下記の質問に回答してください
• 「研究活動はうまくいっていますか?」(リッカート尺度5件法)
• 「今年パブリッシュされた原著論文の数を教えてください」( )報
架空の研究事例18(研究者の意識調査)
• 下記の質問に回答してください
• 「今年パブリッシュされた原著論文の数を教えてください」( )報
• 「研究活動はうまくいっていますか? 」(リッカート尺度5件法)
架空の研究事例19(研究者の意識調査)
研究活動の自己評価と論文数の相関はそれほど高くないと予想される
研究活動の自己評価と論文数の相関は必然的に高くなる
関連する質問を調査票の離れた場所に配置するのは有効
44. 人権への配慮
日本心理学会『倫理規定 第3版』(調査研究)抜粋
1. 調査計画と内容の倫理性
2. 倫理委員会等の承認
3. 調査対象者のプライバシーへの配慮と不利益の回避
4. 調査対象者の選択と調査の依頼
5. 質問紙調査におけるインフォームド・コンセント
6. 調査責任者・調査実施者の明記
7. 調査データの管理
8. 調査結果の報告
9. 調査対象者の個人情報の保護
10. 面接調査における質問項目の表現
11. 面接調査におけるインフォームド・コンセント
12. 面接調査における代諾者が必要なインフォームド・コンセント
13. 面接調査の記録における個人情報の管理
https://www.psych.or.jp/publication/rinri_kitei.html
45. 人権への配慮
倫理審査申請のポイント
• 倫理審査はIRB (Institutional Review Board)とも呼ばれる
• 大学・研究機関によって事情は様々
• 定期・随時は機関次第(本学は年に4回程度しか行われない)
• 申請書様式も大きく異る.倫理審査委員会構成メンバーも多様.
• 構成メンバのディシプリンによって審査結果が大きく左右される
こともあるかも
• 「倫理審査事業」を行っている団体や学会も存在する
• 倫理委員会が無い大学・企業等が利用することを想定している
• ある団体の一例
審査委員は医学,工学,心理学を専門とする大学教授,公的研究機関
の研究員,名誉教授,弁護士など,審査費用18万円,審査期間5週間
58. 三浦麻子『AI研究における評価のための実践的Tips』
• 人工知能学会誌の連載(全7回)
1. 概論: 心理学的評価のための基本的視座
2. 技法1 : 実験による評価
3. 技法2:調査による評価
4. 分析1 : 実験データの分析
5. 分析2 : 調査データの分析
6. 演習:より良い評価研究を目指して
7. チュートリアル疑問編 : 連載記事に関するQ&A
• 社会心理学者が工学研究者に向けて書いた
小松孝徳『 HAIのための心理学実験と生体情報 : ユーザを知る
ということ』人工知能学会論文誌
• 生理計測についても取り上げている
• 自らの体験に基づいて書かれているところが面白い