More Related Content Similar to 2012科学教育学会 (20) 2012科学教育学会5. 科学者の情報発信の例
• 東京大学理学部 早野龍五教授
• 震災以降、いち早く放射線情報をグラフ化しWebで公開・ツイッ
ターで情報発信し続ける
• 内閣府,文科省とコンタクトをとり、情報発信を続け、給食全量
検査を実施させる。
• 南相馬、相馬市で、市民病院、市が実施する環境放射線量調査、
内部被ばく調査を支援
• 東京大学に「早野龍五基金」が創設される(一口1000円で1000万
円以上が集まる)
6. リスク・コミュニケーション需要の
高まり
• 日本中のあちこちでリスクコミュニケーションの要請が
高まる中、多く学校教員や大学教員、研究者、科学コ
ミュニケーターが手探りでのリスクコミュニケーション
を続けている。
• 研究者や理科教員から、「自分にできることとして、科
学的な情報の発信やリスクコミュニケーションに貢献し
たい」もしくは「そういった情報を発信して欲しいとの
要請がある」との声を聞く。
• 科学的に確定していないことや、リスクなど確率が含ま
れる情報提供には、「聞く側の不安をいたずらに煽るの
では」という懸念がある。
8. パターンランゲージの作成
• For whom 最前線でリスクを伝える学校教員、大学教員、
研究者、科学コミュニケーター、ジャーナリストなどに
• For what 科学的に不確実性のある情報を適切に発信す
るために
• What どのような点に留意してコミュニケーションすれば
よいか、リスクコミュニケーションの当事者が直面しう
るジレンマ状況のパターンを提示し、実際にそのような
状況に立ち会った時にどうコミュニケーションを展開す
ることができるか考える基点になる「パターン集」を作
成する
9. ワークショップ開発
1. パターンランゲージ作成により、参加者の暗黙知、経
験値を可視化する
2. アウトプットとして、リスクコミュニケーションの懸
念に寄り添う「パターン集(パターンランゲージ)」
を作り上げる
3. 集団内に経験知・暗黙知として蓄積されているジレン
マ状況を形式知化し、自らそれぞれのコミュニティー
にあった「パターン集」を作成するためのワーク
ショップのプロトタイプを提案する
11. リスークコミュニケーション研究の意義
• リスク・メッセージの発信や受信やにおける相互
の信頼と信用を確立すること
• リスクに対する社会的葛藤や社会論争をコミュニ
ケーションして解決すること。
Keeney,RL.& von Winterfeldt,D(1986)Improving risk
communicationに提示された6つの戦略と目的より
• コミュニケーションにより社会的葛藤や社会論
争の解決を目指すための「検証」と「開発」
15. ワークショップ概要
対象者:研究者、ジャーナリスト、大学院生、
科学コミュニケーター
開催日時:2012年8月10日~12日
会場:早稲田大学
参加者:20名 (レクチャーのみの参加者を除く)
スケジュール:
8月10日 レクチャー1~3
8月11日 レクチャー4+グループワーク
8月12日 グループワーク
24. パターンランゲージのフォーマット(構成
要素)
• 文脈
• リスクコミュニケーション場面を規定する前提条
件
• 「何についてのリスクか」「リスクの情報源は誰
か」など
• 問題
• リスクコミュニケーション担当者の立場に立った
とき、起こりうる様々な問題
• 対処案
• 問題を解決ないし緩和するための対処案
• 一般に、メリットとデメリットがある
26. レクチャー1〜4 (前提や知識の共
有)
• 経験知の抽出、伝え方について (長谷川敦士 株式会社コン
セント
代表取締役 )
• 「リスク」という概念について。我々は「リスク」をど
う認識し、個人的に扱っているのか。 (中谷内一也 同志社
大学心理学部)
• 我々の社会は現在「リスク」をどうコミュニケーション
社会的に扱っているのか (辻真一 名古屋大学グリーンモビリティ
連携研究センター )
• 生まれ来る新しい「リスク」を考える。ナノ粒子を事例
として
27. 進行説明
• 初日 レクチャーの前に全体の概説
• 2日目 レクチャーを4まで聞き終えてから。
• ワークショップの目的
• パターンランゲージ抽出の説明
• パターンランゲージフォーマットの説明
• 作業のより詳細な説明
• 学習目標シートの記入
28. パターンの抽出作業(2日目)
• ナノ粒子の健康影響の講義を受け、感想を話し合いなが
ら付箋に書き出す(グループ作業)
• 感想の中から問題を中心として、ワークシート1枚に問
題を一つ挙げ、その問題が起きる文脈、対処案を書き出
す。(個人作業)
• 他の人が書いたワークシートを添削(グループ作業)
• グループで添削しあった物を全体で共有(壁に貼りだ
す)
• グルーピング(全体で)
• 同様の課題のうち、統合できるものはまとめる
*ここまで5時間
29. ワークシートの構成
• 問題
• 文脈
• 対処案
• 1問題につき1枚のシート
• 問題を一般化するために状況(文脈)を問題から除いて、
文脈欄に書いてもらうことを狙った。その際、予めあり
得る文脈をカテゴライズして項目としてあげ、書き込み
やすくし、時間の短縮を狙った。
31. ワークシートの構成②(文脈)
• <文脈>
• a) 何についてのリスクか
• b) リスクに関する情報源は誰か
• c) リスクコミュニケーション担当者(コミュニケーター)は誰
か 自分(と仮定する)
• d) クライアント(リスクコミュニケーションの発注者/資金
提供者)は誰か
• e) 伝える相手は誰か
• f) 伝える目的は何か/何が達成されればよいのか
• g) 利害関係者は誰か
• h) リスクコミュニケーション上どのような制約条件があるか
• i) 自分はどのような立場にいるか 科学技術コミュニケーター
(と仮定する)
• j) その他
33. パターンの抽出(3日目)
• 参加者の経験に基づきパターンランゲージの抽出(ペ
ア・インタビュー)
→補足説明
• インタビューの記憶を頼りにワークシートの書き込み
(個人)
• 他の人が書いたワークシートを添削(グループ作業)
• グループで添削しあった物を全体で共有(壁に貼りだ
す)
• グルーピング(全体で)
• 同様の課題のうち、統合できるものはまとめる
• ふりかえりシートの記入
36. リスクコミュニケーションとは
• 社会を取り巻くリスクについて、行政、専門家、企業、
市民などの利害関係者間で、メディアや対話の場など
様々な手法を活用して情報を共有し、相互に意思疎通を
図り、合意形成を目指すこと。
• この合意を、リスク管理や政策決定に活かすことを目的
とする。
• 一般に、利害関係者の納得性を向上させるが、必ずしも
「合意」が達成されるとは限らない。
• その結果が、さらなるリスクコミュニケーションに活用
されることもある。
• リスクコミュニケーターは、この一連のプロセスを企画、
実施、支援する(どのまでの役割を担うかは状況によ
る)。
37. パターンランゲージの具体例
プレゼンテーション・パターン No.14
聞き手にとって生き生きとした印象的な経験になるように、「心に響
リアリティの演出 くプレゼント」(No.2)のつくり込みを行っている。
Reality Sharing ▼その状況において
ことばや図でいくら説明しても、経験や感覚をうまく伝えることがで
つかみきれない「感覚」を届ける。 きない。
ことばや図で表現できることには限界がある。 経験や感覚を他の人に
的確に伝えるのは難しい。 ことばや図では限られた感覚にしかうった
えかけられない。
▼そこで
共有したい経験や感覚のリアリティを、聞き手が自分自身で感じるこ
とができる演出をする。
会場に実物を持ってきたり、映像や写真を効果的に使ったりすること
で、聞き手にリアリティを感じてもらえるように工夫する。
▼その結果
聞き手は、作り手が共有したいと考えている経験や感覚を、自分自身
で感じることができる。その結果、深く理解できるだけでなく、印象
にも残りやすくなる。さらに、作り手にとっても、共有した感覚を前
提に話を展開することができるようになる。
Copyright (C) 2011, 2012, 慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス 井庭崇研究室 プレゼンテーション・パターン プロ
ジェクト. All rights reserved.
39. 危険物質の危険性の見積もりからリスク評価
社会の中での管理まで
リスク管 モニタリン
理 グと評価
リスクとし
て評価・判 = どのくらい危険なのか、「確率」で示
される
不確実性の考慮
• 種差、個人差、試験 定
期間の短さなど
ヒトへの実際の曝露量の推定
ハザード評
曝露評価
価
参考: GHS表示のために行う消費者製品の暴露に由来するリスク評価の考え方(経済産業省、2007年
畝山智香子著 『ほんとうの「食の安全」を考える ゼロリスクの幻想』(化学同人 DOJIN選書、2
44. 学習目標シートの分析から
• 問い)
この三日間であなたはどのようなことを達成したいと
思うか(20名の回答から)
• 他の参加者の経験を聞きたい(5)
• リスクコミュニケーションを企画・実施したい(5)
• リスクコミュニケーションとは何か理解したい(4)
• 仕事(研究)研究に活かしたい(3)
• パターンランゲージを理解したい(3)
• 体験的に学びたい(3)
• パターン・対処案を知りたい(2)
• 伝え方を学びたい(2)
*概ね、募集対象の設定、企画内容が合致していたと言える。
*「伝え方を学びたい」については、「正しい伝え方がある」ことを想
定し、それを習得したいということが読み取れ、我々の意図するリスク
コミュニケーションの双方向性について理解ができていないと思われる。
46. 参加者の参加態度から
• 新しいボールペン1本使い切った!
• 学習目標シートの書き込み15分の時間を大幅に超えて熱
心に記入
• ふりかえりシート記入時間にはばらつきがあったが、概
ね9問の質問に対して、びっしり書き込みをしていた。
• 帰るのが名残惜しいと言う声が聞こえ、終了後、参加者
同士握手を交わす姿が見られた。
• 長時間、また手書きの多さに改善を望む声があったもの
の、もっと時間をかけてやりたい、もう一度やりたい、
さらに別のやり方でやりたい、などの希望が感想として
寄せられた。
*熱心な参加者が集まり、参加者の満足度は高い。
*ネットワークづくりにも有効
50. まとめ
• パターンランゲージを作成するには、論理的な文章力が重要で
ある。(推敲を重ねる必要)
• パターンランゲージは一度(3日)のワークショップでは完成
しない。
• リスクコミュニケーション・パターンについては、状況の設定
が難しい。
• 多様な参加者がいること自体、議論の充実、参加者の満足に繋
がる。
• ワークショップの中身としては、ライティングのワークショプ
に近いタスク、学習内容になるので、それを考慮して構成を組
み立て直すことができる。
• 参加者の満足度は高い。
• 「リスク」という言葉の解釈、理解の統一は難しい。
• 学習効果については、さらなる分析が必要である(石村の発表
参照)