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研修医講義 「腎臓」 ~腎疾患へのアプローチ~
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KaitoNakamura
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研修医向けの講義スライドです。基本的には教科書や文献をもとに作成していますが、分かりやすくするために、あえて極論的な内容になっています。実臨床に適用する際にはその点に留意して下さい。
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ロールプレイの部分を増やした講義用はこちら http://www.slideshare.net/koh0416/ver2-pdf 医学部5年生向けの,基礎的な内容です. 「総合プロブレム方式」を習うよりさらに前の方々向け.
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語呂で覚える 緊急気道管理
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臨床研修最初の一歩:輸液の話
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たかが輸液療法、されど輸液療法 適切な体液管理と電解質管理の為には必須な知識です。 update内容 ・Figureを全てOriginalに改定 ・Hypovolemic shockの評価を追加
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2014年作成、HPN勉強会用資料
第4回 「痺れ」
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聖路加国際病院救命救急センター 救急ジェネラルカンファレンス第4回「痺れ」 当科を回っている研修医が作成しております。このスライドは文献をもとに作成しておりますが、あくまで一個人の見解であり, 病院全体の方針や意見を反映するものではありません。臨床現場へのそのままの応用は厳に慎んでください。また、スライドをお読みの方が患者・患者関係者の場合は、本内容の利用の際には必ず主治医にご相談ください。なにかご不明な点がございましたら、コメントください。
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初期研修医向けの,学会スライドのキホンです. 所属医局の縛りや慣例がある場合は、そちらに従いましょう
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2.
1. 腎臓に関する検査値の読み方 2. 腎機能障害へのアプローチ
3.
① 腎機能の評価 Q1) Cre
0.90なら腎機能は問題な い?
4.
GFR (糸球体濾過量)とは • 単位時間あたりに糸球体で濾過される血漿の量 •
イヌリンクリアランスで測定
5.
eGFRとは • (体表面積が1.73m2と仮定した場合の)GFRの推算値 •血清クレアチニン、年齢、性別から推 定 eGFR=194×Cr-1.094×年齢-0.287(mL/min/1.73m2) ※女性では×0.739
6.
腎機能の低下速度 • 45歳まで 0.4
mL/min/1.73m2 • 45歳以上 0.8 mL/min/1.73m2 • 蛋白尿があると低下速度は2倍
7.
Q1) Cre 0.90なら腎機能は問題ない? A1)
年齢・性別によって変わってくる。 20歳男性⇒eGFR 92.1mL/min/1.73m2 80歳女性⇒eGFR 45.7mL/min/1.73m2
8.
② 尿検査の読み方 Q2) 黄疸+尿中ウロビリノゲン陰 性?
9.
意外と奥が深い尿検査 • pH • アシデミアの時は通常尿も酸性(pH<5.0)になる •
もし尿pH>5ならば尿細管アシドーシス • 尿比重 • 尿比重>1.030ならば脱水を考える 尿比重 尿浸透圧 1.010 350 1.020 700 1.030 1050
10.
意外と奥が深い尿検査 • 尿潜血 • 尿潜血陽性+尿沈渣で赤血球あり⇒血尿 •
尿潜血陽性+尿沈渣で赤血球なし⇒ヘモグロビン尿 or ミオグロビン 尿 • 亜硝酸塩 • 腸内細菌群が亜硝酸塩を産生する • 腸球菌や緑膿菌では陰性 • 白血球反応 • 高齢者では尿路感染症とは無関係な白血球尿が多い
11.
尿検査と尿路感染症 感度 特異度 LR+
LR- 白血球反応陽性 74-96 94-98 17 0.3 亜硝酸塩陽性 35-85 92-100 15 0.4 白血球反応陽性 &亜硝酸塩陽性 75-84 82-98 8.0 0.2 グラム染色(未遠心) 93 95 19 0.1 Am Fam Physician. 2005 Mar 1;71(5):933-42
12.
尿糖陽性は糖尿病だけじゃない • ブドウ糖 • 血糖値>180を超えると尿糖陽性に •
ブドウ糖を再吸収する近位尿細管の障害でも尿糖陽性 (=腎性糖尿) • ケトン体 • アセト酢酸とアセトンを検出 • DKAで優位な3-ヒドロキシ酪酸(3-OHBA)は検出できな い
13.
尿検査で黄疸の鑑別? • 尿中ビリルビン • 直接ビリルビン増加を示唆 •
ウロビリノゲン • ビリルビンが腸内細菌で分解されると産生 • 黄疸でも腸肝循環が分断される(=閉塞性黄疸)と陰 性になる • 便秘でも増加
14.
Q2) 黄疸+尿中ウロビリノゲン陰性? A2) 閉塞性黄疸 黄疸
尿中ビリルビン ウロビリノゲン 溶血性黄疸 - +++ 肝細胞性黄疸 + +++ 閉塞性黄疸 + -
15.
③尿蛋白の評価 Q3) 蛋白尿 (2+)
⇒ (1+)なら蛋白尿が減ってき ている?
16.
尿蛋白定性の限界 • アルブミンしか検出できない • Bence-Jones蛋白は検出できない •
起立性蛋白尿、熱性蛋白尿には病的意義なし • 早朝第一尿、解熱後に再検を • 尿の希釈や濃縮の影響を受ける • 尿蛋白の定量はできない、増減の評価できない • 微量アルブミン尿があっても陰性になる可能性
17.
1日尿蛋白排泄量を推定する方法 蛋白/Cre比 • 24時間蓄尿して尿蛋白を定量するのが理想だが・・・ •
実は1日Cre排泄量は約1gとされているので・・・ • 随時尿の蛋白/Cre比を1日尿蛋白量の近似値と考える • 0.5g/gCr以上なら専門医に紹介(3.5g/gCr以上はネフローゼ症候 群) 1日尿蛋白排泄量=随時尿蛋白濃度× 1日尿量 随時尿量 =随時尿蛋白濃度× 1日尿Cre量 随時尿Cre濃度 ≒随時尿蛋白濃度× 1 随時尿Cre濃度 ≒ 尿蛋白濃度 尿Cre濃度
18.
Q3) 蛋白尿 (2+)
⇒ (1+)なら蛋白尿が減ってきている? A3) 希釈尿の影響かもしれない。 尿蛋白/Cre比で確認を。 尿蛋白 (2+) 尿蛋白 100 mg/dL 尿Cre 200 mg/dL 蛋白/Cre比 0.5 g/gCr 尿蛋白 (1+) 尿蛋白 30 mg/dL 尿Cre 30 mg/dL 蛋白/Cre比 1.0 g/gCr
19.
尿沈渣:血尿の鑑別 • 赤血球 5個以上/400倍⇒血尿 •
糸球体性 or 非糸球体性
20.
糸球体性血尿 • 変形赤血球 • 赤血球円柱 •
蛋白尿(0.5g/日以上)を伴う 腎疾患の可能性!腎臓内科医へ紹 介
21.
非糸球体性血尿 • 赤血球形態は正常 • 円柱はみられない •
凝血塊がみられる 尿路系疾患を示唆 悪性腫瘍・尿路結石・尿路感染症を 鑑別
22.
円柱 • 腎集合管で作られる • 腎臓で何か異常が起きていることを示す •
硝子円柱:病的意義なし • 赤血球円柱:激しい糸球体腎炎 • 白血球円柱:腎臓での炎症全般 • 脂肪円柱:高度の蛋白尿
23.
尿細管上皮由来の円柱 • 上皮円柱:急性尿細管壊死を示唆 • 顆粒円柱:上皮円柱が変性したもの •
ろう様円柱:上皮円柱のなれの果て • 幅広円柱:尿細管の拡大・萎縮を反映、高度の腎機能障害を 示唆 Hospitalist Vol 2 No 1 2014 特集・腎疾患 メディカ ル・サイエンス・インターナショナル
24.
急激な腎機能悪化 =AKI(急性腎障害) 1. 腎臓に関する検査値の読み方 2. 腎機能障害へのアプローチ
25.
腎機能障害へのアプローチ • 障害部位はどこか? 腎前性 腎性 腎後性
26.
腎機能障害へのアプローチ Step 1 まずは腎後性を除外せよ
27.
症例1) 74歳男性 前立腺肥大症にて泌尿器科通院中 呼吸苦を訴えて来院 採血にて Cr 2.31と腎機能障害を認めた まず行う検査は? エコー!
28.
水腎症
29.
腎後性:エコー所見からの鑑 別 • 水腎症⇒尿路の閉塞 • 膀胱虚脱⇒上部尿路の閉塞 •
尿路結石 • 悪性腫瘍による尿管閉塞 • 膀胱充満⇒下部尿路の閉塞 • 前立腺肥大症 • 前立腺癌 • 膀胱癌
30.
腎機能障害へのアプローチ Step 2 病歴・身体所見で 腎前性の可能性を考慮せよ
31.
症例2) 66歳女性 腹痛・下痢・体動困難のため救急搬送 採血にて BUN 40.3,
Cr 1.85と腎機能障害を認めた 確認したい身体所見は?
32.
細胞外液量減少の身体所見(成人) 感度 特異度 LR+ 脈拍数増加
43 75 1.7 口腔粘膜の乾燥 85 58 2.0 眼球陥凹 62 82 3.4 腋窩の乾燥 50 82 2.8 Capillary refilling time 34 95 6.9 JAMA. 1999 Mar 17;281(11):1022-9
33.
腎前性:血液・尿検査で確認 • 𝐹𝐸𝑁𝑎 = 尿
𝑁𝑎 血漿 𝑁𝑎 × 血漿 𝐶𝑟 尿 𝐶𝑟 を計算 • 脱水ならば腎臓はNaを再吸収する • 尿中にNaが排泄されにくくなる • 従って腎前性ではFENa < 1%と低値になる
34.
FENaが使えない状況 • 嘔吐などで代謝性アルカローシスがある場合 • HCO3と一緒にNaも尿中に排泄してしまう •
FECl<1%が有用 • 利尿剤を使用している場合 • 利尿剤の影響で尿中Na排泄が増加している • FEUN<35%が有用 • BUN/Cr>15もそこそこ有用
35.
腎前性・腎性の鑑別 Kidney Int. 2002
Dec: 62(6): 2223-9 88 92 9085 48 89 20 4 4 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 BUN/Cr>15 FENa<1% FEUN<35% 腎前性 腎前性+利尿剤 腎性
36.
現実は・・・ • 腎前性と腎性を厳密に区別するのは困難! • 腎の低潅流による腎機能低下vs虚血性のATN •
病歴から腎前性の可能性がありそうならとりあえず 輸液してみる • 診断的治療 volume responsive AKI / volume unresponsive AKI
37.
腎機能障害へのアプローチ Step 3 薬剤に注意せよ
38.
症例3) 70歳女性 変形性膝関節症に対してロキソニン内服中。 他にはガスターとマグラックスも内服している。 最近痛みがひどく、ボルタレンサポを頻用してい た。 採血にて Cr 3.12と腎機能障害を認めた。 腎機能障害の原因は? 中止すべき薬剤は?
39.
本当は怖いNSAIds • NSAIDsは腎血流量を減少させ腎前性腎不全をきた す • 特に脱水、高齢者、心不全時、利尿薬投与時は危険 •
NSAIDsは間質性腎炎も引き起こすことがある • 間質性腎炎の特徴(揃わない事が多い) • 発熱 • 皮疹 • 好酸球増多 • 無菌性膿尿
40.
ヨード造影剤による造影剤腎症 • GFR<45ml/min/1.73m2では輸液による予防を行う • 生食1ml/kg/hrを6~12時間前から •
終了後も1ml/kg/hrで4~12時間持続 • 利尿薬やNSAIDsは中止 cf) 造影MRI検査で使用されるガドリニウム造影剤 • GFR<30ml/min/1.73m2では腎性全身性線維症を起こすため禁忌 • GFR30~59ml/min/1.73m2では利益がリスクを上回る場合のみ
41.
腎機能障害時に注意する薬剤 • H2ブロッカー ガスター、アシノン、ザンタックなど •
蓄積により痙攣・錯乱や血球減少 • マグネシウム下剤 酸化マグネシウム、マグラックスなど • 高Mg血症 • ジギタリス • 血中濃度正常範囲でも、房室ブロック・消化器症状 • ACE阻害薬・ARB • 急激な腎機能低下をきたす可能性
42.
腎機能障害時に注意する薬剤 • 抗菌薬 • Βラクタム系のほとんどが腎排泄 •
セフトリアキソン、セフォペラゾンは胆汁排泄 • キノロン系、アミノグリコシド系、グリコペプチド系は腎排 泄 • 抗真菌薬:フルコナゾール、ボリコナゾールは腎排泄 • 抗ウイルス薬:アシクロビル、オセルタミビルなど • スタチン • 横紋筋融解症のリスク
43.
腎機能障害へのアプローチ Step 4 適切なタイミングで専門医に紹介
44.
症例4) 72歳男性、高血圧、狭心症の既往あり。 関節リウマチにてリウマトレックス,プログラフ,ボルタレン 内服中。 半年前より徐々に腎機能が悪化してきていた。 1カ月前より食欲低下、傾眠傾向あり。 採血にて Cr 6.75と著明な腎機能障害を認めたためコンサル ト。 このコンサルトのタイミングは適切?
45.
専門医紹介のタイミング • 適切なタイミングで専門医に紹介し、腎機能悪化の進行 を阻止すべき • 日本腎臓学会「CKD患者を腎臓専門医に紹介すべき場 合」•
高度の蛋白尿(2+以上 or 0.50g/gCr以上) • 蛋白尿と血尿がともに陽性 • GFR 50ml/min/1.73m2未満 • RPGNが疑われる場合(急速な腎機能悪 化)
46.
腎性腎不全はその後どうなるか • 緊急透析の必要性を判断 • 適応があれば腎生検 •
病理所見と臨床所見を総合して診断 • 最適な治療法を選択 病理コア画像 http://pathology.or.jp/corepictures2010/index.html
47.
緊急透析か保存的治療か 問題となる病態 臨床所見 保存的治療 体液過剰
全身浮腫 胸腹水 呼吸状態の悪 化 利尿薬 フロセミド 200mgまで サイアザイド、トルバプ タン 代謝性アシドーシ ス 心機能低下 意識障害 炭酸水素ナトリウム 高カリウム血症 房室ブロック 高度徐脈 グルコン酸カルシウム GI療法 陽イオン交換樹脂 利尿薬 尿毒症 嘔気、倦怠感など 吸着炭(クレメジン ®)
48.
末期腎不全はその後どうなるか • 不可逆性の変化であれば腎生検の適応なし • 腎機能が廃絶していれば透析導入・・・ 病理コア画像
http://pathology.or.jp/corepictures2010/index.html
49.
透析治療とは
50.
維持透析のスケジュール • 週3回(月水金 or
火木土) • 1回4時間 • 一生続く
51.
維持透析の医療費 例:65歳未満、市町村民税額(所得割)3万3千円未満の課税世帯の透析患者 Aさん (自立支援医療自己負担限度額5,000円)の場合
52.
腎不全に出くわしたら・・・(まと め) これ以上悪くしないこと、誤った判断をしないことが大 事 DO NO HARM
!!
53.
腎不全に出くわしたら・・・(まと め) • 腎後性除外のために超音波検査 • 正常な血圧の維持 •
適切な輸液 診断的治療もあり • 有害な薬剤(NSAIDs、RAS阻害薬)の中止 • 薬剤投与量の見直し
54.
主な参考文献 • 今井直彦 「極論で語る腎臓内科」
丸善出版 • Hospitalist Vol 2 No 1 2014 特集・腎疾患 メディカル・サイエン ス・インターナショナル • 日本腎臓学会編 「CKD診療ガイド2012」 東京医学社 • 酒見英太監修 上田剛士著 「ジェネラリストのための内科診断リファレンス」 医学 書院 • 救急・集中治療 Vol 23 No 11-12 2011 ワンランク上の検査値の読み方・考え方 • 全国腎臓病協議会 http://www.zjk.or.jp/index.html • 病理コア画像 http://pathology.or.jp/corepictures2010/index.html • I Heart Guts http://iheartguts.com/
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