下肢創外固定術後装具療法の試み

1. 下肢創外固定術後
装具療法の試み

2. はじめに
◆骨折部の整復・固定
◆変形矯正などを目的に使用する
下肢創外固定術
合併症として
ピン刺入部の疼痛や不動の影響により
関節拘縮のリスクがある
 当院では下肢創外固定術後，拘縮進行が危惧される症例に
拘縮予防目的の装具を作製している．
 下肢創外固定術後に装具療法を行った3例を報告する．

3. 症例①：50代男性
右下腿コンパートメント症候群
右下腿近位部開放骨折，右母趾基節骨骨折
荷重が可能である
リング式創外固定術で治療
コンパートメント症候群に伴う
深腓骨神経麻痺により，
内反下垂足を呈す．
(足底屈20°後足部回外25°)
 歩行困難
 変形・拘縮進行のリスク
【装具作製】
◆良肢位保持(足関節背屈，回内外中間位)
◆母趾免荷での歩行を可能とする
◆荷重時に後足部回内を誘導する

4. 両側のバンドで下垂足予防
外側バンドを強く引き内反予防
足底外側を高くし，
アーチサポ－トも高く設定．
母趾の部分を低くし，
外側ヒールウェッジ追加．
外側荷重を促し足部回内を誘導
且つ，母趾の免荷を保持する構造
歩行可能
装具作製後16週
下垂足改善(自動背屈可能)
装具除去
装具作製後40週足部変形なし
独歩獲得

5. 症例②：60代女性
左下腿骨幹部開放骨折
除雪機に巻き込まれ受傷
前脛骨筋，足趾伸筋欠損
軟部組織再建後，足部挙上、安静を目的に
足関節中間位で創外固定
前方コンパートメント欠損
→ muscle imbalanceによるclaw toeのリスク
◆claw toe予防を目的
◆良肢位保持(足趾伸展位)
【装具作製】

6. 創外固定フレームを利用し，ゴムで足趾を牽引→ 足趾伸展位を保持
ゴムによる弾性抵抗で，足趾屈曲抵抗運動が可能→ 足趾屈筋群の拘縮予防
装具作製後3週創外固定抜去
装具除去
装具作製後10週Claw toe変形なし
装具作製後19週独歩獲得

7. 症例③：20代男性
右下腿骨幹部開放骨折
骨，軟部組織治療後，
骨延長目的にリング式創外固定術施行
神経麻痺により足趾自動運動困難
→ 足趾屈曲拘縮進行のリスク
筋挫滅，阻血による筋壊死高度
脛骨神経，腓骨神経麻痺＋
5cm骨短縮し骨接合
◆足趾屈曲拘縮予防
◆良肢位保持(足趾伸展位)
【装具作製】

8. 創外固定フレームを利用し，たこ糸で足趾を牽引→ 足趾伸展位を保持
装具作製後12週
現在も装具療法継続中
足趾屈曲拘縮なし

9. 考察
創外固定術後は拘縮リスクが高い
活動量低下
関節運動不足
関節拘縮
 重い
 体外に突出
 ピン刺入部の疼痛
変形
末梢神経麻痺
変形・拘縮を助長
重度外傷
創外固定の
悪循環

10. 考察
 拘縮治療は如何に拘縮を作らないか，
どれだけ最小限に癒着，瘢痕化を抑えることができるかが重要．
(林,2004)
 Long term goalを見据え二次的なROM制限を
早期から予防する工夫が必要．(唐澤ら,2011)
予防的観点を持つことが重要．
拘縮，変形予防を目的に創外固定中の装具療法を実施
→ 報告した3例に変形は生じなかった．
※装具による良肢位保持が奏功したと考える

11. 装具療法施行時の注意点
 褥瘡形成等の皮膚トラブル
褥瘡の予防には局所への圧集中を避ける必要がある．(亘理ら,2008)
装具fitting不良で局所に圧が集中すると褥瘡形成のリスクとなる．
患者本人，PTによる皮膚状態の観察を徹底．
 基本的に1日中常時装着
関節構成体は不動4週以降にROM制限の責任病巣として関与する．
不良肢位で不動化されてしまうと関節拘縮を助長してしまう．
装具療法の主目的は良肢位保持．
(沖田，2010)
リハ，自主練習，入浴時以外は常に装着するよう指導．