足関節果部骨折骨接合術後の臨床成績と主観的満足度との関係
- 1. 背景と目的
足関節果部骨折
理学療法士による治療成績報告はない
整形外科医による報告はあるが
客観的アウトカム研究でしかなされていない
近年,医療のアウトカム研究において主観的指標が
積極的に取り入れられるようになってきている
当院における足関節果部骨折骨接合術後患者の
治療成績を調査し,客観的な機能アウトカムと
患者の主観的満足度との関連を検討した
- 3. 評価項目
○足関節背屈・底屈ROM
○JSSF
(日本足の外科学会足部・足関節疾患治療成績判定基準の
足関節・後足部判定基準)
○主観的満足度→ VAS使用
0mm 100mm
現在の足関節機能に
まったく満足していない
現在の足関節機能に
かなり満足している
VASによる主観的満足度の評価は以下を参考にした
(Stefan G M,2011 寺尾ら,2009 板子ら,2006)
- 5. 結果
~最終評価時の各項目平均値~
背屈ROM 23.6±5.3°
底屈ROM 54.1±5.2°
JSSF合計96.5±4.9/100点
JSSF疼痛37.6±4.4/40点
JSSF機能48.9±1.6/50点
JSSFアライメント10/10点(全例満点)
主観的満足度(VAS) 87.5±10.9mm/100mm
ROM,JSSF,満足度ともに良好な成績
- 7. 結果~JSSFの内訳~ ()内:点数赤字:該当患者数
機能50点
・活動の制限
すべての活動に支障なし(10) 26
日常生活に支障はないが,
レクリエーション程度の活動に支障あり(7) 7
日常生活,レクリエーションに支障あり(4) 0
日常生活,レクリエーションに著明な支障あり(0) 0
・連続最大歩行可能距離
600m以上(5) 33
400m以上600m未満(4) 0
100m以上400m未満(2) 0
100m未満(0) 0
・路面の状況
どの路面でも問題なし(5) 28
凸凹道,階段,斜面でやや困難(3) 5
凸凹道,階段,斜面はかなり困難,
またはできない(0) 0
疼痛40点
なし(40) 25
軽度(30) 8
中等度(20) 0
高度(0) 0
・歩容異常
なし,またはあってもわずか(8) 33
あきらかな異常はあるが歩行は可能(4) 0
著明な異常があり歩行が困難(0) 0
・矢状面可動域(他動的背屈+底屈の総計)
正常,あるいは軽度の制限〈30°以上〉(8) 33
中等度の制限〈15°以上30°未満〉(4) 0
著明な制限〈15°未満〉(0) 0
・後足部可動域(他動的内がえし+外がえしの総計)
正常,あるいは軽度の制限
〈健側の75%以上〉(6) 32
中等度の制限〈健側の25%以上75%未満〉(3) 1
著明な制限〈健側の25%未満〉(0) 0
・足関節と後足部の安定性
安定(8) 33
不安定(0) 0
アライメント10点
良蹠行性足,変形なし(10) 33
可蹠行性足,軽度~中等度の変形(5) 0
不可非蹠行性足,高度の変形(0) 0
- 8. 考察
主観的満足度とJSSF機能との間に正の相関
機能的な改善は患者満足度の改善につながる
機能回復を目的とした理学療法は
患者満足度向上において有用であると考える
JSSF機能をさらに細かく見ると‥
「活動制限」「路面の状況」で減点が多い
動作上の制限があると満足度が低くなる傾向が示唆された
- 9. 考察
主観的満足度とJSSF疼痛との間に有意な相関なし
33例中25例は痛みがなく,8例が軽度で,
対象に偏りが生じたため.
傾向としては‥
疼痛が残存している者は満足度も低い傾向にあった
痛みの強い者は主観的健康感も有意に低下する.(笠井ら,2001)
痛みと主観的指標との間には密接な関係があると思われる.
これらを明らかにするには,
症例数の増加,疼痛評価法の再検討が必要