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平成28年熊本地震における
電子ペンを使用した
災害診療記録システムの試み
宮崎善仁会病院
救急総合診療部
牧原 真治
第42回日本診療情報管理学会学術大会
COI開示
演題名:平成28年熊本地震における電子ペン
を使用した災害診療記録システムの試み
筆頭演者名:牧原真治
私の今回の演題に関して、インフォコム株式会社より
電子ペンを使用した災害診療記録システムの作成、貸
与を受けました。
災害現場のカルテの現状
• カルテの質の問題
– 診療した医師のサインが無い
– 診療した日時が記載されていない
– 複写式の用紙でないため、控えが取れない
電源確保の段階から見た
カルテ管理
• 電源が確保できない状況
– 紙カルテ運用
電源確保の段階から見た
カルテ管理
• 電源が確保できるがインターネットの
確保できない状況
– ローカルで運用できる電子カルテ
電源確保の段階から見た
カルテ管理
• 電源もインターネットも確保できる状
況
– クラウド型の電子カルテ
クラウド型
電子カルテ
紙カルテはデジタルペンで登録
電源確保の段階から見た
カルテ管理
• 災害対応中・災害収束後
– クラウド型の電子カルテで参照できる
クラウド型
電子カルテ
デジタルペンで記載され
なかった紙カルテはス
キャンして登録する。
電子カルテサーバ
平成28年熊本地震での使用
電子ペンシステムの評価
• これまでの業務形態をほとんど変えない。
– コンピュータシステムに馴染みがなくても大
丈夫
• 記載した災害診療記録を傷病者に渡しても、
コピーを手元に残すことができる。
• 傷病者の一覧表示が可能。
– SPEEDの逐次集計が可能!
• 局所的なシステムからクラウドを利用した
システムまで、構築が可能である。
J-SPEED
http://www.47news.jp/feature/medical/2016/06/post-1516.html
特記メモ
症例死亡症例死亡症例死亡症例死亡症例死亡症例死亡
1男男性
2女女性
3中等症(トリアージ黄色)以上歩行不能(被災前からの障害を除く)
4搬送必要性診療場所からの搬送が必要な病状(実施は問わない)
5創傷創傷、(臓器)損傷
6骨折骨折・骨折疑い
7熱傷皮膚/気道の熱傷
8溺水溺水と低体温症、溺水のエピソード
9クラッシュ症候群身体の長時間圧迫と意識混濁/失禁/乏尿
高度医療10人工透析人工透析が必要な急性・慢性腎不全
循環器11深部静脈血栓症/肺・脳・冠動脈塞栓疑い呼吸苦、胸痛、失神、下肢の発赤腫脹(車中泊等に続く)
12発熱発熱(定義は登録者判断でよい)
13急性呼吸器感染症咳、寒気、咽頭痛、発熱等(すべての症状なくともよい)
14消化器感染症、食中毒下痢・嘔吐
15麻疹疑い発熱と皮疹
16破傷風疑い開口障害、頸や下顎の硬直(疼痛で顎が胸につかない)
皮膚17皮膚疾患(外傷・熱傷以外)熱傷・外傷以外の皮膚疾患
18高血圧症>160/100(いずれかに該当するもの)
19気管支喘息発作呼吸困難と喘鳴
20災害ストレス関連諸症状不眠、頭痛、めまい、食欲不振、胃痛、便秘等
21緊急のメンタル・ケアニーズ自殺企図、問題行動、不穏
22緊急の介護/看護ケアニーズ要介護/看護者、身体・精神・知的障害者
23緊急の飲料水・食料支援ニーズ生存に必要な飲料水(3㍑/日)・食料の不足
24緊急の栄養支援ニーズアレルギー食、治療食、宗教食等の緊急支援必要
25治療中断災害による必要な治療の中断
26災害関連性なし災害との関連が明らかではない病態(医師判断)
27
28
29
30正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正正
慢性疾患
メンタル
公衆衛生
追加症候群
合計
性別/受診者数
重症度
外傷/環境障害
症候/感染症
0歳1-8歳
9-74歳
(妊婦除く)
75歳以上妊婦
【明日の診療活動】:    □同一地区で継続 □別地区で継続 □終了 □未定 【派遣元区分】: □DMAT □国立病院機構 □日赤 □JMAT □(                        )
災害医療コーディネーター等への報告事項
※記入報告: 症例毎にまず該当する年齢・妊婦区分(縦軸)を決定したのち、該当する症候群(横軸)全てをカウントしていく(死亡例は性別と主因のみ)
※記入方法: 連日、該当症候群/健康事象数をチーム毎に積算し対策本部等に報告するよう努める。
No症候群/健康事象
災害時診療概況報告システム
J-SPEEDレポーティング・フォーム(Ver1.0)
報告元
【所属・職種・氏名】:                            【携帯電話番号(報告者への連絡方法)】:   
【報告対象診療日】:   【電子メール】:   
【今回報告の主たる診療場所】:   【派遣元区分】: □被災地元 □被災地外・県内 □県外 □海外
実運用での評価
• 現場でのローカルサーバ立ち上げに問
題
– ある程度習熟しなければ、困難であった。
• ハードの問題
– ルーターの容量不足
• セキュリティ・アクセス権の問題
– 診療情報を取り扱うため、個人情報保護が
十分に行われるべき
電子ペンを使った
災害診療記録の将来展望
• 機能向上
– 集計機能、J-SPEED自動レポーティング機
能、電子ペンIDと使用者のひも付け機能な
ど
• 普及
– 災害診療記録については、今回の熊本地震
で知られるようになった。
– 電子化は当然求められるだろう。需要はあ
る!

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20161014デジタルペンを使った災害診療記録システム

Editor's Notes

  1. 電子ペンを用いた災害標準診療記録の実運用のレポートです。
  2. COI開示です。
  3. 電子ペンを用いた災害カルテを用いることで、改善できる問題点を提示しています。
  4. 災害時のステージごとに使える災害診療記録をコンセプトとして提示。 電源を失った状態。やはり紙カルテしか使えそうにない。
  5. 電源は確保できれば、ローカルで使える電子カルテは成立する。 デジタルペンも、もちろん使える。
  6. インターネットが開通すれば、医療情報を共有できる。
  7. 災害収束後も、クラウド型電子カルテを参照できる。
  8. 電子ペンの仕組みについての解説。 専用用紙を使用する。 専用用紙は、格子状のドットで形成されているが、微妙にずれていて、そのズレ具合が用紙のIDとなっている。 電子ペンで文字を書くと、その軌跡をペンのカメラでペンに記憶し、記録用紙の特定部分をチェックすると、Bluethoothで送信される仕組み。
  9. エマルご研修での電子ペンの使用状況。
  10. ローカルサーバへの登録状況。
  11. クラウドサーバーに登録したときの画面とカルテの記載の比較。
  12. 熊本地震災害時の使用状況。
  13. 電子ペンシステムのメリット
  14. J-SPEEDについて
  15. J-SPEEDのレポーティングフォーム
  16. J-SPEEDの熊本地震でのレポート例
  17. 実運用で起こった問題
  18. 将来展望について