1. Walk-in外傷の診かた
切りきず、刺しきず編
by Satoyo314

2. 免責事項
このスライドの内容は一初期研修医が学んだ内容をまとめたもの
に過ぎません。これをご覧になった方が日常臨床において本スラ
イドの記載に基づいて診療する場合は、必ず原典や成書、ガイド
ラインにあたるなどして内容の確認をお願い申し上げます。
作者は本スライドの内容を個々の患者に適用したことによる直接
的・間接的な損害に対して、一切の責任を負いません。
また、本スライドに登場する症例は自験例を元にした架空のもの
です。

3. 研修医当直で
しばしば遭遇する
切りきず・刺しきず

4. 一般的な処置を
選択して、できるように

5. 今回は頻度の高い軽症創傷の
創処置・創処理について考えます。
縫合法についてはふくまれません。
全身観察が必要な多発外傷については扱い
ません（研修医だけで診療しない）

6. 主訴：ガラスで指を切った

7. 年 齢：３８歳 男性
職 業：飲食店
現病歴：
キッチンスタッフのアルバイト。
１時間前、ガラス製のワイングラスを
洗っている際にグラスの柄が折れ受傷。
応急処置としてガーゼで傷を圧迫しながら
受診した。出血は止まっている。

8. 既往症 ：特になし
アレルギー：薬剤なし、食物なし
Vital Signs ：HR 80/min BP 132/75mmHg
36.4℃ SpO2 99%@r/a
RR 16/min GCS E4V5M6

9. 身体所見：
右手拇指球∼第１指基部の”切りきず”
長さ：2.5cm
深さ：概ね数mm

10. 止血されているが一部脂肪が見える
身体所見：
右手拇指球∼第１指基部の”切りきず”
長さ：2.5cm
深さ：概ね数mm

11. どうしましょうか？

12. 創傷への基本的な
アプローチ
評価 → 処置

13. これはどんな”きず”

14. 創傷の種類

15. 刺創 ：鋭利な刺器による創
切創 ：切線状の創
割創 ：刃器が一気に打ち下ろされて生じる創
銃創 ：銃器から発射された弾丸による創
挫創 ：鈍器により皮膚が離開した創
挫傷 ：鈍器による損傷だが皮膚が離開していないもの
裂創 ：実際の外力作用点から離れた部位の皮膚が
過度に進展されて離断した創
傷 ：歯や で まれてできた傷
杙創 ：先端が鈍的な棒が刺さって生じる外傷
擦過傷：鈍体により表皮が剥離した傷

16. 刺創 ：鋭利な刺器による創
切創 ：切線状の創
割創 ：刃器が一気に打ち下ろされて生じる創
銃創 ：銃器から発射された弾丸による創
挫創 ：鈍器により皮膚が離開した創
挫傷 ：鈍器による損傷だが皮膚が離開していないもの
裂創 ：実際の外力作用点から離れた部位の皮膚が
過度に進展されて離断した創
傷 ：歯や で まれてできた傷
杙創 ：先端が鈍的な棒が刺さって生じる外傷
擦過傷：鈍体により表皮が剥離した傷

17. 創 ≠ 傷

18. 創：開放性損傷
傷：非開放性損傷

19. 本症例：切創

20. 外傷の問診：MIST

21. M echanism
I njury site
S igns
T reatment

22. 年 齢：３８歳 男性
職 業：飲食店
現病歴：
キッチンスタッフのアルバイト。
１時間前、ガラス製のワイングラスを
洗っている際にグラスの柄が折れ受傷。
応急処置としてガーゼで傷を圧迫しながら
受診した。出血は止まっている。

23. 既往症 ：特になし
アレルギー：薬剤なし、食物なし
内服薬 ：特になし
Vital Signs ：HR 80/min
BP132/75mmHg
36.4℃ SpO2 99%@r/a
RR 16/min GCS E4V5M6

24. 創傷の診察

25. 創傷への基本的な
アプローチ（再掲）
評価 → 処置

26. 動脈性・大量出血はないか？
感覚・運動は保たれているか？
→神経・筋・ ・骨
異物・骨折はないか？

27. 動脈性出血はないか？
拍動性の出血
出血性ショックの危険はないか？
※静脈性でも大量なら危険、飲酒時
圧迫止血・血管確保

28. オンライン版補遺
・末梢主幹動脈の損傷でも、適切な直
接止血法により止血を得ることは可能
とされている（10分∼15分程度）。
・直接止血法失敗の最大原因
→不十分な／短時間の圧迫

29. 感覚・運動神経・血管障害はないか？
触診、可動検査、皮膚色調・CRT
後遺症が残ることもあり得る
処置をする前に上級医コール
異常の有無を必ず
カルテに記載すること！

30. 異常の種類で相談先が変わる
動脈損傷 ：血管外科
美容的な問題：形成外科
損傷がある：整形外科・形成外科

31. 異物・骨折はないか？
X線写真の撮影
→疑わしきは撮る

32. 異物って映るの？

33. 異物って映るの？
Sonography and Radiography of Soft-Tissue
Foreign Bodies
L.Kimberlee Horton, et al.AJR2001;176;1155-1159
金属以外の素材は？
XpとUSで様々な素材の異物を見てみる

34. 車の窓ガラス

35. 車の窓ガラス

36. 車の窓ガラス
異物はhigh echo
深部にacoustic shadowを伴っている

37. ガラス瓶

38. ガラス瓶

39. ガラス瓶

40. プラスチック

41. プラスチック

42. プラスチック

43. 鉛筆

44. 鉛筆

45. 鉛筆

46. 爪楊枝

47. 爪楊枝

48. 爪楊枝

49. 異物はないか？
X線透視/エコー下に取る
ただし緊急に取る必要はない
→翌日の専門外来受診でもよい
※補遺：砂利などに関しては可能な限り
除去したほうがよいとされる

50. 骨折はないか？
開放骨折？：出血に油滴が混入
→整形外科へ

51. 診察所見：
痛はあるものの感覚、運動とも
問題なく、末梢循環も保たれていた。
受傷機転や上記所見から骨折は
考えにくく、ガラス片検索目的に
レントゲン撮像したが明らかな異物なし。

52. 創傷の処置

53. 創傷を消毒する
局所麻酔
洗浄する
縫合するかopen woundに
感染予防
包交と抜糸

54. 創傷を消毒する ←創傷治癒の遅延
局所麻酔
洗浄する
縫合するかopen woundに
感染予防
包交と抜糸

55. 局所麻酔：
キシロカイン
→Eなしを選択すべき場所がある
※Eありでも問題ないという意見もある
注射の刺入：新鮮創なら内側から
浸潤：キシロカインゼリー(小児etc)
※ 全身鎮痛：ペンタジン、フェンタニル

56. 洗浄：
従来は消毒すべし
→今は洗浄のみでよい

57. 洗浄：
水道水でも感染率に有意差なし
Water for wound cleansing
Fernandez R, et al.
Cochrane Database Syst Rev;2012;2:CD003861
Wound cleansing for pressure ulcers
Moore ZE, et al.
Cochrane Database Syst Rev;2013;3:CD004983
※オンライン補遺：洗う強さは15psi程度（50ccのカテチシリンジでスーッと出した程
度）と言われているが、少ない水で強く洗うよりは弱くても大量に洗ったほうが感染率
は低いらしい。また新鮮創なら強く洗っても汚染を内部に広げるとは言い切れないよう
だ。連続流よりパルス流の方が感染率は低いらしい。（個々の論文は割愛）

58. 縫合するか？
open woundか？

59. 縫合しないほうがよい創傷
汚染創・感染創
受傷して６時間以上経過した傷
動物 傷（特にヒト）
→概ね蜂窩織炎が起きる

60. 閉鎖法の種類
一次閉鎖：一期的に縫合
二次閉鎖：開放創に；汚染創など

61. 縫合糸の種類
吸収 ：皮下、筋膜；Vicryl, PDS
非吸収：皮膚、 ；絹糸, Prolene

62. 縫合に代わる創閉鎖：張力が低い場所
SteriStrip™ ± ダーマボンド™
※オンライン補遺：小児の顔面外傷に対するダーマボンドの有用性を調べた論文によ
ると、治りの綺麗さは縫合するのとほぼ同様で、また創離開の頻度が上昇することも
なかったようだ。

63. 創の被覆
被覆した方が最大40%早く治る
Experiences with biosynthetic dressings
Eaglstein WH.
J Am Acad Dermatol ;1985; 12:434.
※急性創傷の場合。褥瘡では逆効果
フィルム材：テガダーム™など

64. 感染予防のポイント
受傷機転：受傷場所は？ 傷か？
創の深さ：骨髄炎を起こしうるか？

65. 感染予防：IV/PO
通常の創傷：CCL 750mg/3 1day？
→必ずしも全ての創傷で必要でない
動物 傷では原因動物に応じて様々
※オンライン補遺
抗生剤の種類や使用期間については創傷の深さなどによって個別の判断が必要。
上級医と相談して処方するほうが無難。

67. Clostridium tetani

68. 破傷風菌
土壌内に広く存在
25%のヒトで腸内細菌叢を形成

69. 感染予防：破傷風に対するIM
予防的：トキソイド
治療的：＋免疫グロブリン

71. 破傷風トキソイド
日本人は大体5回接種
最終12歳→22歳以上でトキソイド

72. 包帯交換
Open Wound ：毎日
Closed Wound：翌日＋抜糸時

73. 外来経過：
創部を水道水で洗浄したが活動性の出血は
見られなかった。SteriStripで創縁を寄せた
のちにフィルム材で被覆した。破傷風トキソ
イド接種、ケフラール 750mg/3, 1日 処方の上
で有事再診として帰宅とした。