4. 4
の Libra であり、Google の Waymo(⾃動運転の技術開発会社)であり、Apple
の Apple Card(新⽅式のクレジットカード)であり、Alibaba の盒⾺鮮⽣[フー
マー・フレッシュ](オンラインとオフラインを融合した新しいスタイルの⾷品
スーパー)などの動きとして現れています。
彼らは、様々な xTech に関わる事業開発に莫⼤な投資を⾏うだけではなく、同
様のベンチャー企業にも積極的に資⾦を投じています。ベンチャー・ファンドも
また同様の投資を拡⼤しています。
この変化は、これまでの業界という枠組みを曖昧にし、「デジタル・テクノロジ
ーによる産業構造の転換」を急速に推し進める原動⼒となっています。
もはや IT は、効率化やコスト削減の⼿段としてだけではなく、新たな競争⼒を
⽣みだす源泉であり、差別化の武器として位置付けられ、そのための取り組みや
投資を拡⼤し始めているのです。
そうなれば、IT に関わるスキルやノウハウはユーザー企業のコアコンピタンス
であり、事業資産として蓄積するために内製化の範囲を拡⼤してゆきます。さら
にはクラウド利⽤の拡⼤や⾃動化へのシフトを加速し、競合他社との差別化を
⽣みだすアプリケーションへと経営資源をシフトしてゆくことになります。そ
うなるとこれまでとは、異なるかたちでの IT 需要を喚起するとともに、先に⽰
した統計とは違うカタチでの IT の需要⽣みだしてゆくと考えられます。
このような変化が、IT 市場の実態と IT への新たな期待との間にギャップを⽣
じさせ、⼀⾒すると⽭盾するような状況を⽣みだしているのです。
DX を理解するには、このような IT への期待の変化、ビジネスと IT の新しい関
係について、おさえておく必要があります。
■■■IT と社会の融合
5. 5
現実世界の様々な「ものごと」や「できごと」は、モノに組み込まれたセンサー
やモバイル、ソーシャル・メディアなどの現実世界とネットとの接点を介し、リ
アルタイムにデジタル・データに変換されクラウドに送られます。
インターネットに接続されるモノの数は 2020 年の時点で 500 億個になるとさ
れ、そこには数多くのセンサーが組み込まれており、私たちは、膨⼤なセンサー
に囲まれた世界に⽣きてゆくことになります。こうして、「現実世界のデジタル・
コピー」、すなわち「デジタル・ツイン(双⼦)」が⽣みだされてゆきます。
「デジタル・ツイン」は膨⼤なデータ量、すなわち「ビッグデータ」ですが、集
めるだけでは意味がありません。そのデータから誰が何に興味を持っているの
か、誰と誰がつながっていているのか、渋滞を解消するにはどうすればいいの
か、製品の品質を⾼めるにはどうすればいいのかなどを⾒つけ出さなければな
りません。そのために AI 技術のひとつである機械学習を使って分析し、ビジネ
スを最適に動かすための予測や判断をおこないます。それを使って、アプリケー
ションやサービスを動かして、機器を制御し、情報や指⽰を送れば、現実世界が
i
d
tdS P r
ch s
W
l ea
C
m o
b /
b
/ / 1
6. 6
変化し、デジダル・データとして再びネットに送り出されます。
このような現実世界をデータで捉え、現実世界と IT が⼀体となって社会やビジ
ネスを動かす仕組みを「サイバー・フィジカル・システム(Cyber-Physical System
または CPS)」と呼んでいます。
インターネットにつながるモノの数は⽇々増加し、Web サービスやソーシャル・
メディアもまたその種類やユーザー数を増やしています。現実世界とネットの
世界をつなげるデジタルな接点は増加の⼀途です。データ量はますます増え、よ
りきめ細かなデジタル・ツインが築かれてゆきます。そうなれば、さらに的確な
予測や判断ができるようになります。この仕組みが、継続的に機能することで、
社会やビジネスが、常に最適な状態に維持されることになります。
このような CPS というデジタル・テクノロジーに⽀えられた社会基盤の充実、
それを⽀える IT やネットワークの進化、すなわち「IT と社会との融合」が急速
に進んでいることが、DX への期待を⾼めています。