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3大アレルゲンを除去した
子ども向けのスポンジケーキの検討
舘山 莉奈 吉田 佑衣
はじめに
 一般的に洋菓子や和菓子には、発症頻度の高い卵、乳、小麦が
使用されており、発症率の高さから3大アレルゲンと言われている。
 就学前の幼児は食物アレルギーの有病率は高い。
また、その症状を引き起こす最低量には、個人差がある。
 おやつは子どもにとって楽しみの1つであるが、食物アレルギーのある子どもに
とっては、発症リスクの他、自分だけ他の人と違うものを食べていることに、
疎外感を感じる場合もある。
研究目的
 食物アレルギー対応のレシピが、ネット上に多数あるが、
再現性が低く、コンタミネーションが考慮されていないものもある。
 膨大な情報の中から、自分が欲しい情報を得るには、
手間と時間がかかる。
 先行研究では、代替品のスポンジケーキは改善点として「パサつき」が
挙げられていた。
3大アレルゲンを除去し、食味を改善した作りやすいケーキを
作製し、アレルギー児を持つ保護者への支援に役立てる。
研究方法
④
動
画
撮
影
・
情
報
発
信
③
官
能
評
価
・
ア
ン
ケ
ー
ト
調
査
②
レ
シ
ピ
作
成
・
調
理
実
験
①
材
料
の
選
定
未実施
代替品の選定
代替品
の選定
起泡性
・米油+豆乳
・スジャータ豆乳入りホイップ
・大豆固形成分10%以上の豆乳
・ひよこ豆煮汁
膨化性
・重曹、重曹+食酢、BP
流動性
・油(米油、サラダ油、太白ごま油、
ココナッツオイル)
豆乳 米粉+コーンスターチ
卵 牛乳 小麦粉
役割
・スポンジケーキの膨らみ
・焼き色
・生地をしっとり
させる
・コクが増す
・膨らんだ生地を支える骨
組となる
調理実験①ー卵の起泡性の代替ー
実験A
実験B
油と豆乳を乳化させる。
→乳化したが、すぐに液状に戻った。
市販の豆乳ホイップクリームを撹拌する。
→油っぽく、もろさがあった。
実験C
実験D
45~50℃に湯煎した濃い豆乳を撹拌する。
→焼き色と膨らみが良かった。
ひよこ豆煮汁を撹拌する。
→膨らみが良く、扱いやすかった。
実験C 撹拌10分後
実験D 撹拌10分後
調理実験②-卵の膨化性の代替-
・焼き色が濃くついた
・食感が悪い
・焼き色が薄い
・膨らみはよかった
・甘さが弱かった
・下に水分が溜まった
重曹 重曹+食酢
BP
調理実験③-卵の流動性の代替
-
・ココナッツの風味が
強い
・ふわふわ感がある
・しっとりしている
・生地を流した感じ
がさらっとしている
・クセがない
・食べやすい
・焼き色がついた
・表面や底が硬い
・もろさがある
・食感が悪い
・べたつきが少ない
・しっとりしている
・クセがない
・食べやすい
米油 太白ごま油
ココナッツオイル
サラダ油
調理実験の結果
 卵の起泡性の代替には、濃い豆乳、またはひよこ豆の煮汁を使用した。
 卵の流動性の代替には、太白ごま油、
またはココナッツオイル+サラダ油を使用した。
 卵の膨化性の代替には、一部BPを使用した。
 乳の代替には、豆乳を使用した。
 小麦粉の代替には、米粉とコーンスターチ(3:1)を使用した。
採用したスポンジケーキ① 採用したスポンジケーキ②
官能評価(代替スポンジの評価)
方 法:評価法
検 定:二元配置の分散分析法
F表、スチューデント化された範囲のqの表を用いて検定した。
対象者:青森中央短期大学 食物栄養学科 11名
条 件:パネル同士の席を離し、静かな環境で行った。
時間:空腹でも満腹でもない午後2時頃
評価項目:「きめ」、「やわらかさ」、「しっとり感」、「味」、「総合評価」
評価尺度:+3かなり良い、+2少し良い、+1わずかに良い
0ふつう、-1わずかに悪い、-2少し悪い、-3悪い
官能評価に用いた試料
P:卵、牛乳、小麦粉を使用した
一般的なスポンジケーキ
Q:ひよこ豆の煮汁を使用したスポンジケーキ
R:大豆固形成分10%以上の豆乳を
使用したスポンジケーキ
官能評価の結果
*<0.05
きめ 総合評価
味
しっとり感
やわらかさ
*
*
*
*
* *
*
アンケート調査の結果
質問:アレルギーの有無に関係なく、子どもが楽しめるおやつになっていましたか。
P Q R
そう思う 9人 6人 6人
あまり思わない 0人 2人 2人
思わない 0人 0人 0人
わからない 0人 1人 1人
感想 「やわらかさが足りない」 「ココナッツの風味が少し強い」
考察
 先行研究のスポンジケーキの課題であった「パサつき」は、改善できた。
 官能評価の結果より、「きめ」や「やわらかさ」の改善が必要である。
 豆乳メレンゲは、湯煎をして、攪拌時間が長いので、手間がかかる。
 ひよこ豆の煮汁は、攪拌時間が短く、作業工程が少ない。
また、冷凍しても品質が変わらず、扱いやすい。
 本研究で採用した代替品は、他のおやつのレシピにも有用だと考えられる。
今回採用した代替品で作製したおやつは、食物アレルギーの有無に関わらず、
みんなで楽しく食べられるおやつになる可能性が高いということが分かった。
まとめ
 WEB等のアレルギー対応レシピは家庭で作ることが難しいものもある。
 本研究のレシピは比較的手に入れやすい材料で難しい調理工程も少ないため家庭
でも作りやすい。
⇒レシピを公開することでアレルギー児を持つ保護者の支援につながるのではないか
今後の展望
 官能評価の結果を踏まえてレシピを改善し、動画等で保護者の方に
レシピを提供したい。
参考文献
■ 1)認定NPO法人(認定特定非営利活動法人)アレルギー支援ネットワーク編、アレルギー大学テキストこれだけでわかる食物アレル
ギー基礎的な知識から専門的な対応まで、初版、株式会社みらい、2016年、p2
■ 2)国立病院機構相撲原病院、平成30年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書、消費者庁のwebサ
イ ト 、
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/pdf/food_index_8_190531_0002.pdf(2021.11.03)
■ 3) 消 費 者 庁 、 ア レ ル ギ ー 表 示 と は 、 消 費 者 庁 の w e b サ イ ト 、
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/pdf/food_labeling_cms101_200401_02.pdf(2021.11.3)
■ 4)一般社団法人 青森県保育連合会.「食物アレルギー」について保護者の要望に寄り添う~みんなに同じものを食べてもらいた
い!~.青森県保育研究会 すべての人が子どもと子育てに関りをもつ社会の実現を目指して.2021年.p33‐35(2021.11.3)
■ 5)八坂理子,高松伸枝、保育・教育施設における食物アレルギー代替食の現状、2021、Memoirs of Beppu University、62、p87-93
■ 6)今井孝成,高松伸枝,林典子、食物アレルギーの栄養指導、医歯薬出版、2012、第1版、p68-70,p96
■ 7)奥村 友香,高岸 和子、食物アレルギー患児の食 QOL 向上への取り組み、Bull. Mukogawa Women’s Univ. Nat. Sci.、2012、60、
17-28
■ 8)日本フードスペシャリスト協会、食品の官能評価・鑑別演習、建帛社、2021、第3版、p4-30
■ 9) 公 益 財 団 法 人 日 本 豆 類 協 会 、 豆 の 主 な 機 能 性 成 分 、 公 益 財 団 法 人 日 本 豆 類 協 会 の w e b サ イ ト
https://www.mame.or.jp/eiyou/kinou.html(2021.11.3)
■ 10) 山崎清子、島田キミエ、調理と理論、同文書院、第1版、2016年
■ 11)金親あつ美ら、豆乳泡沫に用いた米粉スポンジケーキの特性、日本調理学会誌、2009、vol42,no6,378~385
■ 12)星 絵吏子、米粉の特性とスポンジケーキの品質、東北農業研究、2014,67,27-28
■ 13)河田昌子、お菓子「こつ」の科学、柴田書店、2017、第5版

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【E01】3大アレルゲンを除去した子ども向けのスポンジケーキの検討【青森中央短期大学/森山研究室  舘山莉奈、吉田佑衣】

Editor's Notes

  1. 一般的に洋菓子や和菓子には、卵、乳、小麦が使用されており、これらのアレルゲンをもつ子どもは日々のおやつの選択肢が狭くなります。また、食物アレルギーのある子どもは、発症リスクの怖さと、他の人と別のものを食べなければならないという疎外感を抱えています。幼児期のおやつは栄養補給のためであるとともに、心と体のリフレッシュであり、楽しみを共有する時間でもあります。 
  2. 現在、食物アレルギー対応のレシピを掲載しているwebサイトが数多くありますが、実際に作ってみると再現性が低いものや、コンタミネーションが考慮されていないものがあり、必ずしも安全だとは言い切れません。また代替品を使用したケーキの先行研究では、スポンジのパサつきがみられ、改善が必要だと報告しています。そこで本研究では、手軽に買える食材を使って、再現性が高く、なおかつ食味の良い、3大アレルゲンに対応した子どものおやつを検討し、保護者への支援に役立てることを目的に調理実験を行いました。
  3. 研究方法です。★まずは、図書や先行研究を参考に、卵、乳、小麦の代わりになる食材を探し、予備実験を行いました。★次に本実験では、予備実験の結果をもとにスポンジケーキとクッキーの試作を行いました。★さらにアレルギー対応のスポンジケーキの官能評価を行いました。★保護者支援として完成したレシピをもとに、料理動画の作成及び配信を企画しました。 
  4. スポンジケーキでの卵、牛乳、小麦粉の役割から、代替品をこのように選定しました。内容はスライドの通りです。
  5. 実験として、はじめに卵の起泡性について4つの方法を検討しました。  Aは、油と豆乳を乳化したもの、Bは豆乳ホイップクリームを使用したものです。Aは、油と豆乳が乳化せず、Bは、食べた感じが油っぽく、もろさがありました。 
  6. 次は卵の膨化性について実験を行いました。  膨化剤には、重曹、BP、重曹に酢を添加したものを使用しました。重曹だけを添加したものは、焼き色が濃くつきましたが、食感が悪かったです。ベーキングパウダーを添加したものは、焼き色が薄くなりましたが、膨らみは良かったです。重曹に酢を添加したものは、重曹だけのものより、均一に膨らみましたが、スポンジの底が水っぽい食感になりました。また、重曹を添加したものは、甘さが弱かったです。 
  7. 次は卵の流動性について実験を行いました。 卵の流動性は豆乳に油脂を加えたもので代用することにし、色々な油脂の種類で比較しました。その中でも、サラダ油にココナッツオイルを混ぜたもの、太白ごま油を使用したものを採用しました。サラダ油にココナッツオイルを混ぜたものは、サラダ油だけで作ったものよりも、表面が柔らかく、ふわふわ感がありました。太白ごま油を使用したものは、焼き色が付き、見た目が良く、また、クセがないので食べやすい生地になりました。
  8. このような食材の組み合わせと焼成時間などを調整し、作成した30個のスポンジケーキのレシピから、食味が良く、食べやすいと感じた次の2つを採用しました。1つ目のスポンジケーキはひよこ豆の煮汁を攪拌したもので、材料と作り方はスライドの通りです。アレルギー食品の代替品は赤字で示しています。
  9. つづいて、官能評価を行いました。内容は、スライドの通りです。 ※2秒くらい待つ。
  10. 官能評価に用いる試料は、こちらの3種類のスポンジケーキに豆乳ホイップを添えて提供しました。 P、Q、Rはスライドの通りです。 ※6号サイズで焼成し、16等分にしたものを1人分の供給量としました。
  11. こちらのグラフは、評価項目ごとに官能評価の結果の平均値をまとめたものです。しっとり感の項目では、試料間に有意差は見られませんでした。きめ、やわらかさ、味ではPに比べQとRの評価が低かったです。しかし総合評価の項目ではPとR間では有意差が見られましたが、Qとの間に有意差がありませんでした。
  12. アンケート調査では、★QとRについても約7割の人が「アレルギーの有無に関係なく、子どもが楽しめるおやつになっていた」との回答が得られました。 この他、「やわらかさが足りない」「ココナッツの風味が少し強い」などの感想をいただきました。 ※回答率:官能評価に参加して頂いた11名中9名の方から回答が得られました ※他の感想:R「ココナッツの味が苦手な子供もいると思うので、」「ほんのり甘い程度にしたらよいのではないか」Q「食感が少し硬い印象を受けた」「しかし、とても美味しかった」という感想をいただきました。
  13. 考察です。先行研究のスポンジケーキの課題であった「パサつき」は改善できたが、官能評価やアンケート調査の結果から、「きめ」や「やわらかさ」の改善が必要であると考えました。また、今回実験した結果、再現性や総合評価の結果からひよこ豆を使用したものが好ましいと判断しました。今後も改善が必要ですが、★今回の結果から卵、乳、小麦を使用しなくても食味のよいスポンジケーキを作成することができました。また今回のレシピは作りやすさを考慮したため、親子で一緒に作ることも可能です。おやつは楽しみを共有する時間でもあり、本研究の結果からアレルギーの有無にかかわらず楽しめるおやつ作りができたと考えます。
  14. まとめです。食物アレルギーには個人差があり、敏感に反応してしまう場合はコンタミネーションも考えなければならないので、使用できる材料が制限されます。今回、保護者支援としてレシピの料理動画を配信する予定でしたが、完成することができませんでした。今後の動向として、官能評価の結果を踏まえて、レシピの改善を行い、保護者へレシピを配信したいと思っています。また、他のアレルギー対応のおかしについても検討していきたいと思います。
  15. 参考文献はスライドの通りです。以上で発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。