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【F15】空き家活用の課題と可能性-青森市と田子町の事例から-【青森大学/阿部 あい】

  1. 空き家活用の課題と可能性 ~青森市と田子町の事例から~ 2023年1月:卒業論文 2119005:阿部 あい 主査:櫛引 素夫 副査:石井 重成
  2. は じ め に ★増え続ける空き家は社会問題化 →一方で空き家や空き店舗を活用する事例 →NPO法人尾道空き家再生プロジェクト →青森県浅虫地区にある古民家カフェ「apricot」 ★空き家活用は費用や法律など多くの課題 →青森県域における空き家活用で発生する 課題と可能性を明らかにすることが目的 ★J-stageを使用して先行研究を検討 各種のデータを収集して考察を行った
  3. 空 き 家 に つ い て ★空き家の定義 「1年以上、人が住んでいない家」 判断基準 ・人の出入りの有無 ・電気、ガス、水道の使用状況 ・適切に管理されているか ★特定空き家 「空き家の中でも倒壊する恐れ、もしくは衛生上、人に有害と なる建物」 ★「空き家」・「特定空き家」については国土交通省が定義 判断するのは各市町村
  4. 先 行 研 究 ★徳田光弘・石塚直登(2022)「空き家所有者の利活用に対する 意識構造:地方における空き家の市場流通化に向けた方略」 ・空き家の現所有者と元所有者の空き家所有当時の意識の違 いに着目 ・空き家所有者の意識の関係構造を明らかにする ・対象地は長崎県五島列島の五島市 ・空き家の現所有者と元所有者にアンケート調査 ★空き家利活用意識の単純集計結果 →現所有者は元所有者に比べ、売却相手や利活用希望者を見込 めていない →利活用への煩わしさを感じている →定期的な使用や近親者等の今後の居住予定や期待 →現所有者、元所有者共に低い
  5. ★西山弘泰(2015)「空き家所有者アンケートからみた空き家の 特徴と発生要因-宇都宮市の事例-」 ・宇都宮市空き家実態調査のアンケート調査 →914件中282件が「空き家ではない」と回答 →調査を行う側と受ける側で空き家に対する認識にズレ 所有者の意見 「一時的に留守にしているだけ」 「隣の親類が管理している」 ・マスコミの報道 →管理が不十分で無残に朽ち果てている特定空き家を多く報道 →行政は行政データをもとに画一的に判断 →所有者は「特定空き家=空き家」と感覚的に判断 先 行 研 究
  6. 空 き 家 活 用 の 事 例 ★古民家カフェ「apricot」 ・青森県青森市の浅虫地区にある古民家カフェ ・元々は「あんず旅館」という築100年以上の旅館 →2016年に廃業 ・店主の成田汐里氏の母親と所有者が知り合いと判明 →成田氏が浅虫で店を開きたいという願望 ・関係者の思いが一致 →成田氏が物件を借り、2018年に「apricot」を開業 浅虫の重要な観光資源
  7. 空 き 家 活 用 の 事 例 ★浅虫の古民家 ・野澤雄大氏という方がクラウドファンディングで空き家を アトリエにする取り組み ・野澤氏は青森市出身の画家で、「NOZ」という名前で活動 ・空き家にしたのは、 コスト面や、クラウドファンディングという話題性をもたせ 「他の人の力を借りる」方法に楽しさを見出したため
  8. 田 子 町 ・ 五 十 嵐 氏 の 取 り 組 み ★青森県三戸郡の田子町で空き店舗を活用 ・五十嵐孝直氏 ・千葉県出身 ・大学卒業後、外資系商社に入社 →「企業の枠の中にいるのが自身に合わない」 ★「バクテー」と呼ばれるスペアリブやにんにくが入った 東南アジア発祥のスープ料理が好き →「日本で流行らせたい!」 →全国トップ級の高品質にんにく生産地、田子町に着目 →地域町おこし協力隊に応募し採用 ★移住してからは空き店舗を活用する活動 →元々呉服店だった空き店舗を購入 →使い道やリノベーション、資金調達の可能性を探る
  9. 幸 畑 団 地 ・ 黒 竹 氏 の 取 り 組 み ★青森県青森市の幸畑団地で空き家を活用 ・黒竹健司氏 ・千葉県出身 ・2018年 地域町おこし協力隊として青森市に移住 ・個人事業主、移住コーディネーターとしても活動 ・青森市の移住誘致のためのPRなど、移住促進全般に携わる ★VRやeスポーツに興味がある学生と関わる →秋葉原などのように遊べる場所が青森にはない →「VRやeスポーツを環境がなく遊べない学生が 他にもいるのでは」 →自由に場所がつくれる空き家を活用したい →空き家をコワーキングスペースに改造
  10. ヒ ア リ ン グ ★五十嵐氏・黒竹氏へヒアリングを行った 質問項目 1.簡単なプロフィール 2.どのような経緯で空き家を活用しようと思ったのか 3.なぜ(田子町・幸畑団地)の空き家を選んだのか 4.空き家活用で大変だったことは 5.空き家を活用するメリットは 6.空き家を活用するデメリットは 7.空き家活用の課題だと思う点は 8.その後、インタビューでの感想や意見は
  11. 調 査 の 結 果 と 分 析 ★差異 ・空き家と空き店舗 ・購入か賃貸 ・契約 ★五十嵐氏は自分で空き物件を所有したい →元々呉服店だった空き店舗を売りたいという人から購入 ★黒竹氏の場合は、自分の家で活動 →手狭に感じるようになり空き家を探し始める →上司が教えてくれた空き家のオーナーが偶然自分の遠い親戚 →快く借りれた →多くの空き家を探し続けて決まったのがそこだけ
  12. 調 査 の 結 果 と 分 析 ★五十嵐氏は店舗を購入し、ある程度自由に修繕可能 ★黒竹氏の場合、賃貸なためオーナーとの契約が必須 ・家の修繕はどこまでがオーナー、または住んでる人がやるのか ・備品の処分はどうするのか →工程の確認を怠るとオーナーとのトラブルにつながる可能性 →借りた後の契約問題は注意深く行っていた →黒竹氏のケースでは、修繕に関してはすべて黒竹氏が負担 その代わりに家賃が安くなる契約
  13. 調 査 の 結 果 と 分 析 ★共通点 ・家の状態に不安 ・所有者や地域住民の建物に対するストーリー ★五十嵐氏の店舗は築50年以上の建物で古い →・屋根の一部が折れていた ・雨漏りや壁に断熱材がはいっていないため寒い →細かく見れば見るほど問題があった ★黒竹氏の家は、空き家になって2年間放置 →・前の持ち主の家電や遺品も数多くあった ・ボイラーのパイプが壁の中で水漏れ ・畳が腐っていた
  14. 調 査 の 結 果 と 分 析 ★五十嵐氏の店舗は元々呉服店 →その店で制服を買ったことがある 採寸をしてもらったという思い出がある →地域住民が応援してくれた ★黒竹氏の場合、以前の所有者が庭の石や木を大事にしていた →それを知る地域住民 「庭に生えていた大きな木を切らないでほしい」 →・黒竹氏は庭でバーベキューがしたい ・虫や鳥が寄ってくるのが嫌だ →地域住民の反感を買うのは避けたいため、切れない ストーリーがあるのは共通しているが、その思いが 糧になるか枷になるかはその状況によって異なる
  15. 空 き 家 活 用 の 課 題 ★五十嵐氏、黒竹氏双方とも制度上・登記上の問題を指摘 例) →空き店舗は「店舗」 ゲストハウスは「住宅」として登記 ・空き店舗→ゲストハウスにする場合 →様々な制度の制限やルール、手続きが必要 ★空き家活用となれば、自治体からの補助金が出ることが多い →全てそれで賄えず、ある程度の貯蓄が必要 ★空き家を解体 →建物がある状態より固定資産税がかかる=解体しない人が多い →解体にも費用がかかる →仕組みや法律が変わらないと空き家は増え続けてしまう。
  16. ★空き家を活用するメリット・デメリットが周知されていない →空き家バンクに登録すると何があるのか →借りる方ではなく貸す方にどんなメリットがあるのか ・貸すことで生じる不動産の家賃収入のメリット ・空き家を放置するデメリットは何か →所有者に周知させなければ使える空き家が増えない ★周知されないことで空き家バンクなど間に不動産を挟まない →直接交渉になりトラブルにつながる可能性 →借りたものの全く使えない家だったということがある →プロの目が必要 空 き 家 活 用 の 課 題
  17. 空 き 家 活 用 の 可 能 性 ★空き家の状態や補助金制度によっては安く済む ・自治体にもよるが補助金制度が利用できる →実際に五十嵐氏や黒竹氏も補助金を利用して修繕 ★やりたいことに対して物件が合致していればほとんど投資が いらないという利点 →浅虫地区の「apricot」、黒竹氏の例 ・「apricot」は元々旅館だった建物をカフェとして利用 ・黒竹氏も家をそのままの形で修繕 →かなり費用が抑えられえる ★今の基準だと造れない家を活用できる →レトロ感が欲しければ空き家のほうがマッチする
  18. 結 論 ★空き家問題の解決のために空き家の活用を目指している人は 少ない ★自治体の補助金が充実していてもある程度の貯蓄が必要 →登記上の制限もあるため容易ではない →自分がやりたいことと物件がマッチしていれば比較的スムーズ に活用しやすい ★空き家所有者に対する所有上のデメリット、貸し出すメリット に関する情報の浸透 →自治体や国がサポートを強めていく必要
  19. ★空き家問題は根深く、制度が変わらなければこれからも増え ていく一方 ★空き家を所有するデメリットや貸し出すメリットの情報を伝 えていかなければ、そもそも使える空き家が増えない ★徳田光弘・石塚直登(2022) →利活用への煩わしさを感じている →所有者に対し、正しい知識が伝えられていないことが考えら れえる ★西山弘泰(2015) →所有者によって空き家の定義が異なることも避ける必要があ る お わ り に
  20. 参 考 文 献 ・阿部あい(2021)「空き家を活用して観光につなげられるか~浅虫の事例 ~」青森大学社会学部・社会学専門演習Ⅱ・ゼミ論 ・徳田光弘・石塚直登(2022)「空き家所有者の利活用に対する意識構造: 地方における空き家の市場流通化に向けた方略」建築社会システム、第28 巻 第70号p. 1518-1523 https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijt/28/70/28_1518/_pdf/- char/ja、閲覧日(2022年12月28日) ・空き家等対策の推進に関する特別措置法(2014年法律第 127号)の概要 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=426AC1000000127、閲覧日 (2021年6月5日) ・由井義通・久保倫子・西山弘泰 編「都市の空き家問題 なぜ?どうす る?-地域に即した問題解決に向けて-」西山弘泰(2015)「空き家所有者 アンケートからみた空き家の特徴と発生要因-宇都宮市の事例-」p.80- 95閲覧日(2022年12月13日)
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