第3回 ディスカッションペーパー
- 1. 政党政治を考える
「政党政治の理論と実際を、現状の日本政治に照らし合わせて論ぜよ」
渡辺涼太
1.要約
2003 年臨調はマニフェスト導入を提言し 2009 年の選挙で一般化された。想定されるのはマニフェ
ストを忠実に実行する政党と、その都度の合理的判断のできる有権者(無党派層)である。前提とな
るのは二大政党の異なったマニフェストと、政権の政策実行能力である。しかし現実を見るとマニフェ
ストが形骸化している恐れがある。無党派層が増えると政党が得票のためポピュリズムに傾斜する。す
ると政党間でイデオロギーの差が少なくなり、大前提である政党間のマニフェストの差がなくなってし
まうからだ。問題を解消するためには競争偏重の政治に参加のメカニズムを入れる必要がある。二院
制廃止や参議院の権力剥奪のため憲法改正を目指すのも手だが、より現実的手段として二大政党制打開
のために小選挙基調の選挙制度を改革することが有効だ。
2.見解
筆者は現状の問題は無党派層による政党デモクラシーの不安定化と政策決定能力(リーダーシップ)
の低下としている。その原因を小選挙基調の選挙制度によって二大政党化した政界にあるとし、ダウン
ズのいう政策の収斂に対するハーシュマンの「発言」の有効性を挙げる事で無党派層は離脱偏重である
と批判し、参加の重要性を説いている。
私も選挙制度を変える必要性はあると思う。選挙制度を変え、多党制になったとして現状とどう代わ
るだろうか。多党制が進めば進む程、責任の所在を不明確にする。連立政権となるためだ。二大政党
制であれば責任の所在は明確である。また多党制が「多様な民意を反映する」というのは限界がある。
なぜならそれは他の選挙制度に比べて公平性が確保されるに過ぎないからだ。単純に考えて、得票の
ために人口の多い第三次産業や高齢者へのアピールが多くなる。もしくはそういった多数派偏重の政党
の発言力がどうしても強くなる。つまり選挙制度を変える方法にしても、問題の改善には限界がある。
しかしそれでも私は選挙制度を改正し、穏健な多党制を目指すべきだと考える。まずハーシュマンの
「発言」、つまりロビイング活動のような政治参加の手法を促進することに注力すべきだ。現在の日本
では方法や時間の問題でロビー活動に勤しむ人は主流とはいえない。一方で官僚と業界が癒着し、そ
の業界の民意は政策に間接的に反映される。これではやはり多数者の利益ばかりが尊重されかねない。
少数派や弱者の民意、多様な民意を本当に汲み取るためには各層の利益追求の代表を参加させ議論し
折り合いをつけることが必要だ。多様な民意を汲み取り、それぞれの有権者が納得する実行可能な政
策に落とし込むのが議会の役目である。そのためには穏健な多党制が必要である。