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否定的感情状態における食品カロリーの推定
社 14-0518 岩崎 廉
田中久美子(2015). 食品カロリー量推定におけるテスト不安と摂取抑制との関係 健康心
理学,28,15-21
問題と目的
キーワード
ヘルスハロー効果:食品のある特徴を手がかりとして、食品を健康、不健康の二分法に従っ
て分類し、全体的なカロリー量を推定するカテゴリー駆動型決定バイアスである。
・カロリーに対するバイアスが発生する
情動的接触:不安、悲しみ、怒りなどの否定的感情の調整やストレス対処を目的としたコー
ピング方略としての食行動傾向のことである。
否定的感情状態(不安、悲しみ、怒り)
目的
テスト不安によって情動調整も目的とする接触意図が高まり、接触抑制とのジレンマが
生じやすい場合も、健康的食品はカロリー量が過小評価され、不健康的食品は課題評価され
健康的な食べ物
果物や野菜
不健康的な食べ物
チョコレートやポテトチップス
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るという評価バイアスが各々認められるどうかについて、接触抑制の程度を要因に加えて
検証すること。
仮説
○テスト不安が低い場合、通常時と同様に、抑制者は健康的な食品のカロリー量を過小あ
るいは正確に評価するのに対し、不健康的な食品カロリー量を過大評価するという対象的
なカロリー量の推定バイアスが認められる。
○テスト不安が高い場合、抑制者であっても不健康的な食品を求め、その正当化のために
食べても太らないとカロリー量を過小評価する。
方法
近畿圏内の大学 3 校の女子学生計 174 名に対する質問紙調査
・テスト不安の測定
当該科目の試験について 10 分程度説明した後、防衛的悲観主義尺度の悲観因子を用いて
テスト不安の程度を測定した。
・食品課題
教室に設置のスクリーンに 1 種類ずつ提示される食刺激の写真に対して、カロリー量の
推定値と好ましさ(5 件法)を回答させた。
・接触抑制の測定
接触抑制状態を調べるため Rivised Restraint Scare を用いた。
結果・考察
階層的重回帰分析→不健康食品では、カロリー量推定に対して、ドーナッツでテスト不安か
ら有意の負の値が、またドーナッツおよびポテトチップスでは接触抑
制から有意な正の値がそれぞれ見られた。さらに、チョコレート、ドー
ナッツ、およびアイスクリームで有意な交互作用が見られた。
◎抑制群ではテスト不安が低いと、通常と同様にバイアスが見られた。
◎抑制群ではテスト不安が高いと当該食品のカロリー量を低く推定する傾向が見られた。
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自己注目とディストラクションの関係
津村秀樹・嶋田洋徳(2014).自己注目に対する運動が認知的評価と抑うつ気分および注意資
源に及ぼす効果 健康心理学,27,124-130
問題と目的
キーワード
自己注目:自己の内部で生成された自分自身に関連する自己関連刺激に注意を向けること
である。
ディストラクション:注意資源を消費させることで、ネガティブな感情に関連する思考に注
意を向けにくくさせ、ネガティブな感情を低減させる効果がある。
目的
自己注目を誘導する刺激に注意を向けた状態において運動を行った場合、注意資源、認知的
評価、抑うつ気分に及ぼす効果を検討した。
仮説
○運動を行いながら自己注目を誘導する刺激に注意を向けた場合には、注意資源が多く、
ストレス場面に対してネガティブな感情が低減し、抑うつ気分が低い。
テストでの低い点数
内定が決まらない
ネガティブな感情
の低下
運動・テレビ
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方法
首都圏近郊の私立大学に在籍する大学生および大学院生 42 名。
・注意刺激(数唱課題)
・認知的評価(認知的評価測定尺度)
・ストレス場面(友人場面、アルバイト場面)
・自己注目誘導(心拍数をフィードバック)
・運動課題(足踏み式室内運動器)
結果・考察
◎自己関連刺激に注意を向けたことによって、認知的評価と抑うつ気分が明確に変化した
とは言えない。
◎自己注目を誘導する自己関連刺激から注意をそらすことができなくても、同時に運動を
ことによって、ストレス場面に対する影響性の評価、及び抑うつ気分が低減する可能性が
ある。
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自然環境が主観的 well-being に与える効果
松村治(2014). 自然とのふれあいが多面的な主観的 well-being にあたえる影響について-
地域社会に対するポジティブな認知を含めて- 健康心理学
問題と目的
キーワード
Well-being:健康で安心なこと、満足できる生活状態。
目的
自然とのふれあいの社会的関係の促進を介しての間接効果について検討するとともに、主
観的 well-being にどの程度の影響をあたえるかを示す総合効果についても検討すること。
方法
横浜市の郊外地区の全世帯に対しての質問紙調査(131 名、男 65、女 66、平均年齢 50)
・自然とのふれあいに関する質問
・地域社会の活動への参加の程度
・コミュニティ感覚、地域への愛着
・主観的 well-being
よい自然環境
山や海、公園
社会的関係
コミュニティ感覚
地域への愛着
主観的 well-being
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結果・考察
重回帰分析→自然とのふれあい、地域に対するポジティブな認知はともに主観的 well-being
の 5 つの要素とトータル well-being との間に有意な相関を示した。
◎自然とふれあうことは社会的関係を促進するということを示した。
◎自然とのふれあいは地域活動への参加を促進することで、地域に対するポジティブな認知
を高めることを示した。
発表者のコメント
否定的な感情な時には、高カロリーな菓子類に対して実際の数値よりも低く見積もるこ
とで、その行動事態を合理化する傾向があると知り、人間は無意識の中でも都合良く物事を
考えているのだと思いました。今回の発表では健康心理学から論文を 3 本とも選択しまし
たが、全体的に興味がもてたので卒論は健康心理学関連についてしようと考えています。

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