民主主義とは何か
現代日本における民主主義の問題とその解法
渡辺涼太
要約1
日本の政治は代議制民主主義の形をとっている。代議制民主主義はアクター(有権者、政治家、官
僚)の委任と責任関係によって成立する。しかし昨今の議会では問題が頻発し、批判が高まり議会そ
のものを否定する勢いである。現行の議会政治への不信感からそれを補完するべく新たな構想が生み
出されてすらいる。しかし議会政治そのものを否定するのは不適当だ。代議制民主主義はエリート間
の競争や抑制によって多数者の専制や既得権益の固定化を防ぐ自由主義と、普通選挙によって多様な
民意を政治に反映させる民主主義の二項対立構造である。自由主義が強すぎればエリートが暴走する
可能性があり、民主主義が強すぎれば少数者に不利益が生じたり、中長期的に見れば最適解でない民
意に従わざるを得ない場合が出てくる。代議制民主主義は執政と選挙の二つの基幹的政治制度の違い
によって多様化される。この政治制度を調整することで自由主義と民主主義のバランスを確保すれば
政治的安定が得られる。そのため悲惨な現状から、一口に議会政治そのものを否定することは危険で
ある。
問題と解決法
現代日本の民主主義が抱える問題の多くはアクター間の委任と責任関係に起源を持つ。本来ならば
有権者が政治家に政策決定を委任する誘因は、全有権者が直接政治関与するより時間を節減し知識の集約
による議論の深化を見込めるためだ。また政治家が官僚に政策実施を委任する誘因は、実施による時間的
拘束から逃れるためだ。実施を官僚に任せることで政治家は他の議題に時間をかけることができる。誘因
は時空の差異によって変化する。例えば大きな政府を信仰していた時代もあれば小さな政府を求めた時代
もある。これらは大恐慌であったり、戦後であるといった時代背景に左右される。
近年、全体的な投票率が低下している。これは有権者の政治への傍観意識もしくは政治的アパシーが起
因となっていると考えられる。現行の教育制度が政治参加の重要性を教えられていないのか、多忙な若者
が投票にいくことも事前投票をすることもできないのか原因は多々考えられるが、衆議院選挙において30
代では42.09%、20代では32.58%しか投票していない。逆に60代の投票率は68.28%である。2
この投票率からは次のような問題が予想される。得票数ばかりを気にする政治家が高齢者重視の政策決定
をする。これが中長期的な赤字をもたらすとしても、有権者は短期的な利益に飛びついてしまう。このケ
ースでは政治家は説明責任を果たせないはずである(目的が自身の得票で、本来守るべき国益を損なって
いる)。本来国民がその妥当性を精査し説明責任を果たせない場合、委任相手を変えるべきなのである。
なのに政治に関する一定の知識がなければ政治家の誤摩化しを鵜呑みにしてしまう。
これは委任と責任関係の歪んだ一例である。国民の政治的関心が高まり、個々が知識を持ち、投票率
を上げることで解消されると考えられる。政治家・官僚の説明責任を追求することと、有権者自身が
委任の相手を変える術を持っていることを強く認識する必要がある。これは国のためではなく、自分の
利益追求活動であることを理解するべきだ。国民が政策の妥当性を判断できるなら、自己の利益に直接繋
がらない決定も政治参加への諦めを生まないはずだ。つまり政治的アパシーであるのは、やはり政治教育
の問題が絡んでいるように思える。
1. 待鳥聡史『代議制民主主義』(中央公論新社,2015)
2. 日本、総務省、「衆議院議員総選挙における年代別投票率(抽出)の推移」
(http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/)
(最終検索日:2016年4月19日)

第1回 ディスカッションペーパー