20170205 第7回法と経済学勉強会 第16章及び第17章
- 3. 目次
• 第Ⅰ編 所有権法
• 第Ⅱ編 事故法
• 第Ⅲ編 契約法
• 第Ⅳ編 訴訟及び手続法
• 第Ⅴ編 公的機関による法のエンフォースメント及び刑法
• 第Ⅵ編 法の一般構造
• 第Ⅶ編 厚生経済学・道徳・法
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- 4. 目次
• 第Ⅲ編 契約法
– 第13章 契約外観
– 第14章 契約の締結
– 第15章 製造物供給契約
– 第16章 その他の種類の契約
1. 物の所有権を移転する契約
2. 贈与契約
• 第Ⅳ編 訴訟及び手続法
– 第17章 訴訟についての基礎理論
1. 訴訟の提起
2. 私的に望ましい訴訟の水準と社会的に望ましい訴訟の水準との間の根本的な乖離
3. 和解と事実審理
4. 和解についての指摘に決まる水準と社会的に望ましい水準との乖離
5. 事実審理と訴訟の費用
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- 7. 完備特定契約 例1 (1.2)
• 契約の対価:80→55に変更
• 買主の評価額:100(買主にとっての契約の価値:20)
• 売主は第三者による申込がx50もしくは90の時のみ、履行すれば良いと
する。
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第三者の申込価格 確率 期待値
50 50%
60%×(100-55)=27(>買主の価値20)
90 10%
150 40% 60%×55+40%×150=93>(売主の価値80)
- 8. 完備特定契約 例1続き (1.2)
• 契約の対価:80→55に変更
• 買主の評価額:100(買主にとっての契約の価値:20)
• 売主は第三者による申込が50の時のみ、履行すれば良いとする。
– 買主の期待価値:50%×(100-60)=20
– 売主の期待価値:50%×60+10%×90+40%×150=99
• 契約を修正。第三者の申込価格が50の時と90の時には売主は履行しな
くてはならないものとする。
→買主は契約の対価をより高くしても良いと考え55→65に変更する。
– 買主の期待価値:60%×(100-66)=20.4
– 売主の期待価値:60%×66+40%×150=99.6
• 常に契約を履行するよりも売主、買主双方にとってメリットがある。
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- 10. 完備特定契約 例2
• 第三者による申込みは契約上買主のみに対して行われる。
• 契約の対価は60
• 目的物が買主に対して譲渡されるのは第三者の申込価格が50と90のみ
– 買主にとっての価値:60%×(100-60)=24
– 売主にとっての価値:60%×60+40%×10=40 (10は目的物の売主にとっての
価値。第三者には売却することはできないと仮定されている)
• 第三者の申込価格が150の時、買主は転売する。
• 契約を修正して対価を70とする。
– 修正後の買主にとっての価値:60%×(100-70)+40%×(150-70)=50
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- 13. その他の論点
• 強制履行の望ましさ(1.6)
– 履行利益の賠償基準を採用すると裁判所が履行の価値を過小評価する可
能性がある。
– 買主と売主がともに第三者から申込を受ける可能性がある場合は履行利益
の賠償よりも強制履行を望む
• 契約法の現状(1.7)
– 英米法は契約違反に対する通常の救済は履行利益の賠償
– フランス法は所有権移転する契約にお知恵、強制履行は標準的な救済手段
に対し、物を製造する場合の救済手段は損害賠償である。
– ドイツ、日本では、すべての契約において強制履行が認められている。
• 製造物供給契約との違い(1.8)
– 製造物供給契約の場合には、強制履行の決定は望ましくない。一方、物の所有権を移
転する契約では、強制履行は履行の決定に対して有益な効果を持つ。
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- 22. 単純なモデルによる乖離の分析 例1
– 事故により被害者が受ける損害:10,000ドル
– 被害者が訴訟の提起のために要する費用:3,000ドル
– 加害者が防御するための費用:2,000ドル
– 事故が起きる確率:10%
– 訴訟費用の期待値:10%×(3,000+2,000)=500ドル
→訴訟が事故のリスクを低減するインセンティブを生まないの
で訴訟が社会にとって望ましくない
→被害者は10,000ドルという私的便益を得るために訴訟を提起
してしまう。
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- 23. 単純なモデルによる乖離の分析 例2
– 事故により被害者が受ける損害:1,000ドル
– 加害者は10ドルかけることにより事故の確率を10%から1%に減少さ
せられ得る。
– 被害者が訴訟の提起のために要する費用:3,000ドル
– 加害者が防御するための費用:2,000ドル
– 事故が起きる確率:10%
– 総社会費用:10%×(1,000)=100ドル
→訴訟が提起されるなら総社会費用は10+1%×(1,000+3,000+2,000)=70ドル
になる。そのため、社会にとっては被害者が訴訟を提起する方が望ましい。
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- 28. 例
• 原告の期待値:70%×100,000=70,000ドル
• 原告が事実審理にかける費用:20,000ドル
• 被告の期待値:50%×100,000=50,000ドル
• 原告が事実審理にかける費用:25,000ドル
• 期待値の差額:70,000-50,000=20,000
• 両当事者が事実審理にかける費用の合計:20,000ド
ル+25,000=45,000ドル
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- 29. モデルの解釈(3.2)
a) 相互の利益となる和解の機会が存在することは、和解が必ず行われることを含意するの
か?
• 行われることもあれば、行われないこともある。3.3や3.4で検証。
b) 当事者の信念
• 原告が勝訴する確率について、原告自身が信じる値が被告の信じる値よりも大きいほど、和解が行われる可能
性が低くなる。
• 原告の勝訴確率についての原告自身の信念が、被告のそれを下回っている時は相互の利益となる和解の機会
が常に存在する。
• 判決額に関する信念が違えば、和解の機会の存否にも影響を与える。
c) 判決額
• 他の条件を一定とすると判決額(判決により被告が支払いを命じられる額)が増加するほど、訴訟は事実審理に
進む可能性が高くなる(判決により得られる金額が大きくなるほど、勝訴確率についての当事者の予想の違いの
影響が増幅されるため)。
d) 事実審理のための費用
• 各当事者の事実審理に要する費用が大きいほど、訴訟が和解で終わる可能性が高くなる。
e) リスク回避
• リスク回避的である過程を加えた場合、和解の可能性を高める方向に動く(事実審理に進むことはリスキーな行
動のため)
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- 30. 交渉過程と情報構造を明示したモデル
Type 存在割合 勝訴確率 期待値
A 10% 100% 100,000
B 60% 50% 50,000
C 30% 20% 20,000
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• 原告が勝訴した場合:100,000ドル
• 原告の事実審理にかかる費用:10,000ドル
• 被告の事実審理にかかる費用:10,000ドル
• 被告は下記3パターンのどれかわからない
原告が60,000ドルを要求した場合の原告の期待利益
70%×60,000+30%×(20,000-10,000)=45,000
原告が110,000ドルを要求した場合の原告の期待利益
10%×110,000+60%×(50,000-10,000)+30%×(20,000-10,000)=38,000
→訴訟が事実審理に進むことがあるのは、情報の非対称性が存在しているため