博物館教育論
博物館の利用と学び(2):
展示制作の観点から(1)
石村源生
2013/5/23
高等教育推進機構 高等教育研究部
科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
自己紹介
自己紹介
• 知覚心理学・脳科学の研究者を経て、科学技術館(
東京・北の丸公園)に。
• 展示ディレクターとして、様々な科学館・理工系博物
館の
1.展示、ワークショップ、イベントの企画ディレクション
2.施設構想立案
3.運営コンサルティング
などを行ってきた。
2005年9月より北大CoSTEPスタッフ。
科学技術館では(2000-2005)
2005
横須賀市浦賀ドック夏休みサイエンスイベント ディレクション
2004-2005
三洋電機「アークビューカフェ コミュニケーションテーブル」展示ディレクション
2003-2004
大成高等学校「大成 風のミュージアム」展示ディレクション
2003-2004
岐阜県先端科学技術体験センター第2ステージ 基本構想策定業務
2002
としまえんサイエンスイベント ディレクション
2001-2002
三洋電機太陽電池科学館ソーラーラボ 展示ディレクション
2000-2001
高知市子ども科学館 基本構想策定業務
科学館展示の役割と機能
科学技術コミュニケーションの
メディア(方法)
• 書籍・雑誌・新聞
• テレビ・ラジオ・映画
• 科学館展示
(理工系博物館)
• 学校の授業
• 科学実験・工作キット
• 科学学習用ソフトウェア
• インターネット
• サイエンスショー
• ワークショップ
• 講演会
• コンセンサス会議
• サイエンスカフェ
• 口コミ
• ・・・
三洋電機 ソーラーアーク
(岐阜)
太陽電池科学館ソーラーラボ
(三洋電機ソーラーアークウェブサイトより)
「太陽」「太陽電池」「環境問題」
についての科学館
→どんなことに重点を置きながら
企画・設計したか?
「太陽の科学」についての展示ゾーン
(三洋電機 太陽電池科学館ソーラーラボ)
①情報を階層的に伝える
(三洋電機 太陽電池科学館ソーラーラボ)
タイトル英訳
タイトル
ショルダー
コピー
本文
概要英文
図版
全文英訳
ハンドアウト
①情報を階層的に伝える
(三洋電機 太陽電池科学館ソーラーラボ)
コラムコラム
②多様なメディアを使い分ける
グラフィック
(文字・図・写真)
映像
立体造形
バックライト
フロートパネル装置
(三洋電機 太陽電池科学館ソーラーラボ)
③体験時間を選べるようにする
(三洋電機ソーラーアークウェブサイトより)
30分コース
60分コース
90分コース
展示というメディアに課せられた条件
• 不特定多数の多様な来館者に対して、
それぞれの状況に応じた「コミュニケー
ション」を成立させなければならない。
科学館展示の特長
どんな特長を持ったメディアか?
1. 来館者の「身体」をチャンネルとした体験を提
供する。
2. 来館者同士の対面コミュニケーションを促す。
3. 情報や概念を可視化する。
4. 「モノ」による表現の魅力を伝える。
1. 来館者の「身体」をチャンネル
とした体験を提供する
太陽系重さ比べ
22億分の1の恵み
太陽を記す
心地よい風投票装置
大成 風のミュージアム(東京)
Universum Science Center
(Bremen, Germany)
(Universumパンフレットより転載)
2. 来館者同士の
対面コミュニケーションを促す
アークビューカフェ
(ソーラーアークエリア)
コミュニケーションテーブル
3. 情報や概念を可視化する
太陽電池の原理模型
Science Museum
(Boston, USA)
「技術系企業のミッション」の
可視化
ソーラーラボ コントロールデッキ
グラフィックコンテンツ リニューアル
• 目的
– 三洋電機の環境関連事業、特に太陽電池事業
とソーラーアークエリアの運営、そして企業とミッ
ションとの関係性を整理し、全体像を描く。
方針
• 各事業活動はそれぞれ上位目標を持つ。
• それら全てが最上位目標を実現するための
直接、間接の手段になっている。
• その観点から太陽電池事業やセルのスペック
について語る(=各事業活動を「環境の言葉
」で語る)。
方針
• そうすることによって初めて、例えば、セルの
スペックそのものには興味のない一般の来館
者にとっても、「上位目標」を三洋電機と共有
できる。
• 自分と三洋電機は無関係ではない、というこ
とが納得できる。
方針
• また、ソーラーアーク本体、そしてエリアの活
動の意味を、明確に位置付けるための議論
の土台をつくることができる。
グラフィックコンテンツ リニューアル
基礎資料
• タイトル
– 三洋電機の事業活動とミッションとの関係についての試案
• 地球環境問題への3つのアプローチ
• ねらい:
– 「三洋電機が「地球市民」として、持続可能な未来社会の
実現のためにトータルでどのような役割を果たすのか?」「
その時、企業ミッションに照らし合わせて、三洋電機の太
陽電池事業、ソーラーアークエリアにおける活動はどのよう
に位置付けられるのか?」という問題を整理すること。
(pdfファイル)
4. 「モノ」による表現の
魅力を伝える
ソーラーラボ
館内
フロアマップ
わたしの太陽
もしも太陽が・・・
モノリスヒット
(ソーラーアーク 屋外展示)
どんな特長を持ったメディアか?
1. 来館者の「身体」をチャンネルとした体験を提
供する。
2. 来館者同士の対面コミュニケーションを促す。
3. 情報や概念を可視化する。
4. 「モノ」による表現の魅力を伝える。
北海道大学CoSTEPでは
Opinion Pod
• 概要
– 意見収集・展示システム
– 北海道大学のAAAS2008年次大会へのブース
出展時に制作・運用
– 運用期間:2008/2/15~2/17
• 目的
– 学会会場において、ブース出展者が一方的に情
報を発信するのではなく、参加者からの意見収
集と、参加者間の意見の共有により、双方向の
意見交換の場を創出する。
意見の収集
• ブース来訪者に、「持続可能な開発」に関する4つの質問に答
えてもらった。
1 What do you expect from today's universities in the
way of improving our environmental problems?
2 How can science communication contribute to
sustainable development?
3 What kind of education is necessary to make better
sustainable development in our world today?
4 What is the most valuable thing for you?
意見の展示
1. 収集した意見を、ブースに設置
された大型ディスプレイに表示
(上写真)。
2. 意見のテキストデータを、順に
画面上をスクロールしながら表
示(下写真)。
• ブースを訪れた参加者やス
タッフに対してコミュニケー
ションのきっかけを提供
• 展示と同時に意見をインターネット上でも公
開(http://aaas.costep.jp/)
• 意見入力件数:158件(3日間)
コンセプトの表現型としてのソフトウェア
• 多様な人々の意見に耳を傾けること
• 意見の多様性を共有すること
• コンセプトの表現型としてのソフトウェア
– 出展者の姿勢、理念をソフトウェアの「機能」そのものによっ
て表現
学会会場において、ブース出展者が一方的に情報を発信する
のではなく、参加者からの意見収集と、参加者間の意見の共
有により、双方向の意見交換の場を創出すること。
出展の目的
大学サイエンスフェスタ
北海道大学企画展示
• 大学サイエンスフェスタ北海道大学企画展示
ならびに関連プログラムの統括ディレクション
に従事(2009年12月11日~20日開催)。
• 5つのコーナー(4つのGCOEプロジェクトの紹
介と、北大全体の紹介)により構成。
研究者のライフヒストリー
研究者時代
青春時代
少年時代
幼少期
プロフィール
北海道大学連続講演会の
インターネット生中継
• 「大学サイエンスフェスタ」期間中に北海道大学連続
講演会を開催
• 場所:国立科学博物館日本館講堂(東京)
• 日時:2009年12月13日 10:00~16:00
• 講演会の様子を撮影しインターネットでストリーミング
配信(生中継)
• 当時まだ学術目的では殆ど利用されていなかった
Ustream(動画中継サービス)を活用し、リアルタイム
でTwitterからの反応を集めた。
(※参考 佐藤(2010))
ご協力:@soranoさん
生中継
映像
Twitterによる多数
のユーザーの発言
北海道大学連続講演会の
インターネット生中継
• ウェブ上で昨今、コンテンツの内容そのもので
はなく、それをきっかけにして発生するコミュニケ
ーションを楽しむというコンテンツの消費スタイ
ルが拡大(東 2007, 濱野 2008)。
• 科学技術コンテンツを「ネタ」(=道具)とするコ
ミュニケーションの可能性を示唆。
質問・感想などありましたら
ishimura@cotep.hucc.hokudai.ac.jp
@gnsi_ismr

2013年度博物館教育論第1回