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科学技術コミュニケーションの歴史
• C.P. スノー (1959): 「二つの文化と科学革命」
– 西洋社会の知的営み全体を俯瞰すると、これが「科学」と
「人文学」という二つの文化に分断されていることがわか
る。そして、この分断が、世界の諸問題の解決にとって大
きな障害となっている。
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
30. 王立協会(1985): 「公衆の科学理解
(PUS: The Public Understanding of
Science)」
• ボドマーを議長とする特別委委員会が作成・提出した
ものであり、「ボドマー・レポート」と呼ばれている
• 若者の理科離れ、国民の科学への関心低下を懸念
• 「公衆の科学理解を促進すること」に大きな重点
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
31. 「公衆の科学理解委員会(COPUS: Committee
on the Public Understanding of Science)」を設
立(1985)
• 多様な社会階層を対象にした様々なプログラムを展
開
– 上層の公務員向け講義、女性グループ向け講座
– 大英科学博物館などと協力してポピュラーサイエンスの書
籍に対する顕彰を実施
– 地域密着型の科学普及活動への資金提供
• メディア・フェローシップ、ウェストミンスター・フェローシ
ップ
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
34. 事例: BSE (牛海綿状脳症 Bovine
Spongiform Encephalopathy)問題
• 最初は、1990年前後にイギリスで発生。
• 1988年に設置された、オックスフォード大学の動物学者であるサウスウッ
ド教授らによる専門家委員会は、検討の結果1989年に、「人間へのBSE
感染の危険性は極めて少ない」と結論づけた。
• ただし同時に同委員会は、「さらなる研究が不可欠」「こうした評価が謝
っていれば結果は大変深刻なものになるであろう」と警告した。
• しかし、行政関係者や政治家はこの警告を適切に評価せず、安全性の
みを強調した。
• 1996年に政府は、10名のクロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD : variant
Creutzfeld Jacob Disease)患者について、BSE感染牛を食べたことが
原因で発症した可能性を認めた。
• その結果国民は、政府や政府機関に所属する科学者に対して強い不信
感を抱くようになった。
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
36. 「科学技術社会論」の研究成果
(STS: Science and Technology Studies)
• 「科学知識が増えれば、科学への肯定的態度が増
す」という通説が、単純には成立しない
– 科学知識が多い人ほど科学一般を支持するが、倫理的
な問題をはらむ研究分野に対しては否定的な態度を示す
傾向がある(Durant)。
– 英国、デンマークなど、科学の理解度が高い国々の人々
が、他の諸国に比べて、科学に関心を持っていない。
• ロイヤル・ソサエティの「科学の公衆理解の不足」と
いう認識自体に再検討が必要
– 「欠如モデル(deficit model)」批判
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
38. 「科学技術社会論」の主張
(STS: Science and Technology Studies)
• 欠如モデルに基づいた施策は実際には問題解決を
もたらさない。
• 公衆は単に無知なのではなく、公衆なりの文脈で独
自の知識(=ローカルノレッジ)を持っている。
• 科学者の間でさえ、「科学とは何か」「科学的知識と
は何か」ということについて、明確な合意は存在しな
い。
• 科学への態度は、科学的知識だけではなく、人々の
政治的知識も関係して決まる。
(藤垣 廣野編 2007: 『科学技術コミュニケーション論』)
44. ブダペスト会議(世界科学会議 1999)
1. 知識のための科学:進歩のための知識
2. 平和のための科学
– 科学的思考の特質は批判的かつ自由な思考にあり、これは民主主
義社会にとって不可欠のものである。科学者共同体は、国家や宗教
、民族を超越した議論共同体の伝統を作り上げてきており、これを通
じて「人類の知的、道徳的連帯」を促進すべきである。
3. 発展のための科学
4. 社会の中の科学と社会のための科学
– 科学研究と科学知識の利用は、貧困の克服、人間の尊厳や人権の
擁護、地球環境の保護を目指すべきであり、同時に将来世代への責
任も果たさなければならない。
(小林 2007: 「トランスサイエンスの時代」)
46. 「モード1科学」と「モード2科学」
モード1科学 モード2科学
主な目的 世界の解明 問題解決
典型的な分野 物理学・生物学など 環境学・情報学など
研究の担い手 大学が研究の中心 大学・政府・自治体・企業などの協
同が不可欠
価値規範 CUDOS(※)と呼ばれる科
学のエートスを重視
CUDOSより問題解決への有効性が
優先
(Gibbons et. al. 1994)
※CUDOS:「共有主義(Communalism)」「普遍主義(Universalism)」「利害の超越
(Disinterestedness)」「組織的懐疑主義(Organized Skepticism」
(参考 伊勢田 2011: 「科学の拡大と科学哲学の使い道」, 『もうダマされないための「科学」講義』所収)
52. 大学での取り組み例
• ELSI
– Ethical, Legal and Social Issues [倫理的・法的・社会的問題]
• サイエンスカフェ
– 「科学にまつわる話題を討議するためのフォーラムであって、科
学のウィンドウショッピングではない。われわれは、人々が科学に
もっと具体的に関わり、何のための科学研究なのかを社会全体
で考えることのできるような環境をつくることを目指している」
(http://cafescientifique.org/)
• サイエンスショップ
– 市民からの研究・調査の依頼を受け、大学が学生や大学院生
の教育活動の一環として、その研究・調査を行うというもの。
(小林 2007: 「トランスサイエンスの時代」)
72. 平成23年版科学技術白書
科学技術コミュニケーション活動の現状と今後の展望
(平成23年版科学技術白書 第2節 社会と科学技術との新しい関係構築に向けて)
【コラム】 多方面で活躍する科学技術コミュニケーター養成講座の修了生
• 茨城県水戸市在住の尾林彩乃さんは、北海道大学「科学技術コミュニケータ
ー養成ユニット」(CoSTEP)の2期選科修了生(受講期間:平成18年5月~平
成19年3月)。大阪在住(当時)ということもあり、遠隔受講が可能なCoSTEP
選科コースを選んだ。
• 尾林さんは、名古屋大学理学研究科素粒子宇宙物理学専攻(博士課程)に
おいて天文学を履修した後、兵庫県立西はりま天文台公園で3年間勤務。そ
の後、結婚退職し、しばらくは出産・育児に専念していた。
• ブログを通したCoSTEPの特任教員との出会いを機に、科学技術コミュニケー
ションを体系的に学び、市民との対話活動を実践しようと受講を決めたという
。
• CoSTEP修了後、早速、住んでいた大阪府堺市の子育て支援センターにおい
て、親と乳幼児(0~3歳)向けの体験教室「星の話を聞こう」を実践。水戸へ
転居してからも積極的な対話活動を進め、平成22年12月には、仲間と手作
りで「サイエンスカフェ水戸」をスタートさせた。
資料
112. 国名
次のことについて「そうだと思う」または「全くそうだと思う」と回答した生徒の割合(%)
問12 科学を学ぶことの楽しさ
(1)科学の話題について学んでいる時は、たいてい楽しい (2)科学についての本を読むのが好きだ (3)科学についての問題を解い
ている時は楽しい (4)科学についての知識を得ることは楽しい (5)科学について学ぶことに興味がある
平均 (1) (2) (3) (4) (5)
メキシコ 83 94 82 60 92 85
トルコ 73 79 75 53 78 78
ポルトガル 73 73 66 52 87 84
ハンガリー 65 75 61 46 71 72
イタリア 65 61 59 57 73 73
カナダ 64 73 54 49 73 72
フィンランド 64 68 60 51 74 68
フランス 63 73 48 43 75 77
ギリシャ 60 62 59 40 71 69
ニュージーランド 59 62 43 55 71 65
ベルギー 58 61 45 53 64 68
ノルウェー 58 64 48 47 69 62
日本(全国標本中3) 58 69 43 44 71 62
OECD平均 57 63 50 43 67 63
米国 57 62 47 41 67 65
スロバキア 56 70 51 34 71 57
英国 56 55 38 53 69 67
アイスランド 56 60 53 45 66 56
オーストラリア 56 58 43 49 67 61
チェコ 55 59 47 36 70 62
ルクセンブルグ 54 67 48 42 59 55
スイス 54 67 45 42 60 55
デンマーク 53 63 48 37 55 63
アイルランド 53 48 45 39 68 64
スペイン 53 59 45 27 63 69
スウェーデン 53 62 49 34 61 57
ドイツ 51 63 42 38 52 60
韓国 49 56 45 27 70 47
オーストリア 47 58 42 39 51 44
ポーランド 46 44 47 37 60 44
日本 45 51 36 29 58 50
オランダ 44 46 41 33 56 46
(PISA2006及
び日本の中3
調査結果より)
資料
207. 伝統的知識 vs 科学
•伝統的知識
– 自然環境との間での長年にわたる相互作用を行
ってきている人々によって開発され維持されてき
た知識、ノウハウ、実践表象の累積的総体
•科学
– 特定の世界観に立脚しており、文化的真空の中
に価値中立的に存在するものではなく、その点で
は伝統的知識との間に質的な違いはない
(国際科学会議(ICSU: International Council for Science)レポート 2002)
209. 偽科学 vs 科学
•科学
– 認識論的側面で、その知識を改善・改良していこ
うとする動的力学がもともと内蔵されている。
•偽科学
– 必ずそれに対応し、しかも対立する科学の領域が
存在する。
– その知識は静的で、組織的にその知識を吟味しよ
うといった自己内省的な試みはなされないので保
守的である。
(国際科学会議レポート 2002)
210. 伝統的知識 vs 偽科学
•伝統的知識
– 科学と争おうという意図を持たない。むしろ、科学
に対して情報を提供してきている。
•偽科学
– 科学と同等の認識論的地位を得ることによって現
存する科学的知識を少なくとも部分的には非合
法化させようとする。
(国際科学会議レポート 2002)