2012.06.05 図書館系勉強会



図書館史を勉強したい!
        教科書分析編

        佐藤翔(@min2fly)


                        1
はじめに:今日の概要
• 図書館史を真面目に勉強したい!

• まず教科書を読もう

• 良く使われている教科書とその中身は?

• 読んで思った「ここが足りぬ!」

• 今後はここを勉強していく

                       2
背景1:なぜ
今、図書館史?
      3
今、図書館史がアツイ!       に)
                                      (min2fly的




• 遠因:京大・川崎良孝先生の講演
 –2009.12.14 (資料参照)

• 近因:関西文脈の会
 –http://toshokanshi-w.blogspot.jp/


                                           4
※発表時にはここに関西文脈の会のwebページ
(下記URL)の画面キャプチャが入ってい
         ました




             http://toshokanshi-w.blogspot.jp/2011/06/blog-post.html
図書館史関連本も熱い!

• 『図書館を届ける』(2011.3)

• 『越境する書物』(2011.8)

• 『新たな図書館・図書館史研究』
(2011.9)

                      6
もっと色々
勉強したい!
         7
あわよくば
関西文脈の会に
乗り込みたい!
          8
でも・・・

        9
「図書館史と私」
• 学群自体、図書館文化史を受講せず

• 体系だって学んだ経験がない
 – 面白そうな本の拾い読み/断片

• もっと基本から勉強してみたい

• でも基本ってなんだろ
                     10
そうだ、
「図書・図書館史」
の教科書を読んでみ
   よう!
        11
背景2:「図
書・図書館史」
   とは
      12
「図書・図書館史」とは?
• 司書科目(選択科目:1単位)

• 旧科目名:「図書及び図書館史」




                    13
「図書・図書館史」とは?
  図書及び図書館史(旧科                                                   図書・図書館史(新科目)
      目)
図書の形態、印刷、普及、                                                    必修の各科目で学んだ内容
流通等に関し歴史的に概説                                                    を発展的に学習し、理解を
し、併せて図書館の歴史的                                                    深める観点から、図書をは
発展について解説する。                                                     じめとする各種図書館情報
                                                                資源の形態、生産(印刷等
                                                                含む)、普及、流通等の歴
                                                                史、並びに図書館の歴史的
                                                                発展について解説する。
出典:http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2009/05/13/1266312_8.pdf (2012-
06-04 accessed), http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/shiryo/07062108/002.htm (2012-06-04 accessed)
                                                                                                                   14
「図書・図書館史」の憂鬱

• カリキュラム改定のたび

 削除されかける

• 日本図書館文化史研究会等
の働きかけで存続
                 15
「図書・図書館史」とは?
• 不要論はあれどどっこい存続

• 教科書も数社から出ている

• 開講大学もそこそこ(詳しくは後
述)


                    16
この科目の教科
書を読めばOK!
       17
何社も出して
る・・・どれがい
  いの?
       18
調査1:最も使わ
れている「図書・
図書館史」の教科
  書は?
       19
調査1:指定教科書調査
• 多くの大学で採用されている教科書
は、きっといい教科書なのではない
か?

• 各大学等での教科書採用状況を調査


                     20
調査1:方法 (1)
• 『日本の図書館情
  報学教育』 2005年
  版を使用
• 各大学等での開設      ※発表時にはここに書
                 影が入っていました
  科目・担当教員が
  一覧できる優れ物
• 更新頻度は遅
  い・・・
                         21
調査1:方法 (2)
• 「図書・図書館史」開講大学を特定

• Web上でのシラバス公開状況を調査

 ⇒公開の場合:開講状況を調査

  ⇒開講の場合:教科書を調査


                      22
調査1:結果(1)

• 図書・図書館史開講:    65大学

• うち教科書指定あり: 33大学

 –22大学はプリント+参考資料
 – 6大学は指定なし、2大学は未定、1大学は参考
 書のみ、1大学は記述なし
                        23
調査1:結果(2)

• 指定教科書は全10種類


• うち2大学以上で指定されているのは4冊

• 上位3位までを見てみよう!



                    24
第1位:14大学で採用
小黒浩司ほか編著.
 図書及び図書館
 史.日本図書館協
                 ※発表時にはここに書
 会,2010,142p.,   影が入っていました
 (JLA図書館情報学
 テキストシリーズ
 Ⅱ,12)

                          25
第2位:10大学で採用
寺田光孝ほか編著.
 図書及び図書館
 史.樹村房,
               ※発表時にはここに書
 1999,215p.,    影が入っていました
 (新・図書館学シ
 リーズ (12))


                        26
第3位:2大学で採用
北嶋武彦ほか編著.
 図書及び図書館
 史.東京書籍,
                 ※発表時にはここに書
 1998,271p.,(新    影が入っていました
 現代図書館学講
 座)


                          27
このあたりを読
 めばばっちり
   だ!
      28
というわけ
で・・・読んで
  みた
      29
調査2:各教科書
 の内容は?

       30
調査2:教科書内容調査
• 指定教科書1-3位+その旧版・新版の
計5種類の教科書の内容を比較

• 記述内容・分量・順序・執筆者等からそ
れぞれの特徴を明らかに




                       31
調査2:最初に結論
• 各教科書共通で抑えているところはある



• 配分・構成はかなりはっきりした差があ
る



※次のスライド以降は配布資料も参照
                       32
調査2・結果1:東京書籍版
• 2大学で採用

• 日本/西洋史の2部構成

• 各古代~近現代まで比      ※発表時にはここに書
                   影が入っていました
 較的均等に扱う

• 配分はオーソドック
 ス?
※目次は配布資料参照。以下同様
                           33
調査2・結果2:JLA旧版
• 現在採用なし

• メディア史、海外史、日
 本史に大別
                ※発表時にはここに書
• 日本・近現代の公共図書    影が入っていました
 館史中心

• 海外史も新版よりは厚い
 (ただし各国史の様相)

                         34
調査2・結果3:JLA新版
• 14大学で採用(第1位)

• メディア史、世界史、
 日本史に三分          ※発表時にはここに書
                  影が入っていました
• メディア史の厚さが特
 徴(10章/25章がメディ
 ア史)

• 海外史は薄い
                          35
調査2・結果4:樹村房旧版
• 10大学で採用(第2位)

• 西洋史、中国史、日本
 史に三分            ※発表時にはここに書
                  影が入っていました
• 西洋史の記述が厚い
 (西:中:日が3:1:2)

• 「明治以降の日本図書
 館のモデルは西洋だか
                          36
調査2・結果5:樹村房新版
• 5月発売/現在採用なし

• 古代/中世など時代区分
 により部編を構成       ※発表時にはここに書
                 影が入っていました
• 中国・インド・イスラ
 ム圏の記述が厚い

• 古代・中世・近世>近
 現代
                         37
調査2:まとめ
• 東京書籍:日本と西洋、時代は均等配分
• JLA旧版:日本近現代中心
• JLA新版:メディア史と日本近現代史中心
• 樹村房旧版:西洋図書館史中心
• 樹村房新版:より多くの地域を含む、古
 代~近世>近現代史
                       38
調査2:まとめ
• 東京書籍:日本と西洋、時代は均等配分
   ・必須項目はありつつも構
• JLA旧版:日本近現代中心
    成・配分はかなり自由度が
• JLA新版:メディア史と日本近現代史中心
    高い
• 樹村房旧版:西洋図書館史中心
   ・個人的オススメはJLA新 or
• 樹村房新版:より多くの地域を含む、古
    樹村房 新旧
 代~近世>近現代史
                       39
いろいろ読んで
 気付いたこと
      40
「なぜ学ぶの
か」がわからな
   い!
      41
なぜ学ぶのか? (1)
• より正確には・・・「この教科書の内容
を学ぶ意義」とは?

• 「なんの役に立つのか・・・」等以前
に、「その事実の歴史的意味」について
の記述が薄い


                       42
なぜ学ぶのか? (2)
• 個別の事実記述はあるが、相互の関係、
全体の流れが提示されない
 – 「なぜこの事実は重要か(教科書に書くに値
  したのか)」がわからない

• 樹村房新版は比較的健闘
 – 最終章に全体の概観がある/各章は事実羅列的

                       43
教科書に足りないもの?(1)
• 谷航さん:「マクロ図書館史」@関西文
脈の会
 – http://taniwataru.blogspot.jp/2011/02/blog-post_06.html

• 記述メディアの変遷からの図書館史概観
 – まさに教科書にあって欲しい内容?

 – 資料(情報)、場所、人の変遷とその相互関
   係、通底するものを事例を検証しつつ論じ
                                                             44
教科書に足りないもの? (2)
• 図書館史版『銃・病原菌・鉄』があれ
ば・・・
 – 実はありそう/確実にある(書物史研究等

• その視点が教科書にもあれば・・・
 – 図書館の「よって立つところ」に関する知識

 – 不要論は出てこない?
                         45
これから
どうする?
        46
今後の勉強の方向性
1. 図書館史における『銃・病原菌・鉄』探
 索
 – 確実にある。予感はある

2. 図書館史教育調査の継続
 – シラバス内容/参考書調査?

3. 図書館史教育に関連しそうな異分野調査
 – 歴史教育全般/他の専門職等の分野史   47
俺たちは登りはじ
  めたばかり
だ・・・この長い
 図書館史坂を
       48
引用・参考文献
1.  事務局2号. “関西文脈の会について”. 図書館史勉強会@関西 関西文脈の会. 2011-06-13. http://toshokanshi-
    w.blogspot.jp/2011/06/blog-post.html, (2012-06-04 accessed).
2.  中山愛理.図書館を届ける : アメリカ公共図書館における館外サービスの発展. 学芸図書, 2011, vii, 320p.
3.  和田敦彦. 越境する書物: 変容する読書環境のなかで. 新曜社, 2011, 362p.
4.  川崎良孝, 吉田右子. 新たな図書館・図書館史研究 : 批判的図書館史研究を中心にして.京都図書館情報学研究
    会, 2011, xxii, 402p.
5.  “司書養成のカリキュラムに関するこれまでの主な意見等”. 文部科学省ホームページ.
    http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/shiryo/07062108/002.htm , (2012-06-04 accessed).
6.  “司書資格取得のために大学において履修すべき図書館に関する科目一覧”. 文部科学省ホームページ.
    http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2009/05/13/1266312_8.pdf , (2012-
    06-04 accessed).
7.  これからの図書館史教育と図書館史研究:日本図書館文化史研究会2009年度研究集会シンポジウム. 図書館文
    化史研究. 2010, vol.27, p.1-44.
8.  河井弘志. 図書館史研究の意義. 図書館文化史研究. 1997, vol.14, p.1-4.
9.  日本図書館協会図書館学教育部会編纂. 日本の図書館情報学教育 2005:平成16年調査 図書館情報学開講大学一
    覧 図書館情報学教育担当者名簿. 日本図書館協会, 2008, 345p.
10. 小黒浩司ほか編著.図書及び図書館史.日本図書館協会,2010,142p.,(JLA図書館情報学テキストシリーズ
    Ⅱ,12)
11. 寺田光孝ほか編著.図書及び図書館史.樹村房,1999,215p.,(新・図書館学シリーズ , 12)
12. 北嶋武彦ほか編著.図書及び図書館史.東京書籍,1998,271p.,(新 現代図書館学講座)
13. 小黒浩司ほか編著.図書及び図書館史.日本図書館協会,2000, 140p.,(JLA図書館情報学テキストシリーズ,
    12)
14. 佃一可ほか編著. 図書・図書館史.樹村房,2012,227p.,(現代図書館情報学シリーズ, 11)
15. 谷航. “マクロ図書館史”. ぺえぺえ魂. 2011-02-06. http://taniwataru.blogspot.jp/2011/02/blog-post_06.html , (2012-
    06-04 accessed).
16. ダイアモンド, ジャレド. 銃・病原菌・鉄.倉骨彰訳. 草思社, 2000, 2冊.
背景画像: listentoreason. “BJ927 Ancient Egypt at British Museum”. Flickr.                                         49
    http://www.flickr.com/photos/51159953@N00/2553473016 , (2012-06-04 accessed).

勉強会KLC「図書・図書館史回」