パラダイム・チェンジを考える トーマス・クーン『科学革命の構造』
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パラダイム・チェンジを考える トーマス・クーン『科学革命の構造』
- 2. パラダイム・チェンジ • イノベーションを生み出すためには、モノの見方を変える必要 がある • そもそもパラダイムとは何だろう？ • どのようにパラダイムは変わるのだろう？
- 3. トーマス・クーン『科学革命の構造』 • 1922年生まれ • 1943年ハーバード大学で物理学を専攻し学士 • 1946年同大学で修士 • 科学史・科学哲学に転向 • 1949年に博士 • その後、カリフォルニア大学バークレー校、 プリンストン大学、マサチューセッツ工科大 学などに
- 5. パラダイムとは • 科学を構成する大切な要素 • 定義は簡単ではない • 『科学革命の構造』では20通り以上の使われ方がされている • 一定の期間、研究者の共同体にモデルとなる問題や解法を提供する一 般的に認められた科学的業績
- 6. パラダイム • 合意なのでは？ • 科学者たちが合意しているルールや定義などを数えようとした • しかし、実際に合意しているものはあまりなかった • 合意ではなく、やっていることが概ね一致しているとそれぞれ が想定できる状態
- 7. もしも、パラダイムが成立していなければ • それぞれが勝手に研究を進める • 問題の設定もバラバラ • 概念の定義もバラバラ • 実験の手続もバラバラ • 測定の方法もバラバラ • 分析の方法もバラバラ
- 10. パズル解きとしての通常科学 • 研究が一定の型にしたがって進む • 解くべき問題とその解き方が共有される • パズルを解いているように • 累積的でなおかつ専門的になる • 斬新な研究は出にくくなる
- 12. 通常科学が進んでくると • 研究が精緻化してくると、変則的な事象に気付く • 変則的な事象：既存のパラダイムでは説明できないもの • アリストテレス運動論における投射運動 • ニュートン力学におけるエーテルに対する地球の相対運動の問題
- 13. 変則性が明らかになると • 人々の反応は • とるに足らない問題だと無視する • 既存のパラダイムで説明しようと試みる • 変則性が無視できず、既存のパラダイムでも解決できないもの と認識され始めると • 通常科学は危機に
- 15. パラダイムが揺らぐ • 変則性を解決するために、多くの異なる考え方（理論）が生み 出される • 通常科学のルールはかすんでくる • 多くのパラダイム候補が乱立する
- 16. 異常科学の「異常」さ • 科学と非科学を分ける境界がゆらぐ • 見解が対立する • 通約不可能性 • 問題にしている現象や前提、概念の定義、測定方法、分析方法などが 異なる • それぞれの見解の優劣がなかなかつかない • 同じルールで決着をつけることはできない
- 18. 科学革命 • 異常科学が収束し、新しいパラダイムに置き換わること • 天動説（地球中心説）から地動説（太陽中心説）への転換 • ある特定のパラダイムが、多くの研究者の支持される
- 19. なぜ「革命」なのか • それまでの見え方（世界観）が大きく変わる • コペルニクスの『天球回転論』 • 考え方や方法、目標などもすっかり変わる • 鴨が兎に
- 20. なぜ「革命」なのか • どちらが優れているかの優劣を比べる基準が共有できない • 通常科学の範囲内では決着をつけられない • 科学の範囲の外で決着することになる • 政治革命 • 絶対王政を倒すには、その制度の範囲内ではムリ • 革命が構造的に必要となる
- 21. 新しいパラダイムが広がり、通常科学へ • 新しいパラダイムが十分に共有されると、再び通常科学に • 新しいパラダイムを形成するのに成功した科学者たちは、「革命」は 進歩であると捉える • 教科書などでは、真理に向かう進歩であると説明する • 新しいパラダイムに移行しない人に対しては • 疑似科学であるというレッテルが貼られる
- 22. 科学革命のプロセス
- 23. 『科学革命の構造』が提示したもの 科学の進歩についての幻想 • 普遍的な真理について一歩一歩近づい ているという科学観 1 パラダイム・チェンジについて • 変則性の現れ方 • 担い手 • 決着のつけかた 2
- 24. 科学の進歩についての幻想 • 科学は進化しているが、合理的に進歩するわけではない • 教科書的な理解：これまでの科学の成果は、連続的な進歩の結果 • 普遍的で絶対的な真理へと段々と近づくという科学観 • 進歩とは？ • 進歩していると言えるのは、通常科学におけるパズル解きのフェーズのみ • 相対主義者だという批判 • 科学者が実際にやっていることに対する批判ではなく、科学に対する実態と はかけ離れてしまったイメージを修正
- 25. パラダイム・チェンジ：変則性の現れ方 • 変則性 • 既存のパラダイムでは説明のつかない（解決できない）もの • 変則性の現れ方 • 既存のパラダイムを精緻化していかないと、何が変則性なのかは分か らない • 精緻化がなければ、多くの人が受け入れる変則性にはならない • 本当に何が問題なのかが明確になっていなければ、パラダイ ム・チェンジのきっかけとはならない
- 26. パラダイム・チェンジの担い手 • アスペクト盲 • 状況についての複数の把握の仕方があるのにもかかわらず、1つの把握 の仕方しか出来ないこと • パラダイム・チェンジの担い手 • 既存のパラダイムの中心的な人ではない • 若手や新規参入者など
- 27. パラダイム・チェンジの決着 • 既存の規準の外側での決着 • 「パラダイム間の競争は、証明によって決着をつけられるような種類 の戦いではない」 • 「1つの理論が他の理論に優越することは、論争で証明し得ない」 • 「そこで、各々の派は、むしろ説得して他の派を転校させようとしな ければならない」 • 革命が構造的に必要