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38 諸葛祭風(孔明、祈祷により東南の風を呼ぶ)




     東南の風祈願の儀式を行う孔明
第 38 集   諸葛祭風(孔明、祈祷により東南の風を呼ぶ)2009.6.28 更新
         ―「3 時間で~」第 41 話参照

チャプター①     周瑜の陣営。解説「周瑜は曹操に対して火攻めを考えていたが、火攻めに必要
           な東南の風がその時期に吹かない事に気づき、血を吐いて悶絶した」~
チャプター②     船着場にある点将台で、大将たちに次々と号令をかける周瑜~
チャプター③     周瑜に孔明殺害を命じられ南屏山にやって来た徐盛と丁奉、趙雲に矢を射かけ
           られ、なす術もない~
チャプター④     夏口に戻った孔明、趙雲・張飛らに曹操追撃を命じるが...
チャプター⑤     曹操、参謀の荀攸に「黄蓋からの手紙はまだか?」と尋ねる~
           ~黄蓋からの手紙(投降の手はずを書いたもの)を受け取り大喜びする曹操。


この第 38 集は、周瑜による曹操火攻め作戦(赤壁の戦い)が始まる直前の場面。


火攻めをするには風向きが、周瑜側(東南)から曹操側(西北)に吹けば成功するが、反対方向に
吹いた場合、逆に周瑜軍自身が焼けてしまう。ところがその時期は陰暦の 11 月(冬至の前)。
風は専ら西北から吹いていたらしい。困り果てた周瑜、思い悩んだすえ病に倒れてしまう。そ
こへ孔明が登場し、みごと東南の風を吹かせるという段取りである。


⑤ところで東南の風が吹き始めた当初、火攻めされる事を心配する参謀・程昱に対して




 曹操は次のように答える:「冬至になれば陽が生じるという事は常識だ。今がちょうど冬至
なのだから東南の風が吹いたっておかしくない。心配するな。(孰不知冬至陽生、夏至陰生。
来復之時豈不東南風偶起啊?不足為怪啊!)」




                        ←勝利を確信して傲慢になり、程昱の心
                        配を笑い飛ばしてしまう曹操




「冬至になれば陽が生じ、夏至になれば陰が生じる」というのは「陰極まれば陽が生じ、陽
極まれば陰が生じる」という陰陽思想に基づくもの。つまり冬至は春の始まりだという事ら
しい。曹操は程昱の前でなかなか博学なところを見せているが、冬至であれ何であれ、東南
の風が自軍に不利だという事に気づかなかったのだろうか?




         ↓剣をもつ孔明と鞘(さや)をもつ少年

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