【B08】日本の水族館の動向と効率性の変化【青森中央学院大学/経営法学部 水族館チーム(山本クラス)】
- 2. 1.はじめに①
表1 観光スポット
ランキング じゃらんニュース
タビオモ!
(TABI-NO-OMOIDE)
ランキング数 13選 10選
水族館数 4スポット 2スポット
水族館占有率 約31% 20%
順位 国名 水族館数
1 アメリカ 102
2 日本 57
3 中国 30
4 イングランド 19
5 スペイン 17
データ出所:マンボウ何でも博物館
日本人は水族館好き!
表2 国別水族館数と密度
図1 日本の水族館分布
(平成29年度)
順位 国名 水族館数/10万km2
1 イタリア 27.8
2 イングランド 14.6
3 デンマーク 13.9
4 日本 13.8
5 大韓民国 11.0
データ出所:「日本水族館・動物園年報」平成29年度版
- 3. • 水族館とは・・・?
「観光スポット」だ
・・・もっと多機能!
•Japan Association of
Zoos and Aquariums
① 種の保存
② 教育
③ 調査・研究
④ レクリエーション
1.はじめに②
・水族館が抱える問題点!
①水族館の人気者(海洋哺乳類)の取引制限
動物権保護:「追い込み漁のイルカの
水族館導入の抑制」
・・・桐畑(2016)
取 引 規 制:ワシントン条約
②施設の多様化・魅力度UPへの投資
・・・須川・森・野村(2014)
⇒ 水族館を取り巻く環境の悪化!
⇒ 水族館も努力!
- 6. ・データ:「全国水族館・動物園年報」、平成25、27、29、令和1年版
例えば、サービスを1単位生産するのに何人必要か?
t=2時点
• D社:10人 ⇔ 0.4倍 …効率性=0.4
• C社: 8人 ⇔ 0.5倍 …効率性=0.5
• B社: 6人 ⇔ 0.66倍…効率性=0.66
• A社: 4人 ⇔ 1倍 …効率性=1.0
t=1時点
• D社:8人 ⇔ 0.25倍…効率性=0.25
• C社:6人 ⇔ 0.33倍…効率性=0.33
• B社:4人 ⇔ 0.5倍 …効率性=0.5
• A社:2人 ⇔ 1倍 …効率性=1.0
例えば、D社の効率性・・・0.25 → 0.4へ UPしているように見える!
しかし、1単位作るのに8人から10人に増えている。→効率性は下がっている!
*異時点間の比較不可能!これを改善する方法…Malmquist指数!
D社のMalmquistt=1→t=2 =
2
4
×
0.4
0.25
=
0.8
1
< 1 …効率性低下
基準の変化 水族館の変化
基準
3.効率性変化の計測のアイデア
基準
- 8. 4.実証分析②
表5 回帰分析の結果 25-27 27-29
係数 P値 係数 P値
切片 1.03 0.000 0.90 0.000
哺乳類展示数変化率 0.24 0.059 0.10 0.359
鳥類展示数変化率 -0.02 0.942 0.42 0.035
従業員変化率 -0.24 0.089 -0.27 0.236
Adj-R2 0.061 0.071
Sample Size 54 50
分析課題2:
経営効率性の変化率=f(哺乳類展示変化率、鳥類展示変化率、従業員数変化率)
⇒25-27 ① 哺乳類展示が増えれば、効率性UPへ!
② 従業員が減れば、効率性UPへ!
⇒27-29 ③ 鳥類展示が増えれば、効率性UPへ!
Editor's Notes
- 名前・テーマ
水族館の動向と効率性の変化について報告させていただきます。
- まずこちらをご覧ください。〈表1〉表1は、いくつかの観光サイトの情報をまとめたものです。じゃらんニュースによると、人気スポット13のうち、4スポットが水族館で、31%を占めています。また、タビオモ!によると10スポットのうち2つが水族館を紹介しています。〈図1〉図1の平成29年度版日本水族館・動物園年報の日本の水族館分布をみると、日本全国に水族館があることがわかります。国別の水族館数を見てみると、日本には52の水族館があり、アメリカの102に続き世界で第2位の数を誇っています。10万平方キロメートル当たりの密度で見ても、第4位で、10万㎢当たり13.8個の水族館があります。やはり、日本人は水族館好きだということが言えます。
- ところが、水族館の機能はレジャーだけではなく、JAZA(ジャパン・アソシエーションオブ・ズー&アクアリウム)によると種の保存や教育、調査や研究などの役割を持っています。こうした、私たちには身近な水族館ですが、実は水族館は多くの問題点を抱えています。1つ目は、水族館の人気者であるイルカなどの海洋哺乳類の取引制限についてです。
昨今、動物権保護が指摘されていて、追い込み漁の禁止により、追い込み漁で捕獲されたイルカを水族館に導入することが抑制されています。また、施設の多様化・魅力度アップへの投資についても問題点として指摘されています。このように水族館を取り巻く環境は、悪化しており、水族館もいろいろな努力をしています。例えば…
- 集客力のアップについては、テクノロジーアートを活用した展示や、海洋哺乳類への依存体質の脱却を挙げています。実際に、山形県の鶴岡市立加茂水族館では、クラゲを専門に展示していたり、福島県のアクアマリンふくしまではシーラカンスを売りにしたりしています。また、コストダウンについても、京都水族館でLED照明の導入や省エネルギー、飼育水のくみ上げを行うなどの工夫をしています。経営改革については、施設をリニューアルすると集客力が上がることからリニューアルが行われているほか、来場者のニーズに対応しながら、水族館の役割を果たすための取り組みが行われています。そこで私たちはこのような水族館の取り組みにより経営効率性は改善しているのかについて注目しました。
- こういった、経営効率性に関する先行研究を見てみると、樋口(2015)では、水族館のリニューアル時に客が増えることを指摘していたり、三田祭ではペンギンが収益の増加に影響するということを指摘していたりします。水族館の経営効率性の改善に焦点をあてた先行研究は見当たりません。そこで私たちは、海洋哺乳類への依存からの脱却やペンギンの重要性などを指摘する研究があるため、海洋哺乳類・鳥類の展示の変化が経営効率性をどのように変化させるのかについて分析しました。具体的には2つの分析課題を設定しており、1つ目で経営効率性の改善状況を把握したうえで、2つ目は経営効率性の変化率と哺乳類展示の変化率、鳥類変化率、従業員数変化率がどのような影響を与えているのかを分析します。
- 次に効率性変化の計測のアイデアについて説明します。例えば、サービスを一単位生産するのに何人必要かを考えるとします。t=1時点のときにa社は2人、b社は4人、c社は6人、d社は8人使って1単位のサービスを生産しているとします。そうすると、その中で最も効率的なのはa社なのでa社が基準になります。a社は1番少ない人数で1単位を生産しているからa社が最も効率的です。だから、a社を基準に考えるとd社はa社のように効率化するためには、人を0.25倍しないと効率的になれません。c社は人を0.33倍倍しないと効率的になれません。B社は0.5倍しないと効率的になれません。a社は自分が基準なので1倍すればよいです。これと同じように、t=2時点では、a社は4人、b社は6人、c社は8人、d社は10人でサービスを一単位生産していると考えます。そうすると、最も効率的なのはa社なので、a社を基準に考えると、d社がa社のように効率的になるためには0.4倍、c者は0.5倍、b社は0.66倍、a社は自分が基準なので1倍すればいいです。例えば、d社の効率性を数値的にみてみると0.25から0.4へ上がっているように見えます。しかし、1単位つくるのに8人から10人に増えているから効率性は下がっているんです。つまり、効率性を異時点間で比較することはできないのです。これを改善する方法としてあるのがMalmquist指数です。私たちはこれを使います。t=1からt=2にかけてのMalmquist指数はどうやって計算するのかというと、まず基準がどう変化したか、をみます。基準はa社だったので、2/4という数値から基準の変化を捉えます。そしてさらに水族館自身の変化、今はd社の効率性を計算しているので、d社の変化、つまりd社の0.5から0.25までの変化を掛け算したものがMalmquist指数になって、この場合0.8と出ます。これが1よりも小さければ効率性が、低下している、悪化と判断します。データは全国水族館動物園年報から入手しました。
- 分析課題1つ目の効率性の改善状況の把握についてまとめたものが図2になります。青い線が平成25年から27年にかけてのMalmquist指数を示していて、オレンジの線が平成27年から平成29年にかけてのMalmquist指数を示しています。1を上回っているところが効率性を改善しているところで、実際1を上回っているのが平成25年から平成27年では21個の水族館、平成27年から平成29年では15個、1を下回っているのが平成25年から27年では36個、平成27年から29年では42個でした。また,浅虫水族館については、平成25年から27年についてはMalmquist指数が1.075で効率性が上がっていたけれど、平成27年から29年にかけては、Malmquist指数が0.685ということで効率性が低下しているということが分かります。
- 分析課題2つ目の経営効率性の変化率について回帰分析し、まとめたものが表5になります。
(表5)平成25~27年で分かったことは,まず(①)哺乳類展示が増えると効率性がUP(哺乳類展示数変化率が1%UPすると、効率性が0.24%UP)します。そして(②)従業員
が減ると効率性がUP(従業員変化率が1%DOWNすると、効率性が0.24%UP)します。
平成27~29年で分かったことは、(③)鳥類展示が増えると効率性がUPしする(鳥類展示数変化率が1%UPすると、効率性が0.42%UPする)ということがおおむね言え
ます。
- 問題意識から、経営効率性はどのように変化するかというと、哺乳類展示の増加、従業員の減少、鳥類展示の増加によりUPします。
やはり海洋哺乳類展示は水族館の効率性にすごく影響を与えています。哺乳類が増えれば、お客さんの数が増えて、効率性がUPすると考えられます。そういう意味ではすごく重要であると考えられます。しかし、動物権の保護や条約のため海洋哺乳類の取引が制限されています。そのため、最近はそれを補うような様々な努力が見られます。特に、(スライド4)集客力UPのために、テクノロジーアートを活用した生体展示や海洋哺乳類への依存体質の脱却を目指す加茂水族館やアクアマリンふくしまの取り組みのように、哺乳類に頼らない水族館も見えてきています。よって、水族館の努力は理にかなったことであるといえます。これは、今後、水族館の生き残りのポイントになると私たちは考えています。
- 参考文献は以下のとおりです。ご清聴ありがとうございました。