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高音急墜型感音難聴の純音聴力閾値と語音聴取能との関係 1
- 1. 高音急墜型感音難聴の純音聴力閾値と語音聴取能との関係 狩野章太郎１ 宇佐美真一２ 熊川孝三３ 高橋晴雄４ 東野哲也５ 内藤泰６ 土井勝美 ７ 伊藤健８ 鈴木光也９ 坂田英明１０ 工穣２ 岩崎聡１１ 柿木章伸１ 山岨達也１ １）東京大学医学部耳鼻咽喉科 ２）信州大学医学部耳鼻咽喉科 ３）虎ノ門病院耳鼻咽喉科・聴覚センター ４）長崎大学医学部耳鼻咽喉科 ５）宮崎大学医学部耳鼻咽喉科 ６）神戸市立医療センター中央市民病院耳鼻咽喉科 ７）近畿大学医学部耳鼻咽喉科 ８）帝京大学医学部耳鼻咽喉科 ９）東邦大学耳鼻咽喉科学講座（佐倉） １０）目白大学言語聴覚学科 １１）信州大学医学部人工聴覚器学講座
- 2. はじめに 残存聴力活用型人工内耳 低音部は補聴器による音響的な増幅、高音部は電気刺激 日本語話者への暫定的な適応： １）両耳が以下の気導聴力の条件全てを満たす高音急墜型感音難聴患者 • 125Hz、250Hz、500Hzの純音聴力閾値が65dB以下 • 2000Hzの純音聴力閾値が80dB以上 • 4000Hz、8000Hzの純音聴力閾値が85dB以上 ただし上記に示す周波数のうち、１箇所が10dB以内の範囲で外れる場合は対象とする。 ２）補聴器装用下において静寂下での語音弁別能が65dBで60%未満であること 目的 高音急墜型感音難聴における単音節の聴取能と純音聴力閾値との関連を調べ、 純音聴力検査の結果からハイブリッド型人工内耳の適応を評価するための基礎的な データとする。
- 3. 対象 両耳が以下の気導聴力の条件全てを満たす高音急墜型感音難聴患者 • 125Hz、250Hz、500Hzの純音聴力閾値が75dB以下 • 2000Hzの純音聴力閾値が70dB以上 • 4000Hz、8000Hzの純音聴力閾値が75dB以上 条件を満たしたのは１０５耳で、年齢は２７歳～９０歳（平均６５歳）、男性５５耳女性５０耳 であった。 方法 • 500Hzの純音聴力閾値で３群に分け、 67-S語表による最高語音明瞭度との関係を見 る • 1000Hzの純音聴力閾値で３群に分け、 67-S語表による最高語音明瞭度との関係を 見る • 67-S語表による異聴の傾向
- 4. 35dB未満 35dB以上60dB未満 65dB以上 500Hzの純音聴力閾値で３群に分けた 500Hz付近の 閾値がかなり 悪くても語音 明瞭度の良い 群が存在する 500Hz付近の 閾値がかなり 良くても語音 明瞭度の悪い 群が存在する 最高語音明瞭度が得られた 音圧 (dBHL) 最 高 語 音 明 瞭 度 （％ ）
- 5. 1000Hzの純音聴力閾値で３群に分けた 45dB未満 45dB以上70dB未満 70dB以上 Group 1 Group 2 Group 3 最高語音明瞭度が得られた 音圧 (dBHL) 最 高 語 音 明 瞭 度 （％ ）
- 6. 67-S語表の各単音節の正答率 Group 1 Group 2 Group 3 1000Hzの純音聴力閾値で分類
- 7. 半母音 摩擦音 破擦音 破裂音 通鼻音 母音 弾音 1000Hzの純音聴力閾値が45dB未満の群と70dB以上の群では正答率に大差があり、高音 急墜型の語音聴取能を予測するに有用であると考えられた。
- 18. 正 答 率 破擦音 • 500Hzで35dB未満 • 500Hzで35dB以上60dB未満 • 500Hzで60dB以上 音韻によって正答率の分布が異なる ３群を通して正答率の高い母音 子音は３群で正答率が大きく変わる 破裂音 母音摩擦音半母音弾音 通鼻音 弾音 り 90% 59% 53% 通鼻音 も 62% 52% 24% に 43% 35% 37% ね 19% 28% 16% 破擦音 じ 67% 63% 47% 破裂音 た 62% 35% 13% て 57% 41% 26% と 81% 59% 53% き 76% 65% 58% く 76% 83% 76% ば 86% 57% 34% が 81% 61% 39% 半母音 わ 52% 30% 21% よ 67% 59% 55% 摩擦音 し 67% 35% 45% す 48% 17% 32% は 52% 59% 37% 母音 あ 81% 78% 74% う 57% 70% 61% お 76% 80% 61%
- 19. 最高語音明瞭度で２群に分けて、純音聴力検査のグラフの傾向に違いが見られるか？ 50%未満vs50%以上 55%未満vs55%以上 60%未満vs60%以上 65%未満vs65%以上 →日本語では500Hzの閾値よりも1000Hzの閾値が語音明瞭度に効いているのかもしれない
- 21. 正 答 率 破擦音 音韻によって正答率の分布が異なる 1000Hzが悪いと母音の正答率も下がっ てくる 子音、特に破裂音や摩擦音では３群で の正答率のバラツキが大きくなる 破裂音 母音摩擦音半母音弾音 通鼻音 • 1000Hzで45dB未満 • 1000Hzで45dB以上70dB未満 • 1000Hzで70dB以上 弾音 り 82% 70% 46% 通鼻音 も 91% 47% 24% に 55% 42% 24% ね 18% 28% 14% 破擦音 じ 73% 63% 46% 破裂音 た 73% 39% 11% て 73% 39% 30% と 82% 67% 46% き 82% 70% 51% く 73% 88% 68% ば 91% 63% 30% が 91% 65% 35% 半母音 わ 64% 33% 19% よ 73% 65% 46% 摩擦音 し 82% 42% 38% す 64% 25% 24% は 45% 63% 30% 母音 あ 82% 91% 54% う 64% 70% 54% お 82% 79% 59%
- 23. • 500Hzで35dB未満 • 500Hzで35dB以上60dB未満 • 500Hzで60dB以上 • 1000Hzで45dB未満 • 1000Hzで45dB以上70dB未満 • 1000Hzで70dB以上 • LPF 1000Hz • LPF 700Hz • LPF 500Hz 正 答 率 →500Hzの閾値で３群に分けた場合でも、1000Hzの閾値で３群に分けた場合でも音韻によって正答率 の分布が異なる。後者の方が広い範囲の正答率をカバーでき、また健聴者でローパスフィルターを用 いてシュミレーションした結果に近い。