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20101011
- 1. デジタル教科書と読みの困難な 子どもたちへの支援 著作権法改正と教科書デジタル化 による学習支援の可能性 2010年10月11日 愛知県立大学 日本LD学会自主シンポジウムJ-45 埼玉県立坂戸西高等学校 井上 芳郎 1
- 3. 著作権法 第３７条３項 新旧対照 3 文化庁資料に一部加筆
- 4. 著作権法施行令第2条（2010年1月1日施行） （視覚障害者等のための複製等が認められる者） 1. 児童福祉法第7条第1項の知的障害児施設及び盲ろうあ児施設 2. 大学等の図書館及びこれに類する施設 3. 国立国会図書館 4. 身体障害者福祉法第5条第1項の視聴覚障害者情報提供施設 5. 図書館法第2条第1項の図書館（司書等が置かれているものに限る） 6. 学校図書館法第2条の学校図書館 7. 老人福祉法第5条の3の養護老人ホーム及び特別養護老人ホーム 8. 障害者自立支援法第5条第12項に規定する障害者支援施設及び同条第1 項に規定する障害福祉サービス事業を行う施設 上記以外で、視覚障害者等のために情報を提供する事業を行う法人のうち、 視覚障害者等のための複製又は自動公衆送信（送信可能化を含む。）を的 確かつ円滑に行うことができる技術的能力、経理的基礎その他の体制を有 するものとして文化庁長官が指定するもの→（財）日本障害者リハビリテー ション協会他6団体が個別指定されている 4
- 5. 「障害のある児童及び生徒のための教科用 特定図書等の普及の促進等に関する法律」 （教科書バリアフリー法） 2008年9月17日施行 国の責務として障害のある児童及び生徒のための 教科用特定図書等の発行・普及の促進等を図る。 教科用図書発行者は、発行をする検定教科用図書 等について適切な配慮をするよう努める。 教科用図書発行者からの電磁的記録（デジタルデー タ）の提供義務等について明示。 視覚障害だけでなく、発達障害その他の障害のある 児童及び生徒の使用する教科用図書についても調 査研究等を推進することを明示。 5
- 6. 教科書バリアフリー法施行に伴う著作権法改正 2008年9月17日施行 著作権法第３３条の２第１項では弱視の児童・生徒の ための複製のみが権利制限の対象であったが，発達 障害その他の障害により教科用図書に掲載された著 作物を使用することが困難な児童・生徒のための複 製も対象とした。 拡大の他，児童・生徒が使用するために必要な方式 での複製も権利制限の対象に。録音図書やマルチメ ディアデイジー図書等の作成についても，児童・生徒 の必要に応じてこの規定の対象とした。 非営利目的の場合には，教科書発行者（出版社）へ の事前通知のみで複製可能とした。 6
- 7. 平成21年度「発達障害等に対応した教 材等の在り方に関する調査研究事業」 文部科学省 「教科書バリアフリー法」を踏まえ、発達障害 等の児童生徒の障害の状態等に応じた教科 用特定図書等や教材の在り方及び効果的な 指導方法や教育効果等について実証的調査 研究。 → 「リハ協」等の４団体に委託 日本障害者リハビリテーション協会 「発達障害等に適する電子教科書と教材の 研究」 → デイジー教科書の利活用等研究 7
- 8. 2020年までに「フューチャー スクール」の全国展開完了（総務省） タブレットPC、デジタル教材（電子教科書） 等を活用し、児童・生徒が互いに学び合 い、教え合う「協働教育」をガイドライン化 （2010～12年度）し、これに基づき全国展 開を計画的に推進 2010年度より「教育クラウド」の構築を進 め、2012年度には教育現場に加えて校 務への活用を開始し、2015年度までには 学校運営の状況についての評価を可能 とする体制を整備 8
- 9. 学校教育の情報化に関する懇談会 （鈴木寛文部科学副大臣主催） 教育の情報化ビジョン骨子 2010年8月26日 特別支援教育における情報通信技術の活用 障害のある子どもたちにとって、情報通信技術は、障害 の状態や特性・ニーズ等に応じて活用することにより、各 教科や自立活動等の指導において、その効果を高める ことができる点で有用 学習者用デジタル教科書の開発、情報端末 小中高等学校や特別支援学校等の学校種・発達の段 階・教科に応じた教育効果や指導方法、必要な機能の 選定・抽出、規格、モデル的なコンテンツの開発、供給・ 配信方法、子どもたちの健康への有無やこれに配慮した 仕様や活用方法、障害のある子どもたちについて障害 の状態や特性・ニーズへの対応等について実証研究 9
- 10. 参議院行政監視委員会答弁 2010年4月26日 文科副大臣（鈴木寛君） ・・・・各学校におい て、先ほど申し上げました個々の児童生徒が 学習上必要とする場合には、DAISYの教科書 の提供（注）は可能でございます。それから、教 員がDAISY教科書を使用する、障害ある児童 生徒の指導のために利用する場合にも、教員 への提供（注）は可能でございます。そのことが 十分徹底されていないということが分かりまし たので、そのことをきちっと徹底をしたいという ふうに思っておりますので、そこはきちっとや らせていきたいと思います。 （注）ただし文科省自身が「提供」するわけではない。 10
- 11. 文科省「教育の情報化に関する手引」 2009年3月30日 11
- 12. ICT活用による支援方策 発達障害のある児童生徒への具体的な支援方策 文科省「教育の情報化に関する手引」 2009年3月30日 読字や意味把握に困難さがある場合 読字の支援としては，コンピュータでの使用を想 定して製作された教科書の録音教材がある。機 能としては，文章を音声朗読しているところが自 動的に反転表示されるため，読み手は視覚的に わかりやすい。反転表示は，一文ごとや文節ごと などの設定ができる。また，朗読箇所に対応して 挿絵や写真を表示することができるため，言葉の イメージをつかみやすいという特徴がある。 12
- 13. 障害のある人の権利に関する条約 第24条 教育 川島聡・長瀬修 仮訳 （2007年3月29日付訳） (a) 障害のある人が障害を理由として一般教育制度から排除 されないこと、並びに障害のある子どもが障害を理由とし て無償のかつ義務的な初等教育又は中等教育から排除 されないこと。 (b) 障害のある人が、自己の住む地域社会において、他の者 との平等を基礎として、インクルーシブで質の高い無償の 初等教育及び中等教育にアクセスすることができること。 (c) 個人の必要に応じて合理的配慮が行われること。 (d) 障害のある人が、その効果的な教育を容易にするために 必要とする支援を一般教育制度内で受けること。 (e) 完全なインクルージョンという目標に則して、学業面の発 達及び社会性の発達を最大にする環境において、効果的 で個別化された支援措置が提供されること。 13
- 14. DAISY教科書を使用した指導例の紹介① 栃木県鹿沼市立みなみ小学校 読み書きに困難のある発達障害児が、通常学級の指導だけで修 得することは極めて困難。 愛着障害の児童や外国籍児童は読み書きに関する習得が著しく 劣るケースが多い。 DAISY活用で、学習に集中して取り組むことができるようになった。 DAISYでハイコントラスト機能や、フォントサイズの拡大により、読 字に対して興味を持って取り組めている。 自分のペースで学習を進めることができる点でDAISYの活用は大 変効果がある。セルフエスティームの向上も。 他教科の学習にも効果が表れている。学習問題の意味が理解で きるようになったため、取り組みが意欲的になった。 14
- 15. DAISY教科書を使用した指導例の紹介② 静岡県浜松市立神久呂（かくろ）中学校 ADHD傾向・・・注意が動くハイライトに集中できるの で音読で飽きない。 自閉傾向・・・何回も聞くと内容が理解できるので、 安心。お守りのようにもなっている。 不登校傾向・・・教科書の内容が確実にわかり、補 助プリントで内容理解度を確かめ、学級復帰できる 自信が徐々に付いてくる。 外国籍の方・・・日本語、特に漢字の読みや日本の 歴史がよくわかる。 15
- 16. DAISY教科書を使用した指導例の紹介③ 北海道札幌市立北九条小学校 保護者にDAISYを見せる。→実際に使用してもらう。 本人に使用してもらい、活用希望を確認する。 家庭訪問し、セットアップを行う。 復習として活用する。→予習として活用する。 教科書を開くことを嫌がっていたが、DAISYには意欲 的に取り組む。 →音読を行う。 漢字も読めるようになってきた。 DAISYなしで読んだ時よりも読み取りができる。 16
- 17. DAISY教科書を使用した保護者の感想紹介 息子は現在小6です。診断名はアスペルガー傾向、ADHD 傾向です。 息子は一応読むことに困難はありませんが、字ずらを追っ ているだけで、ほとんど内容の理解が出来ていませんでし た。DAISYはハイライトで視覚的にどこを読んでいるのか分 かりやすく、適度なスピード、聞きやすい音声で読んでくれ るので、ストレスが軽減されたためか、次第に内容を理解で きるようになってきました。 内容を理解出来るようになってくると、学校での授業にも積 極的に参加できる場面も増え、また、むらはあるものの少し ずつテストの点数にも反映してきました。また、一つ出来る ことがあると自信を持つことができ、他のことにも意欲的に 挑戦するようになってきました。 DAISYは息子のように読みに特に問題のないと思われてい る子どもにもとても良いツールだと実感しています。 17
- 18. BRC 読みに困難がある人の読書に 関するアンケート調査 • 期間 2008年10月～ • 回答者の年齢分布 2009年3月末 • 回答総数 144件 • 男女比はほぼ 7：3 女 31. 5% 男 68. 5% BRC;バリアフリー リソース センター 18
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- 22. ボランティア 学校図書館での学習支援 支援員・ＩCＴ支援員 利用者（児童生徒・教職員） 司書教諭・学校司書 メディア アクセシブルなメディア 図書（読み物・小説・マンガ・図鑑・事典・辞書） デイジー教科書 新聞・雑誌 デイジー図書等 CDやDVDなど音楽や映像の視聴覚メディア 字幕・手話等付DVD等 CD-ROMなどのパッケージ系電子メディア （テキストデータ、画像、音声データなどを含む） インターネットのようなネットワーク系メディア その他 視聴覚情報 学習・情報センター 読書センター 提供施設 子どもたちが主体的に情報に 子どもたちの発達段階と読書 公共図書館 アクセスして調べられる環境 興味に適した豊富なメディア 大学図書館 国会図書館 メディアを使った授業 読書への動機づけ、読書意 市販品 適切なメディアへの案内 欲を高める活動 22 学校図書館の役割 野口武悟（2010）を改変
- 23. 23
- 24. まとめと今後の課題 教科書バリアフリー法や著作権法改正等により、条件整備 は一部不充分な点は残しつつも整えられたと言える。 デジタル教科書や教育用デジタルコンテンツの提供により 情報保障やアクセシビリティを確保することは、真のインク ルーシブ教育実現のための必須条件。 特に義務教育段階でのDAISYなどアクセシブルなデジタル 教科書の無償供与は、解決すべき喫緊の課題。 限られた財源とマンパワーを有効に活用するためには、教 育用コンテンツのデジタル化とネットワーク化が必要。 学校図書館の役割は今後重要になる。全ての学校図書館 への専任司書教諭や、ＩＣＴ支援員の配置などが必要。 構内ＬＡＮ敷設や情報機器配備などのインフラ整備も大切 ではあるが、それだけでは進展しない。 24