LD(学習障害)と読書
マルチメディア・ITを活用した
支援の可能性と著作権問題
     井上芳郎
 障害者放送協議会著作権委員会
     2005.8.30
                  1
障害者放送協議会について
 1998年9月29日発足。全国20の障害者
  関係団体によって構成。
 放送・通信バリアフリー委員会;
 災害時情報保障委員会;
 著作権委員会;障害者にかかわる著作権問
  題等について、調査・研究及び関係機関と
  の協議及び要望。
    http://www.normanet.ne.jp/~housou/
                                         2
LD
Learning Disabilities
     学習障害
 複数形であることに注意!
 単一の「障害」ではない
 複数の状態像を総称
                        3
LD(学習障害)の公式な定義
  文部省調査研究協力者会議 1999.7
学習障害とは、基本的には全般的な知的発達
に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算
するまたは推論する能力のうち特定のものの
習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を
指すものである。
学習障害は、その原因として、中枢神経系に
何らかの機能障害があると推定されるが、視
覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害など
の障害や、環境的な要因が直接の原因となる
ものではない。                4
LDと困難の領域
上野一彦(東京学芸大・日本LD学会会長)による

1. 学力の特異な困難
   読み・書き・算数(計算・推論)
2. 話し言葉の特異な困難
   聞く・話す
3. 社会性の困難
4. 運動能力の困難   LDに重複

5. 注意集中困難・多動性 ADHD
                          5
読字障害(ディスレクシア)
                  DSM-Ⅳ* (1994) での定義
* Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders - Fourth Edition

 A.読みの正確さと理解力についての個別施
  行による標準化検査で測定された読みの到達
  度が、その人の生活年齢、測定された知能、
  年齢相応の教育の程度に応じて期待されるも
  のより十分に低い。
 B.基準Aの障害が読字能力を必要とする学業
  成績や日常の活動を著明に妨害している。
 C.感覚器の欠陥が存在する場合、読みの困
  難は通常それに伴うものより過剰である。
                                                                           6
LDの出現率/文部科学省調査
  通常の学級に在籍する特別な教育的支援を必要とする
    児童生徒に関する全国実態調査; 2002.2~3
     (全国の小中学生のうち約4万人を対象)

 知的発達に遅れはないものの学習面や行動面
 の各領域で著しい困難を示すと担任教師が回
 答した児童生徒  6.3%
              ↓
 「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論す
 る」に著しい困難を示す 4.5%
              ↓
 「読む」又は「書く」に著しい困難を示す 2.5%
                               7
フジテレビ
  スーパーニュース
   “クラスに一人”
「学習障害=LDの実態」
 取材協力;全国LD親の会他

  2001.6.8 放映
フジテレビ・スーパーニュース
 制作部の許諾を得て上映
     約15分
                 8
読字障害の状態の
 擬似的体験 1
愛媛県愛媛県愛媛県愛媛県
愛媛県愛媛県愛媛県愛媛県
   愛知県
愛媛県愛知県愛媛県愛媛県
愛媛県愛媛県愛媛県愛媛県
愛媛県愛媛県愛媛県愛媛県
愛媛県愛媛県愛媛県愛媛県
愛媛県愛媛県愛媛県愛媛県
愛媛県愛媛県愛媛県愛媛県
               9
擬似的体験 2
学  習  障  害  中
学習障害 中枢神経
枢  経  機  能  障
機能障害 視覚障害
害  視  覚  障  害
聴覚障害 知的障害
聴  覚  障  害  知
的  障  害  情  緒
情緒障害 環境要因
障  害  環  境  要
直接    原因
因  直  接  原  因
                10
擬似的体験 3
がくしゆうしよう
がいはそのげんい
「学習障害」は、その原
んとしてちゆうす
因として、中枢神経系に
うしんけいけいに
何らかの機能障害があ
なんらかのきのう
ると推定される。
しようがいがある
とすいていされる
              11
擬似的体験 4




          12
擬似的体験 5
    魑魅魍魎
      ↓
    魑魅魍魎
      ↓


  魑魅魍魎
           13
擬似的体験 6

   学習障害
   学習障害
   学習障害
          14
21世紀の特殊教育の在り方
    について(最終報告) 2001.1
   小・中学校等の通常の学級に在籍する学習障害児
    や注意欠陥/多動性障害(ADHD)児、高機能自閉
    症児等特別な教育的支援を必要とする児童生徒等
    に対しても積極的に対応していく必要がある。
   最新の情報技術(IT)を活用して障害のある児童
    生徒等が障害に基づく種々の困難を改善・克服し、
    自立や社会参加を促すため、一人一人の障害の
    状態等に応じた情報機器等の研究開発を行うとと
    もに、情報技術(IT)を活用した指導方法や体制の
    在り方について検討を行うこと。
                               15
特別支援教育
今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)
  文部科学省 調査研究協力者会議 2003.3

特別支援教育とは、従来の特殊教育の対象だけ
ではなく 、 LD、ADHD、高機能自閉症 を含めて
障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、
その一人一人の教育的ニーズを把握して 、その
持てる力を高め、生活や学習の困難を改善また
は克服するために、適切な教育や指導を通じて
必要な支援を行なうものである。

                         16
特殊教育と特別支援教育
             原図;上野一彦(東京学芸大)

             特別支援教育   

                       特殊教育

  小・中・高等学校             盲・聾・養護学校
       特別支援教室 
       LD・ADHD等
    通級学級 特殊学級            
                        特別支援学校
    
                                  17
小・中学校におけるLD(学習障害)等の児
童生徒への教育支援体制の整備のための
ガイドライン(試案) 文部科学省 2004.1.30  
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/16/01/04013002.htm

   全国の小・中学校においてLD,ADHD,高機能自
    閉症の児童生徒への支援体制の構築に役立てる。
   全国の小・中学校において支援体制を構築していく
    際の具体的な方法,手続き,配慮事項などを盛り込
    む。
   教育行政担当者,学校関係者,専門家,保護者は,
    本ガイドラインを参考としながら,地域や小・中学校
    の実情等を踏まえ適宜工夫を加え活用していく。
                                                         18
障害者基本法改正案に対する
   附帯決議 2004.5.27 参議院内閣委員会
四、情報バリアフリー化の推進は、障害者等のコミュニケーショ
 ンの保障に資するべきものであることにかんがみ、情報通
 信機器やアプリケーションの設計面のみならず、コンテンツ
 や通信サービスについても、手話、文字、点字、音声等の活
 用による改善及び充実を促進すること。
六、「障害者」の定義については、「障害」に関する医学的知見
 の向上等について常に留意し、適宜必要な見直しを行うよう
 努めること。また、てんかん及び自閉症その他の発達障害
 を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害
 を有する者であって、継続的に生活上の支障があるものは、
 この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの
 者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること。
                             19
発達障害者支援法
          2004.12.3 成立 2005.4.1 施行
   第一条  … 略 … 発達障害を早期に発見し、発達支
    援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を
    明らかにするとともに、学校教育における発達障害
    者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害
    者支援センターの指定等について定めることにより、
    発達障害者の自立及び社会参加に資するようその
    生活全般にわたる支援を図り、もってその福祉の増
    進に寄与することを目的とする。
   第二条 この法律において「発達障害」とは、自閉症、
    アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学
    習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳
    機能の障害であってその症状が通常低年齢におい
    て発現するものとして政令で定めるものをいう。
                                   20
特別支援教育を推進するための制度の在り方について
(中間報告) 2004.12.1 中央教育審議会




                           21
小中学校における特別支援教育の推進(1)




                       22
小中学校における特別支援教育の推進(2)




                       23
小中学校における特別支援教育の推進(3)
   中央教育審議会答申(素案) 2005.7.29
  「特別支援教室」(仮称)導入に向けたステップとして、
 通級指導の対象に学習障害(LD)、注意欠陥・多動性
 障害(ADHD)児らを加えるよう求める。
   義務教育標準法改正案を次期通常国会提出
  文部科学省 2005.7.31
  学級編成権を学校に移譲し、学級定数の基準を決め
 る権限も都道府県から市町村に移す。「加配」教員を
 学校単位での学級編成に活用。また、LDやADHDな
 ど軽度発達障害のある子に対する教育の充実を図る。

                              24
文字・活字文化振興法
           2005.7.29

   第三条 文字・活字文化の振興に関する施
    策の推進は、すべての国民が、その自主
    性を尊重されつつ、生涯にわたり、地域、
    学校、家庭その他の様々な場において、居
    住する地域、身体的な条件その他の要因
    にかかわらず、等しく豊かな文字・活字文
    化の恵沢を享受できる環境を整備すること
    を旨として、行われなければならない。
                          25
DAISYについて
     Digital Accessible Information SYstem
   目次から読みたい章や節、ページにジャンプできる。
                 CDに 50時間以上収録が可能。
    圧縮技術で一枚のCDに50時間以上収録が可能。
             DAISY図書は音声にテキスト、画像を
    マルチメディアDAISY図書は音声にテキスト、画像を
    シンクロ(同期)させることができる。
   HTML、静止画や動画とテキストや音声を同期させる
    HTML、静止画や動画とテキストや音声を同期させる
            SMILを DAISYの仕様としている。
    言語であるSMILをDAISYの仕様としている。
   ネットワークを介してストリーミング配信等が可能。
   DAISY3 →ANSI/NISO Z39.86 米国公式規格認証。
   仕様書が公開されている。オープンなシステム。
     Synchronized Maltimedia Integration Language
                                                    26
DAISY録音図書と再生ソフト
 LpPlayer 日本語版 1.0 (デモ)
                   1.0 (デモ)
 AMIS 日本語版 1.3 (デモ)
                1.3 (デモ)
 Adaptive Multimedia Information System
  障害者の情報アクセスを支援する目的で、かつ
    非営利活動で用いるために開発し、サポートの
    責任を負わないことを条件に無償で配布。
   参考;DAISY録音図書作成ソフト
       DAISY録音図書作成ソフト
 Sigtuna DAR 3 JP
 http://www.dinf.ne.jp/doc/daisy/
                                          27
DAISYを活用した支援について
 DAISY活用事例交換セミナー 
  2003.2.15
  http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/030215/
 日本LD学会第12回大会自主シンポジウ
  ム「情報技術(IT)を活用したLD 児・者へ
  の教育支援のあり方」 2003.11.23
  http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/031123/


                                                    28
軽度の障害を持つ生徒における音声テキストによ
    る中等課程の内容の習得効果
   Learning Disability Quarterly - Vol. 26, No. 2 Summer 2003
          抄訳:(財)日本障害者リハビリテーション協会
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/access/info/john_hopkins.htm

  本研究の結果から、教科書だけを読む場合と比較し
 て、音声教科書の使用は、長期的には、増大する高
 度の学問的内容の習得に効果的な道具となりうること
 が示された。音声教科書を使用した2つの実験群の生
 徒の知識の習得度を測る試験の点数は、この技術の
 助けを借りずに教科書を読んだグループよりも大幅に
 増加した。これらの研究結果には、軽度の認知障害を
 持つ生徒のための補助手段としての音声教科書の価
 値が示された。                  29
著作権法上の「複製」
 既存の著作物からDAISY録音図書を作成す
  ることは、著作権法上「複製」にあたる。
 一般論として、著作物を「複製」使用する場合、
  「著作権者」の許諾が原則として必要。
 例外的に無許諾で「複製」可能な場合がある。
  ただし、著作権者への通知・補償金が必要な場合があり、複
    製のための要件も定められている。
 私的使用・図書館・教科用図書・教科用拡大図
    書・学校の授業用・視覚障害者用の点字及び
    録音・聴覚障害者用の字幕送信 その他
                                30
視覚障害者用の点字及び録音で
    の複製 著作権法第三十七条
   第三十七条 公表された著作物は、点字により複製す
    ることができる。
   2 公表された著作物については、電子計算機を用い
    て点字を処理する方式により、記録媒体に記録し、又
    は公衆送信(放送又は有線放送を除き、自動公衆送信
    の場合にあつては送信可能化を含む。)を行うことがで
    きる。
   3 点字図書館その他の視覚障害者の福祉の増進を
    目的とする施設で政令で定めるものにおいては、専ら
    視覚障害者向けの貸出しの用に供するために、公表さ
    れた著作物を録音することができる。
                            31
学校その他の教育機関における
    複製等 著作権法第三十五条 
   第三十五条 学校その他の教育機関(営利を目的と
    して設置されているものを除く。)において教育を担任
    する者及び授業を受ける者は、その授業の過程にお
    ける使用に供することを目的とする場合には、必要と
    認められる限度において、公表された著作物を複製
    することができる。ただし、当該著作物の種類及び用
    途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者
    の利益を不当に害することとなる場合は、この限りで
    ない。
   2 略
                            32
教科用拡大図書等の作成のため
    の複製 著作権法第三十三条の二
   第三十三条の二 教科用図書に掲載された著作物
    は、弱視の児童又は生徒の学習の用に供するため、
    当該教科用図書に用いられている文字、図形等を拡
    大して複製することができる。
   2 … 略 … あらかじめ当該教科用図書を発行する
    者にその旨を通知するとともに、営利を目的として当
    該教科用拡大図書を頒布する場合にあつては、前条
    第二項に規定する補償金の額に準じて文化庁長官
    が毎年定める額の補償金を当該著作物の著作権者
    に支払わなければならない。
   3 略
                                33
録音図書に係る権利制限拡大
    著作権審議会第一小委員会 1999.12

 録音図書の利用対象者を学習障害者や
  高齢者等に拡大することについて要望
  がある。
 第37条第2項の対象施設の拡大につい
  ての要望がある。
 コンピュータ・ネットワークを通じて音訳
  データを送信する行為について新たに権
  利制限を行うべきとの意見がある 。
                           34
学習障害者等への情報保障の要望
 著作権審議会第一小委員会 1999.12

視聴覚障害者以外にも、学習障害者等に対し、
権利制限による様々な形態での視聴覚障害者
に準じる「情報保障」の要望がある。
この問題については、学習障害者等の判断基
準や範囲が現時点においてまだ確定していると
は言い難いこと等の問題があることから、政府
全体と しての取組み等、関係各方面の検討状
況を見ながら引き続き検討を行うことが適当と
考えられる。                35
文部科学大臣宛要望事項 (抜粋)
      障害者放送協議会 2002.6 2004.11
 第37条の字幕送信について、利用者を聴覚障
  害者だけでなく、LD者や知的障害者も利用で
  きるよう、利用対象者を拡大すること。
 第37条改正に伴って認められた要約に限定さ
  れた翻案権(第43条の3)の制限を、LD者や知
  的障害者も情報にアクセスできるよう、内容の
  書き直し等も含む柔軟なものに拡大すること。
 第37条で規定されている録音図書を含む音訳
  物について、視覚障害者だけでなく、音声情報
  を必要とするLD者や高齢者なども利用できる
  よう、利用対象者を拡大すること。        36
障害者福祉関係の権利制限について
     文化審議会著作権分科会法制問題小委員会
       厚生労働省作成資料(要旨) 2005.3
   視覚障害者の用に供する録音図書の作成に係る権利
    制限について、公衆送信を認めていただきたい。
   聴覚障害者の用に供するため、著作物への「手話」や
    「字幕」の付与と、公衆送信を認めていただきたい。
   字幕に関する翻案権の制限に関しては、一定の条件を
    満たしたうえで、認めていただきたい(知的障害者や学
    習障害者への配慮) 。
   個人が所有する著作物を所有者自身が利用するため
    に、録音など本人が読める形に「第三者」が変換(複製)
    することに関し一定の条件で、認めていただきたい。
                              37
障害者用音訳資料利用ガイドライン
    (障害者用音訳資料作成の一括許諾に係わる)
     日本図書館協会 日本文藝家協会 2004.4

 通常の印刷物での読書に困難を持つ者(「読書に困難
  を持つ者」)のために音訳資料を作成し、貸与等を行う
  場合に遵守すべき事項を定める。
 「読書に困難を持つ者」
 1)視覚障害者 2)重度身体障害者 3)寝たきり高齢者
 4)その他の読書に困難を持つ者→身体の障害、読み
  の学習障害、疾病等により読書に困難を持つ者で、前
  三項に準ずると当該図書館が判断し、所属図書館団
  体と日本文藝家協会が該当と了解した者。
                              38
海外の著作権法
   アメリカ;1996年改正 (Chafee 改正) 認可機関で
  は視覚障害者その他の障害者向けに、点字、音声
  またはデジタル・テキスト等の特別なフォーマットで
  複写し配布できる。
 オーストラリア;1998年改正 文字障害者(people
  with print disability)用ラジオ放送、文字障害と知
  的障害者の援助施設(営利組織も含む)による著作
  物(テレビジョン放送を含む)の複製は著作権の侵
  害とみなさないと規定。
 シンガポール; 1998年改正 視覚障害者援助施設
  及び知的障害者援助施設において、一定の条件下
  で行われる出版物の複写・複製は、著作権を侵害す
  るものでないと規定。                          39
まとめと提言
   通常の印刷物での読書に「困難」のある人達
   現行著作権法では想定されていない「困難」
   技術革新の後追いと新たな不平等を生む著作権法
   「読めない教科書」が生む教育の不平等
   著作権者の権利制限で障害者への読書権を保障
   障害者/著作権者・出版社のみが負うべき課題か
   デジタル化とネットワーク化で資源の有効活用
   フォーマットの統一とシステムのオープン化
   バリアフル → バリアフリー → ユニバーサルデザイン
   情報へ自由にアクセス出来る権利は民主主義の基本
                              40

20050830