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セント・ペテルスブル
グパラドクス(続き)
    &
 期待効用(1)前編
なぜ、対数を導入したか、です
が、この対数効用関数と心理学
の感覚量の研究知見には密接な
 関連があるので、紹介します
ウェーバーの法則
100mlの水に10ml加えることにより、初めて
  「増えたッッ!」と感じるとしたら、
  200mlの水に何mlの水を加えたら「増え
  たッッ!」と感じるだろうか?
⇒はじめの刺激量をIとし、対応する識別閾値
 (今回は増えたと感じるまでの「加える水
 の量」)をΔIとすると・・・
      DI
         = 一定
       I
ウェーバーの法則は聴覚、視覚、
触覚など様々な感覚領域で成り
      立つ
100円から50円値引くのと、
 1万円から50円値引くのとで
同じような割安感が得られない
     のもそのため。
フェヒナーの法則
フェヒナーの法則
⇒人の感覚の大きさ(S)は、
 刺激強度(I)の対数に比例す
 る!
(式) S=klogI   (kは定数)
xが30から40に10増えてもy
              はほとんど変わらない!




xが0から10へ、10増えるとy
 はだいぶ増えるけど・・・
このフェヒナーの法則は、
ウェーバーの法則から導出され
    うるのです
DI
   =k       ΔI=識別閾値
            I=刺激量
 I
識別閾値ΔIの最小単位を考え、dIと置く。
また、感覚量をΔSと置き、
その最小単位を考え、dSと置く。
感覚量は刺激量と比例していると考え、
       dI
dS = k
        I
両辺を積分すると、

                             dx
S=klogI+C (kは定数)      cf . ò    = log x + C
                              x
さらに、
S=0のとき、I=I0とすると
0=klogI0+C
C=-klogI0
元の式に代入して、
S=klogI-klogI0

          I                           A
S = k log      cf.log A - log B = log
          I0                          B
     I
となり、I 0 を刺激閾の値I0によって基準化され
た刺激強度であると考えると、
フェヒナーの法則と同じ形が得られる。
期待効用①
〜これまでの復習〜
 担当:修士2年   金井
セントペテルスブルグパラドックスについて
ベルヌーイ.Dは、人々の直観と期待値が合致
しない問題に対して、「期待効用」という考
えを導入することによって説明しようとしま
した
この「期待効用」について説明して
いきます
期待効用
集合X上の基数効用関数、
u:X→ReのX上の確率についての期待値


E(u, p) = å u(x)p(x)
          xÎX

を期待効用(Expected Utility)という
期待値は確率と確率変数の積和で表
現されるものです
(復習)




         E     xp x                x
               1
                   1
                       2   p2            n   pn
 E       期待値
 x   1
         試行の結果によって定まる変量のとりうる値

 p       確率
     1
なので、まずは
確率の公理の復習から
公理的定義
コルモゴロフの公理              公理
                     =前提,仮定
(1)   p(X) =1      (=ルール,約束事)

(2)
      p(Ei ) ³ 0
(3)
絶対そこ落とし穴やん!
落とし穴である確率は?
• フタの上に立った結果の集合をXとする
    X={落とし穴だった,爆発した,
         水が噴出した}
• この結果の集合Xの部分集合をEとする
    E={φ,(落),(爆),(水),
(落,爆),(爆,水),(落,水),
(落,爆,水)}
公理的定義(1)
(1)   p(X) =1


       事象の集合Xの全体の確率は1



  ☆    X={落とし穴,爆発,水噴出}
           の確率全てを足し合わせると1
公理的定義(2)
(2)   p(Ei ) ³ 0

      Xの任意の部分集合    Ei の確率は0以上


      ☆ E={φ,(落),(爆),(水),(落,
      爆),(爆,水),(落,水),(落,爆,
      水)}のそれぞれの確率は0以上
公理的定義(3)
(3)



Xの任意の部分集合の積集合
       Ei
が空集合であれば,        Ej   と   の和集
合の確率は, p(E j )
  p(Ei )+                 に等し
い
公理的定義(3)


 E={φ,(落),(爆),(水),(落,
爆),(爆,水),(落,水),(落,爆,
水)}の,(爆)をE2 ,(水)をE3としたとき,


つまり共通の元はない。このとき,「爆発す
る」か
「水が噴き出す」確率は,爆発する確率と水
が噴き出す確率の和と等しい。
これらのことを行動意思決定論の本に
   即して考えてみましょう
集合Xの部分集合 E(E Ì X)     は、Xの
べき集合の2           (E Î
       xの要素である2 x )       。
ここで、Xのべき集合とは、集合Xの部
分集合を全部集めた集合のことであり、
2xで表す。べき集合の要素はそれ自体
が集合であることに注意する必要があ
る。
例えば、X={x1,x2,,x3}の時、2xは次のよ
うな8個の要素からなる集合である。

2x={φ, {x1}, {x2},{x3}, {x1,x2}, {x2,x3},
{x1,x3}, {x1,x2,x3}}
ここで、2x上の有限加法的確率測度pというものを考え
る。
有限加法的確率測度というのは、例えば、p({x1})=0.2と
いうような「確率」のことである。
2x上の有限加法的確率測度pは、全てのEi、Ejに対して
(1) p(X)=1
(2) p(Ei)≧0
(3) Ei∩Ej=φ⇒p(Ei∪Ej)=p(Ei)+p(Ej)
を満たすような集合関数である。すなわち、
(1)結果の集合Xの全体の確率は1であり、
(2)Xの任意の部分集合Eiの確率は0以上であり、
(3)Xの任意の部分集合の積集合 Ei∩Ejが空集合であれば
(すなわち、EiとEjの交わりがなければ)、EiとEjの和
集合(EiとEjを合わせた集合)の確率は、p(Ei)+p(Ej)と
等しいという性質を持つ。
次に、2x上の有限加法的確率測度(以降、
確率測度)の凸集合Pxというものを考え
る。
Pxが凸集合とは、0≧λ≧1かつ、任意のp,q
がPxの要素である(p,q∈Px)ならば、
λp+(1-λ)qもPxの要素であること(λp+(1-
λ)q∈Px)を言う。すなわち、任意の2つの
結果の確率を混合させても、それがPxの
要素になっていることを言う。
凸集合を図形で表すと・・・
     凸集合           非凸集合




                         p
 p

     λp+(1-λ)q   λp+(1-λ)q



             q          q
ここでEi∈Pxが有限集合であるとき、 p(Ei)=1となる確率
測度は、単純(simple)であると言われる。この単純確
率測度は下の表のような例から考えるとギャンブルや
くじと解釈することが出来る。したがって、Pxが凸集
合であるというのは、くじやギャンブルをある確率λと
1-λで組み合わせた複合くじや複合ギャンブルも、Pxの
要素となっていることであると解釈できる。

A           x1:1000万円   x2:500万円   x3:0円

X
a1:ギャンブル1   p11:2/3     p12: 1/3   p13:0


a2:ギャンブル2   p21:1/2     p22: 1/3   p23: 1/6


a3:ギャンブル3   p31: 1/6    p32: 0     p33:5/6
キーワード
• ウェーバーの法則
• フェヒナーの法則
• 期待効用

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