認知症について(概要)
ー(企業・就労者に向けたミニ講義)-
心理・発達・認知アセスメントセンター
2017.9
EAP(Employee Assistance Program)
に認知機能低下を防ぐ取り組みを!
・超高齢社会の到来,定年の引き上げ ⇒ 従業員の高齢化が起こりうる
伴って生じる課題を想定して認知症の基礎知識や
認知機能の低下を防ぐ取り組みを知っておいて損はしない。
・65歳以下の「若年性アルツハイマー病」は,全アルツハイマー病の5~10%
(植木,2012)
・厚労省は全国の「若年性認知症者数は3.78万人と推計」(H21厚生労働省)
心理・発達・認知アセスメントセ
ンター
<全体の流れ>
① 認知症とは
② 認知症の種類
③ 認知症の初期症状
④ 相談に行くとまず確認されること
⑤ 専門家につなぐ‐認知機能検査や画像診断へ
⑥ はやく手を打てば,認知症の発症は遅延できる
① 認知症(Dementia)とは
・かつて「痴呆」と呼ばれていたもの 2004年~ 認知症の用語に
・認知障害の一種 脳が器質的(組織細胞で構成される構造)に変化
・一旦,正常に発達した知能が,不可逆的に低下してしまう状態
・中核症状と周辺症状がある
中核
記憶 見当識 判断
周辺
徘徊 暴言 幻覚 妄想 せん妄
② 認知症の種類
1
2
3
4 5
(注)概ねこのような割合ですが,文献によって各割合が若干違います。
*軽度認知障害(MCI)について
MCIとは,認知機能の低下は認められるが生活に支障はなく,
いわば認知症の手前の段階。年齢を重ねれば誰でも物忘れは増えるが
年齢相応をやや超えている。1年以内に10~15%の人が認知症に進行。
体験の一部を忘れること
と,体験したこと全体を
忘れることは大違い!
物忘れが自覚できている
か,そうでないかも大違
い!
③ 認知症の初期症状 (就労者を想定)
・時間管理が以前と比較してあいまいに。
‐(例)会議や打ち合わせの時間を忘れていたり? 提出期限をうっかり?
・慣れているはずの手順なのに間違い,ミス,「あれ?何だっけ?」
・頭痛やめまいの訴え
・不眠や抑うつ(気分の低下)
・ささいなことで怒りっぽくなることも。
・物や人の名前が出てこない…
・物の管理がずさんに。 -(例)書類どこにやったかな。
・同僚などからの誘いを億劫がるようになる,以前あった興味関心が失われる…
注意
・そのような症状が見られても,決めつけてはいけません。
・他の理由から似たような症状がでている可能性も考えます。
・認知症の他にも記憶障害を引き起こすものはたくさんあります。
-うつ病 -梅毒
-頭部外傷 -脳炎
-パーキンソン病 -アルコール依存 etc.
・不眠,興味関心の低下はうつ病にもよく見られる症状です。
・私生活(家族や金銭のことなど)で大きな問題が
もし起こっているのであればうっかりミスは起こりうるものです。
④ 相談に行くとまず確認されること
・症状(職場で生じている問題)の内容を確認
・症状はいつ頃から始まった? (どれくらい続いている?)
・症状は自分が気になっている? 上司や同僚が気になっている?
・症状がひどくなってきている感じはある?
・現在と過去の病気の既往は? 飲んでいる薬は?
・頭を強打したエピソードは?(脳に水がたまって認知症様の症状がでることがある)
・親族に認知症を発症した人は?
ちなみに…
若年性アルツハイマー病 = 進行速度がアルツハイマー病より早い
症状も重くなる可能性が高い
遺伝子異常のある家族は頻度が高いとされている
親族にアルツハイマーを発症した方が複数いる人は,
家族性アルツハイマーのリクスが高い。
ただし,遺伝よりも生活習慣病の方が,
認知症になるリスクは何倍も高い!!!
高血圧,動脈硬化等になりやすい ⇒ 脳血管性認知症のリスク etc.
⑤ 専門家につなぐ
‐認知機能検査や画像診断へ
臨床心理士 ⇒ 認知機能検査
・HDS-R(改訂長谷川式簡易知能評価スケール)
・MMSE(ミニ・メンタル・ステイト・検査)
・CDT(時計描画試験),動作の模倣,etc.
<<脳画像診断>>
・CT,MRI,PET等
どの辺の脳機能(側頭葉?前頭前野?
etc.)が低下してきているか,簡易に
チェック(スクリーニング)できます。
⑥ はやく手を打てば,認知症の発症は遅延でき
る
・脳に関する知見は日々更新されている。
・認知症が必ずしも “不可逆的” と言えない事例も。
・例 国立長寿医療研究センターが開発した 「コグニサイズ」
⇒ 全身を使った有酸素運動と,認知課題を組み合わせたもの
⇒ 脳の活動が活発になって,
認知症の発症を遅延する効果が!!!
・早期発見,早期介入が重要

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