2013.2.3最終更新




     野田佳彦と消費増税


     野田代表選出から解散総選挙まで
2011(平成23)年8月~2012(平成24)年12月


                                       1
2012年8月10日参議院本会議

「社会保障と税の一体改革」関連8法が、
民主・自民・公明の賛成多数で可決成立

自民党・公明党は、「近いうちに
衆議院を解散すること」を条件に賛成

民主党小沢グループは造反して離党し、
新党「国民の生活が第一」を結成


                      2
消費税率は……
  2014年4月    5%⇒8%
  2015年10月   8%⇒10%

※景気動向によっては一時凍結できる

政府見解
「消費税を10%にすると
年間13.5兆円の増収が見込める」

                      3
記者会見
可決成立後、10日夜の記者会見で……

         消費増税はマニフェストに
         記載していなかった。
         国民にお詫びしたい。
         増収分は全て国民に還元
         される社会保障に使う。



法案成立について謝罪するという異例の事態
                        4
「社会保障と税の一体改革」の是非は?



「財政破綻を防ぎ、社会保障を手厚くする」
という触れ込みで決定された一体改革……

しかし、景気悪化等の懸念も多い

⇒ 一体改革は正しかったのか、論点整理が必要



                         5
序章 野田政権と政局
序章  野田政権と政局
第1章 日本の財政危機
第2章 「上げ潮派」の論理
第3章 消費税をめぐる諸問題
第4章 逆進性対策
第5章 年金制度改革
終章  衆議院解散をめぐる駆け引き
                    6
1 野田内閣成立まで




             7
菅首相の「退陣3条件」
  2011年6月27日
・ 赤字国債発行を認める特例公債法案
・ 2011年度第二次補正予算案
・ 再生可能エネルギー特別措置法案

     これらが成立すれば(退陣の)目途になる


     ⇒ 自民党、3条件を丸呑み

                           8
菅の退陣表明

   2011年8月26日

「与えられた厳しい環境の下でやるべきことはやった」
「一定の達成感を感じているところ」
→記者から「居座りが政治空白を招いたのでは」と聞かれ
  菅「この3ヶ月間は実り多い政策実行の期間であった」



                              9
民主党代表選(2011.8.29)
               立候補者は5名




海江田万里   野田佳彦    前原誠司   鹿野道彦   馬淵澄夫
元経産相    元財務相     元外相    元農相   元国交相

⇒ 鳩山グループ所属で
   小沢の支持も取り付けた海江田が圧倒的に有利
                                     10
候補者政見表明


   民主党はグループごとの縛りが緩やか

⇒ 民主党代表選では、「派閥の論理」ではなく
   この演説を聞いて誰に投票するかを
   決める議員が多い




                         11
野田の「どじょう」演説

  相田みつをさんの詩に「どじょうがさ、
  金魚の真似することねんだよなあ」
  という言葉があります。
  ルックスはこのとおりです。私が総理に
  なっても支持率はすぐ上がらないと
  思います。
  しかしどじょうにはどじょうの持ち味が
  あります。泥臭く国民のために
  汗をかいて働きます。


                       12
1回目の開票結果

  海江田143
  野田102
  前原74
  鹿野52
  馬淵24
⇒ 決選投票へ

             13
決選投票

 海江田177票    野田215票
       ⇒ 野田の逆転勝利


        どじょう演説で30~40票は
        増えたのではないか

       ※ 細川は、野田が最初に所属
細川護煕      した政党(日本新党)の党首

                          14
野田佳彦の経歴1
1957年 千葉県生まれ 自衛官の長男
      早稲田大政経学部卒
      在学中、新自由クラブのボランティアに参加

1980年 大学卒業後、松下政経塾入塾(1期生)

1985年 卒塾、フリーターをしながら政治活動
  ※ 津田沼駅、船橋駅で
    「13時間連続辻説法」を行い名を馳せる




                             15
野田佳彦の経歴2


1987年 千葉県議会議員に無所属で初当選
1993年 衆院選に日本新党から初当選
1996年 衆院選に新進党から出馬し、
      105票差で惜敗
2000年 衆院選に民主党から復活当選
2010年 菅内閣に財務大臣として初入閣




                        16
野田の信念

野田は代表選出馬のときから
「消費増税はやむを得ない」
と訴えてきた……

⇒ 首相としての最大の目標は
  「消費税を10%に引き上げること」
  と首相就任直後から考えていた


                      17
野田の矛盾

2009年8月15日 大阪府堺市での演説

      マニフェストにはルールがあるんです。
      書いてあることは命懸けで実行する。
      書いてないことはやらないんです。
      書いてないことを平気でやるなんて、
      おかしいと思いませんか。


※ 2009年衆院選の民主党マニフェストに、
  消費税増税は記載されていない……
                           18
消費増税について民意を問うべきか 1



      消費増税は国民生活に
      重大な影響を及ぼす
      ⇒ 「事前に民意を問うのが当然」
        と考えるのが普通




                         19
消費増税について民意を問うべきか 2

         大平内閣の失敗(1979)

           昭和59年度には赤字国債からの
           脱却を基本目標とする。
           そのために(中略)国民の理解を得て、
           新たに負担を求めざるを得ない
大平正芳首相

   あえて増税を予告して衆議院解散
⇒ 自民党、衆院選で過半数割れの大敗
※ 1979年時点で消費税を導入できていれば、
   その後の財政赤字は発生しなかったとも言われている……
                                20
消費増税について民意を問うべきか 3

        消費税は選挙対策上の鬼門
1989年   消費税導入 ⇒ 翌年衆院選で大敗


1997年   5%に増税 ⇒ 翌年参院選で大敗


2010年   菅首相が消費増税を予告 ⇒ 参院選で大敗

  ⇒ 「正攻法では、真に必要な政策を
     実行できない」との考え方も
                               21
2 組閣と2閣僚問責




             22
ノーサイド


      もうノーサイドにしましょう



前原は反小沢、海江田は親小沢だった

⇒ 小沢にすり寄りもしないし、
  反発もしないことを表明
                      23
組閣(2011.9.2)



 首相     官房長官   財務相      外相     経産相
野田佳彦     藤村修   安住淳    玄葉光一郎   鉢呂吉雄




行政刷新相    国交相    環境相    防衛相    消費者相
 蓮舫     前田武志   細野豪志   一川保夫    山岡賢次
                                     24
小沢グループから2人入閣



        防衛相   消費者相
       一川保夫   山岡賢次



       我々にも気を使ってくれているんだな

小沢一郎

⇒ しかし、この2人が後に問題を起こすことに
                           25
好調な滑り出し


支持率65%   不支持率19%




                   26
鉢呂経産相の辞任

       9月8日 福島原発訪問後、記者とのオフレコ会談中に
             「ほら放射能」と袖をなすりつける仕草

       9月9日 記者会見で福島訪問の感想をコメント
             「まさに死の街、ゴーストタウンという感じ」

       ⇒ 9月10日辞任(就任9日目)
鉢呂吉雄
       ⇒ 辞任後、枝野幸男が後任に




                                     27
一川防衛相の問題発言



9月2日 記者団に「安全保障に関しては素人だが、
      これが本当のシビリアンコントロールだ」

10月17日 沖縄県知事との会談中、
       「(地元の石川県に)小松基地を抱え、
       自治体の苦労は分かっているつもり」
⇒ 仲井眞知事「自衛隊基地と米軍基地は違う」と不快感

11月16日 高橋千秋議員の政治資金パーティに参加し、
       「ブータン国王が来て宮中で催し物があるが、
       私はこちらの方が大事だ」
                               28
山岡消費者相のスキャンダル


       9月8日 マルチ商法業者から254万円の
             政治献金を受け取って
             いたことが判明


山岡賢次




                              29
2閣僚問責

12月9日

参議院で一川防衛相と山岡消費者相の
問責決議が可決

⇒ 翌2012年1月13日の内閣改造で辞任



                        30
3 消費増税をめぐる緒戦




               31
TPP参加問題

野田は昔からの自由貿易論者で、TPPに前向き
しかし野党のみならず与党内にも反対派が多い

       11月11日記者会見で……
        交渉参加に「向けて」関係国との「協議に入る」こととした


       ⇒ 交渉に参加すると述べなかったため、
        「玉虫色の表現により反対派に妥協した」と報道


※  反対派の山田正彦ら「この勢いで消費増税も阻止する」
                                      32
消費増税の「たたき台」

12月27日 民主党税制調査会、「たたき台」を作成

  1 2015年度に10%とする

  2 景気に配慮し、1年以上の間隔を
    空けた段階的引上げとする

  3 衆議院任期満了(2013年夏)までは
    引き上げない
                            33
増税反対派9名の離党(2011.12.28)


小沢系議員9名が増税に反対し離党

⇒ 翌1月4日「新党きづな」を結成
  (代表は内山晃)




                         34
民主党総会(2011.12.29)

民主党総会で消費増税の「たたき台」を審議


午後3時 開会
午後6時 野田首相出席
     「決まるまで居るよ」と発言

⇒ 野田、午後12時の閉会まで出席

                       35
野田演説

民主党総会で、増税反対派に呼びかけ

     私の政権は、やりたいこと以前に、
     やらなければならないことのツケが
     いっぱい来ています。

     (消費増税は)いつか決めれば
     いいだろう、そういう議論が
     続いてまいりました。
     だがもうその猶予はありません。
                        36
詰問

増税反対派の山田正彦ら、野田を詰問

「議員や公務員の削減が先ではないか」
「デフレ脱却が先ではないか」
「自殺者が増えるぞ」

⇒山田、席を蹴って途中退室


                山田正彦
                       37
修正


当初案「2013年4月から8%、2015年4月から10%」

修正案「2014年4月から8%、2015年10月から10%」

⇒ この修正で、民主党内は大筋で合意



                             38
消費増税への道筋
異論も多かったものの、
民主党内は概ねまとまった……

⇒ 残るは自民党・公明党の説得
  (ねじれ国会のため、自民・公明の賛成が
   得られなければ法案は成立しない)
※ 自民・公明は以前より消費税増税を訴えてきたため、
   交渉は比較的容易であるが、
   増税法案賛成のための
   交換条件を提示してくることは必至

                             39
4 更なる2閣僚問責




             40
田中防衛相の失態

       1月15日 NHK出演中、武器使用基準と武器輸出3原則を
              混同してコメント
       1月31日 国会審議を抜け出してコーヒーを
              飲んでいたことが発覚
       2月2日 国会答弁で極秘文書の存在を失言
       3月14日 ヨルダンとイスラエルを間違える
       3月21日 航空自衛隊のPAC-3と
              海上自衛隊の哨戒機P-3Cを混同
田中直紀




                                      41
前田国交相のスキャンダル


       4月11日
       下呂市長選で特定候補の支援を
       依頼する文書を発送していたことが発覚

       ⇒ 公職選挙法違反の疑惑
前田武志




                            42
2閣僚問責(2012.4.20)



田中防衛相と前田国交相の問責可決

⇒ 6月4日の内閣改造で事実上の更迭




                     43
5 衆院通過と小沢離党




              44
3党の大筋合意(2012.6.15)

   民主・自民・公明の3党会談
自民党
「(消費増税に賛成してほしければ)
最低保障年金と後期高齢者医療制度の廃止について、
マニフェストを撤回せよ」

⇒民主党、「撤回」でなく「棚上げ」ならOKと回答
⇒ 民・自・公の3党、
  「税と社会保障の一体改革法案」(消費増税法案)に
  大筋で了承
                             45
衆議院での採決(2012.6.26)

  衆議院で一体改革法案が可決
民主党小沢グループら57名が反対し、6名が欠席

小沢「増税は公約違反だ」と野田政権を公然と非難
⇒ 「造反メンバーを処分しないのか」との声広がる

⇒ 民主党・輿石幹事長
  「除籍だ除名だと言っていては、党が分裂してしまう」
  と小沢グループの処分に否定的
                              46
「国民の生活が第一」結成(2012.7.11)

   小沢ら49名が離党し
   新党「国民の生活が第一」を結成
※ 「国民の生活が第一」とは、
  2009年選挙で民主党が使ったスローガン

  増税反対と脱原発を党是とするも、
  読売新聞「『小沢に期待しない』が82%」




                             47
民主党の苦境
 衆議院(定数480)    参議院(定数242)

民主党:250       民主党:92
自民党:119       自民党:83
国民の生活が第一:37   公明党:19
公明党:21        国民の生活が第一:12

民主党は参議院過半数を既に失っており、
10名造反すれば衆議院過半数をも失う状態に

⇒ 自民党にとっては絶好の機会
                            48
伊吹発言
       7月12日 自民党伊吹文明

       「参議院も当然通してもらえると
       誤解しているのではないか」

       「場合によっては、我々は
       参院出口までに重大な決意をしなければ」

 自民党
       「特例公債、補正予算、次々に
伊吹文明   ハードルを高くして解散時期を
       ずらすことは信義に反する」

⇒ 「衆議院解散と引き換えになら増税に賛成してやっても良い」と示唆

                                    49
自民党の攻勢

        3党の大筋合意など破棄すべき!



 自民党
小泉進次郎



24時間以内に野田首相が
解散を確約しない限り、
不信任案と問責決議案を提出する!   自民党・脇雅史
                   参院国対委員長
                             50
自民党の矛盾


○ 消費税の10%への引上げは、自民党も提案していた……

○ 法案への賛成・反対は、
  その法案の良し悪しのみを見て決めるべき

⇒ 「いま解散総選挙になれば勝てそうだ」という理由で、
   「解散を確約しなければ法案に賛成してやらない」
   という主張には、何らの正義もない



                               51
6 三党合意と参院通過




              52
交換条件をめぐる駆け引き(2012.8.8)

午前9時20分
民主党・城島国対委員長
「首相から『近い将来、国民に信を問う』と発言させる」
⇒自民・公明「その程度の条件では呑めない」

午後5時半
野田「解散の時期を明示するなどできない」
⇒自民党・谷垣総裁、不信任案と問責決議案の提出を指示
⇒その30分後、野田が谷垣に電話で譲歩案を提示
  「近いうちに国民に信を問うという表現でどうか」

                             53
3党首会談(2012.8.8夜7時)




民主党代表   自民党総裁   公明党代表
 野田佳彦    谷垣禎一   山口那津男

                        54
3党合意(2012.8.8夜8時)

   「税と社会保障の一体改革法案が
   成立した暁には、近いうちに
   国民に信を問う」



※ 衆議院解散を事実上の交換条件にさせられた



                         55
参院通過(2012.8.10)


「社会保障と税の一体改革」法案が
参議院本会議で可決成立


⇒ 消費税の増税が決定された

                    56
解散はいつなのか?

 野田の発言の変化

8月8日 「近いうち」
8月9日 「それ以上でも以下でもない。
      文字通りに受け止めていただきたい」
9月21日 「そんなに遠くない将来」
9月28日 「いずれの日にか」

⇒ 衆議院解散をめぐる駆け引きが始まる……

                          57
7 「一体改革」を議論するフローチャート




                       58
有権者として考えるべきこと



「社会保障と税の一体改革法」は
正しい政策なのか?




                  59
「一体改革」の是非を議論するためのフローチャート

問題1    財政の黒字化は必要か否か


問題2   どのように財政を黒字化するのか


問題3     どの税を増税するのか


問題4   消費税の逆進性をどう緩和するのか


問題5      増税をどう活かすのか
                           60
問題1 日本の財政危機

 財政の黒字化は必要か否か



・不要 ⇒ 「一体改革」は非
・必要 ⇒ 問題2へ

                 61
問題2 「上げ潮派」の論理

財政黒字化のため、どの手段を組み合わせるのか
  A 歳出減
  B 余剰金(いわゆる霞ヶ関埋蔵金)の転用
  C 好況による税収増
  D 増税による税収増

・A~Cだけで十分 ⇒ 「一体改革」は非
・Dも必要 ⇒ 問題3へ
上げ潮派: A~Cだけで財政を再建できるとする派
                           62
問題3 消費税をめぐる諸問題

    どの税を増税するのか



・所得税、法人税等 ⇒ 「一体改革」は非

・消費税 ⇒ 問題4へ


                       63
問題4 逆進性対策

消費税の逆進性をどう緩和するのか


・軽減税率 ⇒ 民主党の主張は非

・給付付き税額控除 ⇒ 問題5へ
 逆進性: 貧困層ほど負担率が高いこと


                      64
問題5 年金制度改革

  増税分を何に活かすのか



※ 2012年通常国会では
   この問題は先送りにされた……


                    65
今回のテーマ




フローチャートに沿って、
問題1~5について論点を整理していく




                     66
第1章 日本の財政危機
序章  野田政権と政局
第1章 日本の財政危機
第2章 「上げ潮派」の論理
第3章 消費税をめぐる諸問題
第4章 逆進性対策
第5章 年金制度改革
終章  衆議院解散をめぐる駆け引き
                    67
問題1 日本の財政危機

財政の黒字化は必要か否か
 不要    or     必要




                   68
1-1 日本財政の現状




              69
平成24年度一般会計
  単位: 億円




           出典: 財務省HP
                       70
公債の残高は……
社会保障費の増大等で国債・地方債が累積




                      出典: 財務省HP


                                  71
よくある比喩

家計に例えると……

「月額収入が46万円しかないのに、
毎月44万円借金して90万円使っている」

⇒ これでは破綻しないわけがない

といった説明がなされることが多い……
※ 後述するように、あまり良い比喩ではない

                        72
債務残高はGDPの何%か


      ・日本は220%で断トツ1位

      ・破綻したギリシャ(160%)
       より高い




                        73
それでも信頼度の高い日本円と日本国債

日本の財政赤字は世界一だが……
○円高が続いている
○日本国債は利子率が低いのに売れている



マスコミや評論家は
「国債が破綻するおそれ」について
議論しているが、金融機関や投機筋の間では、
「日本の国債は破綻しない」
「日本は財政破綻しない」
との認識が大勢を占めている証拠
                        74
1-2 財政破綻とは何か




               75
財政破綻「する」「しない」と意見が分かれる理由




 「する派」: 財政破綻を広く定義している

 「しない派」: 財政破綻を狭く定義している


⇒ そもそも「財政破綻」の定義が一致していない


                           76
最も広義の定義

    自民党・城内実議員が提出した質問主意書
         「財政破綻とは何か」



             政府答弁
「財政状況が著しく悪化し、財政運営が極めて困難となる状況」


※ この定義であれば、
  「日本は財政破綻する」又は「既にしている」
  と言っても過言ではない

                            77
最も狭義の定義

最も極限的な状況のみを「財政破綻」と呼ぶことにする


        ○ハイパーインフレ
        ○国債デフォルト
⇒ 財政破綻とはこの2つのいずれかを
   指すと定義すれば、
  「数十年のうちに日本が財政破綻する可能性は低い」
   と言える

                             78
ハイパーインフレとは

 経済学者ケーガンの定義によると……

             と
     1年で物価が130倍以上になる状態


○1923~1924年のドイツ
○2007~2008年のジンバブエ

などの例が有名



                         79
ドイツのハイパーインフレ
1917年 第一次世界大戦が終結し、ドイツ敗戦
1921年 ドイツが連合国に支払う賠償金が
      1320億マルクと決定
1923年 ドイツ、国債を大量に発行して中央銀行に売却
      得たマルク紙幣で連合国に賠償金を支払う
   ⇒ パン1個が1兆マルクになり
      100兆マルク紙幣も発行される




               紙くずとなった札束を捨てる市民
                                 80
ジンバブエのハイパーインフレ
国債も発行せず、中央銀行に次々と紙幣を
印刷させ、無償で政府に引き渡させた

         資金が足りないならいくらでも刷れば良い

ムガベ大統領
         ○ 兵士の給料を10倍にするため、
            1兆ジンバブエドルを刷るよう命令
         ○ 50万の荷馬車と80万の牛鍬を購入するため
            1兆ジンバブエドルを刷るよう命令
         ⇒ ハイパーインフレ発生
         ⇒ 大統領、「価格を上げるな」と命令
         ⇒ 物流が闇市場化してインフレが継続
         ※ 8年間で物価が23桁上昇
            (2008年は1年間で14桁上昇)
                                   81
国債デフォルトとは


            と
    国債を期日までに返済できなくなること


○2011年のギリシャ
などの例が有名



                         82
ギリシャの財政破綻

2009年 政権交代

            旧政権は財政赤字がGDPの
            3.7%と発表していたが、
            実際には13.6%と判明した
パパンドレウ新首相




……と、旧政権の粉飾決算を暴露
                             83
旧政権の放漫財政、次々報道される



○公務員天国 労働者4人に1人が公務員
   ※ 職場に来ないのに給料だけ
      もらい続ける幽霊公務員が多数いる

○年金 希望すれば53歳から支給



                         84
ギリシャ国債の大暴落

ギリシャ政府の返済能力を疑問視した投資家が、
次々と国債を売却

⇒ 金利を上げなければ売れない状態に

※ 10年物国債の金利
    2009年10月: 4%
    2011年9月: 20%
    (日本は1%、アメリカ2%)

                         85
事実上のデフォルト

 2011年7月

金融機関が保有するギリシャ国債を、
新規の国債と交換することに

⇒ 国債保有者は、元本の21%を削減
   するのと同等の損失を被ることに

⇒ 「事実上のデフォルト」と報道

                     86
混乱

 2011年9月

ギリシャ政府、財政再建プランを発表
「公務員の3万人削減」
「年金削減」
を打ち出す
⇒ 大規模デモ起こる
                    87
1-3 日本におけるハイパーインフレの可能性




                         88
日本でハイパーインフレは起こり得るか?



際限なく紙幣を発行してバラまけば当然起こる

例えば1000兆円発行して配れば、
当然ハイパーインフレとなるが……

⇒ そのようなことは
   財政システム上起こり得ない


                        89
新規の紙幣はどのようにして市場に出回るのか

  日銀が新規の紙幣を印刷しても、
  それを何らの手続なしに市場に
  ばらまくことはできない

⇒ 日銀が国債を買い入れたとき(買いオペ)に、
   国債と引き換えに市場に出ることとなる
   国債の買い入れは2通り

  1 日銀直接引き受け
  2 金融機関経由の引き受け
                          90
1 日銀直接引き受け

財政法第5条で原則禁止されている
(国会で議決すれば例外的に認められる)

日本政府が国債を発行して、日銀に直接売却

⇒ 新規の紙幣が日本政府の手に渡る

⇒ 公共事業等により市場に出回る

                      91
2 金融機関経由の引き受け

日本政府が国債を発行して、金融機関に売却

⇒ 日銀が金融機関から国債を買い入れて、
   その対価として当該金融機関の
   当座預金の預金額を引き上げる

⇒ 銀行が当座預金から引き出す際に、
  あらかじめ印刷しておいた紙幣を手渡す


                       92
いずれにせよ……

日銀が国債等を保有することによって
新規の紙幣が市場に出回る

⇒ 日銀が相当な量の国債を保有しないと、
   ハイパーインフレのおそれはない

⇒ 「日銀が国債をどれだけ保有できるか」
   が問題となる

                       93
現在の国債の日銀保有率(2011年末)




                      94
日銀は国債をどれだけ保有できるか 1

   日銀法第2条
日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、
物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に
資することをもって、その理念とする

 日銀の目的は「物価の安定」であって、
 「景気の浮揚」ではない

 ⇒ 景気浮揚を図るために
    大量の国債を買い取ることはない
                            95
日銀は国債をどれだけ保有できるか 2

    日銀法第3条
日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、
尊重されなければならない


日銀は通貨・金融の調節については政府から独立している

⇒ 政治家が選挙対策のため景気を刺激しようとしても、
   日銀に国債買い取りを命令することはできない


                             96
日銀は国債をどれだけ保有できるか 3


   2001年にインフレを誘導すべく、日銀が
   国債購入額を大幅増額(量的緩和策)

   過剰なインフレを恐れ、上限額を設定した上で行った
⇒ むしろ「もっと買わなければデフレを
   脱却できない」との批判も多い

⇒ これだけ日銀が慎重である限り、
   ハイパーインフレは起こらない

                              97
1-4 日本における国債デフォルトの可能性




                        98
国債デフォルトは起こり得るか

「月額収入が46万円しかないのに、
毎月44万円借金して90万円使っている
状況で破綻しないわけがない」

「ギリシャが破綻したので、ギリシャよりひどい
財政状況の日本は当然破綻する」

というが……


                         99
家計に例えるのは不適切


  「月額収入が46万円しかないのに、
  毎月44万円借金して90万円使っている
  状況で破綻しないわけがない」



日本政府・日銀は通貨発行権と徴税権を
持っているので、家計に例えるのはおかしい

                        100
ギリシャと比較するのは不適切


  「ギリシャが破綻したので、
  ギリシャよりひどい財政状況の
  日本は当然破綻する」


しかし、ギリシャと日本の事情は全く異なる
    ・通貨発行権の有無
    ・国債保有層の違い
                       101
通貨発行権の有無


・ ギリシャの国債はユーロ建て
・ 日本の国債は円建て
   ※ ギリシャにはユーロの発行権がない




                        102
国債保有層の違い

     日本国債の保有層は……
   ゆうちょ銀行: 141兆円
   三菱UFJグループ: 47兆円
   みずほグループ: 32兆円
   三井住友グループ: 25兆円
  等々……

・95%は日本国内保有
  (ギリシャ国債は7割が外国保有)
・これら各金融機関は互いに資金融通し合っている
                      103
国債を国内金融機関が消化する強み

○日本企業だから、いざというときに手を引かない

○これら金融機関は資金融通し合っているため、
 「自分だけ手を引いても他の国債保有者が
 倒れれば自分も倒れる」という事情がある

⇒ 国債が次々売却されるおそれが少ない

⇒ 国債が暴落するおそれが少ない

                          104
返せなくなることはないのか

 国債の95%は国内保有

⇒ 日本政府は、日本国民から税を
  とって国債を償還することとなる

⇒ 国債の償還は、「日本国内に
   おける富の再分配」とほぼ同義

⇒ 海外保有率が増えない限り、
  日本の国債デフォルトはあり得ない
                     105
どうなれば日本は破綻するか
【可能性の低い話であるが……】
○ 国債がさらに増大
○ 国内金融機関がそれを引き受けられず、
  国債の海外保有率が増大
○ 海外保有率が高くなった後、国債の信用が失墜し、
  新たな国債を(国内・海外ともに)買ってくれなくなる
⇒ そうなった場合は、
1 国債償還のため、新たな国債を発行して
  日銀に直接引き受けさせる⇒ハイパーインフレのおそれ

2 国債償還を猶予してもらう⇒国債デフォルト

のいずれかを選ばなければならない
                              106
1-5 財政危機のシナリオ




                107
このまま放っておくと……

ハイパーインフレや国債デフォルトの
       可能性は低いが……


このまま放っておくと、今後、
国債償還費が他の予算を圧迫し、
財政が混乱する可能性は十分にある

                    108
国債保有者

   ゆうちょ銀行: 141兆円
   三菱UFJグループ: 47兆円
   みずほグループ: 32兆円
   三井住友グループ: 25兆円

  これらの金融機関は、国民の預金を
  元手に国債に投資している
⇒ 国民の預金額を超えて投資することはできるが、
  預金引出しの集中により支払いができなく
  なるリスクを抱えることになるため限界がある
                           109
家計の金融資産と国債累積額
  このまま推移すると逆転するおそれもある
⇒ 逆転したからといって直ちに
   破綻するわけではないが、金融機関は、
   元手(国民の預金)を超えて国債に
   投資することのリスクを危険視しはじめる
⇒ 「日銀に転売できるなら買っても良いが、
  転売できないなら国債を買わない」と判断
⇒ 国債が国内で売れなくなる

⇒ 買い手がおらず、国債暴落
                         110
国債が暴落すると……
国債暴落=金利を上げなければ国債が売れなくなる状態

  既存の国債のうち返済期限が来ているものについては、
  新規国債発行によって返済しなければならない(借り換え)

⇒ 金利上昇により借り換えに係る費用が増大

⇒ 歳出に占める国債費(国債返済の費用)の割合が増加

⇒ 他の予算を圧迫

⇒ 年金や地方交付税の給付がストップし社会が混乱
                             111
このような混乱を防ぐには


   国債への信頼を維持する必要がある

⇒ 財政再建に向けた道筋を
   明確化する必要がある



                      112
1-6 財政再建への試み




               113
自民党政権の試み
1980年 鈴木内閣
      「1984年度までに赤字国債発行をゼロにする」
1981年 鈴木内閣
      「目標達成を1990年度に延期する」
      ⇒ 達成できず
1997年 橋本内閣
      「2005年度までに、赤字国債発行をゼロにする」

1998年 小渕内閣
      「景気対策のため財政赤字対策は後回しにする」
                                 114
民主党政権の目標

2010年6月 菅内閣
「プライマリーバランスを2020年度までに黒字化」

  「プライマリーバランスを黒字化」
=「(借り換えを除き)赤字国債発行をゼロにする」
=「(利払い費を除き)これ以上借金を増やさない」

⇒ 日本国債への信頼が維持できるかは、
   この目標が実現できるかにかかっている

                            115
問題1 日本の財政危機

財政の黒字化は必要か否か




    必要
               116
第2章 「上げ潮派」の論理
序章  野田政権と政局
第1章 日本の財政危機
第2章 「上げ潮派」の論理
第3章 消費税をめぐる諸問題
第4章 逆進性対策
第5章 年金制度改革
終章  衆議院解散をめぐる駆け引き
                    117
問題2 「上げ潮派」の論理
財政黒字化のため、どの手段を組み合わせるのか
 A 歳出減         B 余剰金の転用
 C 好況による税収増  D 増税による税収増
A~Cだけで十分  or   Dも必要




                          118
2-1 霞ヶ関埋蔵金




             119
歳出減

事業仕分け第1弾では、
3兆円削減を目標として、7000億円しか削減できず

⇒ 無駄な支出を削減することは当然だが、
   財政危機に対応できるほどの
   規模の削減は不可能

⇒ 「A 歳出減」だけでは無理なので、
   「B 余剰金(霞ヶ関埋蔵金)の活用」を検討

                           120
霞ヶ関埋蔵金とは


特別会計のうち取り崩せる剰余金や積立金のこと。
これを崩して一般会計の歳入とすることができる。


※「予算書や決算書に載っていない隠し金」という意味ではない




                            121
一般会計と特別会計
 一般会計
  税収や国債を主な財源とし、
  行政一般のために歳出する会計。

 特別会計
特定の事業のために、一般会計とは独立した
経理管理がなされている会計。
保険料収入等を主たる財源とするが、
一般会計からの繰入もある。
                       122
それぞれの予算規模

平成24年度予算では……


           90.3兆円
    一般会計


           394.1兆円
    特別会計

                     123
特別会計の種類(全18種)
 地震再保険特別会計      財務省      食料安定供給特別会計 農林水産省
 労働保険特別会計       厚生労働省      特許特別会計         経済産業省

国有林野事業特別会計 農林水産省         自動車安全特別会計        国土交通省

   年金特別会計       厚生労働省    外国為替資金特別会計       財務省
 農業共済再保険特別会計    農林水産省    財政投融資特別会計        財務省
                                           総務省
 森林保険特別会計       農林水産省    交付税・譲与税配付金特別会計
                                           内閣府
漁船再保険・漁業共済保険特別会計 農林水産省   国債整理基金特別会計       財務省
                                          経済産業省
 貿易再保険特別会計      経済産業省    エネルギー対策特別会計       環境省
                                          文部科学省

社会資本整備事業特別会計    国土交通省     震災復興特別会計        復興庁
                                                  124
塩川発言
   一般会計に比べ、特別会計は
   財務省による査定が不十分と言われている

     2003年2月 小泉内閣において特別国会の
             見直しが問題化された際……

           母屋ではおかゆ食って、
           辛抱しようとけちけち節約しておるのに、
           離れ座敷で子供がすき焼きを食っておる

           ……との例え話が有名になった
塩川正十郎財務相
                                 125
小泉内閣の特別会計改革
     行政改革推進法

31個あった特別会計を5年かけて統廃合し、17個にする

  財政投融資特別会計の切崩し

   財政投融資特別会計では、金利変動リスクに
   備えて準備金を積み立てていた

⇒  モンテカルロ・シミュレーションの結果、準備金は
   もっと少なくてもリスクに対応できることが判明

⇒ 準備金から13.8兆円を一般会計に繰り入れ
                              126
野党民主党の主張(2007年)
  民主党「特別会計改革が甘い」
       「見直しで更に15兆円を捻出できる」
       霞ヶ関埋蔵金伝説のたぐいだ。できるわけない。
                   と与謝野が反論
自民党・与謝野馨   いや、埋蔵金は確かにある!
                と中川が再反論

                           自民党・中川秀直


自民党内で対立が起こり、「霞ヶ関埋蔵金」が流行語に
                                      127
安倍・福田・麻生内閣による改革(2007~2009年)




2007年度:
 外国為替特別会計から1.8兆円を一般会計に繰り入れ
2008年度:
 財政投融資特別会計から6.1兆円を一般会計に繰り入れ

2009年度:
 財政投融資特別会計から9.8兆円を一般会計に繰り入れ


                               128
「霞ヶ関埋蔵金」の転用は妥当か
  金利変動リスクに備えて積み立てるはずの
  準備金が年々減っていった……

「本当に必要な準備金の額」を超過して積み立てていたのなら

⇒  転用は妥当だったことになる。


「本当に必要な準備金の額」しか積み立てていなかったのなら

⇒ 転用によりリスクが高まったと言える。
  「埋蔵金」という呼称自体が妥当ではなかったことになる。
                               129
埋蔵金はまだあるのか?

2011年時点で特別会計の積立金は174兆円
(そのうち最も多いのは「年金特別会計」の122兆円)


○ 年金等崩せないものが多い

○ 仮に174兆円全て崩しても、
   国債の4年分に過ぎず
   根本的な財政再建にはならない

                             130
「埋蔵金」の転用で増税せずに済む?



  「霞ヶ関埋蔵金」の転用は、1回きりの
  歳入増に寄与するに過ぎず、
  永久に持続できる政策ではない

⇒ 転用で増税を防げることはあり得ない


                       131
2-2 好況による税収増




               132
「上げ潮派」の主張
 主張
  経済成長があれば税収は増える
⇒ 増税は見送り、経済成長を目指すべき




                 「上げ潮派」を代表する論客は
                 高橋洋一、中川秀直ら。

                 竹中平蔵、河村たかしの主張も
 元財務官僚   自民党議員   比較的「上げ潮派」に近い。
  高橋洋一    中川秀直
                                  133
「上げ潮派」の主張への疑問


① 高い経済成長は見込めるのか

② 1%の経済成長で何%の税収増が見込めるのか
③ 好景気になると国債残高も増えるのではないか




                          134
①高い経済成長は見込めるのか

バブル崩壊後……
○ ゼロ金利政策
○ 量的緩和策
○ 公共事業費の大幅増額
○ 定額給付金等のバラマキ
様々な施策を実施したが、成長率は上がらなかった

⇒ 景気が上がるのを待っていては、
   国債残高が増え続け、予算が
   組めなくなるのではないか

                      135
②1%の経済成長で何%の税収増が見込めるのか


税収弾性値: 
「GDPが1%あがると税収が何%上がるか」を示す値


上げ潮派: 「税収弾性値は3程度」
増税派:   「税収弾性値はせいぜい1.3程度」

⇒ 主張が大きく食い違う


                            136
③好景気になると国債残高も増えるのではないか



 好景気になると金利が上がる

⇒ 国債の金利も上がる

⇒ 国債残高も増える

⇒ 「好景気で税収が増えるため、国債を減らせる」
   という主張には無理があるのでは?

                          137
国債残高が増えるスピード
 ○ 借入金含めた債務残高は940兆円
  (金利5%だと年間47兆円の利払いが生じる)
 ○ 国債の多くは10年物であり、10年間は
   金利が変わらない
 ○ 残高940兆円中、来年度返済する分は数十兆円程度

⇒ いま金利が5%になったからといって、即座に年間47兆円の
   利払いが発生するわけではない。
   借り換え部分(数十兆円)に影響するだけ

⇒ しかし、金利が5%のまま10年間推移すれば、
   10年後には年間47兆円以上の利払いが発生。

⇒ 一般会計の歳出を食いつぶしてしまう。
                                 138
「上げ潮派」の論理の欠陥

    ① 高い経済成長は見込めるのか

 ⇒ 確実に経済成長を見込める方策がこれ以上ない

② 1%の経済成長で何%の税収増が見込めるのか

 ⇒ 税収弾性値を3と見積もるのは楽観的過ぎる

③ 好景気になると国債残高も増えるのではないか

 ⇒ 1~2年で残高が急増するわけではないが、
    10年以内には急増する
                           139
問題2 「上げ潮派」の論理

財政黒字化のため、どの手段を組み合わせるのか
 A 歳出減         B 余剰金の転用
 C 好況による税収増  D 増税による税収増




        Dも必要
                          140
第3章 消費税をめぐる諸問題
 序章  野田政権と政局
 第1章 日本の財政危機
 第2章 「上げ潮派」の論理
 第3章 消費税をめぐる諸問題
 第4章 逆進性対策
 第5章 年金制度改革
 終章  衆議院解散をめぐる駆け引き
                     141
問題3 消費税をめぐる諸問題

    どの税を増税するのか



   消費税以外  or  消費税
(所得税、法人税等)


                    142
税収の内訳


        税収が多い順に、

        1 所得税
        2 法人税
        3 消費税




                   143
法人税については減税方針

 外国に比べ日本の法人税は割高
⇒ 日本企業が海外に拠点を移し、日本産業が空洞化

⇒ 産業空洞化に歯止めをかけるため、
  法人税を減税する必要あり

⇒ 増税するなら所得税か消費税



                           144
消費税の特徴
   財政再建のツールとして有利な点
1 高齢者を含めたあらゆる層が負担する
2 財源として安定している
3 把握格差がない
   財政再建のツールとして不利な点
4 痛税感が強く消費が冷え込むおそれ
5 価格に転嫁できる大企業は痛まず、
  転嫁できない零細企業が打撃を受ける
6 正規雇用を減少させるおそれがある
7 逆進性がある
⇒ 1点ずつ検討していく
                      145
3-1 負担層の幅広さ
   財政再建のツールとして有利な点




                     146
所得税の仕組み

所得=収入-必要経費
課税所得=所得-所得控除
  195万円以下      5%
  195~330万円    10%
  330~695万円    20%
  695~900万円    23%
  900~1800万円   33%
   1800万円~     40%
                     147
現役世代と高齢者の比較

 現役世代
 給料を糧に暮らしており、貯蓄が少なく所得が多い
⇒ 所得税が多い

  高齢者
 年金を糧に暮らしており、所得が少なく貯蓄が多い
⇒ 所得税が少ない

 所得税では、租税負担能力に応じた課税ができない
                           148
所得税と消費税の比較

所得税: 高齢者の負担が少ない
消費税: 年齢層に関係なく消費すれば負担する


そもそも財政赤字の原因は、
少子高齢化によって高齢者への年金支給が増大したこと

⇒ 現役世代のみで高齢者の年金を支えるのは困難
⇒ 高齢者も含めたより広い年齢層に負担してもらうため、
   所得税増税より消費税増税の方が良い
                              149
3-2 財源としての安定性
    財政再建のツールとして有利な点




                      150
税収の安定性の比較
所得税: 景気による変動が大きい
消費税: 景気によらず安定している

               出典: 財務省HP




                           151
先進国の直間比率
   直間比率: 直接税と間接税の比率


 ○主要先進国では5対5
 ○日本では4対6

⇒ 安定性の面からは、直間比率を5:5に近づけるべき
⇒ 所得税よりも消費税の増税が妥当


                             152
3-3 把握格差
 財政再建のツールとして有利な点




                   153
把握格差とは

   把握格差
「税務当局が納税者の所得を正確に把握できる度合い」
が業種によって異なること


※ 「クロヨン(9:6:4)」という言葉がある: 
「把握率がサラリーマン9割、自営業6割、農業4割」
(サラリーマンは源泉徴収のためほぼ正確に把握可能)

                            154
自営業者・農業者の所得税

「所得=収入-必要経費」で所得を計算して課税

 自営業者・農業者にあっては、
 どこまでを「必要経費」とするか
 線引きが困難
⇒「あらゆる領収書は経費で
  落とせる」がベストセラーに

⇒給与所得者(サラリーマン)からは
  「不平等だ」との批判も
                         155
消費税では

   消費税では把握格差がない



※ 後述する「マイナンバー制度」によって、
   所得税についても把握格差をなくせるとの
   主張もあるため、把握格差がないことを
   「消費税のメリット」とまでは言えない



                         156
3-4 消費冷え込みの懸念
    財政再建のツールとして不利な点




                      157
痛税感の問題

痛税感: 税負担を感じる感覚的な度合い


 消費税は痛税感が強く、
 消費が冷え込むおそれがある




                      158
海外では……
     直接税: 痛税感が強い

【理由】 国民が自分で計算して支払う直接税は、
      金額が目に見える分、痛税感が強い

     間接税: 痛税感が弱い
【理由】 商品価格に溶け込んでしまう間接税は、
      負担している意識が低くなり、痛税感が弱い

⇒  しかし日本では全く逆


                             159
日本では……
直接税: 痛税感が強い。ただし直接税のうち最も
      重きを占める「サラリーマンの所得税」に
      ついては、痛税感が弱い。
【理由】 源泉徴収制度のため

間接税: 痛税感が弱い。ただし、間接税のうち最も
      重きを占める消費税については
      痛税感が強い。
【理由】 税抜表示制度が長く導入されていたため
      (酒税の金額を知っている国民は少ないが
       消費税率は誰でも知っている)
                            160
痛税感で比較すると



消費税増税は、所得税増税に比べて
消費を減少させるおそれが高い




                   161
対策
消費が冷え込まないよう、政府は「段階引き上げ」を提案

      ・2014年4月から8%
      ・2015年10月から10%

⇒「駆け込み需要」の分散化を図り、消費意欲の低下を防ぐ
※ どの程度効果があるかは未知数


                             162
3-5 価格転嫁の可否
   財政再建のツールとして不利な点




                     163
消費税の納税の仕組み

事業者の売上のうち、
「105分の5」が消費税に当たる

⇒ しかし、「105分の5」を丸々
   納税するわけではなく、
  「仕入れ税額控除」を
  計算しなければならない



                    164
「仕入れ税額控除」とは

・消費税が累積しないための仕組み
・1989年の消費税制度創設時に導入された


⇒ 例として、商品が消費者の
  手に渡るまでのルートを考えてみる



                        165
消費税がなかった場合

1 A社がB社に100円で販売

2 B社は100円の利益を出すため、C社に200円で販売
  100+100=200

3 C社は100円の利益を出すため、D社に300円で販売
  200+100=300

4 D社は100円の利益を出すため、消費者に400円で販売
  300+100=400


                                166
消費税5%が累積した場合
        (仕入れ税額控除がない場合)

   売上額の105分の5を消費税として納める
1 A社はB社に105円で販売し、5円を納税
2 B社は100円の利益を出すため、205円で売りたい
  ⇒ 205×1.05=215なので、C社に税込215円で販売し、10円を納税  
  
3 C社は100円の利益を出すため、315円で売りたい
  ⇒ 315×1.05=331なので、D社に331円で販売し、16円を納税
 
4 D社は100円の利益を出すため、431円で売りたい
  ⇒ 431×1.05=453なので、消費者に453円で販売し、22円を納税
※ 400円のはずの製品が、453円になってしまう

                                         167
仕入れ税額控除制度を設けない場合


  取引のたびに消費税が累積し、
  末端の消費者の手に届く頃には
  価格がかなり高くなってしまう

⇒ 「仕入れ税額控除」によって
   累積を防ぐ必要がある



                   168
「仕入れ税額控除」とは

業者は「売上-仕入れ」の105分の5を納税すれば良い


例: 80円(税込84円)で仕入れて100円(税込105円)で売った

⇒ 5円の消費税を客から受け取ったことになるが、
  うち4円は仕入れのときに支払った税であるから、
  税務署には1円納めれば良い

※ 105-84=21円であるから、
   21円の105分の5を納税すれば良い


                                     169
消費税5%が累積した場合
      (仕入れ税額控除がある場合)

  「売上-仕入」の105分の5を消費税として納める

1 A社はB社に105円で販売し、5円を納税
2 B社は100円の利益を出すため、205円で売りたい
  ⇒ C社に税込210円で販売し、5円を納税  
  
3 C社は100円の利益を出すため、310円で売りたい
  ⇒ D社に315円で販売し、5円を納税
 
4 D社は100円の利益を出すため、415円で売りたい
  ⇒ 消費者に420円で販売し、5円を納税
※ 400円の製品が420円となり、消費者から見て5%の値上がりで済む

                                      170
「仕入れ税額控除」に関係する2つの制度




 1 零細小売店の免税制度

 2 輸出業者への控除額還付



                      171
1 零細小売店の免税制度

年間売上1000万円以下の小売店は、消費税の納税を免除

免税店は、税抜価格販売の店と税込価格販売の店に分かれた……

【税抜価格販売の店】(小規模な駄菓子屋など)
  これまで通りの価格で販売
⇒仕入れの際の消費税は自腹

【税込価格販売の店】
  税込価格で販売しておきながら納税しない
⇒「益税」と呼ばれ批判されているが、
  80円(税込84円)で仕入れて100円(税込105円)で販売した際、
 業者のポケットに入る利益は5円ではなく1円
 (大した金額ではない)
                                       172
2 輸出業者への控除額還付

輸出品の小売価格には、消費税を上乗せしない
(海外の消費者に消費税を負担させないため)


 ⇒ 輸出業者が80円(税込84円)で仕入れて
    100円で輸出する場合、
    仕入れの際に払った税額4円は
    後ほど輸出業者に還付される



                          173
「仕入れ税額控除」の目的


このように、仕入れ税額控除によって、
中間業者に税を負担させず、
末端消費者のみに負担させることができる

⇒ しかし、この仕組みに矛盾はないか?



                      174
「仕入れ税額控除」の矛盾

  これまでの説明は、全て

「消費税が導入されても、税抜価格は変わらない」
「消費税率が変わっても、税抜価格は変わらない」

  という前提で成り立っている

  ⇒ 実際には、消費税率が変われば
     税抜価格が変わってしまう

                          175
そもそも価格はどのように決まるのか

1 (理想的な市場のもとでは)
  市場原理によって決まる

2 (大企業と零細企業の取引では)
  大企業が実質的な決定権を持つ




                     176
1 価格が市場原理によって決まる場合

  価格を上げると販売個数が下がる
  価格を下げると販売個数が上がる

⇒ 事業者は、利益が最大になるような価格に設定する

⇒ 消費税率が変わると、当然最適な価格設定も変わる

⇒ 消費税率5%のときに105円で売っていたものを、
  消費税率10%に上がった際に110円で売ることが
  最適戦略とは限らない。
  107円や108円に設定することがあり得る。

⇒ 増税分は消費者だけでなく事業者も一定程度負担することに
                             177
価格に転嫁できない場合がある


 売れ行き減の懸念から、
 価格に転嫁できない事業者も多い

⇒ 消費税の負担が自腹となり、
  事業者が重税に苦しむことに



                   178
2 価格が大企業によって決まる場合


いわゆる「下請けいじめ」が起こる可能性がある
 大企業「値上げするなら買ってやらない」


⇒ 消費税率が上がっても、引き続き
  同じ価格設定にさせられてしまう

⇒ 下請け業者のみが増税分を負担することに

                         179
輸出業者が下請けをいじめた場合

増税後も全く同じ価格で仕入れ、同じ価格で輸出

⇒ 従来は仕入れ値の105分の5を還付されていたところ、
  今後は仕入れ値の110分の10を還付されることに
⇒ 還付金が増えて丸々お得

※ 「経団連が消費増税を主張しているのは
  このためだ」との説も



                           180
まとめ

○ 小さい事業者ほど、価格転嫁ができず
   重税に苦しむことになる

○ 増税分を価格に転嫁できる大企業
  (特に輸出企業)は痛みが少なく、
   転嫁できない下請け業者が
   打撃を受けるおそれがある



                      181
対策


○ 独禁法と下請け法を改正し、上位企業が
   下位企業に増税分を負担させることを禁止

○ 公正取引委員会に「転嫁Gメン」を配置し、
   違反がないか監視する体制を強化



                         182
3-6 雇用問題への悪影響
    財政再建のツールとして不利な点




                      183
正規雇用を減少させるおそれ


○ 派遣社員に係る費用は物品費となり、
  「仕入れ税額控除」の対象である
○ 正社員の人件費は「仕入れ税額控除」の対象ではない

⇒ 派遣社員を雇った方が消費税の節約になる
⇒ 正社員が減るおそれがある



                         184
派遣社員を使うことによる節税
 【正社員の場合】
 材料費 1000円(うち消費税48円)
 人件費 1000円(うち消費税0円)
 小売価格 2500円(うち消費税119円)
 ⇒納税額は、119-48=71円
   利益は、2500-2000-71=429円
 【派遣社員の場合】
 材料費 1000円(うち消費税48円)
 人件費 1000円(うち消費税48円)
 小売価格 2500円(うち消費税119円)
 ⇒納税額は、119-48-48=23円
   利益は、2500-2000-23=477円
                           185
この比較には誤りがある


 もちろん、この比較は正しくない

※ 正社員の人件費1000円と
   派遣社員の人件費1000円を
   等価に比べることが間違い



                    186
正しく比較すると……
【正社員の場合】
材料費 1000円(うち消費税48円)
人件費 952円
小売価格 2500円(うち消費税119円)
⇒納税額は119-48=71円
  利益は2500-1952-71=477円
                    ※ 人件費については、
【派遣社員の場合】             正社員に952円かけるのと
                      派遣社員に1000円かけるのとを
材料費 1000円(うち消費税48円)   等価に比較すべき
人件費 1000円(うち消費税48円)
小売価格 2500円(うち消費税119円)
⇒納税額は119-96=23 円 
  利益は2500-2000-23=477円

                                     187
しかし

○ 事業主の立場で考えると、どうしても
  「派遣社員の方が控除できて得」という
  イメージになる

○ 消費税増税後、派遣会社に交渉して
  増税分を転嫁できる可能性もある

⇒ 事業主にとって、派遣社員を雇う方が有利

⇒ 正規雇用が減少するおそれがある

                        188
対策

派遣法の見直しが検討されている


 しかし具体的な議論はなされていない……




                       189
3-7 まとめ




          190
逆進性



7つ目の論点である逆進性については、
次章で議論する




                     191
デメリットのまとめ
消費税のデメリットについては別途の方法で軽減できる
4 痛税感が強く消費が冷え込む
 ⇒ 2段階増税で軽減

5 価格に転嫁できる大企業(特に輸出企業)は痛まず
  転嫁できない零細企業が打撃を受ける
 ⇒ 公正取引委員会による取締り

6 正規雇用を減少させるおそれがある ⇒ 派遣法改正

7 逆進性がある ⇒次章で対策を検討

※ 軽減策を十分なものにするため、
   具体的な方法について今後検討する必要がある
                             192
消費増税が妥当

○消費増税のデメリットは、対策をとれば軽減できる
○所得増税では
 「現役世代にばかり負担がかかる」
 「財源として安定しない」
というデメリットがあり、軽減する方法がない
⇒ 所得増税よりも消費増税が妥当



                           193
問題3 消費税をめぐる諸問題

  どの税を増税するのか




     消費税
                 194
第4章 逆進性対策
序章  野田政権と政局
第1章 日本の財政危機
第2章 「上げ潮派」の論理
第3章 消費税をめぐる諸問題
第4章 逆進性対策
第5章 年金制度改革
終章  衆議院解散をめぐる駆け引き
                    195
問題4 逆進性対策

消費税の逆進性をどう緩和するのか


 軽減税率  or  給付付き税額控除
 (公明党)        (民主党)



                      196
逆進性とは

       所得の大小に関係なく
完全比例   税率が一定である状態


累進性    所得の多いものに高率の税をかけ、
       所得の低いものに低率の税をかけること


逆進性    累進性の逆

                            197
消費税の逆進性

所得は、消費と貯蓄のどちらかに使われる
  裕福層: 消費せず貯蓄する割合が高い

  貧困層: 貯蓄せず消費する割合が高い

⇒ 貧困層の方が、所得のうち
   消費税として納める割合が高くなる
⇒ 「所得の再分配の精神に反する」との批判がある

                           198
逆進性を緩和するには



1 軽減税率の導入

2 給付付き税額控除の導入



                199
4-1 軽減税率




           200
軽減税率による逆進性緩和

欧米では、消費税率20~25%が相場
しかしイギリス等では食料品等の必需品を
税率0%にすることで、貧困層に配慮


 ○貧困層は、必需品の消費が多い
 ○富裕層は、ぜいたく品の消費が多い

 ⇒ 富裕層がより多くの消費税を負担
   することになり、逆進性を緩和できる
                       201
問題点

①業界の利害調整が困難である

②税率が複雑すぎることで混乱が起こる

③税率が10%と5%では
  逆進性が緩和されない


                     202
①業界の利害調整が困難

 どの製品を「必需品」とみなして免税にするか、
 各業界の陳情合戦が起こる
 
※ 欧米では訴訟問題にも発展している

⇒ 短期間で決着をつけるのは困難



                          203
②税率が複雑すぎることによる混乱

ドイツ:
 ファーストフードの店内飲食は19%、テイクアウトは7%

カナダ:
 ドーナツは6個以上だと0%、5個以下だと5%


⇒ カナダではドーナツを一緒に
   買ってくれる人を募集する客もおり、
   「ドーナツクラブ」と呼ばれる。
※ 企業側にとっても税率計算上の負担が大きい

                               204
③10%と5%の二重税率では逆進性が緩和されない

  「一般税率が25%で食料品等が0%」
  くらいの差があれば逆進性緩和効果がある

  しかし日本では……
  ○今回の増税では10%に引上げ
   ⇒ それ以上高い税率設定は反発を招く
  ○現行制度ではほぼ例外なく5%の税率
   ⇒ 特定の製品を例外として税率を5%未満に
      下げると他の業界から反発を招く

⇒ 二重税率を設けるとすると、5%と10%にするしかない
⇒ 逆進性が緩和されない
                            205
4-2 給付付き税額控除




               206
給付付き税額控除とは


○ 「最低生活水準を維持するのに必要な消費」
  について負担した消費税を、所得税額から控除する
○ 所得税を上回る控除額が発生した際には、給付する

○ 高所得層に対しては控除額を減らす




                            207
問題点


「所得を把握しなければ控除額が計算できない」

  (把握格差の問題)




                         208
把握格差をなくすには

政府はマイナンバー(納税者番号)制度の
導入を検討中


   国民が金融機関で口座を作る際に、
   マイナンバーを告知することを義務付ける

⇒ 情報セキュリティ上の問題点を
   クリアできるかなどの検討が必要


                         209
問題4 逆進性対策

消費税の逆進性をどう緩和するのか




  給付付き税額控除
                   210
第5章 年金制度改革
序章  野田政権と政局
第1章 日本の財政危機
第2章 「上げ潮派」の論理
第3章 消費税をめぐる諸問題
第4章 逆進性対策
第5章 年金制度改革
終章  衆議院解散をめぐる駆け引き
                    211
問題5 年金制度改革

  増税分を何に活かすのか



※ 2012年通常国会では
   この問題は先送りにされた……


                    212
野田発言


          増収分は全て国民に還元
          される社会保障に使う。



⇒ 素朴な疑問
  「増収分は国債の償還に使うんじゃないの?」


                          213
正しくは


「これまで国債発行による収入を
社会保障に充ててきたが、
今後は増税分を社会保障に充てるので、
国債発行を減らすことができ、
財政赤字を減らすことができる」



                     214
首相発言のアヤ
予算を国会で議決するときは、
歳入の内訳と歳出の内訳を決めるだけ

⇒「どの歳入をどの歳出に充てる」と
  いった決め方はなされない

⇒「消費税収入を社会保障に充てる」
  という発言は無意味
※「道路特定財源」のように、
  どの歳入をどの歳出に充てるかを
  法律で規定すれば話は別だが……
                    215
消費の冷え込みは防げるか

財政赤字の主原因は社会保障(特に年金)

⇒ ここで有効な社会保障改革を行い、
  国民に「これなら老後も安心だ」と
  思ってもらえれば、消費の
  冷え込みも多少は防げる

⇒ 今後の年金制度改革が最も重要

                      216
5-1 年金制度概論




             217
年金の仕組み 1


賦課方式: 現役世代に負担させた保険料を高齢者に給付
積立方式: 現役時代に負担した保険料を積み立てておき、
        その世代が高齢者となったときに給付


  日本の年金は、多少の積立金はあるものの
  基本的には賦課方式



                          218
年金の仕組み 2
     3                    職域
     階                    加算
              なし                  なし
 給 2                現役時代の
 付 階                月収の30%程度

     1               基礎年金
     階         月額66000円(満額の場合)

 負        国民年金      月収の 月収の       なし
 担       月額15000円   16.1% 15.5%
         第1号被保険者 会社員 公務員 第3号被保険者
         (自営業者等) 第2号被保険者 (専業主婦等)

※ ここに示したのは公的年金のみ。他に私的年金に加入できる。
                                       219
第1号被保険者

  自営業者、非正規労働者等

国民年金に強制加入
(その他、私的年金である「国民年金基金」に
任意加入することもできる)

【負担】 月額15000円を保険料として支払い
【受給】 満額で基礎年金月額6.6万円
                          220
受給額の計算方法

  ○ 25年以上加入しなければ受給資格がない
  ○ 20~60歳まで40年間満額(月15000円)払えば、
    満額6.6万円を受給できる
  ⇒ 65歳から受給して74歳まで生きれば元がとれる

   受給額6.6万円の内訳
     ・うち3.3万円は保険料負担
     ・うち3.3万円は国庫負担(税金負担)

⇒受給資格さえあれば、国庫負担の3.3万円は必ずもらえるが、
  残る3.3万円の何割を受給できるかは、
  払った保険料に比例して決定される
                                  221
受給額の計算方法(例)
○ 所得が低く40年間ずっと
   保険料支払いを免除されてきた場合
 ⇒ 受給額は国庫負担分の3.3万円。

○ 40年間ずっと本来額の3分の1(月額5000円)
   しか払ってこなかった場合
 ⇒ 受給額は国庫負担分の3.3万円と
    保険料負担分の1.1万円(計4.4万円)

※ 「加入した上で支払い免除を適用する」のと
   「未加入」とは異なる。
  未加入では一切受給できない。

                             222
第2号被保険者

        会社員及び公務員


会社員: 厚生年金に強制加入。
       別途私的年金である「厚生年金基金」に任意加入できる。

公務員: 共済年金に強制加入。
       別途私的年金である「財形年金」に任意加入できる。


                                  223
負担額と受給額
●厚生年金
【負担】
月収の16.1%を保険料として支払い(ただし月収60万が天井)
積立は、本人と雇用者が半額ずつ負担
【受給】
基礎年金6.6万円(満額)+現役時代の月給の約30%

●共済年金
【負担】
月収の15.5%を保険料として支払い(ただし月収60万が天井)
積立は、本人と雇用者が半額ずつ負担
【受給】
基礎年金6.6万円(満額)+現役時代の月給の約30%+職域加算

※ 基礎年金額の計算方法は、第1号被保険者と同じ
                                  224
第3号被保険者

第2号被保険者の配偶者で、年収が一定以下の者
(主として専業主婦を想定)


 【負担】
 なし(加入手続は必要)

 【受給】
 基礎年金6.6万円(満額の場合)

 ※ 基礎年金額の計算方法は、配偶者たる
    第1号被保険者がどれだけ保険料を
    納めているかによって計算する
                         225
問題点


・水平的公平がない
・生活保護との整合性がない

・世代間格差がある


                226
5-2 水平的公平




            227
水平的公平とは

「同じ金額を負担した者は、同じ給付額を受け取る」
というルール



  水平的公平が、以下の点で保たれていない

  ○ 官民格差(解決済み)
  ○ 第3号被保険者問題(未解決)

                        228
官民格差

厚生年金(民間)と共済年金(公務員)では、
負担額に対する受給額の比が異なる

※ 公務員の方が有利


⇒ 2012年、厚生年金と共済年金を
   統合する法案が可決成立

⇒ 格差解消が決定
                        229
第3号被保険者問題

第2号被保険者(サラリーマン)の配偶者たる専業主婦は、
保険料負担額ゼロなのに基礎年金を受給できる




 ○ 働く女性と比べて不公平ではないか
 ○ 第1号被保険者(自営業者や非正規労働者)の妻と
   比べて不公平ではないか



                             230
働く女性と比べて不公平ではないか

 働く女性の主張
 保険料を払っていない専業主婦が基礎年金を
 もらえるのは不公平だ

専業主婦の主張
私たちも働いている。夫の給料は夫婦2人で働いて
得たものであり、2人で保険料を負担したと言える。
不公平ではない。

※ この規定のために、女性が働くインセンティブが
   阻害されているとの意見も
                           231
第1号被保険者の妻と比べて不公平ではないか


第1号被保険者の妻は、第1号被保険者として
国民年金の保険料を負担する必要がある

【原因】
現在の年金制度は、古い社会的慣習しか想定していない
「自営業者の妻は普通、夫の仕事を手伝っているものだ」
「非正規労働者に専業主婦たる妻がいることなどあり得ない」
と想定している

⇒ 早期に制度改正が必要


                               232
5-3 生活保護との整合性




                233
生活保護との比較

 ・基礎年金は満額で月6.6円

 ・生活保護は月額7.4万円+住宅費


⇒ 保険料未納を続けておいて、
  貯蓄もせずに60歳で定年退職すれば、
  生活保護によって年金より高い給付を
  もらえるのではないか?

                       234
実際には……
生活保護: 受給の要件を満たしているか厳しく審査される

基礎年金: 25年ルールを満たしていれば必ずもらえる



⇒ 生活保護は安易に認められるものではないため、
  必ずしも不公平とは言えない
⇒ しかし生活保護より給付額が少ないことは、
  保険料支払いのインセンティブを阻害する

                              235
5-4 世代間格差




            236
世代間格差とは

 世代によって、負担する保険料や
 給付される金額が異なること



⇒ 少子高齢化社会では、
   ある程度の格差はやむを得ないが、
   極端すぎないよう配慮が必要


                      237
世代間格差の背景①少子高齢化


1965年: 高齢者1人を現役世代11人が支える(胴上げ型)
2005年: 高齢者1人を現役世代3.3人が支える(騎馬戦型)
2055年: 高齢者1人を現役世代1.3人が支える(肩車型)

※ 高齢者は65歳以上、現役世代は15~64歳を指す




                              238
世代間格差の背景②平均寿命の延び


そもそも年金とは「長生きのリスク」に備えたもの

⇒ 平均寿命前に死亡した人の存在によって
  支払わずに済んだ年金を、
  長生きしている人間に渡す

⇒ みんなが長生きするようになると、
  年金財政は悪化する


                          239
世代間格差の背景③1972年の改正


田中角栄内閣の時代、
高齢者への年金支給額の引上げが決定された……

⇒ 現役世代の負担が増大

※ 日本では高齢者の投票率が高く、
   政治家は高齢者を厚遇する施策を
   提案せざるを得ない

                      240
「財政的幼児虐待」

高齢者への年金のための財源がなく、
やむなく赤字国債を発行して未来にツケを残している
⇒ 老人は孫世代から3000万円の借金を
  前借りして暮らしている状態

⇒ 新たに生まれた子には、生まれながらに
  3000万円の借金を背負わされる

⇒ ボストン大学コトリコフ教授は
  これを「財政的幼児虐待」と呼ぶ

                           241
何らの改革も行わない場合




 赤字国債の発行が加速




               242
年金制度改正の方向性
    (抜本改革を行わない場合)

以下の3つの手段を組み合わせれば、
制度自体に大きな変更を加えずに、
対症療法で年金破綻を防ぐことができるのでは?

   1 保険料負担額の引上げ

   2 年金支給額の引下げ

   3 年金支給開始年齢の引上げ

                     243
①保険料負担額の引上げ



既に行われている……

平成21年:    月額14660円
平成21~29年: 毎年、月額280円ずつ値上がり




                            244
②年金支給額の引下げ

高齢者の反対が強く、行われていない
⇒ しかし2004年の小泉構造改革により、
   「マクロ経済スライド」が導入された
【マクロ経済スライドとは】
 年金給付額は、物価が上がると自然に増額する仕組み
⇒ 物価が上がっても増額しないこととし、
  実質上の減額ができる仕組みが導入
⇒ しかしその後全くインフレが起こっていないため、
  適用されていない

                        245
③年金支給開始年齢の引上げ

検討されてはいるが、反対が多く実現は困難

現在は65歳だが……
仮に70歳に引き上げた場合、
平均年齢以上の長生きをしなければ
元がとれなくなる

⇒ 現役世代の未払いが増え、
   ますます年金財政が悪化するおそれ

                       246
対症療法では限界がある

  1 保険料負担額の引上げ

  2 年金支給額の引下げ

  3 年金支給開始年齢の引上げ

⇒ いずれも、少子高齢化が進むにつれ、
  現役世代の負担が徐々に増大する。
  抜本的な解決にはならない。

⇒ 抜本的な改革による解決が望ましい。
                      247
5-5 抜本改革の提言(例)




                 248
問題点(再掲)

・水平的公平がない
・生活保護との整合性がない

・世代間格差がある

⇒ 抜本改革により解決を図る
                 249
1 水平的公平



「そもそも図るべき公平とは何なのか」
を再検討する




                     250
水平的公平を図るべき部分と
         そうでない部分がある

   税
 「富裕層から税金を支払わせて貧困層に給付する」
 という制度であるから、水平的公平を図る必要はない


   保険
「現役世代から年金保険料を支払わせて高齢者に給付する」
という制度であるから、水平的公平を図るべき

  ※ 「税」と「保険」の考え方は全く異なる
                              251
抜本改革の提言例
  基礎年金(1階部分)
 「富裕層から税金を支払わせて貧困層に給付する制度」
  ○ 保険料でなく税を財源とする
  ○ 水平的公平を保つ必要はない
  ○ 十分な貯蓄がある高齢者には給付しない

  厚生年金(2階部分)
 「現役世代から保険料を支払わせて高齢者に給付する制度」
   ○ 税でなく保険料を財源とする
   ○ 水平的公平を保つ必要がある
   ○ 貯蓄額に関係なく保険料支払額に応じて給付する
                             252
抜本改革の提言例(続き)
   第3号被保険者問題も解決される
  基礎年金を所得再分配機能と位置付けたので……
○ 基礎年金の財源は、現在「保険料と税金で折半」
  であるが、これを全額税金負担とする

○ 専業主婦は、保険料を一切負担していない者
  であっても基礎年金を給付する

○ 貯蓄が多い家計には給付しない

⇒ 専業主婦の優遇はなくなる
                           253
2 生活保護との整合性

基礎年金を所得再分配機能の1つと位置付けた以上、
基礎年金と生活保護を一元化することが望ましい



  基礎年金を支給することで
  現行の生活保護制度を廃止する
 ※ ただし、消費税の大幅引上げが必要となる


                           254
3 世代間格差

○ 貯蓄の多い高齢者には基礎年金をカット
           (厚生年金は給付する)

○ 高齢者にも負担させるべく、消費税を引上げ


⇒ 税収を増やすとともに、
  年金給付による歳出を減らすことにより、
  現役世代の負担が軽減できる

                         255
5-6 国会における議論




               256
増税と同時に行う経済振興策
      (可決済みのもの)

○ 年間所得77万円以下の
  年金生活者に支援金を支給

○ 年金受給に必要な加入期間を
  25年から10年に引き下げ
 ⇒ 65歳以上で無年金の42万人中、
    17万人が新たに支給対象に
※ 社会保障費を増額する施策が可決されている……
  貯蓄の多い高齢者にも給付されてしまう……

                           257
増税と同時に行う経済振興策
     (議論中のもの)


住宅ローン減税の拡充や
不動産取得税の見直しを行う

という旨が法律に盛り込まれたが、
具体的な法案は今後作成予定……



                   258
低所得者対策


党ごとに主張がバラバラ……

民主党: 給付付き税額控除を主張
公明党: 食料品などに軽減税率
自民党: 慎重な態度


                   259
終章 衆議院解散をめぐる駆け引き
 序章  野田政権と政局
 第1章 日本の財政危機
 第2章 「上げ潮派」の論理
 第3章 消費税をめぐる諸問題
 第4章 逆進性対策
 第5章 年金制度改革
 終章  衆議院解散をめぐる駆け引き
                     260
1 解散引き延ばしと首相問責




                 261
世論調査
  2012年8月12日 読売新聞の世論調査

  次回総選挙の際には、
  比例代表でどの政党に投票しますか?
   自民党:21%
   維新の会:16%
   民主党:11%

⇒ 民主党議員ら「いま解散するのは自殺行為だ」
⇒ 民主党、解散引き延ばしにかかる
                          262
問責決議案 採決へ
8月28日
みんなの党など野党7党が提出した
首相問責決議案の採決が
29日に行われることが決定

その案文には、消費増税と3党合意を
非難する内容があった……
公明党「これでは我々は賛成できない」
自民党「案文修正を検討いただけないか」
⇒ 野党7党ら拒否
                      263
自民党、賛成に回る

          提案理由ではなく
          問責するかどうかが問題

  脇雅史
参院国対委員長


小異を捨てて大同をとらねば

                   谷垣禎一総裁

⇒ 自民党執行部、問責決議案に賛成することを決定
                            264
問責可決(2012.8.29)

   野田首相問責決議案が可決
              ・自民党は賛成
              ・公明党は欠席


⇒ 自民党・丸山和也議員が造反欠席
   「結果だけあればいいという自己矛盾の茶番劇だ」

⇒ 自民党・谷垣総裁の求心力が更に低下

                             265
解散をめぐる野田発言

 野田の発言の変化

8月8日 「近いうち」
8月9日 「それ以上でも以下でもない。
      文字通りに受け止めていただきたい」
9月21日 「そんなに遠くない将来」
9月28日 「いずれの日にか」

⇒ 自民党、「3党合意を反故にする気か」と
   野田の「約束違反」を非難
                          266
2 特例公債法案をめぐるチキンレース




                     267
政調会長会談(2012.8.22)

民主党・自民党の政調会長会談

民主党「特例公債法案を成立させたい」
自民党「成立させたいなら、解散時期を明示せよ」

⇒ 民主党、拒否

⇒ 特例公債法案の成立が暗礁に

                          268
特例公債法案とは①

財政法第4条

「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入をもって、
その財源としなければならない。
ただし、公共事業費、出資金及び貸付金の
財源については……公債を発行し又は借入金を
なすことができる」


※ 建設国債はOKだが赤字国債は禁止している

                           269
特例公債法案とは②

ところが……

1965年補正予算で、
池田内閣が特例公債法を制定
(財政法第4条をくつがえす法律)

⇒ 2600億円の赤字国債発行(戦後初)
※ 法律の規定は法律でくつがえすことが可能

                        270
特例公債法案とは③


その後も自民党政権は、
毎年「特例公債法案」を可決成立させ、
赤字国債を発行し続けた……

⇒  一定の経済効果を上げてきたものの
   財政状況は徐々に悪化


                      271
特例公債法案とは④
      予算については……
 予算が成立しないと行政が成り立たない
⇒ 「衆議院の優越」が規定されており、
  衆議院でさえ可決すれば、
  参議院が反対しても成立する

   特例公債法案については……
 特例公債法案が成立しないと予算通りに執行できない
⇒ 「衆議院の優越」は規定されておらず、
  衆議院のみならず参議院でも可決させないと
  成立しない
                            272
特例公債法案が成立しない場合


○ 自治体への交付金が滞る

○ 公務員の給与が払えず行政機関が閉鎖

等の可能性があり、
国民生活に重大な支障が生じる


                      273
「政争の具」
 特例公債法案の特徴
 ○ 成立させなければ行政が停滞する
 ○ 毎年成立させなければならない
 ○ 衆・参両院で可決しなければならない


⇒ ねじれ国会のもとでは、
  野党が特例公債法案を「人質」にとって
  与党に要求を呑ませることができてしまう

                        274
通常国会閉会(2012.9.7)



   特例公債法案が棚上げのまま閉会

⇒ 地方交付税の執行が延期された




                     275
まさにチキンレース

 成立しないのは誰のせいなのか?

民主「野党が賛成しないせいだ。
    特例公債法案を政争の具にするとは卑怯だ」

自民「早期解散という約束を破った
    民主党のせいだ」


                       276
3 臨時国会と衆議院解散




               277
松下忠洋金融担当相の自殺(9月10日)



       動機は不明

       ※ 週刊新潮で女性問題が
          スクープされた直後だった




                         278
2つの党首選挙
・9月21日 民主党代表選で、野田が再選

・9月26日 自民党総裁選で、安倍が選出
              ※谷垣は出馬断念




  安倍晋三
                         279
内閣改造(2012.10.1)




 法相         文科相
田中慶秋       田中真紀子



⇒ この2人が後に問題化
                   280
田中法相の辞任(2012.10.23)
○ 外国人献金(政治資金規正法違反)の疑惑

○ 暴力団関係者との交流

 ⇒ いずれも本人が事実と認めた




                        281
臨時国会召集(2012.10.29)



参議院、首相の所信表明演説を拒否
            (史上初)




                      282
3大学不認可問題①

11月2日
・秋田公立美術大
・札幌保健医療大
・岡崎女子大
3大学の新設について、田中文科相「不認可」と発表

○ 認可の決定は大臣決裁

○ 大学設置・学校法人審議会は
  「法律上の基準を満たしている」と答申していた

                           283
3大学不認可問題②

  田中文科相、持論を展開

          約800の大学がある。
          大学は量より質が大事。
          安直に認めると教育の
          現場が混乱する

⇒ 「法令上の基準を満たしているのに
   独自の判断で認可しないのはおかしい」
  と批判広がる
                        284
3大学不認可問題③

11月6日
           認可をしなかっただけであり、
           不認可処分をしたわけではない。
           大学設置認可の在り方を
           抜本的に見直し、新たな
           審査基準を設けて審査する


前川官房長「不認可処分ではない。大臣の指示を
        我々が取り違えたかもしれない」
……と、官僚は大臣を擁護
                             285
3大学不認可問題④

11月7日
一転して、現時点の審査基準で審査し認可する旨を表明


           (今回の騒動で)
           3大学にとっては
           良い宣伝になったのではないか



   ⇒ 「良い宣伝」発言が物議をかもすことに
                            286
臨時国会での論戦

与党・民主党 VS 最大野党・自民党
    「近いうちの解散」は嘘だったのか

  解散する前に、特例公債法案や
  衆議院定数是正をやる必要がある

 解散すると明言していただかないと、
 協力できない

                       287
党首討論(2012.11.14)

  ついに解散を表明

    来年の通常国会で定数削減に
    協力すると確約できるなら、
    16日に解散しても良い

    ⇒ 安倍、協力を約束

                    288
2懸案の処理(2012.11.15)


○ 特例公債法案
○ 一票の格差是正のための
  公職選挙法改正案
が可決成立

                      289
衆議院解散(2012.11.16)




                    290
総選挙(2012.12.16)

「民主党 VS 自民党」の構図に加え、
第3極と呼ばれる政党が乱立

⇒ 自民党、280議席超えの大勝利

          自民党が積極的に支持
          されたのではない。
          今回の勝利は、民主党への
          幻滅によるものだ

自民党青年局長
 小泉進次郎
                         291
第二次安倍内閣発足(2012.12.26)




2009年の政権交代以来、
3年3ヶ月ぶりに自民党が政権復帰
                        292
野田政権とは何だったのか
  選挙対策上の鬼門として歴代政権が
  先送りにして来た「消費増税」にあえて取り組んだ

○ 鳩山・菅の低支持率を引き継ぎ、マイナスからの船出であった

○ 与党内でさえコンセンサス形成が困難な上、
  ねじれ国会という悪条件が重なった

○ 「早期解散」という野党の理不尽な条件を呑み、
 敗北を承知で選挙に打って出た
 =政権を手放すことと引き換えに政策を実現した
※ 支持率は低かったが、十年後に評価される内閣ではないか


                                 293
書籍紹介

         三木義一「日本の税金」
         岩波新書刊
         本体800円+税

         おすすめ度 ★★★★★




所得税、法人税、消費税まで、
様々な税の特徴と問題点を整理した名著
                       294
参考文献
○政局関係                         ○税制関係
野田佳彦「民主の敵」新潮新書                大下英治「財務省秘録」徳間書店
小林良彰「政権交代」中公新書                大村大次郎「あらゆる領収書は経費で落とせる」中公新書ラクレ
松下政経塾「素志貫徹 野田佳彦の軌跡」国政情報センター   海江田万里「税金がわかる本」かんき出版
金子充「どじょう宰相の誕生」コミュニティ・ブックス     三木義一「日本の税金」岩波新書
読売新聞政治部「民主瓦解」新潮社              小此木潔「消費税をどうするか」岩波新書
大下英治「したたかなどじょう 野田佳彦研究」青志社     小室直樹「消費税は民意を問うべし」ビジネス社
○経済財政関係                       【消費増税賛成派】
藤原章生「ギリシャ危機の真実」毎日新聞社          森信茂樹「消費税、常識のウソ」朝日新書
田原総一朗編「日本経済これが答えだ」アスコム        石弘光「税の負担はどうなるか」中公新書
小野善康「成熟社会の経済学」岩波新書            石弘光「増税時代」ちくま新書
猪木武徳「経済学に何ができるか」中公新書          熊谷亮丸「消費税が日本を救う」日経プレミアシリーズ
田中素香「ユーロ」岩波新書                 桜井良治「消費税は弱者にやさしい」言視舎
飯田泰之「ゼロから学ぶ経済政策」角川oneテーマ21    西沢和彦「税と社会保障の抜本改革」日経新聞出版社
松田千恵子「国債・非常事態宣言」朝日新書          【消費増税反対派】
榊原英資「財務省」新潮新書                 斉藤貴男「消費税のカラクリ」講談社現代新書
川北隆雄「日本国はいくら借金できるのか」文春新書      河村たかし「復興増税の罠」小学館新書
中空麻奈「ソブリンリスク早わかり」中経出版         原田泰「震災復興 欺瞞の構図」新潮新書
相沢幸悦「2013年、世界複合恐慌」朝日新書        植草一秀「消費増税亡国論」飛鳥新社
土居丈朗「財政学から見た日本経済」光文社新書        菊池英博「日本を滅ぼす消費税増税」講談社現代新書
久保田博幸「日本銀行の仕組みがわかる本」秀和システム    ○社会保障関係
三橋貴明「日本は国債破綻しない」実業之日本社        太田啓之「年金50問50答」文春新書
深尾光洋「財政破綻は回避できるか」日経出版社        盛山和夫「年金問題の正しい考え方」中公新書
白川浩道「日本は赤字国家に転落するか」日経出版社      野口悠紀雄「消費増税では財政再建できない」ダイヤモンド社
菅正治「霞ヶ関埋蔵金」新潮新書               鈴木亘「年金問題は解決できる」日経新聞出版社
盛山和夫「経済成長は不可能なのか」中公新書         西沢和彦「年金制度は誰のものか」日経新聞出版社
中野雅至「財務省支配の裏側」朝日新書            山田昌弘「ここがおかしい日本の社会保障」文春文庫
岩田規久男ほか「ゼミナール経済政策入門」日経出版社     鈴木亘「財政危機と社会保障」講談社現代新書
永野学「いちばん面白い日本国債入門」東洋経済新聞社     みずほ総研「年金のしくみ」東洋経済
宮脇淳「財政のしくみ」東洋経済               鈴木準「社会保障と税の一体改革をよむ」日本法令
土居丈朗「日本の財政をどう立て直すか」日経出版社
                                                              295

モヤLT_野田佳彦と消費増税