FLOSSとフリーカルチャーの流れ


                 Version 0.03

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  Attribution-ShareAlike 3.0 Unported License.

      Tatsuki Sugiura <sugi@nemui.org>
Agenda
●
    フリーソフトウェア (ストールマン)
●
    オープンソース (レイモンド)
●
    クリエイティブ・コモンズ (レッシグ)
●
    著作権おさらいなど
●
    その後、国内でPCL など
フリーソフトウェア
フリーソフトウェア - 概略
●
    1985 年くらいから
●
    リチャード・M・ストールマンが提唱
●
    「自由な」ソフトウェア環境の実現と維持を
    目指す
●
    いわゆる「フリーソフト(無料ソフト)」と
    は全く関係ない
リチャード・M・ストールマン
●
    1971年 MIT AI 研でプログラムのソー
    スを公開し、誰でも改良できるという
    ハッカー文化を体験する
●
    その後のソフトウェアの秘匿化、商業
    化や、独占的な環境に反対
●
    1983年、Unix 環境全てを自由なソフト
    ウェアとして開発する事を目指し、
    GNU プロジェクトを発足
●
    1985年、自由なソフトウェア環境の発
    展をめざしたフリーソフトウェア財団
    を設立
GNU/フリーソフトウェアの目標
●
    ストールマンの語る「自由」
    –   0. freedom to run program
        誰でも無条件にプログラムを実行する自由 (前提)
    –   1. freedom to help yourself
        自分でプログラムに機能を追加したり、バグを直すなど、改編
        する自由
    –   2. freedom to help neighbor
        他の人にプログラムを配布する自由
    –   3. freedom to help build community
        改変したプログラムを共有し、コミュニティを構築する自由
●
    DRM、ソフトウェア特許などには完全に反対
●
    注意: 無料かどうかは全く関係ない
コピーレフトというアイデア
●   "Copyleft – All rights reversed."
●
    著作権の上に成り立つ、いわばカウンターコ
    ピーライト
●
    「「制限する事」を禁止する」ライセンス
●
    これにより自由な環境を維持する
●
    具体的さらに
    –   バイナリの利用者にソースコードの入手を保証しな
        いといけない
    –   成果物全体にそれより厳しい制限をしてはならない
ライセンスの策定
●   GNU General Public License (1989)
    –   コピーレフト、成果物全体(=ソフトウェア的にリンクす
        る範囲)に波及、ソースコード公開必須
●   GNU GPL v2 (1991)
●   GNU LGPL v2 (1991)
    –   波及条項を削除したバージョン
●   GNU GPL v3 (2007)
    –   DRM、特許の排除条項を追加
●   GNU Affero General Public License v3 (2007)
    –   オンラインサービス利用者にも GPL と同じ自由を保証
GNU GPL を採用するソフトウェア
●
    Linux カーネル
●   GNU Compiler Collection (gcc)
●   Emacs
●
    FLOSS 全体の50%程度
●
    採用するソフトウェアは減少傾向
●
    GPL v2 から v3 への移行に難
●
    マルチライセンス化も進む
批判
●
    イデオロギー主体過ぎる
●
    「自由然らずんば死を」は行き過ぎ
●
    GNU GPL の波及条項が商業ソフトウェアに
    使いにくすぎる
●
    ストールマンが偏屈
オープンソース
オープンソース - 概略
●
    1997年くらいから
●
    開発手法自体はずっとその前からあるが、エ
    リック・S・レイモンドが論文(エッセイ)と
    してまとめ、命名する
●
    ソフトウェア開発手法として、緩いライセン
    スの採用し、共同開発するモデルは優れてい
    るからみんなやろうぜと言う主張
●
    明確な「オープンソースの定義」を策定
エリック・S・レイモンド
●
    1997年、fetchmail を開発した経験
    を元に、オープンソース開発の論文
    を発表。Linux などコミュニティに
    よるソフトウェア開発を分析
●
    マイクロソフトの対 Linux 戦略に影
    響を与え、それをすっぱ抜く
●
    Netscape (現 Mozilla Firefox) の
    オープンソース化の引き金になる
●
    1998年 Open Source Initiative を設
    立
レイモンド曰く... (山形浩生訳)
もう 20 年以上にもわたって、ぼくはむかつかないソフトに
あふれた世界に暮らすことを夢見ていた。きれいで、強力
で、信頼できて、きちんと書かれたコード、技術屋たちが愛
して誇れるコード、ボロボロで穴だらけで悲惨で罵倒するし
かないような代物じゃないコードの世界だ。人々に、胃潰瘍
じゃなくて選択を与えるようなインフラ、独占によるロック
インじゃなくて、自由を与えるインフラ。そこへの道とし
て、オープンソース・モデルはいちばん見込みがありそうだ
と信じているし、ハッカー文化の力と自由市場が手を組め
ば、それがうまくいくとぼくは信じている。
オープンソース運動
●
    優れた開発手法として、共有可能なライセン
    ス、コミュニティベースの開発を促進する
    –   「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻で
        はない」
●
    物凄く種類のあったライセンスを分類し、基
    準を策定(オープンソースの定義)
●
    フリーソフトウェアとは協調したり対立した
    り場合による
オープンソースの定義
●
    Debian Freesoftware Guideline がベース
●
    オープンソースライセンスの基準になる条項を決定
    –   再頒布の自由
    –   ソースコード入手性の保証
    –   差別禁止
        商用かどうか、分野、目的などを限定してはならない
●
    これ以外にもあるので、詳しくは
    http://www.opensource.jp/osd/osd-japanese.html
●
    OSI 自身は新しいライセンスを書くのではなく、この定
    義を元に大量にあるライセンスを認証してまとめている
批判
●
    知財などの考え方と衝突する
●
    フリーソフトウェアよりマシだけど、それで
    も商業ソフトウェアでは使いにくい
●
    その他...
クリエイティブ・コモンズ
クリエイティブ・コモンズ - 概略
●
    2001年くらいから
●
    オープンソース運動などを参考に、法学者
    ローレンス・レッシグなどにより設立
●
    ソフトウェア以外のフリーコンテンツをうま
    く流通させる基盤整備をめざす
●
    条項を自由に組み合わせられるライセンスを
    制定
ローレンス・レッシグ
●
    法学者。憲法学、サイバー法、
    情報法が専門
●
    2000年インターネットと法律の
    関係を分析した「CODE」を出
    版
●
    2001年 クリエイティブ・コモ
    ンズ設立
●
    法律と現状の分析に関する書籍
    を複数出版しフリーカルチャー
    の支持と著作権批判を展開
●
    2007年 著作権関連の活動を終
    了し、「腐敗」の研究へ
レッシグ曰く...

デジタルの時代において、著作権法はもはや現実とあ
わなく (out of sync に) なってしまった。

われわれは、一般の家庭で何気なく行っている行為
が、いちいち著作権違反になるような現実を変えなく
てはならない。
CC ライセンス
●
    音楽、文章、絵などなどに幅広く使えるライセンス
●
    レッシグの「CODE」のアイデアを元に、一般の人に分か
    りやすい要約(マーク)と、実際のライセンス文を分離
●
    ベースとして、再配布は自由にできる
●
    パブリックドメインから、きつい制限まで自由に選べる
●
    以下の条項を組み合わせ
    –   表示: 作者表示義務
    –   非営利: 使用目的を非営利に限定
    –   改変禁止 (継承との組み合わせ不可)
    –   継承: 二次的著作物は同じライセンスを適用
著作権おさらいなど
明確なライセンスを定義する意義
●
    利用時にいちいち著作者に確認しなくていい
    –   双方の手間が減り、著作物の利用が促進される
●
    利用者の権利が保証される
    –   ライセンスを受けた時点の権利を永続的に保持す
        る
日本の著作権
●
    大陸法の Author's rights の流れを受け、「著作者人格権
    (譲渡不能)」を持つ
    –   日本の著作者人格権は世界的に見ても例外的に強力
●
    著作者人格権は US などにはないので注意!
    –   フリーソフトウェアやオープンソースでは考慮されていない
    –   クリエイティブ・コモンズでは一応手当されているが
●
    著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであっ
    て、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
    –   アイデアは著作物ではない
    –   厳密にはキャラクターは著作物ではないか
        ●
            ただし、いわゆる商品可能化権などでの保護はある
著作権と他の権利保護
●
    著作権で保護されなくても、商法など別の法
    律で制限される事がある
●
    著作権と特許は別
日本での派生
ピアプロ キャラクター ライセンス
●
    それなりに自由なライセンス
●
    キャラクターに対する物として画期的か
●
    しかし、利用者に対する保証はほぼない
    –   クリプトンは無条件で条項をいつでも好きなように変
        更できる
    –   利用者は変更に自動的に従わなくてはならない
    –   クリプトンはいつでも一方的にライセンスを終了でき
        る
ニコニ・コモンズ




 これはひどい
FLOSSとフリーカルチャーの流れ

FLOSSとフリーカルチャーの流れ

  • 1.
    FLOSSとフリーカルチャーの流れ Version 0.03 This work is licensed under a Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unported License. Tatsuki Sugiura <sugi@nemui.org>
  • 2.
    Agenda ● フリーソフトウェア (ストールマン) ● オープンソース (レイモンド) ● クリエイティブ・コモンズ (レッシグ) ● 著作権おさらいなど ● その後、国内でPCL など
  • 3.
  • 4.
    フリーソフトウェア - 概略 ● 1985 年くらいから ● リチャード・M・ストールマンが提唱 ● 「自由な」ソフトウェア環境の実現と維持を 目指す ● いわゆる「フリーソフト(無料ソフト)」と は全く関係ない
  • 5.
    リチャード・M・ストールマン ● 1971年 MIT AI 研でプログラムのソー スを公開し、誰でも改良できるという ハッカー文化を体験する ● その後のソフトウェアの秘匿化、商業 化や、独占的な環境に反対 ● 1983年、Unix 環境全てを自由なソフト ウェアとして開発する事を目指し、 GNU プロジェクトを発足 ● 1985年、自由なソフトウェア環境の発 展をめざしたフリーソフトウェア財団 を設立
  • 6.
    GNU/フリーソフトウェアの目標 ● ストールマンの語る「自由」 – 0. freedom to run program 誰でも無条件にプログラムを実行する自由 (前提) – 1. freedom to help yourself 自分でプログラムに機能を追加したり、バグを直すなど、改編 する自由 – 2. freedom to help neighbor 他の人にプログラムを配布する自由 – 3. freedom to help build community 改変したプログラムを共有し、コミュニティを構築する自由 ● DRM、ソフトウェア特許などには完全に反対 ● 注意: 無料かどうかは全く関係ない
  • 7.
    コピーレフトというアイデア ● "Copyleft – All rights reversed." ● 著作権の上に成り立つ、いわばカウンターコ ピーライト ● 「「制限する事」を禁止する」ライセンス ● これにより自由な環境を維持する ● 具体的さらに – バイナリの利用者にソースコードの入手を保証しな いといけない – 成果物全体にそれより厳しい制限をしてはならない
  • 8.
    ライセンスの策定 ● GNU General Public License (1989) – コピーレフト、成果物全体(=ソフトウェア的にリンクす る範囲)に波及、ソースコード公開必須 ● GNU GPL v2 (1991) ● GNU LGPL v2 (1991) – 波及条項を削除したバージョン ● GNU GPL v3 (2007) – DRM、特許の排除条項を追加 ● GNU Affero General Public License v3 (2007) – オンラインサービス利用者にも GPL と同じ自由を保証
  • 9.
    GNU GPL を採用するソフトウェア ● Linux カーネル ● GNU Compiler Collection (gcc) ● Emacs ● FLOSS 全体の50%程度 ● 採用するソフトウェアは減少傾向 ● GPL v2 から v3 への移行に難 ● マルチライセンス化も進む
  • 10.
    批判 ● イデオロギー主体過ぎる ● 「自由然らずんば死を」は行き過ぎ ● GNU GPL の波及条項が商業ソフトウェアに 使いにくすぎる ● ストールマンが偏屈
  • 11.
  • 12.
    オープンソース - 概略 ● 1997年くらいから ● 開発手法自体はずっとその前からあるが、エ リック・S・レイモンドが論文(エッセイ)と してまとめ、命名する ● ソフトウェア開発手法として、緩いライセン スの採用し、共同開発するモデルは優れてい るからみんなやろうぜと言う主張 ● 明確な「オープンソースの定義」を策定
  • 13.
    エリック・S・レイモンド ● 1997年、fetchmail を開発した経験 を元に、オープンソース開発の論文 を発表。Linux などコミュニティに よるソフトウェア開発を分析 ● マイクロソフトの対 Linux 戦略に影 響を与え、それをすっぱ抜く ● Netscape (現 Mozilla Firefox) の オープンソース化の引き金になる ● 1998年 Open Source Initiative を設 立
  • 14.
    レイモンド曰く... (山形浩生訳) もう 20年以上にもわたって、ぼくはむかつかないソフトに あふれた世界に暮らすことを夢見ていた。きれいで、強力 で、信頼できて、きちんと書かれたコード、技術屋たちが愛 して誇れるコード、ボロボロで穴だらけで悲惨で罵倒するし かないような代物じゃないコードの世界だ。人々に、胃潰瘍 じゃなくて選択を与えるようなインフラ、独占によるロック インじゃなくて、自由を与えるインフラ。そこへの道とし て、オープンソース・モデルはいちばん見込みがありそうだ と信じているし、ハッカー文化の力と自由市場が手を組め ば、それがうまくいくとぼくは信じている。
  • 15.
    オープンソース運動 ● 優れた開発手法として、共有可能なライセン ス、コミュニティベースの開発を促進する – 「目玉の数さえ十分あれば、どんなバグも深刻で はない」 ● 物凄く種類のあったライセンスを分類し、基 準を策定(オープンソースの定義) ● フリーソフトウェアとは協調したり対立した り場合による
  • 16.
    オープンソースの定義 ● Debian Freesoftware Guideline がベース ● オープンソースライセンスの基準になる条項を決定 – 再頒布の自由 – ソースコード入手性の保証 – 差別禁止 商用かどうか、分野、目的などを限定してはならない ● これ以外にもあるので、詳しくは http://www.opensource.jp/osd/osd-japanese.html ● OSI 自身は新しいライセンスを書くのではなく、この定 義を元に大量にあるライセンスを認証してまとめている
  • 17.
    批判 ● 知財などの考え方と衝突する ● フリーソフトウェアよりマシだけど、それで も商業ソフトウェアでは使いにくい ● その他...
  • 18.
  • 19.
    クリエイティブ・コモンズ - 概略 ● 2001年くらいから ● オープンソース運動などを参考に、法学者 ローレンス・レッシグなどにより設立 ● ソフトウェア以外のフリーコンテンツをうま く流通させる基盤整備をめざす ● 条項を自由に組み合わせられるライセンスを 制定
  • 20.
    ローレンス・レッシグ ● 法学者。憲法学、サイバー法、 情報法が専門 ● 2000年インターネットと法律の 関係を分析した「CODE」を出 版 ● 2001年 クリエイティブ・コモ ンズ設立 ● 法律と現状の分析に関する書籍 を複数出版しフリーカルチャー の支持と著作権批判を展開 ● 2007年 著作権関連の活動を終 了し、「腐敗」の研究へ
  • 21.
    レッシグ曰く... デジタルの時代において、著作権法はもはや現実とあ わなく (out ofsync に) なってしまった。 われわれは、一般の家庭で何気なく行っている行為 が、いちいち著作権違反になるような現実を変えなく てはならない。
  • 22.
    CC ライセンス ● 音楽、文章、絵などなどに幅広く使えるライセンス ● レッシグの「CODE」のアイデアを元に、一般の人に分か りやすい要約(マーク)と、実際のライセンス文を分離 ● ベースとして、再配布は自由にできる ● パブリックドメインから、きつい制限まで自由に選べる ● 以下の条項を組み合わせ – 表示: 作者表示義務 – 非営利: 使用目的を非営利に限定 – 改変禁止 (継承との組み合わせ不可) – 継承: 二次的著作物は同じライセンスを適用
  • 23.
  • 24.
    明確なライセンスを定義する意義 ● 利用時にいちいち著作者に確認しなくていい – 双方の手間が減り、著作物の利用が促進される ● 利用者の権利が保証される – ライセンスを受けた時点の権利を永続的に保持す る
  • 25.
    日本の著作権 ● 大陸法の Author's rights の流れを受け、「著作者人格権 (譲渡不能)」を持つ – 日本の著作者人格権は世界的に見ても例外的に強力 ● 著作者人格権は US などにはないので注意! – フリーソフトウェアやオープンソースでは考慮されていない – クリエイティブ・コモンズでは一応手当されているが ● 著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであっ て、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」 – アイデアは著作物ではない – 厳密にはキャラクターは著作物ではないか ● ただし、いわゆる商品可能化権などでの保護はある
  • 26.
    著作権と他の権利保護 ● 著作権で保護されなくても、商法など別の法 律で制限される事がある ● 著作権と特許は別
  • 27.
  • 28.
    ピアプロ キャラクター ライセンス ● それなりに自由なライセンス ● キャラクターに対する物として画期的か ● しかし、利用者に対する保証はほぼない – クリプトンは無条件で条項をいつでも好きなように変 更できる – 利用者は変更に自動的に従わなくてはならない – クリプトンはいつでも一方的にライセンスを終了でき る
  • 29.