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褥瘡
パート1 褥瘡を理解する<総論>
邉田 健一
褥瘡を理解する <総論>
❶ 褥瘡の定義
❷ 褥瘡形成のメカニズム
❸ 褥瘡の好発部位
❹ 褥瘡形成の背景因子
❺ 病変の評価
❻ 褥瘡形成から治癒までの流れ
褥瘡とは
褥瘡の定義
身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の軟部組織の血流を低下あるい
は停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血
性障害に陥り褥瘡となる。
日本褥瘡学会 2005年
褥瘡とは、皮膚の同じ部位に長時間外力(圧迫、ねじれ、ずれ、張力など)
が加わったために血管が圧迫され、組織が壊死に陥ったものを指す。
褥瘡発生のメカニズム
日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブックー第2版 照林社,東京,2015,18.
外力(圧力+ずれ力)
阻血性障害
グルコースの供給不足
嫌気性代謝の亢進
再灌流障害
阻血による炎症性サイ
トカインやフリーラジ
カルなどの組織障害物
質の蓄積
リンパ系機能障害
リンパ灌流のうっ滞
器械的変形
外力の直接作用
血流再開によりこれら
の物質が阻血部位より
広がり組織障害を悪化
老廃物や自己分解性酵
素の蓄積
細胞のアポトーシス
細胞外マトリックスの
配向性変化
組織内の乳酸蓄積
pHの低下
細胞死・組織障害
褥瘡の好発部位
接地面のうち、「骨格」という突出した構造が皮下にある場所に褥瘡はできやすい。
画像:Wikipedia「褥瘡」4 好発部位
【仰臥位】
・仙骨部
・臀部
・踵骨部
・肩甲骨部
・後頭部など
【側臥位】
・側頭部
・肩峰部
・大転子部など
◎栄養状態が良好で元気に動き回っている人には褥瘡はできない
褥瘡ができるに至った背景・原因を考えることが大切。
「患者因子」,「環境因子」,「共通因子」3つに分けて考え
る
患者因子 環境因子 共通因子
• 栄養状態は良いのか?
• 皮膚の状態は?
• 生活や介護の状況は?
• そもそもなぜ動けないのか?
褥瘡ができてしまった背景を考える
ADL
病的突出
関節拘縮
浮腫
栄養状態
多汗
尿・便失禁
体位変換
体圧分散
頭部挙上
座位保持
リハビリテーション
スキンケア
栄養補給
介護力
外力
湿潤
栄養
自立
日本褥瘡学会誌 2003; 5(1-2):136-149(褥瘡の概念図)
急性・手術期 終末期 特殊疾患など 脊髄損傷
共通因子 環境・ケア要因
個体要因
背景因子・原因の評価
カテゴリー 構成因子
患者側の要因 ADL・骨突出・関節拘縮・栄養状態・浮腫・多汗・尿や便失禁
環境因子
体位変換・体圧分散寝具・頭部挙上・座位保持・スキンケア・
栄養補給・リハビリテーション・介護力
胸痛要因 外力・浸潤・栄養・自立
その他 急性期/手術期・終末期・特殊疾患など・脊髄損傷(車いす)
→ほとんどは問診で聴取・情報取得できる。(パート2へ)
褥瘡を評価する
DESIGN分類
Depth:深さ 満点:5点
Exudate:浸出液 満点:6点
Size:大きさ 満点:15点
Inflammation/Infection:
炎症/感染
満点:9点
Granulation tissue: 肉芽組織 満点:6点
Necrotic tissue:壊死組織 満点:6点
Pocket:ポケット 満点:24点
DESIGN-R 褥瘡評価用スケール 日本褥瘡学会 2013
褥瘡の評価ツール:DESIGN分類
「深さ」を除く6項目について、それぞれの項
目に重みを付けて加点することで、病変の重
症度を数値化したもの。これにより褥瘡が良
くなったか悪くなったかを評価でき、また患
者間の重症度を比較することも可能となる。
病変によって様々な大きさ、深さ、状態のものがある。これらは医療スタッフ間で共通の、客観的な
指標で評価される必要がある。
褥瘡の病期およびそれに応じた治療
急性期 黒色期 治癒
白色期
赤色期
黄色期
TIMEコンセプト
Wond bed preparation:創面環境調整
創傷治癒を遅延させる、壊死(T)、感染(I)、不適切な浸出液(M)、傷辺縁の不整(E)を取り除く戦略
〇慢性炎症を離脱させ、速やかに炎症期→増殖期へ移行させることが重要
創面の保護 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン
日皮会誌:127(8).1689-1744,2017
T:Tissue 壊死組織の除去
I:Infection/Inflammation 感染の制御・除去
M:Moisture 湿潤環境の保持:浸出液の制御・除去
E:Edge of wound 創周辺の管理:ポケットの解消・除去
前半の治療 後半の治療
Moist wound healingを目指す
TIMEコンセプトにより
wound bed preparationを目指す
参考文献
•日本褥瘡学会編:褥瘡ガイドブックー第2版 照林社,東京,2015,18.
•日本褥瘡学会誌 2003; 5(1-2):136-149(褥瘡の概念図)
•DESIGN-R 褥瘡評価用スケール 日本褥瘡学会 2013
•創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン 日皮会誌:127(8).1689-1744,2017

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