情報職業論 第6回

1. 情報職業論⑥
情報社会論の歴史(後編)
日本編

2. マトリックス
コンピュータ
が人間を抑圧
初期の情報
社会論
人間(社会)が
技術を悪用
人間(社会)が
技術を善用
技術決定論
社会選択論
楽
観
論
悲
観
論
情報社会論は技術決
定論/社会選択論，
楽観論/悲観論の二
つの軸で四つのパタ
ーンに分けられる。
情報技術が本質的に
善か悪か，人間社会
はそれを使いこなせ
るか否かという考え
方の違いである。
日本では当初，楽観
的な技術決定論が支
配していた(その裏返
しとして悲観的決定
論も)。

3. 情報社会の定義
•情報社会とは狭義には「情報産業の比
重が高まり，情報産業従事者の増大し
たような社会で，情報産業が社会の中
核になっているような社会」であり，
広義には「情報化が環境・身体・社
会・文化に，広く深く影響を及ぼした
ような，自己組織的で人工的な社会」
である
川崎賢一『情報社会と現代日本文化』1994 東京大学出版会 p9

4. 日本における楽観論/技術決定論
•以前とはまったく異なる，完全に新し
いタイプの社会として「脱資本(工業)
社会」として情報社会を定義する特徴
•コンピュータなど情報技術を用いて
(集中型)システム化していくと，経済
成長過程で生じたさまざまな問題を解
決できる

5. マーシャル・マクルーハン
• カナダのコミュニケーション理論家
• 電子メディアが地理的空間を無化し，メ
ディアが媒介する電子的空間が至るところ
に出現する
• 電子メディアは人々のコミュニケーション
を「線形的」で「視覚的」なものから，
「包括的」で「感覚的」なものにする
• かつて，「聴覚」中心の呪術的世界が活字
文明により，「視覚」中心の抽象的世界に
移行した(ここがマクルーハン理論の核心)

6. マクルーハンはノストラダムス
• マクルーハンの「電子メディア」は
テレビが中心。コンピュータは理論の枠外
• マクルーハンは線形の理論展開ではなく，
感覚的で詩的なアフォリズム(警句)で論考
を展開している
• それをどう拡張し，何を読み取っていくのかは読み
手の自由。四行詩の解釈で予言者とされるノストラ
ダムスと同様，マクルーハンが“メディアの予言者”
とされるのはこのため。ソーシャルメディアもビッ
グデータもマクルーハンは予測していない

7. マクルーハン理論
• メディアはメッセージ:メディア(身体の拡張)は
徐々に新しい人間環境を生み出す
• 感覚比率が行動を左右する:使用する五感の比率
が社会構造さえ規定する
• ホットとクール:与えてくる情報が多いのか/少な
いのか(参与可能度は逆)
• 地球村:電子技術による相互依存関係が，地球全
体をひとつの村に再創造させる
• 「バックミラーを通して現代を見ている。未来へ
向かってうしろ向きに進んでいく」(テトラッド:
反転/強化/回復/衰退)

8. 竹村健一『マクルーハンの世界』
•評論家の竹村健一が67年にマ
クルーハンを下敷きにしたメデ
ィア/文明評論書を刊行。欧米で
は専門家しか知らなかったマクルーハ
ン理論が一般化し，週刊誌記事などで
も「ホット/クール」「メディアはメッ
セージ」という考え方で世相を分析し
ていた

9. 梅棹忠夫「情報産業論」
•1962年末に発表
•発展の三段階仮説の元祖
外胚葉
中胚葉
内胚葉
• 皮膚・脳神経
• 情報
• 筋肉・血液
• 工業
• 胃腸
• 農業

10. 梅棹式「情報産業」とは
「情報を組織的に提供する産業」
•マスコミ，興信所，旅行案内
業，競馬・競輪などの“予想屋”，
教育，宗教などを明示しているが，テ
レビ局が念頭にあったとみられる
時間・空間でなく情報を売るので，“実
業”ではなく“虚業”で，商業としても異
質であると論じる。量でも測れない

11. 日本未来学会(1968)
•大阪万博の計画を機に，林雄二郎，梅
棹忠夫，小松左京，加藤秀俊，川添登
を中心に「未来構想を工学的に考える
ために設立。梅棹も参加
•「未来」と「学」は本来，水と油だが，
その融合が社会のためだと考えた
Webサイトのデザインは
超絶「1.0」的

12. 増田米二
•旧労働省官僚。「コンピュート
ピア(computer+utopia)」を造語
し，技術決定論的議論を牽引。「情報
技術が人間の創造力を拡張する」「情
報技術は大量失業を産むが，ワーク
シェアや労働の多様化により問題は解
決できる」など
情報社会研究所所長として，官業の“情
報化”議論を後見

13. • 情報を社会技術とすれば，情報社会が形成されるのは必
然である
• 情報技術は人間の知的労働を代替し増幅する。代替は
オートメーションであり，増幅は知的創造力の拡大を意
味する。問題解決と機会開発（将来の可能性を追求し，
実現すること）の二つの能力を拡大する
• 情報革命によるオートメーションによって大量失業が発
生するが，ワークシェアリングや労働の多様化(奉仕活
動・義務労働)で克服する知的創造段階に移行していく
• 物的価値観から時間的価値観への転換と，生活者として
の消費者から機会開発者への変革が発生する
• 共働経済・直接民主政治・自主的コミュニティが出現す
る。社会体制としてはフォーマル・セクターに対し，イ
ンフォーマル・セクターが優位となり，国民国家体制が
弱化し，究極的には国家を超えた市民共同体を基盤とし
た地球規模の情報社会が形成される。

14. システム化思考
•社会システムに情報通信技術を応用す
れば，どんな問題を解決するために，
どんなサービスが可能になるかを提案
するのが，増田式「情報社会論」(楽
観論かつ技術決定論)
•日本万国博覧会のパビリオンの展示な
どでは，そうした展示が多かった

15. 三菱未来館

16. 三洋館/松下館

17. 介護向け“人間洗濯機”(ケアバス)
http://www.hni.co.jp/shop/p07.html
人
間
洗
濯
機
は
民
生
機
器
と
し
て
は
失
敗
し
た
が
、
三
洋
ア
ク
ア
が
介
護
施
設
向
け
の
機
器
と
し
て
ケ
ア
バ
ス
を
発
売
し
て
い
る
。

18. 電気通信館
「ワイヤレスホン」は一般電話回線に接続したので，
携帯電話ではなく，厳密にはコードレスホンの元祖

19. クボタ館/IBM館

20. 古河パビリオン(富士通)

21. 日本館

22. 少年誌の図解
•少年マガジン，少年サンデーなど少年
週刊誌は巻頭にカラーグラビアによる
図解特集を配置。SF的想像力による
「未来予測」で，「明るい未来イメー
ジ」を牽引した
•小松崎茂，大伴昌司らが挿絵画家とし
て活躍した

23. ディストピア?
「週刊少年サンデー」
1969年の「未来シリ
ーズ①コンピュートピ
ア」。集中管理システ
ムが前提で，ディスト
ピア・イメージが強い

29. 情報の意味の限定

31. 全国総合開発計画
•新全総(69～)・三全総(77～)で現在の
交通網などの骨格造り

32. テクノポリス
•三全総では産業を分散し“定住圏”の創
生を試みたが，必ずしも成功したとは
言えない

33. ニューメディア:テレビと電話の拡張

34. トフラーの『第三の波』
評論家:Alvin Toffler(1980)
情報化の“第三の波”が社会・
生活をどう変えるかを取材・執筆
プロシューマー(生産=消費者)による「新たな
生産様式」がもたらす「超市場文明」の到来
電子郵便システムと電子共同体による「ペー
パーレス・オフィス」
雇用を離れ，「エレクトロニックコテッジ」
における“独立した事業家”の登場
プラクトピア:実現可能なユートピアと位置付
けた

35. トフラーの問題点
•情報社会観の一面性(否定的側面への
目配りを欠く)
•労働の細分化・反復性・“カースト制”
をOA機器が打開してくれるのか
•「新しい生産方式」の非現実性(すべ
ての生産が注文少量にはならない)
•理想社会であり，反資本主義的である
だけに，実現は容易ではない?

37. リポート
•現代日本は情報社会か工業社会か。本
授業で紹介した理論などを参考に，具
体的な事例を挙げつつ，どちらと捉え
るのが妥当かを論じよ(引用を忘れずに)
•分量:800字
•締切:2016年12月12日(月)23:59:59
•提出先:report アット aka.oops.jp