情報職業論 第4回

1. 情報職業論④
情報社会論の歴史(前編)

2. 情報社会論の系譜
•何を指標として情報(知識/脱工業)社会
を規定するのか
•経済学・産業論の視点から，情報(知
識/脱工業)社会の実態をどう描くのか
•1960年代からマッハルプ，ドラッ
カー，ダニエル・ベル，トフラー，ポ
ラト，コーエンとザイスマンらの諸説
を整理する

4. 情報産業・情報職業統計
•コリン・クラークによる産業分類(一
次～三次，1941年)
•ペティ=クラークの法則:経済発展につ
れて第一次産業から第二次産業，第三
次産業へと産業がシフトしていく
•第三次は資本集約的・労働集約的・知
識集約的産業が混在している。情報や
知識を扱う産業を別枠(四次/五次)に扱
うべきという考え方が台頭

5. 方法論
•知識(情報)産業の定義を決めた上で，
全産業を対象に，当該の産業が「知識
産業に該当するか否か」を決定
•知識産業に該当する産業の付加価値創
出額を集計していく
•知識産業で働く従業員はすべて「知識
職業従事者」とみなし，標準職業分類
(日本では国勢調査)などから「知識職
業統計」を作成する

6. フリッツ・マッハルプ
•Frizz Machlup
• 『アメリカにおける知識の生産と分配』
(1962，邦訳『知識産業』)
知識生産が1958年時点のアメリカで
GNPの29%を占めることを明らかに
54～58年の4年間で知識産業は8.8%成
長し，GNP成長率5.1%を上まわった

7. 知識の定義
•「知っているという状態，知られてい
ることの内容」
•知識の生産に関しては「一人の人が特
定の知識をもっていて，それを誰とも
分かちあわないとき，これは知識では
なく秘密である。他の人々にその知識
を知っているという状態を作りだした
ときにはじめて社会的に新しい知識が
生産されている」

8. 知識の5分類
①実際的(practical)知識
専門，ビジネス，政治的，家事
②知的知識(知的好奇心を
充たす教養)
③娯楽的知識
世間話，ニュース，小説，ゲーム
④宗教的知識
⑤欲しくもない知識

9. 情報流通割合(%)
書籍 雑誌 新聞 ラジオ テレビ
実用的知識 22.0 35 11.7 10.5
教養的知識 57.2 22 21.0 12.0 11.4
娯楽的知識 11.8 38 44.4 65.6 88.6
宗教的知識 4.8 9 1.0 4.4
余分な知識 2.7 21.9 7.5
Rubin(1986)“Knowledge Industry in the United States,1960-1980 ”

10. 知識産業
•知識を「生産すること」は，「発見す
ること，設計すること，計画すること
だけでなく，普及すること，伝達する
ことも意味する」とし，知識≧情報の
広義の立場
産業的
アプローチ

11. 知識産業のGNP比(%)
1958 1963 1967 1972 1977 1980
教育 11.8 13.3 14.7 14.8 13.7 12.5
研究開発 2.2 2.6 2.6 2.2 2.1 2.2
コミュニ
ケーション
7.7 7.5 7.7 7.5 8.1 8.0
情報機器 2.0 2.4 2.6 2.3 2.7 3.2
情報サービ
ス
4.9 5.2 5.7 6.7 7.6 8.4
知識産業合
計
28.6 31.0 33.3 33.9 34.2 34.3
Rubin(1986)“Knowledge Industry in the United States,1960-1980 ”

12. コミュニケーションのメディア
㋐印刷・出版
㋑写真・音響製品
㋒劇場・音楽会場・映画館
㋓ラジオ・テレビ
㋔その他広告
㋕通信メディア(電話・電信・郵便)
㋖大会(集会)

13. 情報機械
㋐印刷機器類
㋑楽器
㋒映画機器と設備
㋓電話・電信(テレックス)装置
㋔信号機
㋕測定・制御機器
㋖タイプライター
㋗電子計算機
㋕その他事務機器・部品

14. 情報サービス
•㋑専門的知識サービス(法律・技術・建
設・経理・監査・医療)
•㋺金融サービス(小切手預金・証券・保
険・不動産)
•㋩卸売業
•㊁雑業務サービス(経営コンサルタン
ト・信用調査所・職業安定所・競売所)
•㋭政府

15. 知識労働者の基準
知識の運搬者 transporters 郵便配達
知識の変形者 transformers 速記者，
タイピスト
知識の処理者 processors 会計士
知識の解釈者 interpreters 通訳
知識の分析者 analyzers 論説委員
知識の創造者 creaters 学者
アウトプットが知識の流通に役立つサービスでなければ，
知識労働者に含めるべきではない。

21. 知識の生産と支出
政府支出 37,968 27.8
企業支出 42,198 30.9
消費者支出 56,270 41.3
計 136,436 100.0
最終生産物
(投資/消費)
109,204 80.0
中間生産物
(経常費)
27.232 20.0
計 136,436 100.0
(百万ドル) (%)

22. 職業アプローチ
•全知識生産職業の推計所得は899億6000
万ドル。国民所得は3361億8300万ドル
•「放棄所得」251億400万ドルを加える
と，修正済み国民所得に対する修正済み
全知識職業所得の割合は32%

23. マッハルプの問題点
①知識生産と知識の定義の曖昧さ
②知識生産の過剰推計
就学前児童の専業主婦による教育を「放棄所
得」として教育に加えている(専業主婦人口×就
業婦人の平均年間賃金)
すべての宗教活動や軍隊の訓練が知識生産
机・椅子も知識生産物?
娯楽はどこまでが知識生産か?
情報機器のような“手段”が“知識生産:目的”と同
列に並ぶべきではない?