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「ビー玉の道」における
造形遊びの質的授業分析
  上智大学大学院 総合人間科学研究科
    教育学専攻 博士後期課程
     日本学術振興会 DC1
        桐田 敬介
問題関心
 子どもの造形活動のプロセスで何が起きているのか。
 図画工作(の学習)とは何か?(教科の特質)
 「表現1・2」「鑑賞」とは何をすることか?(内容
 の特質)




   既存の学的仮説の援用⇒定義の多様化・多義化

 【子どもの造形活動プロセスから、学習内容を構造化
する】
小学校学習指導要領解説図画工作編
  (文部科学省, 平成20年)
「この造形活動は、大きく二つの側面に分けてとらえる
ことが できる。一つは、材料やその形や色などに働き
かけることから始まる側面と、もう一つは、自分の表し
たいことを基に、これを実現していこうとする側面であ
る。前者は、身近にある自然物や人工の材料、その形や
色の特徴などから思いついた造形活動を行うものである。
児童は材料に働きかけ、自分の感覚や行為などを通して
形や色をとらえ、そこから生まれる自分なりのイメージ
を基に、思いのままに発想を繰り返し、体全体を働かせ
ながら創造的な技能などを発揮していく。これは遊びの
能動的な性格を学習として取り入れた活動で、これを
『材料を基に造形遊びをする』とし『A表現』の(1)で
取り扱うこととした。」(p.11)
造形遊びの教科(学習)内容論の
      多様化
 「遊び」そのもの、「喜び」を味わうことを内容とする
 「造形表現の喜び」(西光寺・松本・宮脇・森, 1979)、「遊びそ
のものが目的」「造形表現の自発性や能動性」(藤沢, 1981)、「行
為の過程」における「楽しさ」(橋本・関谷, 1991)
 現代美術・インスタレーション的表現の習得を内容とする
  「物質・物体・場所・空間のもつ力を体験させる活動」(金子,
2005)

 造形活動を介した相互行為による人間形成・意味生成を内容とす
 る
  「新しい〈私〉」、「子どものつくりあげる〈社会〉」(北澤,
2007)
 造形デザインにおける自らの課題の追究を内容とする
 「自らの造形的な『課題を追究する』」(佐々木, 2011) etc…
造形遊びプロセスの「分析」
 子どもの造形活動においてどのような学びが起きているか
 相互行為分析:意味生成(松本, 1994:北澤, 2007;奥村, 2011)
  ⇔意味生成は(ラジカルに)構成主義的立場をとるならば、他教
科内容においても生じていると捉えられる(Glasersfield,
1995/2010)。
 造形行為の授業分析:情報収集の連続、問題解決(福井, 2009)
 ⇔「工作」における「木」の教材研究が主眼となっているため、
造形遊びの学習内容についてはモデル化されていない。
 造形遊びにおける造形課題の実践場面研究(安東・岡, 2003)
 ⇔実際の造形課題の支援に関しての言及はあるが、造形課題とそ
の操作に関して検討されてはいない。
研究目的
 「作品」が残らない造形活動の「造形遊び」的側面
 ⇒子どもたちが何を学んだかが判明になりにくい

 ⇒造形遊び的側面から造形活動を捉え返す



 造形遊びの授業において、
  子どもたちはどのような造形活動を経験しているの
 か?
SCQLA
(構造構成的質的授業分析)
 SCQRM(構造構成的質的研究法)(西條, 2007,
 2008)

 「仮説生成型事例研究」(西條・堀越, 2007)

         観察・記録          分析方法
          方法選択           選択
 授業               授業           事例モデ
 事例               記録           ル構造化
 (現              (テクス            ↓
 象)               ト)           仮説生成
         研究関心・          研究関
           制約           心・
                        制約
本研究における
          分析手法
 M-GTA(修正版グラウンデッドセオリーアプ
           ローチ)
          (木下, 2007)
 既存の理論からの演繹による仮説検証ではなく、データに
 基づいて(data-grounded)仮説を生成し、そのプロセスを
 開示する

 一般理論ではなく、ヒューマンサービス領域において生じ
 る現象の再現・予測・制御を可能にする「具体理論」を構
 築する
 Fit and Workをめざし、仮説を実践現場の経験から検討する
 「修正可能性」に開かれている(木下, 1999)
授業記録法
 原記録:参与観察者のHDカメラによる授業撮影
 定点観察ではなく、研究目的と図画工作の特質を考慮
して、造形活動の状況と変化に応じ撮影を行なった。

①定点撮影をするカメラの台数を増やしても、その授業
内で生じた現象の完璧に客観的な映像データは得られず、
さらに定点では子どもたちの細やかな造形活動を撮影で
きない

②ひとりの教師がひとつの授業の中で観察できる造形活
動の様相は限られているという授業の大前提を考慮する
ならば、限られたデータに基づいてプロセスを構造化す
ることが重要
事前研究
 授業者:都内A小学校勤務・図画工作専科教員
        学習指導要領作成協力者経験者
 造形遊び観(授業後インタビュー)
    「造形遊びは普段から子どもが行っていること」
    「(教科内容は)大人が勝手に分けているだけ」
    「造形遊びは(他の教科内容と)通底しているから」
   生徒:参観者が初めて出会う子どもたち。
      授業者は1年生の頃から指導してきた(全員仮名)。
授業記録
 (映像1:47:59、文字起こし61584字・A4 120
              枚)
日時:2011年10月25日   1・2時限目   8時57分~10時40分(延長)

天気:晴れ

学級:6年1組    後藤(仮名)学級

児童数:21名

指導者:榎本涼子(仮名)

場所:都内A小学校図工室

参観者:桐田敬介

教科および領域:図画工作      A表現(1)

単元等:「ビー玉の道」
分析プロセスの開示
 主にテクストデータに基づき、適宜映像データを参照
 しつつ、Wordのコメント機能を用いて概念を生成した。
 その際、個々の子どもたちを追跡し、その造形プロセ
 スの文脈を踏まえながら概念を生成することに留意し
 た。

 授業実践においてはひと連なりの現象に多様な意味を
 持った事態が生じているといえるため、特定のデータ
 においては複数の概念のヴァリエーションとした。

 生成された概念のうち、同型の概念を統合し、他の多
 様な造形遊びの形態(屋外、色やイメージに着目した
 内容)では生じうる事態を言い当てうると考えられた
 概念は残した。
概念生成例①
概念名        ソロプレー
定義         周りの造形プロセスとは関わりなく自分の遊びを遊ぼうとする
ヴァリエーション   英太:(ビー玉を持っていき、自分が作った養生テープを貼った
           板材を、角材の上において坂にした道から、割り箸のレールを
           通って曲がっていく道に転がしてみる。ゆっくりとした動きで坂
           を転がり、坂の途中で止まったりするビー玉を見て)おおー!こ
           れだよこれ。僕が目指していたもの。
           卓也:(英太の道を進んでいるビー玉が時々止まりながら転がっ
           ていくのを見て)おっせーなお前!(笑)
           剛:(道を指差して)ぎゃははは(笑)
           卓也:おっそ!!(笑)
           友美:(笑)
           剛:おっそ(笑)
           英太:(つられて笑っている)
           卓也:おっそ!!(笑)
           英太:でもいーじゃんたまにはこういうのも。(37:10-37:29)
           etc…
理論的メモ      「造形的なこだわり」が強い子が繰り返す。「遊びに混じる」や
           「結果的にチームプレー」へと繋がる場合もある。ソロプレーで
           作られた素材が「前に造ったものを使う」「在るもので整える」
           に使われる場合がある。
概念生成例②
概念名        造形的なこだわり
定義         素材の選択や材料の組み方、遊び方などにその子のこだわりが
           現れていること
ヴァリエーション   英太:(ビー玉を持っていき、自分が作った養生テープを貼っ
           た板材を、角材の上において坂にした道から、割り箸のレール
           を通って曲がっていく道に転がしてみる。ゆっくりとした動き
           で坂を転がり、坂の途中で止まったりするビー玉を見て)お
           おー!これだよこれ。僕が目指していたもの。(37:10)

           麻子:(レールの上に三角の角材を乗せて飾っているが、足り
           なくなる)もっと三角のやつ…(と材料置き場へ行き、戻って
           くる)(51:55)
           (中略)
           麻子:(小さな三角の角材を、レールの上に乗っけていく)
           (53:15)
           etc…
理論的メモ      「遊びの予感」や「発明」、「素材」の選択に強く関わってお
           り、そのためか「相手の遊び方とのズレ」や「素材の制約」を
           生み出す要因にもなっていると考えられる。特に「ソロプ
           レー」において顕著に現れる。
概念生成例③
概念名       材料の組み方を試す
定義        素材どうし、あるいは材料と場所とのうまい組み合わせを、素材
          を実際に動かしながら考えている
ヴァリエーショ   嘉穂:(カラフルな角材の端からビー玉を転がしてみるが、木の
ン         棒はびくともせず、ビー玉がコースアウトする)
          T:あー(笑)
          康祐:弱いな力が…。(即座に木の棒をとり、芯材の支柱から板
          を外す。)
          真美:これさ、長さが…(いい材料を作業台の上から探そうとす
          るが、眉を潜ませて)あー、ないか…。
          康祐:(取り外した板を二つの高さの異なる芯材で支えることに
          よって、より板が傾くようにする。小さく拍手。)
          (中略)
          嘉穂:(康祐の前にある、近くにある芯材のうちでは一番高い芯
          材を指差して)これいいんじゃない?
          真美:(頷く)
          康祐:(嘉穂の近くにあったビー玉をひとつ取る)
          嘉穂・康祐:(大きさの違う大中小の芯材のうち、どれがよい傾
          斜をつくるかを、実際に置いて探る) (31:07-31:36)etc…
理論的メモ     「在るものでなんとかする」戦略。動かしながら「物理的な条
          件」などの問題を明らかにしていき、「解決策を試す」へ移行す
概念生成例④
概念名       想い通りに行く歓び!
定義        造形プロセスが子どもたち自身が考えたプランや意欲の通
          りに運ぶことによる歓び
ヴァリエーショ   充:おおーし!!
ン         詩織:もう一回いきますよ!(ビー玉転がす。)
          詩織・加奈・このか:(缶に入り)ふーー!!
          武志:(音声不明瞭。ビー玉を転がす)うぇい!
          詩織・加奈・このか:(缶に入り)いえーーーい!!(拍手)
          C:(板材の道を転がってくるが、最後の方のレールのないところ
          で勢いがなくなりコースアウトしてしまう)ああ、あああ
          あー!!
          亮太:もう一回いきますよ!
          加奈:はーい!
          C:あと一個!
          (ビー玉を二つ転がし、二つとも入る)
          詩織・加奈・このか:おおおーー!!(拍手)(53:44-54:20)
          etc…
理論的メモ     「思い」悩んだ末の問題解決が行なわれ、偶然的であっても「想
          い」通りにうまくいく事態が成立したときに生じる情緒的な反応
          と解釈した。このあと、「在るもので整える」に移行し成功確率
          を高めつつ、何度も試すなかで「創った遊びで遊び続ける」に移
概念生成例⑤
概念名       創った遊びで遊び続ける
定義        授業において即興的に発想された遊びがなんとか形になる
          ことで、その材料・場所で遊ぶ活動が持続すること
ヴァリエーショ   充・亮太・武志:(武志が道の始まりに来て、話し合って
ン         いる。おそらくビー玉を三つ転がす。)
          詩織・加奈・このか:ああああーーー!!(拍手)
          C:トリプルー!!
          亮太:行くよー!!(ビー玉を転がす。三つとも入る)
          Cs:うぉああああーーー!!!
          亮太:両手を掲げて喜ぶ。
          充:ポーズをつけて喜ぶ。
          武志:(ビー玉を転がす。缶に入るおと二つ)
          C:(ビー玉を転がす。缶に入るおと二つ)(55:33-
          56:25)

          etc…
理論的メモ     「遊びの予感」や「発明」において構想されたプランとは多尐ず
          れている。うまくいかないと「在るもので整える」に移行し、う
          まくいき続けると「遊びの要素を付け加える」「遊びの成り行
概念生成例⑥
概念名        うまくいく方法を閃く
定義         いまの造形プロセスの状況を打開するよい方法を思いつき、試す
ヴァリエーション   茜:(作業台と椅子を繋ぐ紫の板材を動かしながら)こっから
           さぁ?この紫の奴(板材)が(さぁ!
           信也:あ、わかった!(この様子を見ていたTに)先生紙ありま
           すか?
           T:紙。(信也をつれて図工準備室の前へ)
           信也:ほんとに、あのー…(Tに細長い紙を渡され、それを持っ
           てくる)
           信也:これだよ!(紫の板材と、作業台の上の板材とを紙で繋げ
           ようとする)
           卓也:そうそう!それでいけるんじゃね?そういうので。
           信也:これでこうやって、
           茜:ああー…そうするかぁ。(58:08-58:33)

           etc…
理論的メモ      「解決策を試す」戦略。多くは手近な材料・場所・空間の組み合
           わせを閃くが、授業内で与えられていない「要る材料」を思いつ
           く場合もある。
カテゴリー生成過程
カテゴリー生成過程
「ビー玉の道」における造形プロセスモデル ver.1.0
造形プロセスのストーリーラ
     イン
 個々の子どもが「こだわり」をもって素材を持ち寄り、組
 み合わせてみることで、「遊びの予感」から「発明」に移
 行し、「まず1回やってみる」ことから「遊び」が始まる。

 やってみることで、友達との「遊び方のズレ」や「意外に
 うまくいかない」などの多様な「問題群」に遭遇する。

 遊びを通して「ソロプレー」から「あうんの呼吸」に至る
 まで、個々の子どもたちの「共同性」はその都度変化して
 いく。

 「見通し」をもって「もう1回」試したり、または「条件
 を変え」試した結果から「推論」を働かせたりすることに
 よって、遊ぶ「プラン」を練り上げ、素材の制約、材料の
 組み方といった「問題」を明らかにしていく。
造形プロセスのストーリーラ
     イン
 問題の解決法は、具体的な「材料」・「場所」の組み
 替えや「崩し」であり、主な解決戦略は「在るもので
 なんとかする」「解決策を試す」の間を行き来する。

 「想い通りうまくいく歓び!」の持続は「遊び」を持
 続させる。

 遊びのなかで出会う問題群への態度、たとえば「予想
 外を愉しむ」「創ったものに囚われない」によって、
 遊びは絶えず新しいものになっていく。

 「遊び要素」の追加や「成り行き」により、遊びが変
 化し複雑になっていくことで、再び意外な問題群と出
 会うことになる。
造形プロセスのストーリーラ
     イン
 問題がとけないと、苛立ちや悲しみなどで「感情が揺
 ら」ぎ、「無理だと諦め」たり「いたずら」にはしっ
 たり、「創ったものを壊」したりしてしまう。

 授業の終わりが近づくと、いまやっている遊びを成功
 させようと、あるいは持続させようと「最後のあが
 き」が生じる。

 遊び終わると、「材料を素材に戻」していく工夫のな
 かで、「壊す楽しみ」や「きれいに片付く喜び」を経
 験していく。
考察
 造形遊びの教科内容論で提示されている観点や本質は、
 この「ビー玉の道」の授業(1事例)において生起し
 ており、それぞれが欠かざる要因として関わっている
 と考えられた。

 ex.「行為の過程」の「楽しさ」、「物質の力」、「問
題解決」、「課題追究」、「相互作用」、「意味生成」
…



 造形遊びの多様な教科内容論は、【造形活動】の造形
 遊び的側面を、その論者の関心や観点から「学習内
 容」として析出し構造化したもの(論)といえるので
 はないか。
「愉しむ」「歓び」「遊び」に関
      する
     仮説検討
 フロー状態(Csikszentmihalyi, 1975/1979): 「人々が行
 為の機会を自分の能力にちょうど適合したものとして知覚
 した時、フローは経験される」(p.86)

 フロー(flow):①行為と意識の融合、②限定された刺激領
 域への注意集中、③自我忘却・世界との融合、④自分の行
 為や環境を支配している感覚、⑤首尾一貫した矛盾の無い
 行為の必要、明瞭で明確なフィードバック、⑥自己目的的
 性質(pp.68-85)

 自己目的的経験:「それを経験することや技能を用いるこ
 との楽しさ」「活動それ自体——活動の型、その行為、そ
 の活動が生み出す世界」によって動機付けられる(≠外発的
 動機付け)(p.35)
フローに基づく教育と
      造形遊びとの近似
 「子供たちは、ほとんどの時間を、彼らの技能が行為への挑戦の
 機会に適合している水準での、環境との相互作用に費やしてい
 る」(p.293)

 「真の教育の基礎的作業は、子供にイメージや類推、言葉の遊び
 や定義付けを通して、心がいかにして環境を秩序付けるかを教え
 ることである」(p.300)

 「『学習はいかにして楽しいものになり得るか』という問題から
 始める(中略)すべての学習作業を楽しいものにすること、つま
 りーー読み、書き、そろばんのみならず、人間行動の別の様式に
 おいてもーー生徒がどのような技能を持っているか、その水準は
 どの位であるかを明らかにし、これらの技能を表現させるための
 限定された、しかし徐々に拡大する機会を考えることは容易であ
 る。このようにして学習は、内発的に動機付けられたものとな
 る。」(p.301-302)
「共同性」・「プラン」に関する
     仮説検討
 状況的学習(situated learning):奥村(2011)、名達
 (2009)
 正統的周辺参加(Lave & Wenger, 1991/1993)
 即興的な徒弟性(福島, 2001)
 プランと状況的行為(Suchman, 1987/1999)
「人は見事にプランを捨て、その人に使うことができるありと
あらゆる身体化された技能をよりどころとする」(p.51)
「状況的行為の一貫性は、本質的な方向として、個人の潜在的
傾向や慣習的規則に結びついたものではなく、行為者の特殊な、
その場の環境(周辺環境)に依存したその場のインタラクショ
ンに結びついたものである」(p.27-28)
「素材」「探求」
         に関する仮説検討
 Dewey, J. (1938/1968)「科学的探究」「芸術的探
 求」

探究の構造:①探究の先行条件②問題設定③問題解決策
 の決定④推論⑤事実と意味の操作的性格
 科学的探究と芸術的探求の差異(小島, 2009に依拠して作成)
          科学的探求         芸術的探求

 探求の関心     問題そのもの     状況が変容する局面の
                          意味
 探求の素材      概念的素材        知覚的素材
          シンボルの関係性        質的関係
 探求の成果   一般化された概念体系     個別性を持つ作品
プランナー的、ブリコルール
 的問題解決(Papert, 1996)
“The style of the Planner is to design it all in detail in
advance and then implement the design. The style of the
Bricoleur, however, is closer to the way we build most
original Lego constructions. You pick up a few pieces and
start putting them together according to some very
general idea of where you are going. Or perhaps without
any idea. As you add pieces your idea becomes clearer.
Eventually you might throw away the pieces you used to
get going in this doodling style. But the essential point is
that the idea was allowed to evolve. One could say that
the idea was plastic and could be molded and shaped.”
(p.147)
明」
         に関する仮説検討
          エンジニア(技術者・科学        ブリコルール(器用人)
          者)
問題解決      諸拘束に対したとき、常に通       諸拘束に対したとき、好んで
          路を拓いてその向こうに越え       にせよやむをえずにせよ、そ
          ようとする               の手前に留まる
ルール       仮説と理論を使って、出来事       そのときそのとき限られた道
          という形で自らの手段や成果       具や材料の集合でなんとかす
          を作り出して行く            る
素材        仕事の一つ一つについてその       「もちあわせ」の道具や材料
          計画に即して考案され購入さ       (事前拘束)
          れた材料や器具
素材の性質     一次性質:あらゆる出来事の       資材性(潜在的有用性):
          外にそれとは無関係なものの       「まだ何かの役に立つ」とい
          ように存在する性質(観念)       う原則によって集められ保存
                              された要素
操作子      概念:仕事に使われる資材の 記号:仕事に使われる資材の
        『野生の思考』(Lévi-Strauss, 1962/1976 pp.22-41)
         集合を開く                   集合を組替える
図画工作と
   ブリコラージュとの近似
 「造形活動の過程については、はじめに立てた計画に従っ
 て、困難を乗り越え、目的に向けて一直線に進む展開を想
 定しているわけではない。自分が納得するようにつくり・
 つくり変え・つくり続けながら、造形的な問題などを解決
 していくことを期待している」(板良敷, 2001 p.51)

 「人が、直面する様々な問題をよりよく解決する際に、足
 りないものを探しだし、他のもので代用し、それでも見つ
 からないときは、自らつくりだす資質や能力が必要になる。
 そこでは、知識や技能などを総動員して、再構成などしな
 がら問題の解決や願いの実現に向けて働かせることにな
 る」(板良敷, 2002 p.9)

 ブリコラージュへの言及(阿部, 2002)
図画工作から
    ブリコラージュへの接近例





    満足のいくものになる」(藤田, 1996)
 「子どもの創造表現活動とは、発想から完成に至る過
    程がリニアではなく、『偶然』からイメージが拡がっ
    たり変容したりしながら『それていく』連続によるも
    のであり、<ブリコレ>そのものであると言える」
    (藤崎, 2002)
【造形遊びの学習内容モデ
 ル】(ver.1.0 2013)
         フロー
          活動


         ブリコ
         ルール
   芸術的         状況的
    探求          学習
本研究の意義
 結果:造形遊びにおける探求プロセスの仮説的提示
⇒造形遊びの授業において生起する現象の再現・予測・
制御可能性を担保する「視点」をモデルとして構築し得
たといえる。

 考察:多様な造形遊びの教科内容論を諸要因として総
 合

⇒造形遊びの教科的特質と考えられる、フロー状態・状
況的学習・ブリコルール的芸術的探求の定式化

⇒造形遊びの理論的・概念的定式化への一助となり得る。
本研究の限界
 造形遊びにみられる多様な形態の綜合的・統計的な実証研
 究ではない(材料・場所を巡る多様な探求がありうる)

 ①教師の実践知の形式が事例的思考であること(稲垣・佐
 藤, 1996)②これまでも事例研究から科学的知見が生起した
 科学史的前例に鑑みても、1事例からの仮説生成であるこ
 とは限界であると同時にメリットとも考えられる。

 1事例のなかにこれほど多様な「学び」と「遊び」のプロ
 セスが含まれているかもしれないということを、一人の参
 与観察者が観察・記録した限られたデータにおいて示唆し
 えたことの意義。
 ⇒教師研究者(teacher-researcher)による「仮説生成型事
例研究」(西條・堀越, 2007)の可能性
参考資料
 文部科学省『小学校学習指導要領解説図画工作編』日本文
 教出版、平成20年。
 宇田秀士「「造形遊び」に関する教師の<意識‐規範・文化
 >―美術科教育学会第5回西地区大会<研究発表会in奈良:
 25年を経た「造形遊びの功罪」2003.12.20>を中心に」
 「討議会記録(抄禄)」代表宇田『平成14-16年度科学研究
 費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書 美術教育
 における教師の<意識―規範・文化>と題材・単元との関
 係』2005年。
 西野範夫『子どものつくる・表す行為と学び:子どものつ
 くる・表す行為と学びの教育の基礎理論:子どもの意味生
 成の行為としての教育の体系 : つくること表すことによる
 「生きる力」としての学びの基礎理論の構築と教育の体系
 化』研究種目基盤研究(B) 文部省科学研究費補助金研究成果
 報告書、1998-2000年。
参考文献
   稲垣忠彦・佐藤学『授業研究入門』岩波書店、1996年。

   金子一夫『美術科教育の方法と歴史:新訂増補』中央公論出版、2005年。

   金子一夫「美術化教育の歴史 5. 昭和時代—戦後」山本正男(監修)・井上正作(編集)『感性の論理とその実践—2
    美術の歴史・美術科教育の歴史』大学教育出版、2003年。

   北澤晃『造形遊びの相互行為分析 他者との交流の世界を開く意味生成カウンセリング』せせらぎ出版、2007年。

   木下康仁『グラウンデッド・セオリー・アプローチ——質的実正研究の再生』弘文堂、1999年。

   木下康仁『ライブ講義M-GTA 実践的質的研究法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのすべて』弘文堂、
    2007年。

   西光寺亨・松本巌・宮脇理・森市松(共著)『初等教育図画工作科教育の研究』建帛社、1979年。

   西條剛央『構造構成主義とは何か――次世代人間科学の原理』北大路書房、2005年。

   西條剛央『ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMベーシック編   研究の着想からデータ収集、分析、モデル構築ま
    で』新曜社、2007年。

   西條剛央『ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMアドバンス編   研究発表から論文執筆、評価、新次元の研究法ま
    で』新曜社、2008年。
参考文献
   佐々木達之『造形教育における授業デザインと授業分析 ——授業構造とその構成要素から捉えた授業構成論——』東洋館、2011年。


   重松鷹泰『授業分析の方法』明治図書出版、1961年。


   平山満義(編)『質的研究法による授業研究―教育学/教育工学/心理学からのアプローチ』北大路書房、1997年。


   福島真人『暗黙知の解剖——認知と社会のインターフェイス』金子書房、2001年。


   Claude Lévi-Strauss, La pensée sauvage, Paris, Plon, 1962. 大橋保夫(訳)『野生の思考』みすず書房、1976年。


   Mihaly Csikszentmihalyi, Beyond Boredom and Anxiety, San Francisco: Jossey-Bass, 1975. 今村宏明(訳)『楽しみの社会学——不安と倦怠を越えて』思索社、
    1979年。


   Ernst von Glasersfield, Radical constructivism: A Way of Knowing and Learning, Falmer Press, London, 1995. 西垣通(監修)橋本渉(訳)『ラディカル構成主義』
    NTT出版、2010年。


   Kuhn,T.S.,The structure of scientific revolutions, 3rd ed. Chicago: University of Chicago Press, 1962. 中山茂(訳)『科学革命の構造』みすず書房、1971年。


   Jean Lave & Etienne Wenger, Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation, Cambridge: Canbridge University Press, 1990.佐伯胖(訳)『状況に埋め込まれ
    た学習——正統的周辺参加』産業図書、1993年。


   Seymour Papert, The Connected Family: Bridging the Digital Generation Gap, Longstreet Press, Atlanta, Georgia., 1996.


   Suchman, L. Plans and situated actions : The Problem of Human-Machine Communication. Cambridge University Press, New York, 1987.水川喜文・上野直樹・鈴木
    栄幸(訳)『プラント状況的行為——人間ー機械コミュニケーションの可能性』産業図書、1999年。
参考論文
   阿部宏之「未来に生きる<知>をつくり出す造形遊び 身体性の確立と美術伝道師としての自覚」『美育文化』第52号、
    第7巻、22-27頁、2002年。

   安東恭一郎・岡啓介「図画工作の授業における子どもの支援(2)~グループ活動における子どもの課題~」『芸術教
    授学』第6号、35-45頁、2003年。

   板良敷敏「自ら学び自ら考え、よりよく問題を解決する図画工作科の学習指導の考え方」『初等教育資料』東洋館出版、
    50-53頁、2001年。

   板良敷敏「論説2 教育課程実現の課題と工夫――教育課程の全面実施にあたって――」『初等教育資料』東洋館出版、
    6-11頁、2002年。

   大谷 尚「『質的研究』の文脈からみた日本の授業研究の位置づけに関する試論——研究成果の交流と共有を展望して
    ——」『日本教育方法学会紀要:日本教育方法学研究』第24巻、29-37頁、1998年。

   奥村高明『美術教育における相互行為分析の視座 : 状況的学習論を基にした相互行為分析による指導法の改善 』筑波大
    学、博士論文、2011年。

   小島律子「芸術的経験における探究としての問題解決の特性」『日本デューイ学会紀要』第50号、11-20頁、2009年。

   西條剛央・堀越さやか「就職活動における自己アイデンティティの変化過程——構造構成主義に基づく事例研究モデ
    ル」『人間総合科学会誌』3(1)、71-80頁、2007年。
参考論文
   名達英詔「造形活動における学びの発見Ⅰ ―造形活動における学びと教育の対照から―」『美術教育学:美術科教育
    学会誌』第30号、305-315頁、2009年。

   西村隆司「小学校図画工作科における造形遊びの位置」『教育学部論文集』佛教大学教育学部、第17号、69-80頁、
    2005年。

   三澤一実・増田穀・麻生敬子・田中俊一・宮島瑞子「所沢市における小学校教員の図画工作科指導意識 図画工作・美
    術の所沢学力保障カリキュラム作成のためのアンケートから」『所沢市立教育センター研究員研究紀要』平成18年、第
    Ⅱ節2項。

   橋本光明・関谷俊行「図画工作教育の検討Ⅰ」『信州大学教育学部紀要』信州大学、第69号、33-44頁、1990年。

   橋本光明・関谷俊行「図画工作教育の検討Ⅳ」『信州大学教育学部紀要』信州大学、第71号、39-50頁、1991年。

   福井一真『木を素材とする造形教材開発の理論と実践に関する研究』兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科教科教
    育実践学専攻芸術系教育連合講座(上越教育大学)、博士論文、2009年。

   藤崎典子「総合的な学習の時間を活用した創造的な表現活動--<ブリコラージュ>の思想を援用して」『日本美術教育研
    究紀要』第35号、69-76頁、2002年。

   藤田達人「『ブリコルールの時代』という視点から工作教育を考える――子どもにとって『つくる』とは何か――」
    『美育文化』第46号、第8巻、26-31頁、1996年。

   Mitsuru Fujie ”A Comparative Study of Artistic Play and Zoukei-Asobi,” Journal of Aesthetic Education, University of
    Illinois Press, Vol. 37, No. 4, pp. 107-114, 2003.
参考論文
   松本健義「幼児の造形行為における他者との相互行為の役割に関する事例研究(1)」『美術教育
    学:美術科教育学会誌』美術科教育学会、第15号、265~280頁、1994年。

   松本健義「図面工作科における児童-教師間相互行為の役割に関する事例研究」『美術教育学:美術科
    教育学会誌』美術科教育学会、第18号、277-291頁、1997年。

   松本健義「つくり表す行為、つくり表されるもの、つくり表す行為者の相互的生成過程」『大学美術
    教育学会誌』大学美術教育学会、第35号、417-424頁、2004年。

   武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(1)教育課程の改善、及び造形教育セ
    ンター」『茨城大学教育学部紀要 教育科学』茨城大学、第53号、27-50頁、2004年。

   武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(2)昭和52年発表図画工作科学習指導
    要領の編成作業」『茨城大学教育学部紀要 教育科学』茨城大学、第53号、51-68頁、2004年。

   武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(3)行為の美術教育」『茨城大学教育
    学部紀要 教育科学』茨城大学、第54号、39-58頁、2005年。

   武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(4)大阪教育大学教育学部附属平野小
    学校」『茨城大学教育学部紀要 教育科学』茨城大学、第54号、59-77頁、2005年。

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0329最終稿ビー玉改訂

  • 1. 「ビー玉の道」における 造形遊びの質的授業分析 上智大学大学院 総合人間科学研究科 教育学専攻 博士後期課程 日本学術振興会 DC1 桐田 敬介
  • 2. 問題関心  子どもの造形活動のプロセスで何が起きているのか。  図画工作(の学習)とは何か?(教科の特質)  「表現1・2」「鑑賞」とは何をすることか?(内容 の特質) 既存の学的仮説の援用⇒定義の多様化・多義化 【子どもの造形活動プロセスから、学習内容を構造化 する】
  • 3. 小学校学習指導要領解説図画工作編 (文部科学省, 平成20年) 「この造形活動は、大きく二つの側面に分けてとらえる ことが できる。一つは、材料やその形や色などに働き かけることから始まる側面と、もう一つは、自分の表し たいことを基に、これを実現していこうとする側面であ る。前者は、身近にある自然物や人工の材料、その形や 色の特徴などから思いついた造形活動を行うものである。 児童は材料に働きかけ、自分の感覚や行為などを通して 形や色をとらえ、そこから生まれる自分なりのイメージ を基に、思いのままに発想を繰り返し、体全体を働かせ ながら創造的な技能などを発揮していく。これは遊びの 能動的な性格を学習として取り入れた活動で、これを 『材料を基に造形遊びをする』とし『A表現』の(1)で 取り扱うこととした。」(p.11)
  • 4. 造形遊びの教科(学習)内容論の 多様化  「遊び」そのもの、「喜び」を味わうことを内容とする 「造形表現の喜び」(西光寺・松本・宮脇・森, 1979)、「遊びそ のものが目的」「造形表現の自発性や能動性」(藤沢, 1981)、「行 為の過程」における「楽しさ」(橋本・関谷, 1991)  現代美術・インスタレーション的表現の習得を内容とする 「物質・物体・場所・空間のもつ力を体験させる活動」(金子, 2005)  造形活動を介した相互行為による人間形成・意味生成を内容とす る 「新しい〈私〉」、「子どものつくりあげる〈社会〉」(北澤, 2007)  造形デザインにおける自らの課題の追究を内容とする 「自らの造形的な『課題を追究する』」(佐々木, 2011) etc…
  • 5. 造形遊びプロセスの「分析」  子どもの造形活動においてどのような学びが起きているか  相互行為分析:意味生成(松本, 1994:北澤, 2007;奥村, 2011) ⇔意味生成は(ラジカルに)構成主義的立場をとるならば、他教 科内容においても生じていると捉えられる(Glasersfield, 1995/2010)。  造形行為の授業分析:情報収集の連続、問題解決(福井, 2009) ⇔「工作」における「木」の教材研究が主眼となっているため、 造形遊びの学習内容についてはモデル化されていない。  造形遊びにおける造形課題の実践場面研究(安東・岡, 2003) ⇔実際の造形課題の支援に関しての言及はあるが、造形課題とそ の操作に関して検討されてはいない。
  • 6. 研究目的  「作品」が残らない造形活動の「造形遊び」的側面 ⇒子どもたちが何を学んだかが判明になりにくい ⇒造形遊び的側面から造形活動を捉え返す  造形遊びの授業において、 子どもたちはどのような造形活動を経験しているの か?
  • 7. SCQLA (構造構成的質的授業分析)  SCQRM(構造構成的質的研究法)(西條, 2007, 2008)  「仮説生成型事例研究」(西條・堀越, 2007) 観察・記録 分析方法 方法選択 選択 授業 授業 事例モデ 事例 記録 ル構造化 (現 (テクス ↓ 象) ト) 仮説生成 研究関心・ 研究関 制約 心・ 制約
  • 8. 本研究における 分析手法 M-GTA(修正版グラウンデッドセオリーアプ ローチ) (木下, 2007)  既存の理論からの演繹による仮説検証ではなく、データに 基づいて(data-grounded)仮説を生成し、そのプロセスを 開示する  一般理論ではなく、ヒューマンサービス領域において生じ る現象の再現・予測・制御を可能にする「具体理論」を構 築する  Fit and Workをめざし、仮説を実践現場の経験から検討する 「修正可能性」に開かれている(木下, 1999)
  • 10. 事前研究  授業者:都内A小学校勤務・図画工作専科教員 学習指導要領作成協力者経験者  造形遊び観(授業後インタビュー) 「造形遊びは普段から子どもが行っていること」 「(教科内容は)大人が勝手に分けているだけ」 「造形遊びは(他の教科内容と)通底しているから」  生徒:参観者が初めて出会う子どもたち。 授業者は1年生の頃から指導してきた(全員仮名)。
  • 11. 授業記録 (映像1:47:59、文字起こし61584字・A4 120 枚) 日時:2011年10月25日 1・2時限目 8時57分~10時40分(延長) 天気:晴れ 学級:6年1組 後藤(仮名)学級 児童数:21名 指導者:榎本涼子(仮名) 場所:都内A小学校図工室 参観者:桐田敬介 教科および領域:図画工作 A表現(1) 単元等:「ビー玉の道」
  • 12. 分析プロセスの開示  主にテクストデータに基づき、適宜映像データを参照 しつつ、Wordのコメント機能を用いて概念を生成した。 その際、個々の子どもたちを追跡し、その造形プロセ スの文脈を踏まえながら概念を生成することに留意し た。  授業実践においてはひと連なりの現象に多様な意味を 持った事態が生じているといえるため、特定のデータ においては複数の概念のヴァリエーションとした。  生成された概念のうち、同型の概念を統合し、他の多 様な造形遊びの形態(屋外、色やイメージに着目した 内容)では生じうる事態を言い当てうると考えられた 概念は残した。
  • 13. 概念生成例① 概念名 ソロプレー 定義 周りの造形プロセスとは関わりなく自分の遊びを遊ぼうとする ヴァリエーション 英太:(ビー玉を持っていき、自分が作った養生テープを貼った 板材を、角材の上において坂にした道から、割り箸のレールを 通って曲がっていく道に転がしてみる。ゆっくりとした動きで坂 を転がり、坂の途中で止まったりするビー玉を見て)おおー!こ れだよこれ。僕が目指していたもの。 卓也:(英太の道を進んでいるビー玉が時々止まりながら転がっ ていくのを見て)おっせーなお前!(笑) 剛:(道を指差して)ぎゃははは(笑) 卓也:おっそ!!(笑) 友美:(笑) 剛:おっそ(笑) 英太:(つられて笑っている) 卓也:おっそ!!(笑) 英太:でもいーじゃんたまにはこういうのも。(37:10-37:29) etc… 理論的メモ 「造形的なこだわり」が強い子が繰り返す。「遊びに混じる」や 「結果的にチームプレー」へと繋がる場合もある。ソロプレーで 作られた素材が「前に造ったものを使う」「在るもので整える」 に使われる場合がある。
  • 14. 概念生成例② 概念名 造形的なこだわり 定義 素材の選択や材料の組み方、遊び方などにその子のこだわりが 現れていること ヴァリエーション 英太:(ビー玉を持っていき、自分が作った養生テープを貼っ た板材を、角材の上において坂にした道から、割り箸のレール を通って曲がっていく道に転がしてみる。ゆっくりとした動き で坂を転がり、坂の途中で止まったりするビー玉を見て)お おー!これだよこれ。僕が目指していたもの。(37:10) 麻子:(レールの上に三角の角材を乗せて飾っているが、足り なくなる)もっと三角のやつ…(と材料置き場へ行き、戻って くる)(51:55) (中略) 麻子:(小さな三角の角材を、レールの上に乗っけていく) (53:15) etc… 理論的メモ 「遊びの予感」や「発明」、「素材」の選択に強く関わってお り、そのためか「相手の遊び方とのズレ」や「素材の制約」を 生み出す要因にもなっていると考えられる。特に「ソロプ レー」において顕著に現れる。
  • 15. 概念生成例③ 概念名 材料の組み方を試す 定義 素材どうし、あるいは材料と場所とのうまい組み合わせを、素材 を実際に動かしながら考えている ヴァリエーショ 嘉穂:(カラフルな角材の端からビー玉を転がしてみるが、木の ン 棒はびくともせず、ビー玉がコースアウトする) T:あー(笑) 康祐:弱いな力が…。(即座に木の棒をとり、芯材の支柱から板 を外す。) 真美:これさ、長さが…(いい材料を作業台の上から探そうとす るが、眉を潜ませて)あー、ないか…。 康祐:(取り外した板を二つの高さの異なる芯材で支えることに よって、より板が傾くようにする。小さく拍手。) (中略) 嘉穂:(康祐の前にある、近くにある芯材のうちでは一番高い芯 材を指差して)これいいんじゃない? 真美:(頷く) 康祐:(嘉穂の近くにあったビー玉をひとつ取る) 嘉穂・康祐:(大きさの違う大中小の芯材のうち、どれがよい傾 斜をつくるかを、実際に置いて探る) (31:07-31:36)etc… 理論的メモ 「在るものでなんとかする」戦略。動かしながら「物理的な条 件」などの問題を明らかにしていき、「解決策を試す」へ移行す
  • 16. 概念生成例④ 概念名 想い通りに行く歓び! 定義 造形プロセスが子どもたち自身が考えたプランや意欲の通 りに運ぶことによる歓び ヴァリエーショ 充:おおーし!! ン 詩織:もう一回いきますよ!(ビー玉転がす。) 詩織・加奈・このか:(缶に入り)ふーー!! 武志:(音声不明瞭。ビー玉を転がす)うぇい! 詩織・加奈・このか:(缶に入り)いえーーーい!!(拍手) C:(板材の道を転がってくるが、最後の方のレールのないところ で勢いがなくなりコースアウトしてしまう)ああ、あああ あー!! 亮太:もう一回いきますよ! 加奈:はーい! C:あと一個! (ビー玉を二つ転がし、二つとも入る) 詩織・加奈・このか:おおおーー!!(拍手)(53:44-54:20) etc… 理論的メモ 「思い」悩んだ末の問題解決が行なわれ、偶然的であっても「想 い」通りにうまくいく事態が成立したときに生じる情緒的な反応 と解釈した。このあと、「在るもので整える」に移行し成功確率 を高めつつ、何度も試すなかで「創った遊びで遊び続ける」に移
  • 17. 概念生成例⑤ 概念名 創った遊びで遊び続ける 定義 授業において即興的に発想された遊びがなんとか形になる ことで、その材料・場所で遊ぶ活動が持続すること ヴァリエーショ 充・亮太・武志:(武志が道の始まりに来て、話し合って ン いる。おそらくビー玉を三つ転がす。) 詩織・加奈・このか:ああああーーー!!(拍手) C:トリプルー!! 亮太:行くよー!!(ビー玉を転がす。三つとも入る) Cs:うぉああああーーー!!! 亮太:両手を掲げて喜ぶ。 充:ポーズをつけて喜ぶ。 武志:(ビー玉を転がす。缶に入るおと二つ) C:(ビー玉を転がす。缶に入るおと二つ)(55:33- 56:25) etc… 理論的メモ 「遊びの予感」や「発明」において構想されたプランとは多尐ず れている。うまくいかないと「在るもので整える」に移行し、う まくいき続けると「遊びの要素を付け加える」「遊びの成り行
  • 18. 概念生成例⑥ 概念名 うまくいく方法を閃く 定義 いまの造形プロセスの状況を打開するよい方法を思いつき、試す ヴァリエーション 茜:(作業台と椅子を繋ぐ紫の板材を動かしながら)こっから さぁ?この紫の奴(板材)が(さぁ! 信也:あ、わかった!(この様子を見ていたTに)先生紙ありま すか? T:紙。(信也をつれて図工準備室の前へ) 信也:ほんとに、あのー…(Tに細長い紙を渡され、それを持っ てくる) 信也:これだよ!(紫の板材と、作業台の上の板材とを紙で繋げ ようとする) 卓也:そうそう!それでいけるんじゃね?そういうので。 信也:これでこうやって、 茜:ああー…そうするかぁ。(58:08-58:33) etc… 理論的メモ 「解決策を試す」戦略。多くは手近な材料・場所・空間の組み合 わせを閃くが、授業内で与えられていない「要る材料」を思いつ く場合もある。
  • 22. 造形プロセスのストーリーラ イン  個々の子どもが「こだわり」をもって素材を持ち寄り、組 み合わせてみることで、「遊びの予感」から「発明」に移 行し、「まず1回やってみる」ことから「遊び」が始まる。  やってみることで、友達との「遊び方のズレ」や「意外に うまくいかない」などの多様な「問題群」に遭遇する。  遊びを通して「ソロプレー」から「あうんの呼吸」に至る まで、個々の子どもたちの「共同性」はその都度変化して いく。  「見通し」をもって「もう1回」試したり、または「条件 を変え」試した結果から「推論」を働かせたりすることに よって、遊ぶ「プラン」を練り上げ、素材の制約、材料の 組み方といった「問題」を明らかにしていく。
  • 23. 造形プロセスのストーリーラ イン  問題の解決法は、具体的な「材料」・「場所」の組み 替えや「崩し」であり、主な解決戦略は「在るもので なんとかする」「解決策を試す」の間を行き来する。  「想い通りうまくいく歓び!」の持続は「遊び」を持 続させる。  遊びのなかで出会う問題群への態度、たとえば「予想 外を愉しむ」「創ったものに囚われない」によって、 遊びは絶えず新しいものになっていく。  「遊び要素」の追加や「成り行き」により、遊びが変 化し複雑になっていくことで、再び意外な問題群と出 会うことになる。
  • 24. 造形プロセスのストーリーラ イン  問題がとけないと、苛立ちや悲しみなどで「感情が揺 ら」ぎ、「無理だと諦め」たり「いたずら」にはしっ たり、「創ったものを壊」したりしてしまう。  授業の終わりが近づくと、いまやっている遊びを成功 させようと、あるいは持続させようと「最後のあが き」が生じる。  遊び終わると、「材料を素材に戻」していく工夫のな かで、「壊す楽しみ」や「きれいに片付く喜び」を経 験していく。
  • 25. 考察  造形遊びの教科内容論で提示されている観点や本質は、 この「ビー玉の道」の授業(1事例)において生起し ており、それぞれが欠かざる要因として関わっている と考えられた。 ex.「行為の過程」の「楽しさ」、「物質の力」、「問 題解決」、「課題追究」、「相互作用」、「意味生成」 …  造形遊びの多様な教科内容論は、【造形活動】の造形 遊び的側面を、その論者の関心や観点から「学習内 容」として析出し構造化したもの(論)といえるので はないか。
  • 26. 「愉しむ」「歓び」「遊び」に関 する 仮説検討  フロー状態(Csikszentmihalyi, 1975/1979): 「人々が行 為の機会を自分の能力にちょうど適合したものとして知覚 した時、フローは経験される」(p.86)  フロー(flow):①行為と意識の融合、②限定された刺激領 域への注意集中、③自我忘却・世界との融合、④自分の行 為や環境を支配している感覚、⑤首尾一貫した矛盾の無い 行為の必要、明瞭で明確なフィードバック、⑥自己目的的 性質(pp.68-85)  自己目的的経験:「それを経験することや技能を用いるこ との楽しさ」「活動それ自体——活動の型、その行為、そ の活動が生み出す世界」によって動機付けられる(≠外発的 動機付け)(p.35)
  • 27. フローに基づく教育と 造形遊びとの近似  「子供たちは、ほとんどの時間を、彼らの技能が行為への挑戦の 機会に適合している水準での、環境との相互作用に費やしてい る」(p.293)  「真の教育の基礎的作業は、子供にイメージや類推、言葉の遊び や定義付けを通して、心がいかにして環境を秩序付けるかを教え ることである」(p.300)  「『学習はいかにして楽しいものになり得るか』という問題から 始める(中略)すべての学習作業を楽しいものにすること、つま りーー読み、書き、そろばんのみならず、人間行動の別の様式に おいてもーー生徒がどのような技能を持っているか、その水準は どの位であるかを明らかにし、これらの技能を表現させるための 限定された、しかし徐々に拡大する機会を考えることは容易であ る。このようにして学習は、内発的に動機付けられたものとな る。」(p.301-302)
  • 28. 「共同性」・「プラン」に関する 仮説検討  状況的学習(situated learning):奥村(2011)、名達 (2009)  正統的周辺参加(Lave & Wenger, 1991/1993)  即興的な徒弟性(福島, 2001)  プランと状況的行為(Suchman, 1987/1999) 「人は見事にプランを捨て、その人に使うことができるありと あらゆる身体化された技能をよりどころとする」(p.51) 「状況的行為の一貫性は、本質的な方向として、個人の潜在的 傾向や慣習的規則に結びついたものではなく、行為者の特殊な、 その場の環境(周辺環境)に依存したその場のインタラクショ ンに結びついたものである」(p.27-28)
  • 29. 「素材」「探求」 に関する仮説検討  Dewey, J. (1938/1968)「科学的探究」「芸術的探 求」 探究の構造:①探究の先行条件②問題設定③問題解決策 の決定④推論⑤事実と意味の操作的性格 科学的探究と芸術的探求の差異(小島, 2009に依拠して作成) 科学的探求 芸術的探求 探求の関心 問題そのもの 状況が変容する局面の 意味 探求の素材 概念的素材 知覚的素材 シンボルの関係性 質的関係 探求の成果 一般化された概念体系 個別性を持つ作品
  • 30. プランナー的、ブリコルール 的問題解決(Papert, 1996) “The style of the Planner is to design it all in detail in advance and then implement the design. The style of the Bricoleur, however, is closer to the way we build most original Lego constructions. You pick up a few pieces and start putting them together according to some very general idea of where you are going. Or perhaps without any idea. As you add pieces your idea becomes clearer. Eventually you might throw away the pieces you used to get going in this doodling style. But the essential point is that the idea was allowed to evolve. One could say that the idea was plastic and could be molded and shaped.” (p.147)
  • 31. 明」 に関する仮説検討 エンジニア(技術者・科学 ブリコルール(器用人) 者) 問題解決 諸拘束に対したとき、常に通 諸拘束に対したとき、好んで 路を拓いてその向こうに越え にせよやむをえずにせよ、そ ようとする の手前に留まる ルール 仮説と理論を使って、出来事 そのときそのとき限られた道 という形で自らの手段や成果 具や材料の集合でなんとかす を作り出して行く る 素材 仕事の一つ一つについてその 「もちあわせ」の道具や材料 計画に即して考案され購入さ (事前拘束) れた材料や器具 素材の性質 一次性質:あらゆる出来事の 資材性(潜在的有用性): 外にそれとは無関係なものの 「まだ何かの役に立つ」とい ように存在する性質(観念) う原則によって集められ保存 された要素 操作子 概念:仕事に使われる資材の 記号:仕事に使われる資材の 『野生の思考』(Lévi-Strauss, 1962/1976 pp.22-41) 集合を開く 集合を組替える
  • 32. 図画工作と ブリコラージュとの近似  「造形活動の過程については、はじめに立てた計画に従っ て、困難を乗り越え、目的に向けて一直線に進む展開を想 定しているわけではない。自分が納得するようにつくり・ つくり変え・つくり続けながら、造形的な問題などを解決 していくことを期待している」(板良敷, 2001 p.51)  「人が、直面する様々な問題をよりよく解決する際に、足 りないものを探しだし、他のもので代用し、それでも見つ からないときは、自らつくりだす資質や能力が必要になる。 そこでは、知識や技能などを総動員して、再構成などしな がら問題の解決や願いの実現に向けて働かせることにな る」(板良敷, 2002 p.9)  ブリコラージュへの言及(阿部, 2002)
  • 33. 図画工作から ブリコラージュへの接近例  満足のいくものになる」(藤田, 1996)  「子どもの創造表現活動とは、発想から完成に至る過 程がリニアではなく、『偶然』からイメージが拡がっ たり変容したりしながら『それていく』連続によるも のであり、<ブリコレ>そのものであると言える」 (藤崎, 2002)
  • 34. 【造形遊びの学習内容モデ ル】(ver.1.0 2013) フロー 活動 ブリコ ルール 芸術的 状況的 探求 学習
  • 36. 本研究の限界  造形遊びにみられる多様な形態の綜合的・統計的な実証研 究ではない(材料・場所を巡る多様な探求がありうる)  ①教師の実践知の形式が事例的思考であること(稲垣・佐 藤, 1996)②これまでも事例研究から科学的知見が生起した 科学史的前例に鑑みても、1事例からの仮説生成であるこ とは限界であると同時にメリットとも考えられる。  1事例のなかにこれほど多様な「学び」と「遊び」のプロ セスが含まれているかもしれないということを、一人の参 与観察者が観察・記録した限られたデータにおいて示唆し えたことの意義。 ⇒教師研究者(teacher-researcher)による「仮説生成型事 例研究」(西條・堀越, 2007)の可能性
  • 37. 参考資料  文部科学省『小学校学習指導要領解説図画工作編』日本文 教出版、平成20年。  宇田秀士「「造形遊び」に関する教師の<意識‐規範・文化 >―美術科教育学会第5回西地区大会<研究発表会in奈良: 25年を経た「造形遊びの功罪」2003.12.20>を中心に」 「討議会記録(抄禄)」代表宇田『平成14-16年度科学研究 費補助金基盤研究(C)(2)研究成果報告書 美術教育 における教師の<意識―規範・文化>と題材・単元との関 係』2005年。  西野範夫『子どものつくる・表す行為と学び:子どものつ くる・表す行為と学びの教育の基礎理論:子どもの意味生 成の行為としての教育の体系 : つくること表すことによる 「生きる力」としての学びの基礎理論の構築と教育の体系 化』研究種目基盤研究(B) 文部省科学研究費補助金研究成果 報告書、1998-2000年。
  • 38. 参考文献  稲垣忠彦・佐藤学『授業研究入門』岩波書店、1996年。  金子一夫『美術科教育の方法と歴史:新訂増補』中央公論出版、2005年。  金子一夫「美術化教育の歴史 5. 昭和時代—戦後」山本正男(監修)・井上正作(編集)『感性の論理とその実践—2 美術の歴史・美術科教育の歴史』大学教育出版、2003年。  北澤晃『造形遊びの相互行為分析 他者との交流の世界を開く意味生成カウンセリング』せせらぎ出版、2007年。  木下康仁『グラウンデッド・セオリー・アプローチ——質的実正研究の再生』弘文堂、1999年。  木下康仁『ライブ講義M-GTA 実践的質的研究法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチのすべて』弘文堂、 2007年。  西光寺亨・松本巌・宮脇理・森市松(共著)『初等教育図画工作科教育の研究』建帛社、1979年。  西條剛央『構造構成主義とは何か――次世代人間科学の原理』北大路書房、2005年。  西條剛央『ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMベーシック編 研究の着想からデータ収集、分析、モデル構築ま で』新曜社、2007年。  西條剛央『ライブ講義・質的研究とは何か SCQRMアドバンス編 研究発表から論文執筆、評価、新次元の研究法ま で』新曜社、2008年。
  • 39. 参考文献  佐々木達之『造形教育における授業デザインと授業分析 ——授業構造とその構成要素から捉えた授業構成論——』東洋館、2011年。  重松鷹泰『授業分析の方法』明治図書出版、1961年。  平山満義(編)『質的研究法による授業研究―教育学/教育工学/心理学からのアプローチ』北大路書房、1997年。  福島真人『暗黙知の解剖——認知と社会のインターフェイス』金子書房、2001年。  Claude Lévi-Strauss, La pensée sauvage, Paris, Plon, 1962. 大橋保夫(訳)『野生の思考』みすず書房、1976年。  Mihaly Csikszentmihalyi, Beyond Boredom and Anxiety, San Francisco: Jossey-Bass, 1975. 今村宏明(訳)『楽しみの社会学——不安と倦怠を越えて』思索社、 1979年。  Ernst von Glasersfield, Radical constructivism: A Way of Knowing and Learning, Falmer Press, London, 1995. 西垣通(監修)橋本渉(訳)『ラディカル構成主義』 NTT出版、2010年。  Kuhn,T.S.,The structure of scientific revolutions, 3rd ed. Chicago: University of Chicago Press, 1962. 中山茂(訳)『科学革命の構造』みすず書房、1971年。  Jean Lave & Etienne Wenger, Situated Learning: Legitimate Peripheral Participation, Cambridge: Canbridge University Press, 1990.佐伯胖(訳)『状況に埋め込まれ た学習——正統的周辺参加』産業図書、1993年。  Seymour Papert, The Connected Family: Bridging the Digital Generation Gap, Longstreet Press, Atlanta, Georgia., 1996.  Suchman, L. Plans and situated actions : The Problem of Human-Machine Communication. Cambridge University Press, New York, 1987.水川喜文・上野直樹・鈴木 栄幸(訳)『プラント状況的行為——人間ー機械コミュニケーションの可能性』産業図書、1999年。
  • 40. 参考論文  阿部宏之「未来に生きる<知>をつくり出す造形遊び 身体性の確立と美術伝道師としての自覚」『美育文化』第52号、 第7巻、22-27頁、2002年。  安東恭一郎・岡啓介「図画工作の授業における子どもの支援(2)~グループ活動における子どもの課題~」『芸術教 授学』第6号、35-45頁、2003年。  板良敷敏「自ら学び自ら考え、よりよく問題を解決する図画工作科の学習指導の考え方」『初等教育資料』東洋館出版、 50-53頁、2001年。  板良敷敏「論説2 教育課程実現の課題と工夫――教育課程の全面実施にあたって――」『初等教育資料』東洋館出版、 6-11頁、2002年。  大谷 尚「『質的研究』の文脈からみた日本の授業研究の位置づけに関する試論——研究成果の交流と共有を展望して ——」『日本教育方法学会紀要:日本教育方法学研究』第24巻、29-37頁、1998年。  奥村高明『美術教育における相互行為分析の視座 : 状況的学習論を基にした相互行為分析による指導法の改善 』筑波大 学、博士論文、2011年。  小島律子「芸術的経験における探究としての問題解決の特性」『日本デューイ学会紀要』第50号、11-20頁、2009年。  西條剛央・堀越さやか「就職活動における自己アイデンティティの変化過程——構造構成主義に基づく事例研究モデ ル」『人間総合科学会誌』3(1)、71-80頁、2007年。
  • 41. 参考論文  名達英詔「造形活動における学びの発見Ⅰ ―造形活動における学びと教育の対照から―」『美術教育学:美術科教育 学会誌』第30号、305-315頁、2009年。  西村隆司「小学校図画工作科における造形遊びの位置」『教育学部論文集』佛教大学教育学部、第17号、69-80頁、 2005年。  三澤一実・増田穀・麻生敬子・田中俊一・宮島瑞子「所沢市における小学校教員の図画工作科指導意識 図画工作・美 術の所沢学力保障カリキュラム作成のためのアンケートから」『所沢市立教育センター研究員研究紀要』平成18年、第 Ⅱ節2項。  橋本光明・関谷俊行「図画工作教育の検討Ⅰ」『信州大学教育学部紀要』信州大学、第69号、33-44頁、1990年。  橋本光明・関谷俊行「図画工作教育の検討Ⅳ」『信州大学教育学部紀要』信州大学、第71号、39-50頁、1991年。  福井一真『木を素材とする造形教材開発の理論と実践に関する研究』兵庫教育大学大学院連合学校教育学研究科教科教 育実践学専攻芸術系教育連合講座(上越教育大学)、博士論文、2009年。  藤崎典子「総合的な学習の時間を活用した創造的な表現活動--<ブリコラージュ>の思想を援用して」『日本美術教育研 究紀要』第35号、69-76頁、2002年。  藤田達人「『ブリコルールの時代』という視点から工作教育を考える――子どもにとって『つくる』とは何か――」 『美育文化』第46号、第8巻、26-31頁、1996年。  Mitsuru Fujie ”A Comparative Study of Artistic Play and Zoukei-Asobi,” Journal of Aesthetic Education, University of Illinois Press, Vol. 37, No. 4, pp. 107-114, 2003.
  • 42. 参考論文  松本健義「幼児の造形行為における他者との相互行為の役割に関する事例研究(1)」『美術教育 学:美術科教育学会誌』美術科教育学会、第15号、265~280頁、1994年。  松本健義「図面工作科における児童-教師間相互行為の役割に関する事例研究」『美術教育学:美術科 教育学会誌』美術科教育学会、第18号、277-291頁、1997年。  松本健義「つくり表す行為、つくり表されるもの、つくり表す行為者の相互的生成過程」『大学美術 教育学会誌』大学美術教育学会、第35号、417-424頁、2004年。  武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(1)教育課程の改善、及び造形教育セ ンター」『茨城大学教育学部紀要 教育科学』茨城大学、第53号、27-50頁、2004年。  武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(2)昭和52年発表図画工作科学習指導 要領の編成作業」『茨城大学教育学部紀要 教育科学』茨城大学、第53号、51-68頁、2004年。  武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(3)行為の美術教育」『茨城大学教育 学部紀要 教育科学』茨城大学、第54号、39-58頁、2005年。  武藤智子・金子一夫「造形遊びの発生についての歴史的研究(4)大阪教育大学教育学部附属平野小 学校」『茨城大学教育学部紀要 教育科学』茨城大学、第54号、59-77頁、2005年。