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2014年度秋学期人工知能論 
コミュニケーションする知能の 
“すごさ” を考える (1) 
―ことばによるコミュニケーションの社会的規範― 
10. 30. 2014 
大学院政策・メディア研究科後期博士課程 
坂井田 瑠衣 
http://web.sfc.keio.ac.jp/~lui/
コミュニケーションを営む知能 
• これまでの人工知能論の授業 
ü 「人の知能がいかに “すごい” か」を考えてきた 
• 私の考え:                   
社会生活を営むスキル全てが “すごい知能” 
ü 相手と過度に発話が重ならず,会話することができる 
ü 人と会話しながら食事できる 
ü 人にぶつかったり,怪訝な顔をされずに街を歩ける 
• 全てのコミュニケーションに規範/秩序がある 
ü 場の状況に応じて作り出され,利用される規範 
2
授業予定 (全3回) 
• 10/30: ことばを使ったコミュニケーション 
ü 日常会話を成立させている暗黙的ルール 
Ø 社会で一般的に共有されたルール 
• 11/6: ことばと身体を使ったコミュニケーション 
ü 例) 食事をしながらの会話,漫才… 
Ø その場その場での,状況固有に作り出されるルール/知能 
• 11/13: ことばを使わないコミュニケーション 
ü 例) 人にぶつからないように街を歩く 
Ø コミュニケーションしていないと思っても,コミュニケー 
ションしてしまっている 
3
自己紹介 
• 専門: コミュニケーションの映像分析 
ü エスノメソドロジー/会話分析 
Ø 詳細な「トランスクリプト (書き起こし)」に基づく分析 
ü 非言語行動の分析 
Ø ジェスチャー,視線,姿勢などの分析 
• これまでの研究内容 
ü バラエティ番組におけるお笑い芸人の “わざ” 
Ø 「アメトーーク」の芸人たちが持っている引き出し 
ü 食卓での協同調理の身体的コミュニケーション 
Ø いかにして「もんじゃ焼き」が協同で作られるか 
4
コミュニケーションの “方法” を記述する 
• エスノメソドロジー (ethnomethodology) 
n ethno: 「人々の」 
n methodology: 「方法」 
ü “人々がどのような方法で社会を成り立たせている 
か” を記述する社会学的研究 
Ø 社会の最小単位は,2者間のコミュニケーション 
• 会話分析 (conversation analysis) 
ü エスノメソドロジーの主要な研究手法 
ü 我々が日々,当たり前に運用している会話の手続き 
を明らかにする 
5
0.1秒単位の微細な現象を 
見逃さない「トランスクリプト」 
• 詳細なトランスクリプトによる分析 
ü 言いよどみ,沈黙,重なり,音の引き延ばし,   
アクセントなどを詳細に記述 
((S,H,Uはもんじゃ焼きを作っている)) 
01 U: これさあ,((ボウルに手を伸ばしながら)) 
02 (0.4) 
03 U: なんで[こう 
04 H: [↑も]ん↓じゃって さき具材載せ- 
05 (0.2) 
06 H: ºなんかº 
07 (0.4) 
08 H: ぐしゃってやるんでしたっ[ け.] 
09 S: [そう]っすよ. 
10 U: ぐしゃってやるんだっけ. 
6 
← 0.4秒の沈黙 
音の高低 
重なり 
※ 興味がある方は「トランスクリプションのための記号」で検索してみてください.
コミュニケーションするための知能 
• 会話の知能≠言語能力 
ü ロボットに「辞書」を与えても「会話」できるように 
はならない 
• 会話の秩序を保つための社会的ルールがある 
ü 我々は会話のルールを無意識に獲得し,使いこなし 
ている 
• 本日の授業: 我々が自分たちの会話のルールに 
「いかに無自覚的か」を考える 
ü 「言われれば当たり前」のルールを記述してみる 
7
“ない” ものを見る知能 
• 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? 
8 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら)) 
 02     (1.5) 
串田・好井 (2010) より引用
“ない” ものを見る知能 
• 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? 
ü 普通の答え: 「ユキエが沈黙している」 
Ø ダイゴも沈黙しているのではないのか? 
Ø なぜ沈黙が「ユキエに属している」とわかるのか? 
9 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら)) 
 02 ユキエ:(1.5) ((沈黙)) 
串田・好井 (2010) より引用
“ない” ものを見る知能 
• 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? 
ü 普通の答え: 「ユキエが沈黙している」 
Ø ダイゴも沈黙しているのではないのか? 
Ø なぜ沈黙が「ユキエに属している」とわかるのか? 
ü もう1つの答え: 「ユキエが応答していない」 
Ø 「ユキエの応答」がこの場に「ない」ことが見える 
Ø 「質問をしたら応答が帰ってくる」という知識を持っている 
10 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら)) 
 02 ユキエ:(1.5) ((応答なし)) 
串田・好井 (2010) より引用
“あるべき” ものを見るためのルール 
• 「ない」ものが見える 
⇔ そこに「あるべき」ものを知っている (規範的知識) 
• 隣接ペア (Sacks & Schegloff, 1973) というルールが存在 
ü 質問―応答,挨拶―挨拶,依頼―受諾/拒否,… 
(1) 第一成分 (e.g. 質問) と第二成分 (e.g. 応答) からなる 
(2) 第一成分と第二成分は隣り合った位置で生じる 
(3) 第一成分と第二成分を別々の話し手が発する 
(4) 第一成分が第二成分より先に生じる 
(5) 第一成分は対応する種類の第二成分を要求する 
• 我々は隣接ペアの知識を暗黙的に使っている 
11
「応答なし」以上の何かが見える 
• 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? 
12 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら)) 
 02 ユキエ:(1.5) 
串田・好井 (2010) より引用
「応答なし」以上の何かが見える 
• 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? 
ü さらに先の答え: 「ユキエが応答をためらっている」 
Ø 「ユキエはアメフトが好きじゃなさそう」な感じがする 
ü YesがNoより「優先される (preferred)」(Pomeranz, 1984) 
Ø Yesの場合 → 即座に応答が来る 
Ø Noの場合 → しばしば遅延される 
13 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら)) 
 02 ユキエ:(1.5) ((「好きじゃない」と答えるのを躊躇っている)) 
串田・好井 (2010) より引用
応答を遅延させるための “わざ” 
• 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている 
ü 1.5秒の沈黙による遅延 
Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる 
14 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::? 
 02 (1.5) 
 03 ユキエ:アメフト:? 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º= 
 06 ユキエ:=ん:あんまり. 
串田・好井 (2010) より引用
応答を遅延させるための “わざ” 
• 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている 
ü 1.5秒の沈黙による遅延 
Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる 
15 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::? 
 02 (1.5) ← 沈黙による遅延 
 03 ユキエ:アメフト:? 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º= 
 06 ユキエ:=ん:あんまり. 
串田・好井 (2010) より引用
応答を遅延させるための “わざ” 
• 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている 
ü 1.5秒の沈黙による遅延 
Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる 
ü 「挿入連鎖」(Schegloff, 2007) による遅延 
Ø ユキエは即座に答えず「アメフト:?」と聞き返す 
16 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?   質問 
 02 (1.5) 
 03 ユキエ:アメフト:?   質問 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º=       応答 
 06 ユキエ:=ん:あんまり.          応答 
基底の連鎖 
挿入連鎖 
串田・好井 (2010) より引用
応答を遅延させるための “わざ” 
• 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている 
ü 1.5秒の沈黙による遅延 
Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる 
ü 「挿入連鎖」(Schegloff, 2007) による遅延 
Ø ユキエは即座に答えず「アメフト:?」と聞き返す 
17 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?   質問 
 02 (1.5) ← 沈黙による遅延 
 03 ユキエ:アメフト:?   質問 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º=       応答 
 06 ユキエ:=ん:あんまり.          応答 
基底の連鎖 
挿入連鎖 
串田・好井 (2010) より引用
“起こりそうな” 出来事を予期する知能 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::? 
 02 (1.5) 
 03 ユキエ:アメフト:? 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º= 
 06 ユキエ:=ん:あんまり. 
• 01行目で,ダイゴは何をしているか? 
18 
串田・好井 (2010) より引用
“起こりそうな” 出来事を予期する知能 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::? 
 02 (1.5) 
 03 ユキエ:アメフト:? 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º= 
 06 ユキエ:=ん:あんまり. 
• 01行目で,ダイゴは何をしているか? 
ü 普通の答え: 「ユキエに質問している」 
Ø 間違っていない 
Ø 「単なる質問」以上のことをしているように聞こえないか? 
19 
串田・好井 (2010) より引用 
質問
“起こりそうな” 出来事を予期する知能 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::? 
 02 (1.5) 
 03 ユキエ:アメフト:? 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º= 
 06 ユキエ:=ん:あんまり. 
誘いの前置き? 
串田・好井 (2010) より引用 
質問 
• 01行目で,ダイゴは何をしているか? 
ü 普通の答え: 「ユキエに質問している」 
Ø 間違っていない 
Ø 「単なる質問」以上のことをしているように聞こえないか? 
ü もう1つの答え: 「ユキエを何かに誘おうとしている」 20
誘いの前置きを感じ取る 
 ((ダイゴのアパートにて)) 
 01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::? 
 02 (1.5) 
 03 ユキエ:アメフト:? 
 04 (0.3) 
 05 ダイゴ:ºん:º= 
 06 ユキエ:=ん:あんまり. 
誘いを未然にブロック 
07 (0.6) 
08 ユキエ:なんで? 
ダイゴの質問の意図を尋ねる 
09 (2.2) 
10 ダイゴ:関学対神大やってる.((新聞を見ながら)) 
• ユキエの「ん:あんまり.」 
誘いの前置き 
誘うための 
「前提条件」 
を尋ねている 
串田・好井 (2010) より引用 
ü ダイゴがユキエを誘う「前提条件」が揃っていないことを示す 
• ユキエの「なんで?」 
ü ダイゴの質問を「誘いの前置き」として聞いている証拠 21
「前触れ」のコミュニケーション 
• 前置き連鎖 (pre-sequence) (Schegloff, 2007) 
ü 目的とする行為へ進むための前提条件を確認する質問 ⇔ 
別の行為の前触れに聞こえる 
Ø 「会話分析の教科書持ってる?」             
→「教科書を貸してほしい」という “依頼”,「一緒に読もう 
よ」という “提案” …などの前触れ 
ü それを聞いただけで,別の行為が続くことが投射される 
Ø 投射 (projection): 「いつこの発話が終わりそうか」,「次にど の 
ような発話が出現しそうか」などを予告する性質 (Sacks et al, 1974) 
• 前置き連鎖が可能にする「知性」 
ü 聞き手: “この後続きそうな” 行為を予測できる 
ü 話し手: 誘いや提案を断られるのを未然に防げる 
22
ここまでのまとめ 
• “ない” ものが見えるための知能 
ü 「隣接ペア」という規範的知識 
Ø “あるべき” ものを知っているから,“ない” ものが見える 
• 応答を遅延させる “わざ” 
ü 沈黙,「挿入連鎖」 
Ø 否定的返答の出現を暗示する 
• “起こりそうな” 出来事を予測する知能 
ü 「前置き連鎖」 
Ø 別の行為が続くという「前触れ」を感じさせる 
23
2者会話から多人数会話へ 
• 多人数会話 (坊農・高梨, 2009; 伝, 2013) 
ü 「3者以上」の会話のこと 
Ø 我々の多くは,3人以上 (両親と子) の家庭で成長する 
Ø 学校や職場でも3人以上で集まることが多い 
• 3者会話では多様性が一気に増す 
ü 1人の話し手に対して2人の聞き手がいる 
Ø 「次に誰が話すか」が定まらない 
ü 2人の聞き手は必ずしも対等ではない 
ü 話し手が2人になることもある 
24
次に誰が話し出すか? 
順番交替のルール 
• (例) かしこまった会議の場合 
ü 予め「次に誰が話すか」が決められていて,議長が指 
名した者が発言する 
• 日常会話の場合は? 
ü 「次に誰が話すか」は,その場で決まる 
ü 次の話者を決めるための暗黙的なルールが存在する 
Ø 順番交替ルール (Sacks, Schegloff & Jefferson, 1974) 
25
順番交替 (turn-taking) ルール 
(Sacks, Schegloff & Jefferson, 1974) 
• 話し手が最初の完了可能な地点に達した時, 
ü 「次話者選択の技法」が使われていた場合     
  → 選択された者が話し出す 
Ø 次話者選択の技法: 呼びかけの語と隣接ペア第一成分 (例えば 
「Aさんはどう思う?」),視線など 
ü 「次話者選択の技法」が使われていなかった場合 
  → 最初に話し出した者が順番を取る 
  or 現在の話し手が話し続ける 
(例) 
A: 右側に行くと 酒場ってのが あるのね (榎本 (2003) より引用) 
     まだ完了しない  まだ完了しない 完了可能な地点 26
3者会話で起きうること: 
2人が同時に話し出す 
27 
01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 
02 (0.4) 
03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 
04 意味わ(h)か(h)ります?= 
05 U: =[[え:どういうこと]::? 
06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] 
07 (0.4) 
08 U: 味の[違い 
09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる
3者会話で起きうること: 
2人が同時に話し出す 
1. HはSに向けて質問する 
・HはSに視線を向けている 
・語尾が丁寧語 (Sは年上) 
→ HはSに向けて質問している 
ü 次話者選択の技法 (隣接ペア第一成分,視線,丁寧語) が使われる 
28 
01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 
02 (0.4) 
03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 
04 意味わ(h)か(h)ります?= ← 隣接ペア第1成分 (質問) 
05 U: =[[え:どういうこと]::? 
06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] 
07 (0.4) 
08 U: 味の[違い 
09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる
3者会話で起きうること: 
2人が同時に話し出す 
1. HはSに向けて質問する 
・HはSに視線を向けている 
・語尾が丁寧語 (Sは年上) 
→ HはSに向けて質問している 
ü 次話者選択の技法 (隣接ペア第一成分,視線,丁寧語) が使われる 
2. SとUは同時に,Hの質問の意味を問い返す 
29 
01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 
02 (0.4) 
03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 
04 意味わ(h)か(h)ります?= ← 隣接ペア第1成分 (質問) 
05 U: =[[え:どういうこと]::? 
06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] 
UとSの発話の重なり 
07 (0.4) 
08 U: 味の[違い 
09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる
3者会話で起きうること: 
2人が同時に話し出す 
・HはSに視線を向けている 
・語尾が丁寧語 (Sは年上) 
→ HはSに向けて質問している 
01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 
02 (0.4) 
03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 
04 意味わ(h)か(h)ります?= ← 隣接ペア第1成分 (質問) 
05 U: =[[え:どういうこと]::? 
06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] 
07 (0.4) 
08 U: 味の[違い ← 重なった部分を分かりやすく言い直している 
09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる 
1. HはSに向けて質問する 
UとSの発話の重なり 
ü 次話者選択の技法 (隣接ペア第一成分,視線,丁寧語) が使われる 
2. SとUは同時に,Hの質問の意味を問い返す 
3. Uは,重なった部分を分かりやすく言い直す 
ü 「何の違い?」(WH疑問文) →「味の違い」(Yes/No疑問文) 30
なぜ過度の重なりや沈黙が生じないか 
• 「どこでこの発話が終わるか」が投射される 
 → 相手が話し終える直前に話し出せる 
ü 日本語の場合は「発話末要素」が発話の終わりを投 
射する (Tanaka, 1999) 
Ø 発話末要素: す, ます, ました, ましょう, です, でしょう,    
だ, だろう, じゃん, ね, よ, さ, か, の, わ, ぞ, や, な,       
ください, ちょうだい, なさい, わけ, もの, もん, ん 
31 
01 H: ↑もん↓じゃって さき具材載せ- 
02 (0.2) 
03 H: ºなんかº 
04 (0.4) 
05 H: ぐしゃってやるんでしたっ[ け.] 
06 S: [そう]っすよ. 
07 U: ぐしゃってやるんだっけ. 
発話の末尾がわずかに 
重なっていて,円滑に 
順番が交替している
重なりの妨害度の評定実験 (榎本, 2003) 
• 様々な位置で重なった発話を被験者に聞かせる 
ü 結果: 重なりの位置によって妨害度の感じ方が異なる 
Ø 発話末要素以前の重なり: 妨害度は高い 
Ø 発話末要素開始時点での重なり: 妨害度は低い 
Ø 発話末要素開始後少し経ってからの重なり: 妨害度は特に低い 
ü 発話末要素を聞いてから話し出すと妨害度が低くなる 
Ø 発話を聞いて話し出すまでに,反応時間が約220-250msかかる 
• 相手の発話が終わることを認知してから話し出 
すなら,重なりは許容される 
ü 発話末に重なった素早い反応は,強い肯定的態度を 
暗示している? 
32
まとめ: 
“そのつど” 参照される規範的知識 
• 我々が暗黙的に使いこなしている規範的知識 
ü 隣接ペア,肯定的応答の優先性,挿入連鎖,前置き連 
鎖,順番交替ルール… 
• 我々は「自転車の乗り方を知っている」のと同 
じように,会話のルールを知っている     
(串田・好井, 2010) 
ü 1つとして同じではない路面を,転ばずに走れる 
ü 全ての路面の状態を知っている必要はない 
ü 走り進むことで,自分の取り巻く環境を変化させる 
33
参考資料: トランスクリプトの記号 
[ 
Ø 発話の重なりの開始地点. 
[[ 
Ø 複数参与者の発話の同時開始地点. 
] 
Ø 発話の重なりの終了地点. 
= 
Ø 発話が途切れなく密着している箇所. 
(0.0) 
Ø 無音区間の秒数.通例,0.2秒毎に示す. 
(.) 
Ø 0.2秒以下の短い無音区間. 
言葉:: 
Ø 音の引き延ばし. 
言- 
Ø 言葉が不完全なまま途切れている箇所. 
º言葉º 
Ø 発話の音が小さい箇所. 
言(h) 
Ø 笑いながら産出される発話. 
言葉 
Ø 強く発音される発話. 
↓↑ 
Ø 音調の極端な上がり下がり. 
(言葉) 
Ø 聞き取りが確定できない言葉. 
(( )) 
Ø 要約,注記. 
※詳細は,西阪他 (2008) ,および http://www.meijigakuin.ac.jp/~aug/transsym.htm を参照 
34
参考文献 
1. 坊農 真弓・高梨 克也 (編) (2009). 『多人数インタラクションの分析手法』. オーム社. 
2. 伝 康晴 (2013). 三者会話のダイナミクス. 『日本語学』, 32 (1), 4-13. 明治書院. 
3. 榎本 美香 (2003). 会話の聞き手はいつ話し始めるか: 日本語の話者交替規則は過ぎ去った完結点に 
遡及して適用される. 『認知科学』, 10 (2), 291-303. 
4. 串田 秀也・好井 裕明 (編) (2010). 『エスノメソドロジーを学ぶ人のために』. 世界思想社. 
5. 西阪 仰・串田 秀也・熊谷 智子 (2008). 特集「相互行為における言語使用: 会話データを用いた研 
究」について. 『社会言語科学』, 10 (2), 13-15. 
6. Pomerantz, A. (1984). Agreeing and disagreeing with assessments: Some features of preferred/ 
dispreferred turn shapes. In J. M. Atkinson & J. Heritage (Eds.), Structures of Social Action. 
Cambridge University Press, 57-101. 
7. Schegloff, E. A. & Sacks, H. (1973). Opening up closings. Semiotica, 8, 289-327. 
8. Sacks, H., Schegloff, E. A. & Jefferson, G. (1974). A simplest systematics for the organization of 
turn-taking for conversation, Language, 50 (4), 696-735. (西阪仰 (訳) (2010). 『会話分析基本論集 
―順番交替と修復の組織』. 世界思想社.) 
9. Sakaida, R., Kato, F. & Suwa, M. (in press). How do we talk in table cooking?: overlaps and silence 
appearing in embodied interaction, New Frontiers in Artificial Intelligence, Springer. 
10. Tanaka, H. (2000). Turn-Taking in Japanese Conversation: A Study in Grammar and Interaction. 
John Benjamins. 
11. Schegloff, E. A. (2007). Sequence Organization in Interaction: A Primer in Conversation Analysis, 1. 
Cambridge University Press. 
35

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2014年秋学期「人工知能論」(2014年10月30日分)

  • 1. 2014年度秋学期人工知能論 コミュニケーションする知能の “すごさ” を考える (1) ―ことばによるコミュニケーションの社会的規範― 10. 30. 2014 大学院政策・メディア研究科後期博士課程 坂井田 瑠衣 http://web.sfc.keio.ac.jp/~lui/
  • 2. コミュニケーションを営む知能 • これまでの人工知能論の授業 ü 「人の知能がいかに “すごい” か」を考えてきた • 私の考え:                   社会生活を営むスキル全てが “すごい知能” ü 相手と過度に発話が重ならず,会話することができる ü 人と会話しながら食事できる ü 人にぶつかったり,怪訝な顔をされずに街を歩ける • 全てのコミュニケーションに規範/秩序がある ü 場の状況に応じて作り出され,利用される規範 2
  • 3. 授業予定 (全3回) • 10/30: ことばを使ったコミュニケーション ü 日常会話を成立させている暗黙的ルール Ø 社会で一般的に共有されたルール • 11/6: ことばと身体を使ったコミュニケーション ü 例) 食事をしながらの会話,漫才… Ø その場その場での,状況固有に作り出されるルール/知能 • 11/13: ことばを使わないコミュニケーション ü 例) 人にぶつからないように街を歩く Ø コミュニケーションしていないと思っても,コミュニケー ションしてしまっている 3
  • 4. 自己紹介 • 専門: コミュニケーションの映像分析 ü エスノメソドロジー/会話分析 Ø 詳細な「トランスクリプト (書き起こし)」に基づく分析 ü 非言語行動の分析 Ø ジェスチャー,視線,姿勢などの分析 • これまでの研究内容 ü バラエティ番組におけるお笑い芸人の “わざ” Ø 「アメトーーク」の芸人たちが持っている引き出し ü 食卓での協同調理の身体的コミュニケーション Ø いかにして「もんじゃ焼き」が協同で作られるか 4
  • 5. コミュニケーションの “方法” を記述する • エスノメソドロジー (ethnomethodology) n ethno: 「人々の」 n methodology: 「方法」 ü “人々がどのような方法で社会を成り立たせている か” を記述する社会学的研究 Ø 社会の最小単位は,2者間のコミュニケーション • 会話分析 (conversation analysis) ü エスノメソドロジーの主要な研究手法 ü 我々が日々,当たり前に運用している会話の手続き を明らかにする 5
  • 6. 0.1秒単位の微細な現象を 見逃さない「トランスクリプト」 • 詳細なトランスクリプトによる分析 ü 言いよどみ,沈黙,重なり,音の引き延ばし,   アクセントなどを詳細に記述 ((S,H,Uはもんじゃ焼きを作っている)) 01 U: これさあ,((ボウルに手を伸ばしながら)) 02 (0.4) 03 U: なんで[こう 04 H: [↑も]ん↓じゃって さき具材載せ- 05 (0.2) 06 H: ºなんかº 07 (0.4) 08 H: ぐしゃってやるんでしたっ[ け.] 09 S: [そう]っすよ. 10 U: ぐしゃってやるんだっけ. 6 ← 0.4秒の沈黙 音の高低 重なり ※ 興味がある方は「トランスクリプションのための記号」で検索してみてください.
  • 7. コミュニケーションするための知能 • 会話の知能≠言語能力 ü ロボットに「辞書」を与えても「会話」できるように はならない • 会話の秩序を保つための社会的ルールがある ü 我々は会話のルールを無意識に獲得し,使いこなし ている • 本日の授業: 我々が自分たちの会話のルールに 「いかに無自覚的か」を考える ü 「言われれば当たり前」のルールを記述してみる 7
  • 8. “ない” ものを見る知能 • 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? 8  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら))  02     (1.5) 串田・好井 (2010) より引用
  • 9. “ない” ものを見る知能 • 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? ü 普通の答え: 「ユキエが沈黙している」 Ø ダイゴも沈黙しているのではないのか? Ø なぜ沈黙が「ユキエに属している」とわかるのか? 9  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら))  02 ユキエ:(1.5) ((沈黙)) 串田・好井 (2010) より引用
  • 10. “ない” ものを見る知能 • 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? ü 普通の答え: 「ユキエが沈黙している」 Ø ダイゴも沈黙しているのではないのか? Ø なぜ沈黙が「ユキエに属している」とわかるのか? ü もう1つの答え: 「ユキエが応答していない」 Ø 「ユキエの応答」がこの場に「ない」ことが見える Ø 「質問をしたら応答が帰ってくる」という知識を持っている 10  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら))  02 ユキエ:(1.5) ((応答なし)) 串田・好井 (2010) より引用
  • 11. “あるべき” ものを見るためのルール • 「ない」ものが見える ⇔ そこに「あるべき」ものを知っている (規範的知識) • 隣接ペア (Sacks & Schegloff, 1973) というルールが存在 ü 質問―応答,挨拶―挨拶,依頼―受諾/拒否,… (1) 第一成分 (e.g. 質問) と第二成分 (e.g. 応答) からなる (2) 第一成分と第二成分は隣り合った位置で生じる (3) 第一成分と第二成分を別々の話し手が発する (4) 第一成分が第二成分より先に生じる (5) 第一成分は対応する種類の第二成分を要求する • 我々は隣接ペアの知識を暗黙的に使っている 11
  • 12. 「応答なし」以上の何かが見える • 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? 12  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら))  02 ユキエ:(1.5) 串田・好井 (2010) より引用
  • 13. 「応答なし」以上の何かが見える • 02行目の1.5秒の沈黙で,誰が何をしているか? ü さらに先の答え: 「ユキエが応答をためらっている」 Ø 「ユキエはアメフトが好きじゃなさそう」な感じがする ü YesがNoより「優先される (preferred)」(Pomeranz, 1984) Ø Yesの場合 → 即座に応答が来る Ø Noの場合 → しばしば遅延される 13  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?((新聞を見ながら))  02 ユキエ:(1.5) ((「好きじゃない」と答えるのを躊躇っている)) 串田・好井 (2010) より引用
  • 14. 応答を遅延させるための “わざ” • 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている ü 1.5秒の沈黙による遅延 Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる 14  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?  02 (1.5)  03 ユキエ:アメフト:?  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=  06 ユキエ:=ん:あんまり. 串田・好井 (2010) より引用
  • 15. 応答を遅延させるための “わざ” • 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている ü 1.5秒の沈黙による遅延 Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる 15  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?  02 (1.5) ← 沈黙による遅延  03 ユキエ:アメフト:?  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=  06 ユキエ:=ん:あんまり. 串田・好井 (2010) より引用
  • 16. 応答を遅延させるための “わざ” • 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている ü 1.5秒の沈黙による遅延 Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる ü 「挿入連鎖」(Schegloff, 2007) による遅延 Ø ユキエは即座に答えず「アメフト:?」と聞き返す 16  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?   質問  02 (1.5)  03 ユキエ:アメフト:?   質問  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=       応答  06 ユキエ:=ん:あんまり.          応答 基底の連鎖 挿入連鎖 串田・好井 (2010) より引用
  • 17. 応答を遅延させるための “わざ” • 実際,2つの方法で応答が「遅延」されている ü 1.5秒の沈黙による遅延 Ø 否定的な応答の前には沈黙が置かれる ü 「挿入連鎖」(Schegloff, 2007) による遅延 Ø ユキエは即座に答えず「アメフト:?」と聞き返す 17  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?   質問  02 (1.5) ← 沈黙による遅延  03 ユキエ:アメフト:?   質問  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=       応答  06 ユキエ:=ん:あんまり.          応答 基底の連鎖 挿入連鎖 串田・好井 (2010) より引用
  • 18. “起こりそうな” 出来事を予期する知能  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?  02 (1.5)  03 ユキエ:アメフト:?  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=  06 ユキエ:=ん:あんまり. • 01行目で,ダイゴは何をしているか? 18 串田・好井 (2010) より引用
  • 19. “起こりそうな” 出来事を予期する知能  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?  02 (1.5)  03 ユキエ:アメフト:?  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=  06 ユキエ:=ん:あんまり. • 01行目で,ダイゴは何をしているか? ü 普通の答え: 「ユキエに質問している」 Ø 間違っていない Ø 「単なる質問」以上のことをしているように聞こえないか? 19 串田・好井 (2010) より引用 質問
  • 20. “起こりそうな” 出来事を予期する知能  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?  02 (1.5)  03 ユキエ:アメフト:?  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=  06 ユキエ:=ん:あんまり. 誘いの前置き? 串田・好井 (2010) より引用 質問 • 01行目で,ダイゴは何をしているか? ü 普通の答え: 「ユキエに質問している」 Ø 間違っていない Ø 「単なる質問」以上のことをしているように聞こえないか? ü もう1つの答え: 「ユキエを何かに誘おうとしている」 20
  • 21. 誘いの前置きを感じ取る  ((ダイゴのアパートにて))  01 ダイゴ:ユキエちゃんアメフト好き::?  02 (1.5)  03 ユキエ:アメフト:?  04 (0.3)  05 ダイゴ:ºん:º=  06 ユキエ:=ん:あんまり. 誘いを未然にブロック 07 (0.6) 08 ユキエ:なんで? ダイゴの質問の意図を尋ねる 09 (2.2) 10 ダイゴ:関学対神大やってる.((新聞を見ながら)) • ユキエの「ん:あんまり.」 誘いの前置き 誘うための 「前提条件」 を尋ねている 串田・好井 (2010) より引用 ü ダイゴがユキエを誘う「前提条件」が揃っていないことを示す • ユキエの「なんで?」 ü ダイゴの質問を「誘いの前置き」として聞いている証拠 21
  • 22. 「前触れ」のコミュニケーション • 前置き連鎖 (pre-sequence) (Schegloff, 2007) ü 目的とする行為へ進むための前提条件を確認する質問 ⇔ 別の行為の前触れに聞こえる Ø 「会話分析の教科書持ってる?」             →「教科書を貸してほしい」という “依頼”,「一緒に読もう よ」という “提案” …などの前触れ ü それを聞いただけで,別の行為が続くことが投射される Ø 投射 (projection): 「いつこの発話が終わりそうか」,「次にど の ような発話が出現しそうか」などを予告する性質 (Sacks et al, 1974) • 前置き連鎖が可能にする「知性」 ü 聞き手: “この後続きそうな” 行為を予測できる ü 話し手: 誘いや提案を断られるのを未然に防げる 22
  • 23. ここまでのまとめ • “ない” ものが見えるための知能 ü 「隣接ペア」という規範的知識 Ø “あるべき” ものを知っているから,“ない” ものが見える • 応答を遅延させる “わざ” ü 沈黙,「挿入連鎖」 Ø 否定的返答の出現を暗示する • “起こりそうな” 出来事を予測する知能 ü 「前置き連鎖」 Ø 別の行為が続くという「前触れ」を感じさせる 23
  • 24. 2者会話から多人数会話へ • 多人数会話 (坊農・高梨, 2009; 伝, 2013) ü 「3者以上」の会話のこと Ø 我々の多くは,3人以上 (両親と子) の家庭で成長する Ø 学校や職場でも3人以上で集まることが多い • 3者会話では多様性が一気に増す ü 1人の話し手に対して2人の聞き手がいる Ø 「次に誰が話すか」が定まらない ü 2人の聞き手は必ずしも対等ではない ü 話し手が2人になることもある 24
  • 25. 次に誰が話し出すか? 順番交替のルール • (例) かしこまった会議の場合 ü 予め「次に誰が話すか」が決められていて,議長が指 名した者が発言する • 日常会話の場合は? ü 「次に誰が話すか」は,その場で決まる ü 次の話者を決めるための暗黙的なルールが存在する Ø 順番交替ルール (Sacks, Schegloff & Jefferson, 1974) 25
  • 26. 順番交替 (turn-taking) ルール (Sacks, Schegloff & Jefferson, 1974) • 話し手が最初の完了可能な地点に達した時, ü 「次話者選択の技法」が使われていた場合       → 選択された者が話し出す Ø 次話者選択の技法: 呼びかけの語と隣接ペア第一成分 (例えば 「Aさんはどう思う?」),視線など ü 「次話者選択の技法」が使われていなかった場合   → 最初に話し出した者が順番を取る   or 現在の話し手が話し続ける (例) A: 右側に行くと 酒場ってのが あるのね (榎本 (2003) より引用)      まだ完了しない  まだ完了しない 完了可能な地点 26
  • 27. 3者会話で起きうること: 2人が同時に話し出す 27 01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 02 (0.4) 03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 04 意味わ(h)か(h)ります?= 05 U: =[[え:どういうこと]::? 06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] 07 (0.4) 08 U: 味の[違い 09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる
  • 28. 3者会話で起きうること: 2人が同時に話し出す 1. HはSに向けて質問する ・HはSに視線を向けている ・語尾が丁寧語 (Sは年上) → HはSに向けて質問している ü 次話者選択の技法 (隣接ペア第一成分,視線,丁寧語) が使われる 28 01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 02 (0.4) 03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 04 意味わ(h)か(h)ります?= ← 隣接ペア第1成分 (質問) 05 U: =[[え:どういうこと]::? 06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] 07 (0.4) 08 U: 味の[違い 09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる
  • 29. 3者会話で起きうること: 2人が同時に話し出す 1. HはSに向けて質問する ・HはSに視線を向けている ・語尾が丁寧語 (Sは年上) → HはSに向けて質問している ü 次話者選択の技法 (隣接ペア第一成分,視線,丁寧語) が使われる 2. SとUは同時に,Hの質問の意味を問い返す 29 01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 02 (0.4) 03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 04 意味わ(h)か(h)ります?= ← 隣接ペア第1成分 (質問) 05 U: =[[え:どういうこと]::? 06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] UとSの発話の重なり 07 (0.4) 08 U: 味の[違い 09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる
  • 30. 3者会話で起きうること: 2人が同時に話し出す ・HはSに視線を向けている ・語尾が丁寧語 (Sは年上) → HはSに向けて質問している 01 H: 私もん- もんじゃにしちゃうと: 02 (0.4) 03 H: ((Sに視線を向けて))もんじゃの違いが分からないんですよね: 04 意味わ(h)か(h)ります?= ← 隣接ペア第1成分 (質問) 05 U: =[[え:どういうこと]::? 06 S: =[[ 何 の 違 い ? ] 07 (0.4) 08 U: 味の[違い ← 重なった部分を分かりやすく言い直している 09 H: [全部]もんじゃって もんじゃ(.)になる 1. HはSに向けて質問する UとSの発話の重なり ü 次話者選択の技法 (隣接ペア第一成分,視線,丁寧語) が使われる 2. SとUは同時に,Hの質問の意味を問い返す 3. Uは,重なった部分を分かりやすく言い直す ü 「何の違い?」(WH疑問文) →「味の違い」(Yes/No疑問文) 30
  • 31. なぜ過度の重なりや沈黙が生じないか • 「どこでこの発話が終わるか」が投射される  → 相手が話し終える直前に話し出せる ü 日本語の場合は「発話末要素」が発話の終わりを投 射する (Tanaka, 1999) Ø 発話末要素: す, ます, ました, ましょう, です, でしょう,    だ, だろう, じゃん, ね, よ, さ, か, の, わ, ぞ, や, な,       ください, ちょうだい, なさい, わけ, もの, もん, ん 31 01 H: ↑もん↓じゃって さき具材載せ- 02 (0.2) 03 H: ºなんかº 04 (0.4) 05 H: ぐしゃってやるんでしたっ[ け.] 06 S: [そう]っすよ. 07 U: ぐしゃってやるんだっけ. 発話の末尾がわずかに 重なっていて,円滑に 順番が交替している
  • 32. 重なりの妨害度の評定実験 (榎本, 2003) • 様々な位置で重なった発話を被験者に聞かせる ü 結果: 重なりの位置によって妨害度の感じ方が異なる Ø 発話末要素以前の重なり: 妨害度は高い Ø 発話末要素開始時点での重なり: 妨害度は低い Ø 発話末要素開始後少し経ってからの重なり: 妨害度は特に低い ü 発話末要素を聞いてから話し出すと妨害度が低くなる Ø 発話を聞いて話し出すまでに,反応時間が約220-250msかかる • 相手の発話が終わることを認知してから話し出 すなら,重なりは許容される ü 発話末に重なった素早い反応は,強い肯定的態度を 暗示している? 32
  • 33. まとめ: “そのつど” 参照される規範的知識 • 我々が暗黙的に使いこなしている規範的知識 ü 隣接ペア,肯定的応答の優先性,挿入連鎖,前置き連 鎖,順番交替ルール… • 我々は「自転車の乗り方を知っている」のと同 じように,会話のルールを知っている     (串田・好井, 2010) ü 1つとして同じではない路面を,転ばずに走れる ü 全ての路面の状態を知っている必要はない ü 走り進むことで,自分の取り巻く環境を変化させる 33
  • 34. 参考資料: トランスクリプトの記号 [ Ø 発話の重なりの開始地点. [[ Ø 複数参与者の発話の同時開始地点. ] Ø 発話の重なりの終了地点. = Ø 発話が途切れなく密着している箇所. (0.0) Ø 無音区間の秒数.通例,0.2秒毎に示す. (.) Ø 0.2秒以下の短い無音区間. 言葉:: Ø 音の引き延ばし. 言- Ø 言葉が不完全なまま途切れている箇所. º言葉º Ø 発話の音が小さい箇所. 言(h) Ø 笑いながら産出される発話. 言葉 Ø 強く発音される発話. ↓↑ Ø 音調の極端な上がり下がり. (言葉) Ø 聞き取りが確定できない言葉. (( )) Ø 要約,注記. ※詳細は,西阪他 (2008) ,および http://www.meijigakuin.ac.jp/~aug/transsym.htm を参照 34
  • 35. 参考文献 1. 坊農 真弓・高梨 克也 (編) (2009). 『多人数インタラクションの分析手法』. オーム社. 2. 伝 康晴 (2013). 三者会話のダイナミクス. 『日本語学』, 32 (1), 4-13. 明治書院. 3. 榎本 美香 (2003). 会話の聞き手はいつ話し始めるか: 日本語の話者交替規則は過ぎ去った完結点に 遡及して適用される. 『認知科学』, 10 (2), 291-303. 4. 串田 秀也・好井 裕明 (編) (2010). 『エスノメソドロジーを学ぶ人のために』. 世界思想社. 5. 西阪 仰・串田 秀也・熊谷 智子 (2008). 特集「相互行為における言語使用: 会話データを用いた研 究」について. 『社会言語科学』, 10 (2), 13-15. 6. Pomerantz, A. (1984). Agreeing and disagreeing with assessments: Some features of preferred/ dispreferred turn shapes. In J. M. Atkinson & J. Heritage (Eds.), Structures of Social Action. Cambridge University Press, 57-101. 7. Schegloff, E. A. & Sacks, H. (1973). Opening up closings. Semiotica, 8, 289-327. 8. Sacks, H., Schegloff, E. A. & Jefferson, G. (1974). A simplest systematics for the organization of turn-taking for conversation, Language, 50 (4), 696-735. (西阪仰 (訳) (2010). 『会話分析基本論集 ―順番交替と修復の組織』. 世界思想社.) 9. Sakaida, R., Kato, F. & Suwa, M. (in press). How do we talk in table cooking?: overlaps and silence appearing in embodied interaction, New Frontiers in Artificial Intelligence, Springer. 10. Tanaka, H. (2000). Turn-Taking in Japanese Conversation: A Study in Grammar and Interaction. John Benjamins. 11. Schegloff, E. A. (2007). Sequence Organization in Interaction: A Primer in Conversation Analysis, 1. Cambridge University Press. 35