日本教育工学会 第29回全国大会 2013年9月21日（土）11:10-12:30 一般研究発表１（ポスター発表）P1a-1-304-10 ＜あらまし＞知識基盤社会といわれる最近，「21世紀型スキル」の育成や「キャリア教育」等，様々な実践がなされているが，未来の職業の変化を直接理解させて行うことが十分でないと考えられる。そこで，A小学校の6年生3学級を対象に，職業の変化に着目したブログ記事制作の体験をする授業プログラムを開発した。実践を通して，授業プログラムとして成立することが示唆されたが，児童自身が情報社会の担い手となることの理解，ブログ記事の実際の公開，記事執筆中の授業者のフィルタリングやモニタリング等を留意する必要があった。

1. 21世紀型スキル育成を視野に入れた
小学校におけるキャリア教育プログラム開発の試み
­ 職業の変化に着目したブログ記事制作の体験を通して ­
日本教育工学会 第29回全国大会 2013年9月21日（土）11:10-12:30
一般研究発表１（ポスター発表）P1a-1-304-10
小池 翔太（千葉大学大学院教育学研究科）

2. はじめに１
知識基盤社会における21世紀型スキルの提唱
2011年度にアメリカの小学校に入学した子の65%は、
大学卒業時に今は存在していない職業に就く(Cathy N. Davidson,2011)
批判的
思考力
問題解決
能力
コミュニケ
ーション力
コラボレー
ション力
想像力
21世紀型スキル
(ATC21s)
ICTを使うなど
様々な実践事例がなど

3. はじめに１
「キャリア教育」の教員養成教育上の課題→仮説
2011年度にアメリカの小学校に入学した子の65%は、
大学卒業時に今は存在していない職業に就く
？ 学校教育にて進められている
「キャリア教育」も、未来の職業の
変化を直接理解して行うことが
十分でないのでは？
仮説
『教員養成学部における「キャリア教育」は、デジタル時代の働き方の変化を踏まえて、
「キャリア教育」の指導がどうあるべきかの前提での議論が行われていない』小池・藤川・福嶋(2012)
http://ace-npo.org/fujikawa-lab/file/pdf/bulletin/2013/koike_fukushima_fujikawa.pdf
？
cf). 小学校学習指導要領解説
社会編 第2節
1.目標(2)「情報化の進展」

4. はじめに１
情報社会と働き方の関係を、子どもに認識させる必要性
→授業として成立可能であるかについては，慎重な検討が必要
しかし、現在実存する最新のICTを活用しながら、
職業と情報社会の影響との関係を理解させることは、
「21世紀型スキル」を育成する場合も、
「キャリア教育」の場合もいずれも重要であろう
情報社会によって、働き方や職種の変化がかつてなく激しい
＝「答えが多様で正答の定まらない問い」
（小学校学習指導要領解説-総合的な学習の時間 より
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2009/06/16/1234931_013.pdf ）

5. 授業プログラムの開発2
①児童の実態∼「キャリア教育」効果測定の指標を用いて
■対象：A小学校6年生（39名3学級）
→各学級にて筆者が授業展開
◎NPO法人南大阪地域大学コンソーシ
アム「キャリア教育」効果測定の指標
をもとに、質問紙調査を実施
（21測定項目、4件法）
左記：上位3項目と下位3項目の結果
（n=115，α=.92，2013年4月実施）
中学受験の
検討が影響？
学級開きすぐ
が影響？

6. 授業プログラムの開発2
②単元構成と授業の内容、3つの手立ての工夫
Point1: 映像教材を用いて情報
社会の現実的な働く様子を提示
→将来展望の見直し
Point2: ブログ記事を想定した
内容を制作し，体験させる
→情報発信力育成
Point3: PC操作方法は教え合い
で解決させる
→人間関係力育成

7. 授業プログラムの実施と考察３
①情報社会による働き方などの変化に対する反応
【児童の反応】
「アメリカは最先端だから、(予想データは)日本とは違うのでは」
「自分の将来の夢が無くなってしまうのは悲しい」
…等の否定的な感想が一部で見られた
【教師の対応】
上記の意見を尊重しつつ、
「情報社会ではスマートフォン等、世界との垣根が越えている」
「変化の激しい情報社会の担い手が自分たちと考えよう」
…等の意見を、授業通信としてやり取りを全体にも提示

8. 授業プログラムの実施と考察３
②ブログ記事執筆の成果と課題
【児童の反応】
一部の児童がテーマ選択に悩み続けていたが，全員が個人の関心に
基づいた数々のテーマの記事が完成した。
ただし実際にブログとして公開するかについては，引用部分が記事
の大半を占めている等の一定の課題がみられ，検討が必要となった。
→机間巡視・コメント機能での教師対子供とのやり取りに限界が

9. 授業プログラムの実施と考察３
②ブログ記事執筆の成果と課題
【ヘッダに「基本ワザ」の追加】
より良いブログ記事が執筆できるようなチェックリストを設定
＜キャリアプロジェクト－研究報告書「基本ワザ」－＞
【★★★★★】□①「情報社会」と「最新のキャリア（お仕事）」との関係が書かれているか？
□②自分の考えと引用が区別されているか？ □③引用の文章が長すぎないか？
□④見出しがあるか？
□⑤引用したホームページのアドレス，本の題名・出版年が書かれているか？
□⑥『約15年後に新しい仕事が70%以上』という予想に対する，自分の考えを書いたか？
□⑦「未来の新しい仕事」に対して，いまの自分にどんなことが必要かを書いたか？
【★★★★】□①一文が長すぎないか？ □②実際にはたらく人に話を聞いて，紹介できたか？
□③文字をうまく強調できているか？（太字・色・ななめ文字・表など）
□④写真や図がうまく使われているか？（ホームページの画像は，アドレスを引用）
【★★★】□①情報社会のメリットとデメリットを，自分なりに考えて書けているか？
□②専門的・難しい言葉は，その意味を説明できているか？
【★★】□①見ている人が，「これってはじめて知った！」と発見できる内容か？
□②見ている人が，「これっておもしろい！」と感じられる内容か？

10. 授業プログラムの実施と考察３
②ブログ記事執筆の成果と課題
【「基本ワザ」が反映された記事】
引用URLを明確にして、
ワープロ文書で作文を書く
必要最小限の
コピー&ペーストで、
引用と考えを分けられる
情報化社会のデメリ
ットを踏まえた記述

11. 授業プログラムの実施と考察３
③ICT利用と教師の留意点
◎フィルタリングの強度とモニタリングへの留意の必要性が明らかに
→児童にとってブログ記事制作に有益と思われるページにも，コメン
ト欄や広告欄等で，有害と思われるものがいくつかあった。
◎上記の場合は，テキストのみ抜粋したデータを提示した。
教師の即興的対応、必要に応じたアプリケーションが必要なため，
本実践の一般化の際は検討が必要である。
【信頼性の少ないページ、有害サイトへの留意】
【教師の対応】

12. おわりに４
成果と今後の課題
◎小学生を対象に、情報社会における未来の職業の変化を理解させる
本授業プログラムが成立可能であることが示唆された
◎児童が執筆したブログ記事の量的分析の必要性
→情報社会へのメリット・デメリット、感想にあたる記述の内容
◎本実践を通した「21世紀型スキル」「キャリア教育」に関する
効果の測定 → プログラムの有効性を探るための詳細な分析
【成果】
【課題】

13. おわりに４
参考・引用文献
・小池翔太・福嶋俊・藤川大祐（2013）「デジタル時代の働き方に着
目した教員養成学部における「キャリア教育」の試み」，授業実践開
発研究，第6巻，pp.7-16
http://ace-npo.org/fujikawa-lab/file/pdf/bulletin/2013/koike_fukushima_fujikawa.pdf
・特定非営利活動法人南大阪地域大学コンソーシアム「キャリア教育
プログラムの効果測定」
http://www.osaka-unicon.org/career/effect_guide.html
（2013年7月22日確認）
・Cathy N. Davidson（2011）『Education Needs a Digital-Age Upgrade』
The NewYork Times, 2011.8.7
【お問合せ】千葉大学大学院教育学研究科 修士課程
小池 翔太（こいけ しょうた） koike＠ace-npo.org