@dc1394
MBK擬ポテンシャルの作成法
擬ポテンシャルとは何か
 金属や固体において、イオン核の領域と、核の外側
の伝導電子は近似的に区別することができる。
 核の外側の伝導電子は近似的に平面波の形をして
いる。
 従って、イオン核の効果をある有効ポテンシャルで置
き換えると、扱いやすくなる。
 この有効ポテンシャルは、核の外側では、現実のイオ
ン核が与えるのと同じ波動関数を与える。
 この擬ポテンシャルに関する結論は非常に多くの経
験事実とまた理論的な論証によって支持されている。
TM型擬ポテンシャルの問題点
 現在は、広くTM型擬ポテンシャルが使用されている。
 TM型擬ポテンシャルは、次のような特徴を持っている。
 ノルム保存型擬ポテンシャルであり、カットオフ半径
内にある価電子が作る静電的ポテンシャルを正しく
与えることができる。
 また原子の擬波動関数の対数微分と真の波動関数
の対数微分の値及びそのエネルギー依存性がエネ
ルギーの一次まで一致する。
 しかし、エネルギーの広い領域で、散乱特性を再現
することができない。また、単一の擬ポテンシャルで、
価電子帯および伝導帯の両者の正確な記述は困難
である。
 N.Troullier and J.L.Martins, Phys. Rev. B 43, 1993(1991).
MBK擬ポテンシャルの特長
 Vanderbiltのノルム保存型擬ポテンシャル(MBK擬
ポテンシャル)は、他のノルム保存型擬ポテン
シャル(HSC型、Hamannによるもの、TM型など)と
比べても、次のような長所がある。
 エネルギーの広い領域で、散乱特性を再現する。
たとえば、単一の擬ポテンシャルで、価電子帯お
よび伝導帯の両者の正確な記述が可能。
 最終的な形はTM型擬ポテンシャルに近く、使い
やすい(既存のコードの大幅な書き換えが不必
要)。
 I. Morrison, D. M. Bylander and L. Kleinman, Phys. Rev. B 47, 6728(1993).
 D.R.Hamann, M.Schluter and C.Chiang, Phys. Rev. Lett. 43, 1494(1979).
 D.R.Hamann, Phys. Rev. B 40, 2980(1989).
MBK擬ポテンシャルの特徴
 MBK擬ポテンシャルは非局所ポテンシャルとして次式で与えられる。
 このVNLの表式をとると、参照エネルギー近傍での全電子計算の散乱特
性が再現されることが保証される。
 擬ポテンシャルの参照エネルギーとして複数の選択が可能(TM型との
大きな相違点)。
 Vanderbiltによると、
 であるが、擬波動関数φ(r)は一般化ノルム保存条件
 を満たさなくてはならない。
 David Vanderbilt, Phys. Rev. B 41, 7892(1990).
一般化ノルム保存条件とカットオフ半
径での接続条件
 カットオフ半径内の擬波動関数φ(r)と全電子波動
関数ψ(r)の一般化ノルム保存条件
 カットオフ半径で、擬波動関数と原子の波動関数
が滑らかに接続する条件(対数微分の一致の条
件と、擬ポテンシャルによるエネルギー固有値と
全電子計算の原子のエネルギー固有値の一致の
条件を含む)→カットオフ半径rcでの0次から4次
までの微係数の一致の条件
カットオフ半径の外側で全電子計算
と一致する条件
 カットオフ半径rcより外側で、擬ポテンシャルとそ
の擬波動関数φ(r)が、全電子ポテンシャルと全電
子波動関数ψ(r)のそれぞれと一致する条件
 以上三つの条件を満たすように、擬波動関数φ(r)
を決定する。ここで、Φ(r)は何らかの関数である。
擬波動関数をいかに展開するか
 ここで、擬波動関数Φ(r)をどんな関数で展開するかが
問題である。
 ここで、 Troullier-Martinsの擬波動関数を思い出せば、
 であるので、TM擬波動関数は一般化ノルム保存条件
以外の条件をすべて満たし、なおかつ解析的に形が
求まるので非常に便利である。
 従って、φ(r)は、TM擬波動関数に何らかの関数を加え
る形で作成する。
 この関数は、積分が解析的に求まりカットオフ半径内
で完全系を張る関数、例えば球Bessel関数がよい。
擬波動関数の展開
 従って、φ(r)はTM擬波動関数と球Bessel関数を用
いて、以下のようにして展開できる。
 ここで、φTM:TM擬波動関数、jn:n次の球Bessel関数、
rc:カットオフ半径、xk:n次の球Bessel関数のk番目の
零点、である。
 そして、 ψ(r)とφ(r)の一般化ノルム保存条件と、
カットオフ半径rcにおける0次から4次までの微係
数の一致の条件を満たすような係数cを求めれば、
擬波動関数φ(r)が求まる。
擬ポテンシャルV’locの性質
 この擬波動関数φを用いると、ハミルトニアンHは以下
のように書ける。
 ここで、T:運動エネルギー演算子、V’loc:スクリーニング
された局所ポテンシャル、VNL:非局所擬ポテンシャル、
である。ここで、V’locは以下の性質を満たすように作
成する。
 ただし、Vloc:アンスクリーニングされた局所ポテンシャ
ル、VH:ハートリーポテンシャル、VXC:交換相関ポテン
シャル、ρv:適用された系における価電子の電子密度、
ρc:内殻電子の電子密度、VAE:全電子ポテンシャル、で
ある。
MBK擬ポテンシャルの形式
 ここで、行列Bは、
 を満たすが、一般化ノルム保存条件のために上式の
右辺は0になる。今Bは実行列なので、結局Bij=Bjiとな
る。つまりBは実対称行列である。従って、Bは対角化
が可能であり、
 となる。これは、Blochlプロジェクターを用いたTM型擬
ポテンシャルと全く同じ形式であり、この部分のソー
スコードは、ノルム保存型擬ポテンシャルを用いる第
一原理計算プログラムを書き換える必要がないこと
がわかる。

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