More Related Content More from KazuhitoKitamura More from KazuhitoKitamura (20) 20190626佐賀大学大学院キャリアデザイン特論7. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
● 右の国の特産品は牛肉、
左の国は車
● 牛1頭:札束1冊、
車1台:札束2冊の取引
7
買いたくても
買えない売りたくても
売れない
期末3-期首2
=+1(黒字)
期末1-期首2
=-1(赤字)
Can I ask a question?
経営でも貿易でも、一般的にはそう考えら
れがちですが、皆さんはどう思いますか?
黒字は“よいこと”、赤字は“悪いこと”?
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8. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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R² = 0.5104
0%
10%
20%
30%
40%
-30% -20% -10% 0% 10% 20%
高校生県外就職率
移出超過・不突合/名目GDP
各県の移出超過と高校生の県外就職率(1999年)
出所)「県民経済計算」「学校基本調査」
佐賀県
人は稼げないところから稼げるところへ
地方は都市に、一方的に“依存”してきた?
8
R² = 0.4124
5%
10%
15%
20%
25%
-30% -20% -10% 0% 10% 20%
一般政府経常移転/可処分所得
(公的所得移転によるいわば「補填」)
移出超過・不突合/名目GDP
(いわば民間取引における「収支尻」)
各県の移出超過と移転所得(1999年)
出所)内閣府「県民経済計算」
佐賀県
稼げないところには財政移転で補填
地方 都市
生産要素:ヒト=余剰労働力、カネ=家計の資金余剰
成長の果実の再分配
(都市の供給過剰に対する)移出先市場の提供
重点投入で
効率的に成長
(工業化社会の論理)
9. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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なぜ、アメリカは世界の“市場”&“警察官”に?
9
-2.0%
-1.5%
-1.0%
-0.5%
0.0%
0.5%
1.0%
1.5%
80 85 90 95 00 05 10 15
各国・経済圏の経常収支(名目:USドル、GDPの世界計に対する比)
日本 アメリカ ユーロ圏 OECD(他を除く) 中国 BRICs&G20 NIEs&ASEAN OPEC その他
出所)IMF「World Economic Outlook」
アメリカが 市場を提供しながら…
米ドルの外貨準備に伴う米国債需要を背景に
y = 0.3364x + 8.773
R² = 0.7503
12.2
12.4
12.6
12.8
13.0
13.2
13.4
10.0 10.5 11.0 11.5 12.0 12.5 13.0 13.5
ln(アメリカの国防支出)
ln(日本・NIES・ASEAN・中国の経常収支)
アジアの経常収支とアメリカの国防支出
(ドルベース:対数変換値)
83~90年
91~00年
01~12年
出所)IMF「World Economic Outlook」(Apr.2014)、OECD「OECDstat.」(2014)
※ なお、名目値のため規模の問題があることから、双方を対数変換している
日本
アジアNIEs ASEAN
中国
その“見返り”に
米の財政支出や
経常赤字を
ファイナンス?
米の赤字縮小
ユーロ圏の
黒字転換
13. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 13
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医療・福祉
産業・経済
財政
教育・子育て
交通
人口
Can I ask a question?
都市と地方の間でのヒトとカネをめぐる諸々が変わっていく中でも、
それを踏まえた成長モデルを見いだせていないことが大きな課題か
もしれません。
佐賀県の課題、どんなものが浮かびますか?
15. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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R² = 0.4124
5%
10%
15%
20%
25%
-30% -20% -10% 0% 10% 20%
一般政府経常移転/可処分所得
(公的所得移転によるいわば「補填」)
移出超過・不突合/名目GDP
(いわば民間取引における「収支尻」)
各県の移出超過と移転所得(1999年)
出所)内閣府「県民経済計算」
佐賀県
R² = 0.5104
0%
10%
20%
30%
40%
-30% -20% -10% 0% 10% 20%
高校生県外就職率
移出超過・不突合/名目GDP
各県の移出超過と高校生の県外就職率(1999年)
出所)「県民経済計算」「学校基本調査」
佐賀県
(再掲)(再掲)
まさに“持続可能性”の問題
15
-0.8
-0.6
-0.4
-0.2
95 00 05 10 15
経常移転×移出超過 県外就職×移出超過
しかし、地域間の再分配関係は希薄化人は相変わらず都市部へ
地方 都市
ヒト、カネ(生産要素)
成長の果実の再分配
つまり…
R² = 0.4124
R² = 0.1599
5%
10%
15%
20%
25%
-30% -20% -10% 0% 10% 20%
一般政府経常移転/可処分所得
(公的所得移転によるいわば「補填」)
移出超過・不突合/名目GDP
(いわば民間取引における「収支尻」)
各県の移出超過と移転所得
1999年
2015年
出所)内閣府「県民経済計算」
佐賀県
R² = 0.5104
R² = 0.4468
0%
10%
20%
30%
40%
-30% -20% -10% 0% 10% 20%
高校生県外就職率
移出超過・不突合/名目GDP
各県の移出超過と高校生の県外就職率
1999年
2015年
出所)「県民経済計算」「学校基本調査」
佐賀県
16. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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ましてや佐賀は“人材流出県”
16
y = -0.174x + 0.5922
R² = 0.4723
(外れ値の東京、
大阪除く)
0%
10%
20%
30%
40%
1.00 1.50 2.00 2.50 3.00
県外就職率(H30.3)
高卒求人倍率(H30.3:千円)
各県の高卒求人倍率と県外就職率
佐賀県
y = -0.0105x + 1.9063
R² = 0.4578
0%
10%
20%
30%
40%
145 150 155 160 165 170 175
県外就職率(H30.3)
高卒初任給(H30.6:千円)
各県の高卒初任給と県外就職率
佐賀県
0%
20%
40%
60%
80%
和
歌
山
奈
良
島
根
鳥
取
茨
城
佐
賀
香
川
滋
賀
富
山
長
野
三
重
福
島
岐
阜
山
形
高
知
秋
田
栃
木
山
口
宮
崎
山
梨
静
岡
埼
玉
岩
手
大
分
千
葉
福
井
群
馬
長
崎
愛
媛
新
潟
鹿
児
島
徳
島
神
奈
川
青
森
岡
山
熊
本
兵
庫
石
川
京
都
広
島
沖
縄
大
阪
宮
城
東
京
福
岡
北
海
道
愛
知
高校卒業後の県外進学率(H30.3)
出所)文部科学省「学校基本調査」
進学・就職ともに流出率上位なのは佐賀と奈良だけ! 背景は賃金&就業機会
出所)文科省「学校基本調査」、厚労省「賃金構造基本統計」、
総務省「経済センサス」
0%
10%
20%
30%
40%
青
森
鹿
児
島
宮
崎
佐
賀
熊
本
奈
良
長
崎
高
知
岩
手
秋
田
埼
玉
沖
縄
島
根
大
分
和
歌
山
徳
島
岐
阜
山
形
鳥
取
神
奈
川
愛
媛
福
岡
千
葉
栃
木
山
口
福
島
岡
山
宮
城
京
都
兵
庫
三
重
山
梨
香
川
茨
城
広
島
福
井
群
馬
東
京
新
潟
大
阪
長
野
静
岡
石
川
滋
賀
北
海
道
富
山
愛
知
高校卒業後の県外就職率(H30.3)
出所)文部科学省「学校基本調査」
17. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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85
90
95
100
01 06 11 16
佐賀県:一人当たり年間給与
(2001年=100)
産業計
製造業
非製造業 -8%
-6%
-4%
-2%
0%
2%
4%
6%
01 06 11 16
佐賀県:一人当たり年間給与
(前年比寄与度)
製造業
非製造業
産業計
-7.5%
-5.0%
-2.5%
0.0%
2.5%
5.0%
95 00 05 10 15
佐賀県:産業別実質総生産推移(前年比寄与度)
製造:機/金/化 製造:その他 建設業 卸・小売
サービス その他 総生産(実質)
出所)佐賀県「県民経済計算」
85
90
95
100
95 00 05 10 15
総生産及び県民雇用者報酬(1995=100)
佐賀_名目総生産
全県計_名目総生産
佐賀_県民雇用者報酬
全県計_県民雇用者報酬
出所)内閣府「県民経済計算」、佐賀県「県民経済計算」
もちろん、手をこまねいていたわけでは…でも?
17
パイは伸び悩み、分配にも至らずサービス産業の疲弊の一方、製造業が…
水準は高いが、00年代後半の落ち込みも大だが、製造業が伸びた時期、むしろ…
生産と分配
の乖離
生産も
低迷
様々な産業
がリード
主に製造業
がリード
目立った
牽引役が…
25%
30%
35%
40%
45%
50%
95 00 05 10 15
佐賀県:高卒就職者の産業別県外就職率
計 製造業 卸・小売業 サービス業
出所)文科省「学校基本調査」
製造業で
県外就職増
最近はさらに
サービス産業も
出所)厚労省「賃金構造基本統計」
・一人当たり年間給与:毎月決まって払う給与×12月+年間賞与額
・寄与度:全体の一人当たり給与=製造業の給与×労働者数/全体の労働者数+非製造業の… で算定
19. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
目に見えるものが全てとも、真実とも限らない…
観察、洞察、想像等々、当たり前ですが大事なことです。
19
“真の問題”って、案外、隠れてて…
例えば、以下のような経験、ありませんか?
掘り下げてみると、意外なところに問題の根っこがあった
一見、バラバラの問題に見えて実は根っこは同じだった etc.
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24. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 24
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Next
Can I ask a question?
それが何であれ、見る角度次第で…
「世界を変えたいなら、まず自分が変われ」って言葉、ありますが、
たぶん、こういうことなんじゃないかな?
25. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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R² = 0.4124
R² = 0.1599
5%
10%
15%
20%
25%
-30% -20% -10% 0% 10% 20%
一般政府経常移転/可処分所得
(公的所得移転によるいわば「補填」)
移出超過・不突合/名目GDP
(いわば民間取引における「収支尻」)
各県の移出超過と移転所得
1999年
2015年
出所)内閣府「県民経済計算」
佐賀県
「自分の問題」として再定義してみる
25
教委から干されて畑違いの税へ…
さて、どうしたものか?
(再掲)
でも、視点を変えたら…
地方への財政移転の先細り
家計の貯蓄超過の縮小と企業の
資金余剰主体化
という、“自分自身が考える”この
国の経済停滞の根っこにアプロー
チし得るいい機会になるのでは? -15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
94 99 04 09 14
制度部門別貯蓄投資差額(名目GDP比)
家計
対家計民間非営利
非金融法人企業
金融機関
一般政府
海外・不突合
出所)内閣府「国民経済計算」
26. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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新産業創出を旨とするため、例えば「IT ベンチ
ャー」など研究開発やマーケティングが中心
の企業でなければ適用は難しく、地方の企業
にはハードルが高いのも実情である。
このような中、同制度は総合特区や震災復
興にも援用されるようになった。これは、事
業活動を通じて社会的な課題解決を図る、い
わゆる「ソーシャルビジネス」の興隆もあっ
てと考えるが、あくまで地域を限った措置で
ある。
○ 一方、寄附税制では、一昨年、控除対象 NPO
の個別指定が導入され、自治体条例での指定
に基づき、住民税の控除とともに、所得税の
控除対象となる認定 NPO の PST 要件に代わる
取扱いがなされることとなった。
このため、そのいわば「投資版」として、例えば各自治
体が、各々の地域課題を念頭に一定の公益性を認めた社会
的企業への資金拠出者について、エンジェル税制と同様の
措置を講じてはどうかと考える。
○ とりわけ、地方では、人口減や高齢化などを背景に、例
えば買物難民対策や市街地再生、職業能力開発等、多様な
ニーズがある。このような中、本県でも、かねて「県民協
働」を県政運営の基本方針としてきたこともあって、これ
らの課題への民間での取組も見られる。
だが、その形態は NPO に限らず、個人事業者や株式会社
にも渡っていることから、上記の措置を講じれば、ふるさ
と納税などの寄附獲得と同様に、自治体等の制度活用への
取組を促し、資金調達面での課題の軽減が民間による公益
的活動の促進にも資することが期待される。
○ 加えて、このことは、これまでの「地域の需給不均衡を
財政移転がファイナンスする」関係を、民間ベースでの自発的な資金誘導を促し、補うことにもな
る。
その結果、近年、地方の経済的疲弊が「都市にとっての市場の縮小」も招いてきた中では、国内
全体の浮揚に資する面もあると考える。
(95~99年)
y = -1.4723x + 0.2614
R² = 0.6309
(05~09年)
y = -0.8779x + 0.1713
R² = 0.3443
-25%
-20%
-15%
-10%
-5%
0%
5%
10%
15%
20%
25%
5% 10% 15% 20% 25% 30%
(移出超過+所得収支)/名目GDP
政府部門の純経常移転/県民所得
移転収支と移出超過・所得収支
95~99平均 05~09平均
出所)内閣府「県民経済計算」から推計。東京都除く
地域間の需給不均衡と財政移転
都
市
地
方
上記の枠組みを補う も のと し て…
寄附(民間部門の移転収支)や投資( 資本収支) の促進
ヒ ト (労働)・ カ ネ(資本)
財・ サービス( 移出)
域際取引による収支
財政移転等⇒移転収支
両者間には負の相関
産
業
基
盤
の
集
積
・発
達
成
長
の
果
実
と
そ
の
分
配
財
政
移
転
に
よ
る
フ
ァ
イ
ナ
ン
ス
かくして税の畑では、例えば…
26
税制改正に係る国への政策提案 ふるさと納税へのNPO指定寄附を創設
ふるさと納税使途メニューの庁内公募 寄附付き商品の公募
定例の提案活動の中で、税制に係
る独自の提案項目を追加
企業版ふるさと納税や地方消費税の
精算基準など、実現されたものも…
市民公益税制で“解禁”されたNPO
を指定した寄附をいち早く制度化
当時の担当課は渋ってましたが今で
は数億規模、CSO誘致の材料にも!
「寄附付きの政策投票」という観
点から使途を定期的に公募
今回のルール変更でも「返礼ではな
く使途への共感」が言われるように
売上の一部を県に寄付する「応援
商品」を創設し、企業から公募
昨年の全国
団体での講演税制における地域主権改革の推進と
税財源の偏在是正について
総務省
【提案・意見内容】
今般導入された地域決定型地方税制特例措置は、地域の実情に応じた地方税制の確立
へ向けた一歩として一定の評価ができ、今後もなお一層の拡充が必要です。
また、住民サービスの安定的提供には、偏在性が少ない地方税体系の確立とともに、税
源偏在に伴う税収格差是正も必要であり、地方消費税収の清算制度等の改善が不可欠で
す。
さらに、今秋導入予定の地球温暖化対策税について、効果的な排出削減のため、既に対
策に相当の役割を果たし、地域の実情に精通した自治体の創意工夫を促す必要がありま
す。
【具体的な提案事項】
(1) 地域決定型地方税制特例措置の拡充など、地域主権改革を一層推進すること。
(2) 地方消費税の清算基準において、「消費に相当する額」の算定上、現行で4分の1
とされている「人口及び従業員数で按分した額」の割合を高めること。
(3) 法人事業税について、親会社による出資比率が一定水準以上の子会社については、
親・子会社を一体の企業と見なし、分割基準の適用対象に加えること。
(4) 地球温暖化対策税の税収について、地域の創意工夫に基づく温室効果ガスの排出
削減を促すため、自治体へのインセンティブとなるような税収配分を行うこと。
【当県の現状と課題】
<地域決定型地方税制特例措置の拡充などについて>
○ 平成 24 年度には、政策減税などの特例措置の程
度等を、一定範囲内で自治体の条例に委ねる地域決
定型地方税制特例措置が導入され、税制における地
域主権改革の一環として評価している。
○ だが、初年度に対象とされたのは固定資産税関係
2 項目(下水処理、雨水処理)に留まっており、今
後、一層の対象措置拡充等が求められる。
<地方消費税の清算基準の改善について>
○ 地方消費税は課税地と最終消費地の不一致解消
のため、都道府県間で清算されており、現行基準で
はその 3/4 を年間販売額等が占める。
しかし、消費行動の広域化が進む中、供給側の指
標に重きをおく清算方法は適切ではない。
○ このため、一案として昼夜間人口比率を用いて調整
都道府県別昼夜間人口比率(縦軸)と
商業の移出超過比率(横軸)・・・H17
0.85
0.90
0.95
1.00
1.05
1.10
1.15
1.20
-75% -50% -25% 0% 25% 50%
東京
福岡
大阪
埼玉
奈良
佐賀
滋賀
千葉
神奈川
和歌山
兵庫
岐阜
移出超過移入超過
昼間人口
>夜間人口
昼間人口
<夜間人口
※1 移出超過比率=(移出-移入)/生産額
※2 商業には卸売業を含む。
※3 群馬、富山、山梨、和歌山、鳥取の移出超過比率はH12表による。
出所)総務省「国勢調査」、各都道府県「産業連関表」
茨城
愛知
三重
28. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 28
?
Can I ask a question?
普段なら“受け流してしまう”ようなことでも、
ちょっと立ち止まって“考え直してみる”だけで気づきがあることも。
“流される”か、それとも“立ち止まる”か?
Prev.
Next
34. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
Prev.
Next
(参考)官民のタイミングの符合
34
AI・IoT事業
(産業スマート化センター等)
ローカルシェアリングC開設(クラウドソーシング支援)
H23 H24 H25 H26 H27 H28 H30~H29
デジタルコンテンツ
産業育成推進事業
(クリエイターのネットワーク化)
データ&デザイン新市場創出事業
(ITとデータ及びデザインによるB2B市場創出)
デザイン思考普及推進事業
(イノベーションの手法であるデザイン思考による課題解決ワークショップ)
やわらかBiz創出事業
(県内IT企業等による新ビジネスの「共創」と実証支援)
施
策
I
T
企
業
ク
リ
エ
イ
タ
ー
そ
の
他
コミュニティの形成
(佐賀クリエイターズカンファレンス、
C-revo in SAGAなど)
データビジネスへの参入
(福博印刷RyuTsu.JP、佐賀電算、
佐銀コンピュータなど)
AIやIoT、VRなどへの挑戦
(木村情報のワトソン、オプティムのIoT OS、
福博のマゼランブロックス、佐賀電算のRPA等)
民間コワーキング等の開設
(COTOCO215、FabLab.SAGA、
こねくり家、On the Roofなど)
デジハリ佐賀開設(福博印刷)
MIC佐賀開設(マイクロソフト、パソナテック)
クラウドSaga設立(クラウドファンディング支援)
デザイン思考研究所やコンテンツ共創ラボ設立
データサイエンティスト育成
佐
大
官
民
H25~26頃から、
ITをターゲティン
グ産業の一つとし
て、その振興策に
着手
同時期、民間ベー
ス で も ク リ エ イ
ターの活動活発化
や地場ベンダーの
データビジネスへ
の参入など新たな
展開が顕在化
さ ら に は 民 間 コ
ワーキングの開設
やシェアエコ、ク
ラウドファンディ
ングなどの支援団
体も創設
37. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 37
一見、“言われる方が楽”に思えますが…
Can I ask a question?
“与えられた問題”と“見出した問題”、楽しいのは?
「言われて動く」だけだと時間も心も摩耗しますし、モチベーショ
ンも高まらず、成長にもつながりにくいのも事実。
Prev.
Next
40. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 40
Prev.
Next気分転換
勘
人との
付き合い
観察・洞察
会話や
議論
講義や
セミナー
データ
Can I ask a question?
問題を発見する“きっかけ”って何ですか?
私の場合は“データを用いて見えない世界を想像する”
というのがありますが、やり方は他にもいろいろ、あると思います。
43. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 43
これも“まかれた方が楽”かもしれないんですけど…
Can I ask a question?
“長いもの”には、巻かれる方ですか?
“自分や自分の属する組織の常識は間違っているかもしれない”
という、ある種の“畏れ”のようなものが結構、大事かもしれません。
Prev.
Next
46. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 46
Prev.
Next
技術
分析力
ひらめき
人脈
組織力
パートナー運
プレゼン
力
プロモー
ション
Can I ask a question?
ビジネスでも政策でも、最大の“参入障壁”って何?
アイディア、技術レベル、ビジネスモデル、デザイン…
いろいろあると思いますが、大事なのは“泥臭いプロセス”かも?
49. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 49
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“未経験のこと”への抵抗感、ありますか?
誰でも、何事でも、新たなチャレンジには抵抗感、あります。
でも、そういう“場数”をこなすと“耐性”みたいなのも身に付きます。
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52. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 52
東芝、7,000人削減(2018.11)
NEC、2020年まで3,000人削減(2018.1)
富士通、約3,000人削減(2019.3)
みずほFG、2026年までに19,000人分業務削減(2017.10)
三菱UFJ、2023年までに9,500人分の業務削減(2017.11)
三井住友、今後3か年で4,000人分の業務削減(2017.5)
富士ゼロックス、世界で10,000人削減(2018.1)
パイオニア、4,000人削減(2019.4)
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“寄らば大樹”って、これからもそうなの?
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54. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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(参考)世界の株式時価総額
54
企業名 国
1 NTT
2 GE
3 ロイヤルダッチシェル
4 AT&T
5 エクソン
6 コカ・コーラ
7 メルク&Co.
8 フィリップモリス
9 トヨタ自動車
10 日本興業銀行
11 ロシュ
12 富士銀行
13 住友銀行
14 マイクロソフト
15 インテル
日
米
蘭
米
米
米
米
米
日
日
瑞
日
日
米
米
企業名 国
1 エクソンモービル
2 GE
3 マイクロソフト
4 シティグループ
5 BP
6 バンク・オブ・アメリカ
7 ロイヤルダッチシェル
8 ウォルマート
9 トヨタ自動車
10 ガスプロム
11 HSBC
12 P&G
13 ファイザー
14 J&J
15 サウジ基礎産業公社
米
米
米
米
英
米
蘭
米
日
露
英
米
米
米
沙
企業名 国
1 アップル
2 アマゾン
3 マイクロソフト
4 アルファベット(Google)
5 バークシャーハサウェイ
6 フェイスブック
7 アリババHD
8 テンセントHD
9 JPモルガン
10 J&J
11 エクソンモービル
12 ビザ
13 中国工商銀行
14 バンク・オブ・アメリカ
15 ロイヤルダッチシェル
米
米
米
米
米
米
中
中
米
米
米
米
中
米
蘭
出所)1995、2006:Financial Times「The Global 500」、2018:https://www.180.co.jp
1995 2006 2018
57. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方 57
大 多 楽
小 少 苦
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都会の方が土地も人も高く、競争も激しい…のは単なる“結果”
都会と田舎、どちらがビジネス、やりやすい?
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58. 佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
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-8%
-6%
-4%
-2%
0%
2%
4%
95 00 05 10 15
実質GDP成長率(前年比)
佐賀県(1.38%)
福岡県(0.74%)
東京都(0.77%)
大阪府(0.62%)
出所)内閣府「県民経済計算」
※ ( )は2013~15年平均
実質成長率では、佐賀も金融危機や震災
前後を除けば…、
大阪よりはずいぶん堅調
東京や福岡と比しても遜色ない
-0.6%
-0.4%
-0.2%
0.0%
0.2%
0.4%
0.6%
0.8%
1.0%
2.4%
2.6%
2.8%
3.0%
3.2%
3.4%
3.6%
3.8%
95 00 05 10 15
東京都:人口の社会増減(総人口比:%)
転入超過(右目盛)
転入
転出
出所)東京都「人口推計」「住民基本台帳調査」
※ ( )は2013~15年平均
ところが最近は…
58
「東京都の転入超過」が報じられること
が多いものの、
転入者が増えているわけではなく、
転出減に負う面も大きそうだが…
←
金
融
危
機 ←
大
震
災
69. Can I ask a question?
佐賀大学大学院キャリアデザイン特論
“自分の問題”の見つけ方・付き合い方
ただ、それらはあくまで“機会”であって…
69
カギになるのは“自分の問題”=“マイノリティ”であるこ
とや“異端”であることをおそれない
立場や場所、環境は“他人に与えられるもの”ではなく、
“自ら作り出す”べきもの
“自分の問題”へのこだわりの一方、それが“独善”に陥る
ことのないよう、“俯瞰”や“想像”もまた大事
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Editor's Notes 今日の話はこの4点。まず、このカリキュラム全体のテーマであるSDGsについて、あくまで私なりの視点から。次にそのような観点から佐賀の地域課題について、私自身の取組を交えて。そのうえで今回、キャリアデザインの講座でもあるので、こういった職業人人生の中で何を大事にしてきたか、それを踏まえて最後に皆さんへのいくらかの問題提起を。
前半が「社会」や「地域」、対して後半は「個」という視点。 今回のカリキュラムのテーマであるSDGs、日本語で言えば持続可能な開発目標。するとこのSustainable、つまり、持続可能がキーワード。持続可能性というとしばしば浮かぶのが環境や資源。あるいは国際的な視点でみると、他にも途上国開発や人権、保健衛生など。さらにはそうした文脈から、経済や経営についても、例えば持続可能な開発やCSR、ESG投資など言われてもきた。
ただ、どうだろう…確かにごもっともだし、「すべての人達に実践してほしい」との触れ込みだが、どこかヒトゴトやキレイゴトといった受け止め方もあるのでは。 二つ、例をあげたい。一つはわが国の都市と地方。地方交付税や法人税の分配などを巡って東京都などから「地方は依存している」という議論がしばしばあるが、本当にそうだろうか。
このグラフ、点は各都道府県、左のグラフの横軸は移出超過、つまり、県を国と見立てればいわば貿易収支、縦軸は高校生の県外就職率。他方、右のグラフの横軸は左と同じ移出超過、縦軸は政府部門の財政移転で要は補助金や交付税。なお、1999年と古いデータだが、なぜなのかはまた後で。
ご覧のように双方とも負の相関があるが、左は「稼げないところから稼げるところに人が出ていく」といった関係を、右は「よそから稼げないところには稼げるところから財政移転で補填する」、つまり、民の取引の収支尻を財政で補填している関係を示す。これらを見ると確かに、依存と言いたくなるのも分かる。
だが、実はこれには高度成長期以来のわが国の成長モデルが関係している。つまり、ヒトやカネといった生産要素を都市部に集め、重点的に投資することで高成長を実現する、という、まさに工業化社会らしい発想。だから、その成長の果実を地方に再分配し、そのことで都市の供給過剰への市場を提供するとともに生産要素の再生産・再供給にもつなげる、そういう枠組み。
こう考えると、地方だけが都市に一方的に依存しているとは言えない面も。 二つ目は国際経済。このグラフは各国・地域の経常収支を世界のGDP合計に対する割合で示したもの。80年代以降、アメリカは毎年、赤字だが、これは同国が基軸通貨国だから。つまり、貿易決済に必要な外貨準備を多くの国では米ドルで保有しているため、その運用に米国債を購入する。よってアメリカは、「いつも諸外国からお金を貸してもらえる」立場にあり、その結果、「稼ぐ以上に費やす」ことが可能。
そのうえでグラフの上半分の黒字の側をみると、80年代半ば頃からはわが国、次いでNIEsなどアジア新興国、それから90年代にはいると同じアジアでもASEANなど後発国、さらに最近では中国が一定以上の黒字を記録。ちょうどこれは、これらの国の経済成長の時期と符合する。つまり、アメリカの経常収支赤字がこれらの成長のための輸出先市場を提供してきたわけだ。もっとも、最近ではこうしたやり方が金融危機を契機に見直しを迫られつつあり、アメリカの赤字幅が縮小するにつれ、アジアの黒字幅も縮小、これが相互依存という側面の一つ。
また、アメリカも単に気前よくマーケットを提供しているわけではなくて…右のグラフの横軸はわが国や中国、アジア各国などの経常収支黒字、縦軸はアメリカの国防支出。ご覧になってわかるように結構強い正の相関。つまりアメリカも漫然と市場を開放してアジアの成長を促してきたのではなく、そうやってアジア諸国が稼いだ黒字で国防支出をはじめ経常赤字をファイナンスさせてきたわけだ。
わが国ではここ30年ほど、自己責任とか、「がんばった者が報われる社会」とか、ともすれば「がんばった者『さえ』報われればいい」といった論調も。ただ、ここまでの議論を踏まえるとそれがホントに正しいのかは疑問。
自己責任論的なものが台頭してきた背景には、経済学の歴史が深く関係。経済の畑でない人でもアダムスミスの「神の見えざる手」という言葉は知っていると思うが、あれが18世紀。ところが20世紀に入って大恐慌が起こり、世界が戦争に向かっていく一方、経済学の世界でも市場に任せるだけでは失業や貧困は解決しないという、いわゆるケインズ経済学が台頭。それらは1950~60年代の「福祉国家」に行きつくが、その後、オイルショックなども契機に物価と失業率という、ケインズ経済学の下ではキャンセルアウトし得るはずのマクロ指標が双方ともに上昇するというスタグフレーションが慢性化。そこで出てきたのが「やっぱり、市場に任せるべきだ」といういわゆる新古典派経済学。もっとも、これらも例えば「現実的ではない」とか「経済主体はそこまで合理的ではない」とかいろんな異論を呈されてはきたものの、主流派の地位に居続けたわけだけど、10年ほど前にサブプライムローン問題やリーマンショック、ギリシャ危機やユーロ危機といった金融危機へと至り、今、再考を迫られている。
この主流派経済学的な世界観を図で示すとこう。彼らのモデルでは経済主体の最適化行動の下、需要と供給が均衡し、いわゆるパレート最適の意味で効率的な資源配分が実現されるミクロの市場メカニズムをそのままマクロに拡大して捉える。市場に任せておけばなんでもうまくいくので、格差や貧困も自己責任だし、そこから抜け出したければ「生めや増やせや」的に専ら供給側でシャカリキに頑張るしかない、といった立場。
ただ、これまで見た二つの例からしても、均衡・最適化したミクロの市場メカニズムがマクロの隅々まで行き渡っているというのは、あまりにも「ファンタジー」にすぎるんじゃないだろうか。国際経済にしろ、地域経済にしろ、むしろミクロの不均衡がマクロで相殺されると捉えた方が現実の経済は理解しやすい。すると彼らが思うほど市場は万能ではないし、また先ほどの都市と地方の件でも、アメリカとアジアの件でも、実体経済だけでなくお金の動きもまた、実体経済に影響を与えていると考えるのが普通だ。すると経済主体や経済単位の間の関係は、主流派が言うように個々独立したものではなく、むしろ相互依存的なものと捉えるべきだし、このシステムの持続可能性はまさにそうしたプラグマティックな視点を伴ってこそ、見えてくると思う。
※ 現実の経済は(少なくとも短期では)価格調整ではなく数量調整。なぜなら価格には一定の粘着性があるから。開放経済では数量調整の「バッファー」として海外部門が機能。結果、域内需給は均衡しないのが普通。加えて、経済の金融化に伴って、こうした実体経済における需給の不均衡を清算、さらには助長・固定化させる方向に資本フロー(資産取引)が機能する。結果、現象理解にしろ、政策分析にしろ、世の関心は「いかに均衡に導くか」や「いかなる均衡から他のいかなる均衡に転移するか」ではなく、「いかなる不均衡から他のいかなる不均衡に転移するか」であるのが現実。 そのような視点から自分と社会や世界を捉えなおすと、「がんばった者が報われればいい」のではなく、むしろ「情けは人の為ならず」の方がフィットする。いくつか例を挙げると、例えばこういったこと。国や地域といった大きな部分から、自分の会社とか、果ては職業とかに至るまで、「儲かった」と喜んでいるが、その分、他者が割を食っていたら、いずれ自分の首を絞めることにもなるし、ビジネスにしろ何にしろ、そうした視点なくば持続可能な絵は描けない。
市場経済の下では一人勝ちを続けることはできないし、赤字と黒字とか強者と弱者ってのは同じコインの表と裏。だからこそ、「自分だけ」ではなく、「社会や地域、世界」を考えるということが、キレイゴトとかヒトゴトではなくて、自分自身にとっての足場であり、働き、生活していく基盤を維持するためのものという視点が見えてくる。つまり、持続可能性なり、SDGsというテーマは、まさに自分のためにこそ、考える必要がある問題である。 まずは県内の経済社会を象徴する指標を俯瞰してみたい。ここにあるのは総務省の「社会生活統計指標」などから72個、ピックアップしたもの。ただ、それぞれ単位もスケールも違うので、平均と標準偏差で正規化している。また、「小さい方がいい」指標は符号を逆にし、他県より相対的に好ましい場合は値が大きくなる、つまり外側にでるようにしている。
人口、経済、労働、家計、教育、医療、防災・安全等ざっと並べてみたが、特に目立つ指標をピックアップするとこういった感じ。で、これらから言えることとして、こういうことがあるが、このうち特に太字の個所は相互に関連があるかもしれない。例えば、生産性が低いから賃金も低い、結果、長く働いたり、共稼ぎしなきゃいけないとか、雇用基盤がそうなので県外への進学・就職が多いとか、だから結果的に子どもや高齢者など従属人口が多くなる、など。 これは先ほどの図。そのうえで都市と地方との間に、生産要素の拠出と成長の果実の再分配という関係があることは説明したとおり。先ほど言った「問題はつながっている」というのは、おそらくこうした構造を背景にしている。
もともとわが国の成長モデルの下、佐賀のような地方は「人材輩出県」であるがゆえに産業もそう育っておらず、雇用基盤等も充実していない。代わりに、輩出先の成長の果実の再分配を受けることで地域社会が持続できた。ただ、これは90年代頃までの話で、同じデータを最新時点ととるとこう。左のグラフ、つまり高校生の県外就職に代表される人の行き来はそう変わっていないが、右のグラフ、つまり移出超過と財政移転の関係は点がばらついて相関が弱くなっている。
相関係数を時系列でとるとこういうグラフになるが、ここから言えるのはかつてのように地方から都市に生産要素を供給しても、以前のような果実の再分配は期待できない、ということ。言い換えれば、ヒトもカネも出ていく、しかしその見返りはない、では地方には何が残るのか、という、まさに地域社会の持続可能性に関わる問題が、先ほどのいくつかの指標にいわば表層として表れており、すると根っこにあるのは「かつての財政移転に依存する成長モデルではなく、新たな地域社会の成長・発展へのモデルをどう描くか?」という課題である。 この問題が佐賀にとってより重要な理由の一つは、佐賀が顕著な人材流出県だから。高校卒業後の就職や進学に伴う県外への流出率を各県でとるとこうなる…就職と進学の双方ともに流出率が全国上位なのは、47都道府県でも佐賀と奈良だけ。
これらの背景には、賃金水準が低く、就業機会も限られるという問題や、進学については高等教育機関の数が少ないこともあるが、ともあれ他県にもまして深刻な問題。 もちろん、そうした状況を役所も手をこまねいてみていたわけではない。人材流出の抑制には働く場の確保が必要、であれば企業、特に製造業の製造現場の誘致を中心に取り組んできたようだ。
実際、GDPの産業別の推移をみると、90年代はサービス業や地場産業など様々な産業が伸びていたが、2000年代にはこれらは景気悪化の長期化とともに停滞。これを補ったのが機械工業を中心とした製造業、つまり、工場誘致の成果。とはいえ、皮肉なことにこの時期、高校生の産業別の県外就職率をみると、まさに製造業が全体を約10ポイントほど、押し上げている。
背景の一つはおそらく賃金で、この時期、生産面での伸びにもかかわらず、同時期、雇用者報酬は相対的に落ち込んだ。おそらく、これは経済学でいう要素価格均等化、つまり、これらの量産現場は輸出型製造業のサプライチェーンの中にあるので、グローバル化の中での国境を越えた競争を背景に賃金に下押し圧力がかかりやすい、ということによるように思う。 以上、述べてきたとおり、私からみれば、生産要素の供給の見返りに果実の再分配を享受するという成長モデル時代が時代に合わなくなっており、特に人材流出著しい佐賀ではなおのこと、というのが大きな問題意識。
そういったタイミングでこの十数年、教育や財政、産業といった部署に関わってきたが、その中ではこの問題意識を根っこに、自分なりにそれに沿った仕事をしてきた。以下、それぞれご紹介したい。 教育に携わったのは十年ほど前、当時、教育界ではPISAショックがバズワードだった。国際学力調査でわが国があまりいい成績をとれなかったという話だが、背景にあるのは工業化社会から知識社会への変化。
工業化社会とは、たとえて言うと「とにかく作れば売れる」時代。だから問題を解決する力が大事。だがその後、社会の成熟化や飽和、グローバルな市場の統合、ITなどの発達を経て「何を作るべきかすらわからない」時代に。すると問題の解決以前に発見・定義する力が大事、となる。
このような中、昔は先ほどの都市の地方とのかつての成長モデルの中、教育も規格化されたルーティンワーカーの大量養成が大事だったが、今はそれではいけないのではないか、というのが当時の最大のテーマ。 ということで、ご多分に漏れず、現場の教師や大学などと、こうした時代の変化を踏まえた授業開発に取り組んだわけだが…メンバーである現場の教師を観察していて、不思議なことに気づいた。例えば「熱心なのは事実だが、自ら手をあげようとはしない」「何かと言えば教育委員会をはじめ、『権威』や『正解』を求める」「“先生”は間違えることができない=間違っているのは他人で、自分は間違っていない」など。
そんな風景やその背景を考えながら思い至ったのが、「なるほど、児童生徒の問題は、そもそも教師や教育現場自身の問題でもあるんだ」ということ。確かに考えてみれば、教科書や指導要領はPISAショックを経て変わったが、「ナショナルミニマム」という言葉を隠れ蓑に、文科省や教育委員会が学校の箸の上げ下ろしまで口を挟む仕組みや体質は何一つ変わっていない、だったら、そういう中で自発的に考え、行動するということは教師にとって徒労に終わりがちだし、教師がそうなら、児童生徒もまた同様になりかねないよな、と。 PISAショックなり、知識社会における教育という課題について、授業や教育内容以前に教育行政と教育現場の関係性や構造に問題があるのではないか、そうした視点から「脱!上意下達」を旗印に、いくつかの取組を展開。例えば、学校からの提案公募による自由裁量の予算、「指導主事」や「校長」などといった肩書を抜きに各校の課題解決を訪問支援するチームの創設、国や県ではなく自校の課題をエビデンスをもって発見・提起するためのツール、さらには現場の教職からすれば「殿上人」である教育長との交流会など。
3年ほど、関わったが、全てではないものの、「響いた」教職も少なくなかったと思う。 ただ、組織というのは狡猾なもので、異動とともにチームも仕事も解体。当時のDNAを現場なり、教育委員会で引き継ごうとしてくれている教職もいるが、うまくつながっているとは言い難いのも事実。
そういう意味でも、「はしごを外されないようなやり方」というか、学びがあった。 教育委員会で4年目、仕事自体はこれからという時期だったために、税という畑違いへの異動はモチベーションの維持に苦労。ただ、それも考えようで…上のグラフは先ほども示した地方と都市の関係。他方、下のグラフは国内の制度部門別のマクロバランスで、最近でこそ、国の政策論議でも指摘されるようになったが、「本来、借り手であるべき企業部門が資金余剰に転じ、他方、家計の資金余剰が縮小していく中、国内需要のスパイラル的な縮小を招いているのではないか」というもの。
考えようによっては、税の分野ではそこにアプローチし得るいい機会になるのではないか、と。 そのような問題意識から、税務課では例えばこういったことをやった。税制改正に係る国への政策提案で、今でいう企業版ふるさと納税や消費税の精算基準の改正、あるいは、今では数億規模の財源になっているが、ふるさと納税のNPO指定寄附など。
背景にあるのは、財政移転が先細る中、それとは違った都市から地方へのマネーの還流の道筋を作れないか、というもの。 また、その後、異動した新産業課でも次にお話しするIT産業の振興や創業支援などの他、この資金調達の問題にも取り組んだ。問題意識としてあるのは県内の金融市場の寡占化で、佐賀は他と比してトップ行のシェアや規模が他より大きく、これでは金融セクターがなかなか、リスクをとらない。
このため、例えば銀行等を相互に競わせるためのピッチイベントの開催や、クラウドファンディングの支援者側への成功報酬制度、それからふるさと納税を活用した起業家支援など。税と産業、組織もミッションも人員体制も全く違う部署だが、通底する問題に異なった確度からアプローチする、といったような仕事で、割と自分の中では「つながっている」というのが率直なところ。 新産業課なり産業企画課では、IT産業の振興や創業支援などに取り組んでいる。これは先に述べた自分自身の問題意識からすれば、人材の定着・還流の「受け皿」づくりに等しい。「なぜITなのか」というのもこの辺で、先に述べたようにそれまでのような製造業の工場誘致では人の定着につながらないから。実際、皆が皆、工場で働きたいわけではないだろうし。
ただ、IT産業というと一般には都市型産業。実際、人口比の従事者数は東京都が圧倒的に多く、佐賀は後ろから何番目という水準。従事者の5割、付加価値創出額の6割が東京都だが、佐賀は0.1%。この結果、佐賀の場合、県内のIT産業への需要のうち、実に8~9割を県外からの供給に依存。額にすると800億円という、結構大きなマーケット。 だが、過去数年、一つの変化があった。従事者当たりの付加価値創出額、つまり労働生産性は、平成24年の約500万円から平成28年には約630万円まで3割増加。47都道府県中の順位も30位台から10位台へと躍進。
規模が小さい地域なので特殊要因などもあるかもしれないが、それを割り引いても生産性の上昇が示唆するのはビジネスの「質」的な面での変化。 先ほど言った、「ITは都市型産業」というのは概ね、需要側では一定以上のマーケットスケールが必要、供給側では一定数以上のプレイヤーが必要と言ったような理由。ただ、これは「モノは考えよう」の面もあって、市場が小さいなら潜在需要を深堀りすればいいとか、プレイヤーが少なくても密な関係を築ければ勝負できるんじゃないかというのもある。
私たちはこれを「規模のハンディをつながりで乗り越える」と言っているが、先ほど来ご紹介してきたことはそうした成果の一端。 例えばとして、取組の一例をご紹介すると…きっかけになったのはH26~28まで取り組んだデータ&デザイン新市場創出事業。これは先ほどの規模のハンディをつながりで乗り越えるというコンセプトどおりに、エンジニアやクリエイターや職種や業種の垣根を越えて県内企業の課題解決に取り組むことに対して、成功報酬型の補助を行うもので、3年で150件ほどの案件を開拓。
それを契機に、県内のプレイヤー相互の関係も密になり、その後、例えば「5年で2億」のビッグビジネスを目指すやわらかBizや、AIやIoTの利活用を個別マッチングなどで支援するAI・IoT利活用促進事業、さらにはIT関係も含めた人材の採用支援から育成・定着支援までを個別コンサルするさがHRラボなどにつながっている。 実際、ここ数年、企業の動きも活発化。AIやIoTで世界にチャレンジする木村情報やオプティムなどの新興企業、新たな事業領域の開拓を模索する佐賀電算などの中堅・老舗企業、コンテンツやクラウドなどに取り組むとっぺんなどのベンチャー。加えて、MICやデジハリなど、エンジニアやクリエイターのための場も充実。 さて、前半部分は「社会」や「地域」という観点からのご紹介。対して以降、後半部分は「個」という観点から考えてみたい。
まず、先ほどまでご紹介したように、この十年ちょっとの間でも課の単位で6か所、部の単位でも3か所に異動。ただこれは、自分でどうにもできるものではなく、いわば不可抗力。そこだけみると一見、相互に無関係で、また実際、仕事の内容もステークホルダーも3~4年ごとに「転職」しているようなもの。
ただ、その中で何を考え、何のために働くのかは自分次第。私の場合、ここは割と一貫してて、だから部署や周囲の人達が変わったからとて「つながっている」という感覚があるのも事実。自分なりに、冒頭述べた「依存と搾取の成長モデルからの脱却」を問題意識として、「人材」「お金」「産業」という側面からアプローチしてきたといった具合。 自分の場合、問題発見のきっかけになるのは往々にしてデータ。ここには、テクノロジーの変化も関係。以前はデータを活用するとなると専ら、仮設の検証のためだった。これは収集にも分析にも手間やコストがかかったから。
しかし今は、インターネットの発達や各種のツールの充実で、データを手に入れるにも、それを分析するにも以前よりは相当、手間がかからない。なので仮説構築の手前で一旦、データを用いて俯瞰することが多い。考えてみれば人間、誰しも全知全能の神にはなれないのだから、それでも世の中のより広くを俯瞰しようと思ったらデータの力を借りるのは一つの方法だ。 これまでの仕事の中でも、例えば教育委員会ではちょうど、PISAショックもあって全国学力調査が導入されたため、これらが下手に学校の「序列化」など短絡的な使われ方に終始しないよう、いかに活用するかといったことをやった。
あるいは財政や産業の分野でも、前半部分でご説明したようなデータを用いて、「今までの財政構造で大丈夫」とか、「工場さえ誘致すれば若者は地域に残る」などと考えている組織内の人達と議論してきた。役所の場合、年功序列が未だ根強く、結果、「決定権を持つ人達が生きてきた昔の時代背景や世界観に政策判断が左右される」という弊害も小さくない。ロジックや思いではなかなかそれを覆すことは難しくて、するとデータのようなものをうまく使うことは一つの策ではある。 役所に限らず、民間でもある程度の規模になれば「組織の常識は世間の非常識」ということは多々あるし、昨今の企業不祥事などでも明らか。ただ、その組織の中だけを見てみると往々にしてそうなりがちで、すると組織の外にも足場を持つことが重要。
私の場合は恵まれていたんだと思うけど、例えば教育委員会の頃は上意下達的な教育行政に割と批判的な教育職もいたし、あるいは産業セクションではITやベンチャーなど、これまでの産業振興にいわばアンチテーゼを感じている層もいた。組織の中だけを見て絶対視するのではなく、組織の外からも組織を見るということは、自分が「まっとう」であるためには大事で、これは冒頭の持続可能性やSDGsなどにも通じることの一つ。 一例をご紹介したい。どこの役所にも企業誘致を担当するセクションがあるが、これはその事例。固有名詞は出さないが、割とネームバリューのある施設の誘致に当たって、誘致担当部署がその権限や実現可能性もないのに誘致を成功させんがために、誘致対象の企業からもいわば「そそのかされる」ような形で数々の空手形を切ってしまった、ということがあった。
こういう経緯をたどったため、同施設の開設以降は当然、いろいろと行き詰まるわけだけど…結果、先方の「できない要望」を断り、撤退表明を機にその企業とは別の企業による運営体制を構築する、というリカバーをやった。
この例などからも学べるのは、「他を知らない」とその相手を「絶対視」してしまい、「他の選択肢がない」がために相手に「足元を見透かされる」こと。俯瞰するというのは、こういう点、つまり選択肢を常に複数持つという意味でも大事。 参入障壁、いろいろ考え方はあると思うが、大事なことの一つは「泥臭さ」。実際、成功したビジネスでもアーリーアダプターを獲得するために他人がやらないようなドサ回り営業をやって、一定以上のユーザーを作ってローンチした、といった例は多い。この辺、「表に出てこない仕事」なんだが、そうしたプロセスを経ていると、後発がまねをするのはなかなか難しい。
私自身のケースで例をあげると…前半で、過去5~6年、IT産業振興に取り組んだ結果、生産性が改善したという話をしたが、これはその最初の頃。ITの場合、建設などと同じで地方には割と「下請け」が多い。ただ、それでは生産性も処遇もあがらないし、仕事としても魅力的なものにならない、そんなこともあっていわば脱下請けのような問題提起をした。
ただもちろん、最初は企業側はついてこない…今までどおりやっていても、この先何年かは安泰だろうから。そういった中で半年ほど、データや事例を用いて議論を続け、ようやく「やってみてもいい」という声が出てきて半年ほど、フィールドワークをやり、彼らの側の「手ごたえ」を踏まえて予算事業化。 「未経験のことにも臆せず向き合う」「居心地のいい場所ではなく、悪い場所にあえて出向く」というのは成長のために大事なこと。
自分の場合、大学時代は地域経済や産業論などをやっていたが、役所に入ったからとてそういう部署にいくわけではない。ただ、これだけ多くの部署に異動すると、それらそれぞれのドメイン知識はもちろん、仕事を通じてある種の汎用的・普遍的なスキルや知識も身につく。
ざっと例示すると例えばその時々ごとにこういうことがあげられるが、それが結果、自分の今のコアスキルを形作っているのも確か。 先ほどのような汎用的な知識やスキルとともに、その分野ごとのドメイン知識を学ぶのもまた重要。特に行政職の場合、いろんな部署に異動するので、その先々で「行政事務しかできな行政職」と「各分野のドメイン知識を持った技術職や利害関係者」という構図になりやすい。こうした情報の非対称性は相互理解を妨げるし、議論においても主導権を握れないということにもなる。
割り切ってしまえばそれでも給料はもらえるが…ホントに意味のある仕事、例えば先々の分野で先ほど来、触れている自分なりの問題にアプローチしていくには、この非対称性をいかに埋めるか、つまり、自分の側がいかに学ぶかということになってくる。 大きいことが「いいこと」だという人達から出るのは例えばこういう理由。安定している、デカいことができる、成長できる、給料なども充実、といったような。ただホントにそうか。
例えば安定、これは技術もビジネスも変化する中、「昨日の勝者は明日の敗者」と言えるほど目まぐるしい。あるいは「デカいことができる」、これもこれだけ目まぐるしい時代になると、それがかえって調整コストなど足かせになりがち。あるいは成長についても、大きい組織にはそれなりに内部事務もあって、時間の多くを案外、つまらない雑務に振り向けているもの。さらには給料や処遇、これも後でお話しするように、既に組織や国、地域といった枠を超えて個人で決まるようになっていく…最近、ITベンチャーなどが法外な初任給を掲げて人を雇おうとしているのはその一例。 まずデータでみると…経済成長率で見た場合、佐賀はここ数年に限れば東京など都市部と比べてもそうそん色ない。逆に言えば、世の中的には東京一人勝ちみたいなことが言われるが、あのオリンピック特需がある中でも経済パフォーマンスはさほどではないということ。
また次に、最近、「東京都の転入超過」が度々報じられ、東京に人がどんどん集まっているような印象があるが、実際はどうも違うらしい。確かに転入超過は高水準だが、転入者自体はそう増えておらず、むしろ転出減に負う面も。転入については少子化、転出については高齢化なども影響していると思う。これは5年前に電子書籍にまとめたときから言っていることの一つだが、東京にとってのこうした人口の社会移動の変化は、①人の流動性を前提としたイノベーションの機能を脆弱化させ、②流入人口を当て込んだto C系のサービス産業などの基盤にもダメージを与えていくのではないか、というのが気にはなっている。 都会や大手であれば安泰というわけではない、というか、今後はむしろ微妙かもしれない、そう思わせる理由をあげてみたい。
まずは、グローバル化に伴って国境を越えた同一労働同一賃金ともいえる状況に収れんしつつあること。次に技術やビジネスモデルが目まぐるしく変化する中、規模や蓄積がかえって足かせになる例もあること。次にAIや機械学習によって、特に知識労働者が機械に置き換わる可能性も出てきていること。次に情報の非対称性の解消で、権威とされてきたものが相対化してきていること。最後にICTの負の側面として同質化や分断が進み、人が多くても多様性を担保できるとは限らない時代になっていること。
以下、順を追ってご紹介。 まず国境を越えた同一労働同一賃金という話。経済学には要素価格均等化という言葉があるが…国境が存在する世界では、後発国の生産性が高い労働者と、先進国で生産性が低い労働者とでも給料は変わらない、どうにかすると後者の方が高いというのは一般的だった。だが、貿易自由化や企業活動のグローバル化で国境の意味が薄れていくと、水が高いところから低いところに動くよう、双方のピラミッドは収れんしていく。
例えばイギリスのBrexitやアメリカのトランプ現象のようなこともこうしたことが背景だが、すると「都会だから」「大手だから」として条件がいい仕事が保証されるという時代でもなくなっていくわけだ。 次に、蓄積や実績が足かせになりやすいという話。開発経済学では「リープフロッグ型の発展」という言葉があるが、技術やビジネスの変化が目まぐるしくなると、過去の常識や投資回収などが足かせになりやすく、そうした「しがらみ」がないところの方がかえって最先端にアプローチしやすい。
例をあげると…2000年代後半、中国でECが急速に普及したことがあったが(2011⇒2019年で10倍、同時期、わが国は2倍程度)、この一つの背景は同国の消費市場の拡大の一方、もともと商業流通網が未成熟だったことがある。あるいは2000年代後半からインドやアフリカで携帯電話が急速に普及したが(インドは2006年から5~6年で10倍)、これももともと固定回線がなかったから。その他、東南アジアのライドシェアをはじめとするシェアエコ、途上国における国際送金やキャッシュレス決済など、最近は特にこういう現象が目立つ。
すると転じて、下手に蓄積や実績がない方がむしろ新しいことにトライしやすいということもあるわけで、だったら大手や都市部というのはかえって足かせになる面もある。 次に、AIや機械学習がナレッジワーカーを置き換えるという点。テクノロジーが人類史を通じて置き換えてきたものを並べるとおおよそこういう整理ができると思うが、これは知識社会における所得階層に対比できる。そのうえで、かつての技術革新はこのピラミッドの下層を機械に置き換えてきた…これは例えば生産設備や輸送機械などを浮かべればいいだろう。
だが、AIや機械学習が置き換えるのはピラミッドの中~上位層だ。例えばRPAや機械学習で数千人・数万人の人員削減を図るメガバンクだとか、弁護士や会計士などの士業であったり、そのスタッフがAIに置き換わるという話は最近、実例も出てきた。またこの点では、役人も実は他人事ではなく、置き換えやすい職業の一つだと思う。
都会や大手では、こういう職種・業種が割と多い。つまり、田舎や中小に比べると、より多くの人々が機械にとってかわられやすい仕事に従事しているともいえる。 次に、裏付けのない権威やステータスといったものが相対化していくという点。インターネットをはじめ、ICTの発達によって地位や立場に伴う情報の非対称性が解消。その結果、どこでも、だれでも、様々な情報や見方・考え方にアクセスできるようになり、結果、いわば「大本営発表」のようなことが通じなくなった。
最近、随所で出てくる不祥事の類はその一つだし、マネジメントや政治、教育といったものにも変化を迫っている。転じて、例えば「東京」とか「大手企業」といったものも、ただそのブランドだけでは通用しない時代になる、ということ。 最後に、テクノロジーの負の側面として、それが同質化や分断を招くという点。ITの利点として、この3点はしばしば指摘されるところ。このことによって、世界と自分の関係が近くなった、といういい面があるのも事実。
ただこれは、裏を返せば「見たいものだけを見る」「話したい人とだけ話す」「独りよがりでも世界に訴えることができる」となりうるのも事実。つまり、いわゆるエコーチェンバー効果。この3つを重ね合わせると結構な悪循環で、こうしたことと、先の要素価格均等化とが相まって世界各国でのポピュリズムの台頭を招いてきた面も。
これはもちろん、都会であろうが田舎であろうが起こりうることなんだが、都会の場合、なまじ母数が多いがゆえに同質化や分断が起こりやすい面もあるのではないだろうか。逆に田舎の場合、母数が少ないので何かやろうと思えば多様であることや異質であることをある程度、許容しないと数さえ集まらないのも事実。 するとこれからは田舎や中小の方が案外、いけるかもしれない。実際、下手に蓄積がない分、足かせも少ない、AIや機械学習が手軽に試せる、テクノロジーのいわば民主化も進んできた、ICTの利点としての距離や時間の克服も大きい、など。
そして何より、現行システムの矛盾や軋轢が鬱積しており、これは真に革新的なイノベーションへの動機や材料となりうる。実際、歴史をひも解くと、世の中を変えるようなイノベーションがその時々の経済社会におけるどまんなかセンターラインと言えるような立ち位置から出てきたことは案外、多くはない。 最後に、今日の特に後半部分の話をまとめてみたい。つまるところ今の時代、どこでどのような立場で働こうがそう大差なく、むしろどこであれ、何者であれ、「自分にしか見えない問題」を見出し、こだわれるかが大事。
そのためのプロセスとして、例えばこういったフローが考えられるが…
・ 俯瞰するに当たってはデータも大事
・ 常識を疑うために組織の外の声を拾う
・ 前提を覆すには泥臭さも必要だし、それが参入障壁にもなる
・ 仮説を築くには表面ではなく構造を掘り下げることが必要
・ 行動に当たっては常に複数の選択肢を持つ
・ 検証・改善の中では新しいことや居心地の悪い環境に向き合い、学ぶ
といったところ。