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※ 出展明記の上であれば流用・改変等ご自由に
※ PPTファイルがご入用の場合はメール又は
メッセンジャーにてご連絡を
組織の中で“嘘”をつかずに生きるために
役所の組織と仕事のリアルを題材に
佐賀大学大学院キャリアデザイン
平成30年11月7日、14日
佐賀県産業企画課参事 北村和人
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
(93.4~96.3)水産振興課でノリ養殖協業化の立ち上げなど
(96.4~99.3)土木事務所で用地買収
(99.4~00.3)大和総研に派遣研修、時系列予測や構造分析
(00.4~02.3)健康増進課で難病の医療給付など
(02.4~05.3)医務課で救急医療、災害医療、小児医療など
(05.4~09.3)教育庁で学力調査、マネジメント改革など
(09.3~13.3)税務課でふるさと納税、税制提案など
(13.4~16.3)新産業課でIT産業振興や創業支援など
(16.4~18.3)産業人材課で人材確保対策
(18.4~ ) 産業企画課でIT産業振興や創業支援など
とりあえずプロフィール
2
Facebookページ
(仕事)
Facebook
(個人)
Yahoo!ブログ
(個人)
電子書籍
(個人)
ご案内
 海が見える大学に行きたかったので横浜へ…でも実際はゴル
フ場跡地!?
 地域経済のゼミに入った影響で自治体に
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
今回の話題
3
(組織に長く居る人間が、皆さんにお伝えできることとして…)
「組織の中で自分に嘘をつかずに正直に生きる」
をテーマに、
 役所の仕事や風土って、実際はどうなの?
 その中で、あえて愚直に働く意味って何?
 そんなスタンスを組織で貫くには何が大事?
 そして実は時代も、そっち方向なのかも…
といったことを実例やエピソードを交えて紹介
今日の最後に提示する課題について、
「自分ならどう考え、行動するか?」
を考えてきていただき、みんなで意見交換
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
4
以下はあくまで「私から見た風景」です。
事実や物事とは往々にして多面的であり、
同じ事象でも見る角度や立場が異なれば、
違う解釈や意味付けができるということ、
あらかじめお含みおきください。
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
佐賀大学大学院キャリアデザイン
役所の仕事や風土の「リアル」
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
6
突然ですが…
役所の仕事って皆さん、
どう思いますか?
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
どんな仕事でも「面白さ」はある
7
役所の仕事ってクジゴジでしょ?
そういう人もいれば、違う人も…
(統計学的に表現すれば標準偏差が大きい)
 テキストだけのワンペーパーでもアートと思って作ってみる
 日々の出来事のうち、できる限り多くを「材料」にする
 組織と組織の齟齬や隙間にこそ、真の問題がある
 書類仕事の外側にこそ、ホントの仕事がある
スタッフへの投げかけ例
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
The 不夜城…w
8
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
自分の「所業」を振り返ってみる…
9
20代
30代
40代
 水産振興課
 鹿島土木事務所
 大和総研
 健康増進課
 医務課
 教育庁企画経営G
 教育政策課
 税務課
 新産業課
 産業人材課
 産業企画課
とにかく、「人より早く裁く」
「より上位の仕事をする」など
に明け暮れた頃
eg.古くて新しい課題、新採で議会対策…
「ステークホルダーマネジメン
ト」や「組織マネジメント」に
おけるしたたかさを学んだ頃
eg.医師会・医療界、学校と教委…
「マクロ経済と地域経済」や
「地方のハンディと優位性」に
係る問題意識を実践に移した頃
eg. 税制提案、IT産業振興、人材確保…
「面白くなかった」と言えば嘘になるのは事実
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
だが、正直者がバカを見ることも多い
10
やろうがやるまいが、給料も登用
も年功序列で横並び
下手に「寝た子を起こす」と、か
えって疎んじられることも
他方で別の場面では頼られ、「領
分以上の仕事」を割り当てられ…
それでも未だ役所にいるのは、それらを補うに足る
魅力や可能性があるからだろうけど…
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
バカ正直、ワースト3!
11
第2位
第3位
 40歳前後、上司から「もう少し従
順になれば即、昇格させるけど」
 でも、「自分に嘘ついてまで働き
たくないので」ときっぱり断る
 30代半ば、専門職の領分にも仕事
の範囲を広げ、最後は課を新設
 未完了のタイミングで部外に異動
内示、仕事も後任3部署に分割
部の外に同格
で横ずれ異動
引き継いだ3人
は翌年、晴れ
て先んじてご
昇格w
 最近ですが、ある仕事が未完了の
段階で異動、異議申し立て…
 2年を経て、「やっぱ引き継げな
かった」と異例の出戻り人事
実は名ばかり
昇格で残業代
が出なくなり、
実質減収w
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
特に自治体は、省庁とは違って…
12
最近気づいたのは…ほぼ毎年、新たな施策や事業を
立ち上げている人間は希少種らしいこと
省庁縦割りで役職段階も多い中、
熾烈なリソース獲得競争
☞ 隙間や潜在的課題を取りに行く
縦割りとはいえ人事は混合、
役職段階もシンプルで処遇も横並び
☞ 下手に動いて波風立てるよりは…
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
権限と責任の乖離はタダ乗りを生む?
13
実働
窓際別室
奥座敷
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
なので…かつての職員提案
14
事前にしっかり詰めた策を、着実にこなす
①新たなことにトライしやすい
…間接部門の大胆削減、入口規制から出口検証へ など
正解がわかりきっている時代
何が正解かわからない時代
仮説の下でより多くを試し、正解に近づく
 できる人にばかり仕事を集めようとする
… 処遇は横並びなのに、なぜ自分だけ?
 判断が迷走し、リソースも分散する
… チェッ、偉そうに言ってたけど手戻りかい!
 間接部門の肥大化で事業部門が疲弊
… 各々にあれやこれやと、しかも整合もなく
もういい加減、ゼロから見直さないとこの組織って「終わっちまう」んじゃないの?
②稚拙な判断で迷走させない
…「原理原則」の明示、少数精鋭のヘッドクオーター組織
③正直者にバカをみさせない
…登用試験・役職更新制、ブラック情報目安箱 など
④役職層に責任を持たせる
…業務指示と資源配分連動、プロジェクトベース組織 など
組織の構造的課題と「現場の声」 仕事と組織に関する大きな潮流変化
⑤みんなできちんと時流に乗る …IT×データ・デザイン人材の活用、ネットワーク分離方法の再検討
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
考え方は二通り?
15
Aさん=器用なお利口さん Bさん=不器用な正直者
 たぶん偉くなれる
 組織内に敵も少ない
 面白い仕事はできない
 組織を出たら使えない
 割と冷遇されやすい
 組織内に敵が増える
 仕事はたぶん、面白い
 組織の外に人脈や足場
☞ 余計なことしてもバカをみ
るだけなら、「君子危うきに
近寄らず」こそ最上の策
☞ 異論や違和感を呈して上に
嫌われては怖いので、言われ
たことは言われたとおりに
☞ 仕事は所詮、生活の糧以上
でも以下でもないから…
☞ 誰も拾わない「三遊間のゴ
ロ」は、先に拾って好きなよ
うにやった方がいい
☞ エライ人が言うことでも間
違いを通したら、世間様に顔
向けできないでしょ
☞ なんだかんだで人生のかな
りの時間を投下するんだし…
価値観の問題だからどっちでもいいけど、BからみるとAは、「そんなことで、
自分がやってることを家族に胸張って話、できるの?」と思えなくもない…
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
佐賀大学大学院キャリアデザイン
権威に阿ることなかれ
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
17
そういえば、皆さんは…
「ん?先生の言うこと変だな」
って思いながらも、
見過ごしたことありません?
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「正解のない時代」なのは役所も同じ
18
工業化社会 知識社会
かつての… 言われて久しい…
問題は明確なので
その解決が大事
わかりきった答え
を正しくこなす
問題が不明確で、
発見や定義から
正解はわからない
ので試行錯誤
市場の
成熟化
経済の
グローバル化
ICTの
発達
企業でも、例えば「○○をいかに作るか?」から、
「何を?」「なぜ?」が問われる時代へ…
全国各地、似たような街並みや共同店
舗を作っても、消費者は郊外に
特産品開発、アンテナショップ、東京
での商談会…みんな同じことばかり
イベントでも何でも「去年まではこの
やり方でよかったのに…」もしばしば
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
工場誘致は若者を地域に留めたか?
出所)文科省「学校基本調査」、厚労省「賃金構造基本統計」、総務省「経済センサス」
過去十数年、工場誘致で成果…
でも、製造業中心に流出は拡大
真の問題は賃金格差や就業機会、
その背後にある労働生産性
19
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
地方創生レントシーキングモデル?
20
 在京大手などが「ご提案」と称して、提案先名
だけを入れ替えた「横展開」企画を持参
 「こういったことは地元ではできない…」「何
せ東京の会社なんだから…」と採用
 でも成果は上がらず、だからって提案者は結果
にコミットせず、お金だけとって去っていく
それってマーケットで自力で食えないから、地方
創生で地方に流れるカネにたかってるだけじゃん
考えてみれば、どこもかしこも同じ内容の仕事に
なるわけで、独自性も優位性もないし…
第一、各地域の文脈とか人材・企業とかからは浮
いちゃってるわけで、そりゃ根付かないわな
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「いい子」で居たがるからおかしくなる
21
問題も正解も明確
粛々とこなす
効率こそ第一
上意下達の組織
従順なワーカー
規格・画一・一律
そもそも問題の定義を誤ってしまう
問いや答えが間違いでも気づかない
試行錯誤や「余白」の必要を認めない
そのまま当てはめてしまうと…
ホントは…
①フラット化/②異論の喚起/③多様性の許容
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「脱!上意下達」プロジェクト
22
(大儀)
教育はナショナルミニマム
文科省
教育現場
各県教委
 各地の多様な実態との乖離
 異論や違和感の排除
 無力感から思考停止へ
 主体性や当事者意識の喪失
【持ち込んだもの】
自由裁量による提案公
募型の支援事業
“肩書き抜き”での指導
主事による現場支援
トップと現場の教育職
との定期的な交流会
ちなみにH20の一年間、連載された佐賀新聞の「さが子ども白書」に、12月
8日~10日にかけて取り上げられました。
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「伝えた」と「伝わった」の違い
23
伝えた 伝わった
 一方通行
 伝達、アリバイ
 自分のその行動
さえあれば…
 依存ややらされ
 とりあえずその
場限り
 双方向
 共通理解の形成
 相手の行動を促
してこそ…
 主体性や自律性
 再現性、持続可
能性が大事
まっとうな組織であるためには…
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
イノベーションは異論や違和感から
24
異論や違和感は余計事・厄介事
むしろそれらはイノベーションの種
 クレームには潜在的なニーズやウォンツが潜む
 企業もカネを払ってでも集めようとする時代
(クレーム情報の収集でさえビジネスに!)
 組織として「不都合な真実」に向き合う勇気を
企業はインサイトを得ようと必死ですが…
「では役所は?」はご想像にお任せします
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
少
② 供給側でのアプローチ
都市部
プレイヤー 多
地方
○
○ ○
★
★
★
★
★△
△
△ △
△
■
■
■
■
■
■
◇
◇
◇
◇
◇
たくさんいるので
黙っても勝手に
創発が起こる
○
都市部
マーケット 大 小
地方
① 需要側でのアプローチ
規模のハンディをつながりで①
25
 知識産業は都市型産業…①規模の経済性、②自生的創発
 でも地方も、①市場の深掘り、②顔の見える関係を
活かしたコラボで乗り越えられるのでは?
都市と同じ「浅さ」では、
地方だと
市場が成り立たない
でも深堀りすれば
それなりの規模に?
仲介者が
人為的に創発を
促せないか?
★
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
規模のハンディをつながりで②
AI・IoT事業
(産業スマート化センター等)
ローカルシェアリングC開設(クラウドソーシング支援)
H23 H24 H25 H26 H27 H28 H30~H29
デジタルコンテンツ
産業育成推進事業
(クリエイターのネットワーク化)
データ&デザイン新市場創出事業
(ITとデータ及びデザインによるB2B市場創出)
デザイン思考普及推進事業
(イノベーションの手法であるデザイン思考による課題解決ワークショップ)
やわらかBiz創出事業
(県内IT企業等による新ビジネスの「共創」と実証支援)
施
策
I
T
企
業
ク
リ
エ
イ
タ
ー
そ
の
他
コミュニティの形成
(佐賀クリエイターズカンファレンス、
C-revo in SAGAなど)
データビジネスへの参入
(福博印刷RyuTsu.JP、佐賀電算、
佐銀コンピュータなど)
AIやIoT、VRなどへの挑戦
(木村情報のワトソン、オプティムのIoT OS、
福博のマゼランブロックス、佐賀電算のRPA等)
民間コワーキング等の開設
(COTOCO215、FabLab.SAGA、
こねくり家、On the Roofなど)
デジハリ佐賀開設(福博印刷)
MIC佐賀開設(マイクロソフト、パソナテック)
クラウドSaga設立(クラウドファンディング支援)
デザイン思考研究所やコンテンツ共創ラボ設立
データサイエンティスト育成
佐
大
官
民
26
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「乗り越えた?」だろうか…
27
従事者数は
やや増、だが
未だ少ない
労働生産性は
大幅改善、
今や福岡並み
MICやデジハリも
オープン!
県内企業もAI・IoTなどで
全国や世界にチャレンジ!
地場SIerも
ソリューションビジネスを
出所)経済センサス活動調査(H24、H28)…中分類の「情報サービス業」及び「インターネット付随サービス業」の合計
過去4年間で労働生産性は大きく改善し、ほぼ福岡並みに
背景は、地元企業のビジネス高度化や企業・施設の誘致・開設
オプティム
木村情報技術 デジハリ佐賀
MIC佐賀 佐賀電算センター
福博印刷
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
AIなどに取り組む県内企業①
28
木村情報技術株式会社 株式会社オプティム
 H17創業、H28にワトソンの
パートナーシップ国内第一号
 自動応答ソリューション:
コールセンター、社内FAQ
 HRテック:AI採用、佐賀大学
等とのAI-Campus
 組織内のダークデータを活用
したAI-Switch
 H12創業、H27に農業ICTで県
と協定、H28にIoT Cloud OS
 ドローンや画像認識、スマー
トグラス等を活用したスマー
ト農業
 コマツとのiConstruction
 在宅医療、遠隔医療、画像診
断など
www.k-idea.jp www.optim.co.jp
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
AIなどに取り組む県内企業②
29
福博印刷株式会社 株式会社佐賀電算センター
 H20頃からデータマイニング
チームRyuTsu.JPを設置し、
統計分析によるマーケ支援
 H30からGoogleの機械学習
APIを活用したAI事業に参入
 デジハリ佐賀も運営、2年で
約80名のWebデザイナー等を
輩出
 H29にデジタルソリューショ
ン部(AI開発室)を設置
 RPA(ソフトウエアロボット
による業務自動化)の開発と
導入支援を展開
 AIによる手書き文字認識・
OCR連携など、自然言語処理
と融合できるAI研究開発
www.ding.co.jp www.sdcns.co.jp
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
佐賀大学大学院キャリアデザイン
自分に嘘をつかないために…
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
31
そういえば、皆さんは…
「偉い人ほど、
なぜか子供じみて見える」
と感じたこと、ありません?
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「正論を張る」のはやはり難しい
32
 (多少、テクニカルなことをやった
ら)「そういう仕事をされては後任者
が引き継げない」という反応
 (縦割り組織で横から横に話を持ち込
んだら)「無視・無反応」「反発して
かえって厄介に」というのが常
 (かといって、なんでも自分でやろう
とすると、当然、)仕事は回らない、
処遇に反映されるわけでもない
あらゆる組織の類には…
基本、「現状維持バイアス」が働く!
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
仕事は認めても、人事ではしごを外す
33
 「脱!上意下達」プロジェクト、4年目に新聞にも
連載され、教育政策課という課を新設し、「さて、
これから本格的に…」の矢先に異動
 プロジェクトに従事していた教職も他課や学校に
異動、聞くところではその後、反動で教委上層部
による上意下達色がより強まったのだとか…
 IT産業振興や創業支援、「規模のハンディを…」と
いう新たな路線で枠組みを構築、企業等からの期
待も高まってこれから、という時期に異動
 その後、ステークホルダーマネジメントの不十分
さなどから行き詰まりかけ、結果、行政職にして
は異例の2年で出戻り人事
教委
↓
税務
「人事って、やっぱすげえし怖いわ…」と
新産業
↓
産業人材
↓
産業企画
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
・・・・・・・・・・・・伏魔殿?
34
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
拠り所①:組織の外の足場
35
 組織の常識は世間の非常識
 偉くなるほど現場から遠くなり、
不都合な真実が上がってこない
 役所の究極のミッションは役所が
なくても回る世の中を作ること
有効な対処法は…
属する組織の外に多様な足場を持つこと
 フィルターを介さない率直な声や情報を入手でき、
自分の「常識」が歪んでいないか検証できる
 自分よりその世界に長くコミットする蓋然性が高い
人達に、DNAを引き継ぐことができる
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「退行」と「相対化」
36
日ごろ
目にする
症候群
「改革派」が
ウリだった政治家が、
いつの間にか
守旧派の最前線に…
「この人、わかってる」
と思えた官僚が、
いつの間にか
権威主義的な官僚に…
「現場重視」を
唱えていた経営者に、
いつの間にか
トップダウンが目立ち…
「人物」だと
思っていた人材に、
いつの間にか
子どもじみた発言が…
 周囲をイエスマンで固めた挙句、不都合な情報が
上がらなくなって周りもみえなくなった
 「現場」や「真実」を自ら探求・推察することを
忘れ、目の前の居心地のよさが全てと勘違いした
 地位やポストを守ることが目的になってしまった
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
実際、役所の最大の武器は等距離外交
37
直接、ビジネスができないこと
民間にとって役所は、
規制当局だったり、支援者だったり
するけど「競争相手」にはならない
 ライバル社同士とイーブンに付き合える
 少なくとも入口ではじかれることは少ない
 なので多方面の情報が入るし、結果、世の
中を俯瞰できる
なので、どこか特定の一社と独占的に付き合うのは、役所の最
大の武器を放棄しているに等しい…
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
シード案件の資金調達支援
38
クラファン成功報酬
(H27~)
金融機関ピッチ
(H27~)
 ファンドレイザー(案件の発掘、組
成、調達支援を行う者)とオープン
かつイーブンに協定締結希望を公募
 県内産業系の案件について、調達成
功額の10%を負担金として成功報酬
 現時点での協定締結者は3者
• クラウドSaga(佐賀共栄銀行等)
• 佐賀銀行
• クラウドファンディング総研
 創業や経営革新などで資金調達を希
望する企業が、県内・外の金融機関
や投資家等が一堂に会する場でピッ
チ(ショートプレゼン)
 イベント後、交流会等で投融資を行
う意向がある金融機関が、企業と個
別に折衝
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
産業スマート化センター
39
と のハブ
体験・相談
人材育成
交流・マッチング
AIで世界を変える
こんなビジネスを
やりたいんだ! へえ、なかなか
面白いアイディア
もってるなあ…
このIoTデバイス、
面白いよ…ほら、
こうやって動かすと…
こっちのAIアプリも
すごいんだから!
え、御社にはそんな
ソリューションも…
ええ、だから組めま
せんかね?
今度、この部分に
画像認識を使い
たいんですが…
ああ、だったら
こういう企業が
ありますよ!
●県内企業(22社)
アイティーインペル、ASUKARU、ウェア
サーブ、オプティム、木村情報技術、五誠
機械産業、佐賀IDC、佐賀銀行、スチーム
シップ、ソフトウェア協同組合、佐賀電算
センター、佐銀コンピュータサービス、ド
コモCS九州佐賀支店、とっぺん、西日本
電信電話佐賀支店、 FabLab Saga、福博
印刷、PORTO、ミナデ、リコージャパン
佐賀支社、ローカルメディアラボ
●国内企業(27社)
ITコーディネータ協会、アールテクニカ、
インフォテリア、ウェッブアイ、エス
キュービズム、NTTドコモ九州支社、
GAUSS、キャリアバンク、Qtnet、グルー
ヴノーツ、KDDIまとめてオフィス西日本、
コアコンセプト・テクノロジー、さくらイ
ンターネット、サンビット、Job-Hub、セ
ゾン情報システムズ、双日九州、ソフトバ
ンク、デロイトトーマツベンチャーサポー
ト、凸版印刷九州、ナレッジネットワーク、
中小企業情報化協議会、NEC、パソナテッ
ク、ビジップ、BizteX、Braveridge
●グローバル企業(4社)
ダッソー・システムズ、日本アイ・ビー・
エム、日本マイクロソフト、PTCジャパン
●海外企業(3社)
Exploratory,Inc、キーウィテクノロジー、
remote.it,inc
2018.10 工業技術センターにオープン!
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「座組み力」の三原則
40
1
特定のところ“だけ”に依存せず、常にヘッジ
をかけておく
☞ Aが潰れてもB、Aが靡かないならBを材料に…
2
オープンイノベーション的な感覚をもった人
間をコアに据える
☞ 我田引水に走るプレイヤーには支持も集まらない
3
ソーシャルグラフを「切り替える」のではな
く、「積み重ねて」いく
☞ あるところでのコネクションが、数年後に別のとこ
ろで生きる可能性は少なくない
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
拠り所②:エビデンス
41
 まっとうな議論には、思想信条を
超えた客観的根拠が不可欠
 誰しも全知全能の神にはなれない
以上、俯瞰のための道具が必要
 収集・分析のコストが飛躍的に減
有効な対処法は…
データをはじめ、事実根拠を用いること
 個々人の主観やバイアスを超えた共通の言語や材料
に基づく議論が可能になる
 データや事実の背後への「想像」を通じて、思い込
みを超えた共通理解が形成できる
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
愛着があれば人は残るのか?
 Before EBPM……「体験」「愛着」など感覚的な議論
 After EBPM…「賃金」「就業機会」など科学的な議論
Before
 地場企業を知らないからだ、
就業体験の充実を!
 地元に愛着がないからだめ
だ、郷土学習の推進を!
定数項
競争力 受け皿と需給バランス 地域間関係
労働生産性
(百万円)
有効
求人倍率
高卒就職
率(%)
3年生の工業
科割合(%)
機械・化学
割合(%)
高卒就職流
入率(%)
県外就業割合
(%)
係数 68.45 -11.92 -18.14 0.70 0.99 -0.40 0.31 0.59
t値 4.43*** -3.34*** -3.61*** 2.57** 1.92* -2.34** 3.40*** 3.71***
例:各県高卒就職者の県外就職率 重回帰モデル(修正済R2=0.778、Se=5.608、n=47)
After
 賃金水準と就業機会の格差
の中、どんな施策が可能か
 産業振興策の方向は、地域
間格差解消に寄与しうるか
42
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
これから先、地方には何か残るのか?
43
地域間の再分配関係は希薄化 しかし、人は相変わらず都市へ
2000年代、両者の
相関係数のギャップは拡大
では、地方にはいったい、
「何が残る」のか?
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
脱!人材流出県プロジェクト①
44
人材流出県からの脱却
賃金水準の改善 就業機会の多様化
人を留めること、呼び込むことができ、
自律的で持続可能な経済社会をいかに再構築していくか?
(製造業偏重ではなく)
“やわらかい”
産業の振興
(人材輩出ではなく)
人材の
定着・還流
(財政移転に代わる)
民ベースの
資金誘導
生産
要素
生産
要素
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
脱!人材流出県プロジェクト②
啓発
Web
マッチング
ものづくり人財創造基金事業(ものスゴ)など
さが就活ナビ
合説
さがUターンナビ
県内・外各種(マイナビ、九州・山口、就活ナビ)
ジョブカフェSAGA しごと相談室
インセン
ティブ
ターゲット
産業人材確保
緊急支援事業
(H28.9~)
産業人材還流促進事業(H29~)
企業情報提供
校内企業説明会
メアド収集
UJIターン就職者
への奨励金支給
高度人材ヘッドハン
ティングへの支援
小学生
中学生
大学・短大生など
社会人
(就職) (進学)
高校生
企業(採用側)
採用力向上支援事業(さがHRラボ:H30~)
45
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「検証」と「探索」、二つの使い方
46
定説・通説や事実・事例から仮説を得る
データ等を用いて検証し、立証・普遍化
昔は
データで俯瞰的に探索したうえで、
仮説や洞察(インサイト)を得る
今は
収集にも分析にもコスト
 図書館で借りて、転記して…
 手計算で分析、手書きでグラフ
収集、分析ともにICTで
 Webで安価かつ効率的に入手
 分析も可視化もGUIツールで
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「事実」と向き合う
47
事実は主に、仮説の検証やそのことによる普遍
化・一般化のために…
正解が分からない
orそもそもそんなもの
が存在しない時代に!
事実はむしろ、問題や仮説の発見、定義のため
に用いられるように…
解析的分析手法に加え、デー
タマイニングや機械学習など
探索的分析手法が多様化
例えばMBAのケースメソッド
やイノベーション手法として
のデザイン思考などが焦点化
いずれもイマジネーションとインサイトがカギ!
データなど定量的事実 事例など定性的事実
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
拠り所③:二歩、三歩、先を見通す
48
 現状維持バイアスとセクショナリ
ズムの下では「未来」が置き去り
にされがち
 だが、最初は疎んじられても「当
たった」例が重なるとさすがに…
有効な対処法は…
視野を広げソースを多様化し、兆しを掴む
 大局的な方向感を物事の見方・考え方の基礎に据え
ることで、組織の内輪の論理を相対化できる
 (あと、たぶん…)万が一、クビになっても使える
ものが(きっと)自分には残る(のではないか?)
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
水産
振興
 ノリ養殖の協業化に当たっ
て、ソフト事業による事前
の経営改善プランを組み合
わせたスキームを構築
 数年後、水産庁の
「海面養殖業活性
化事業」として国
の事業に
いくつかの例
49
教委
 学力調査の「可視化ツー
ル」を教育センターと開発
 エビデンスに基づく現場支
援チームを発足
 各県教委から問い
合わせ・無料配布
 その後、国調査で
文科省も開発
税務課
 ふるさと納税にCSO指定寄
付などを導入
 税制提案で企業寄付の税額
控除や消費税の精算改正等
 CSO指定は数年後、
他県が後追い
 税制提案はその後、
国や与党でも…
医務課
 隣県とのドクターヘリの共
同運航体制を構築
 その後、世間もド
クヘリブームに
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
普通に働くより手間も多いけど…
50
組織の中には敵も多いが、組織の外には味方
や支援者も少なくない
(実は役人は、「辞めたらぬれ落ち葉」な人も多いんです…)
データを使っていろんなことを説明したり、
世の中を俯瞰したりできる
(実は役人は、データを扱うのって苦手なのが多いんです…)
経済社会の現状や行く末について、自分なり
の見立てや世界観的なものもできてくる
(実は役人は、今の仕事の領分以外に疎いのも多いんです…)
労力に対して直接的に経済的に報われることを
目的としない限りは、あながち悪くはない…
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
佐賀大学大学院キャリアデザイン
そのチャンス、
生かすも殺すもあなた次第!
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
52
実は皆さんは…
すごく恵まれた時代に
生まれてきたんです!
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
人の口に戸は立てられない時代
「情報の独占」による権威の維持・
確立という手法が成り立った…
☞ あんたはそがんこと、考えんでよか!
そんなことしようとしても、組織
内・外のツールで有名無実化!
☞ 中途半端な情報共有や「考えんでよか」的発言
は、かえって見通しを立たなくし、モチベー
ションをそいで、いい仕事につながらないだけ
【マネジメント上の考え方の変化】
地位や立場のみに依存した権威は相対化、
情報の共有と納得が重要な時代に
53
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
自分なりの情報共有ルール
54
チーム内の情報は可能な限り共有、取捨
選択は提供側ではなく、受取側が行う
☞ 情報過多になっても暗中模索よりはいいはず
都度の報告は不要、メールならCC or BCC
で、予定ならカレンダーでの共有で十分
☞ 報告へのストレスで情報不足に陥る方が怖い
もし迷ったら、6割の完成度で報告・相談
してかまわない
☞ 手戻りこそモチベーション低下の最大の要因
留意)もちろん、昔気質の権威主義的な人達はアグ
リーしません…でも、世代とともに変わると思います
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「権威」は崩れ去っていく…
55
情報の
非対称性の
解消
様々な見方
・考え方が
見えてくる
「権威」の
相対化
ビジネス
マネジメント
教育
政治
メディア
大手でも偽装や不祥事、その告発などが頻発
「管理」から「マネジメント」の時代へ
既成メディアへの不信、Web等勢力の台頭
既成政党や政治家の欺瞞、それらへの等閑視
学校や教師への不信、民間教育事業の顕在化
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
AI周りでの最近のトピックス
56
H30.9.29日経新聞
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
SNSとソーシャルグラフ
ライフステージが切り替わるごとに、
人間関係も基本、切り替わる
☞ 小学校時代の友達は今はどこに?
ライフステージが切り替わっても、
人間関係はむしろ、積み重なる
☞ 小学校時代の友達が今、○○ビジネスをやって
いるので、じゃあ、協力を打診してみるか…
【キャリア形成上の考え方の変化】
今、属している組織やコミュニティは
以前ほど絶対的ではなく、相対的なもの
57
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
ライフステージとステークホルダー
58
年代
90s
前半
所属 主な利害関係者
90s
後半
2000s
前半
2000s
後半
水産振興課
土木事務所
大和総研
健康増進課
医務課
教育委員会
税務課
新産業課
産業人材課
産業企画課
2010
~
漁協、漁連
地権者、建設関係
同社、経企庁、岐阜県
医師会、医療施設
医師会、医療施設
学校、教育職、文科省
県税職員、寄付者
県内企業、経済団体
県内企業、経済団体
県内企業、経済団体
今はほとんど
付き合いなし
今も時々、付
き合いがある
割と継続的に
頻繁な付き合
いがある
電子メール
登場!
SNSも
登場!
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
テクノロジーの民主化
情報の収集・分析はとかく高コスト
☞ データやニュース拾うにも図書館通い
☞ 手計算で分析、手書きでグラフ作成
☞ OHPシートにカラー印刷して、インク滲んで…
ICTで収集・分析は限りなく容易に
☞ データもニュースもWebから拾える
☞ 計算もグラフも、PCでGUIツールで
☞ プレゼンシートも容易に試行錯誤
【ナレッジワークにおける考え方の変化】
データもツールも「最初に吟味」ではなく
「まずはなんでも試してみる」のが大事
59
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
実は佐賀県はEvidenceBasedPolicyMaking先進県
60
第1回(H28):大臣賞
データ分析に基づく政策立案
第2回(H29):特別賞
人材流出県からの脱却
総務省「地方自治体における統計利活用表彰」
医療・福祉や交通、観光等、各
分野におけるデータ利活用とそ
の人材育成(統計分析課)
人材の定着・還流のための人材
確保関連施策とIT産業振興
(産業人材課・産業企画課)
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
各地の自治体もテクノロジーを利活用
61
(佐賀県はともかく…)
チャットボットで対応 RPAで事務効率化
音声認識で会議録作成
www.city.saga.lg.jp/main/46295.html
エキスパートシステムなどを用
いたチャットボットで、住民や
庁内の問い合わせ対応を自動化
(佐賀市、所沢市、川崎市、豊
田市、泉大津市、兵庫県、東
広島市、熊本県など)
ソフトウエアロボットを用いて
定型事務を自動処理
(長野県、加賀市、一宮市、和
歌山県、奈良市、宇城市等)
機械学習を用いて会議録や会見
録などを自動作成
(愛知県、滋賀県、大阪府、岡
山県、愛媛県、徳島県など)
その他、AIによるインフラ維持
補修、ケアプラン作成、ごみ処
理場運転、政策提言などの例も
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
せっかくなので、いくつかご紹介
62
Exploratory コグニティブAPI
MS Azure Machine Learning
 統計パッケージRのGUI
 学生・教師は無料版を利用可
 GUIによる機械学習ツール
 かなりの程度まで無料枠あり
 MS、IBM、Google、
Amazon等が提供(上はMS)
 MSやIBMは無料枠も
なので…
学ぶかどうか、使うかどうかは
あなた次第
exploratory.io/
azure.microsoft.com/ja-jp/services/machine-learning-studio/
azure.microsoft.com/ja-jp/services/cognitive-services/
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
県内におけるシェアエコ的な動向
63
クラウドソーシング クラウドファンディング
車、輸送、民泊… 学びのシェア
Web上のプラッ
トフォーム(ラ
ンサーズ、クラ
ウドワークスな
ど)で発注先を
募ってシェア
Web上のプラッ
トフォーム
(Camp Fireや
マクアケ等)を
通じて資金を
募って調達
カーシェア、ライドシェア、
民泊…持たずに借りる
Webやアプリで「学びたい」
と「教えたい」を仲介
ローカルシェアリング
センター(多久市)
クラウドファンディング
総合研究所(佐賀市)
Manaview(多久市)シェアサイクル(佐賀市)
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
デジファブ&メイカームーブメント
64
 ものづくりには生産設備が必要
 だから投資が必要で、皆はできない
 デジタル化で試作程度は安価&容易に
 それを逆手にとったビジネスも登場
デバイス
 3Dプリンタ・スキャナ、レーザーカッター等
 3Dプリンタの素材も、樹脂から石膏やカーボ
ン、金属などへ多様化
ビジネス
への影響
 機器を利用できるFabLabが登場
 ハード系のお一人様企業も登場
 リバースエンジニアリング対策
など知財管理が重要に…
FabLab.SAGA(呉服元町)
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「個人と世界」の関係が変わってきた?
65
自分
遠い世界のこと
でも「見える」
知らない誰か
とも「話せる」
誰もが世の中に
「提起できる」
世界
「手が届く世界」が広がることで、その気になれば
 より広く、深く考え、自分なりの問題を見出す
 正しいことや大事なことを提起し、賛同者を募る
など、個人の可能性も広がってきた
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
ただし…
66
遠い世界のこと
でも「見える」
知らない誰か
とも「話せる」
誰もが世の中に
「提起できる」
見たいものだけ
を見ればいい
ウマが合う人
だけでまとまる
独りよがりでも
世界に発信!
なかなか結構な悪循環!
(問題の矮小化や社会の分断、ポピュリズム台頭の素地?)
見えないもの
見たくないもの
をこそ大事に
合わない人
考えが違う人
とこそ付き合う
俯瞰し
自問・内省し
自らを磨く
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「個」が「組織」を超えていく時代
67
立場や地位の違いによる
知識・情報の格差は
少なくなった
特定の組織への帰属は
以前ほど絶対的な
ものではない
テクノロジーの活用が
以前より安価かつ
容易にできる
 イノベーターが特定の組織を必要としなくなる
 組織を要しないイノベーターと、組織に依存する
フォロワーとの格差が拡大
 固定的組織は消滅、プロジェクトベースにシフト
マネジメント
キャリアデザイン ナレッジワーク
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
佐賀大学大学院キャリアデザイン
一週目の補足と
二週目の課題
68
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
グローバル化、要素価格均等化と格差
69
かつて、「境界」が存在した時代
先進国の
所得階層
後発国の
所得階層
生産性が低くても、
全体の所得水準が高いので…
境界が消えれば「水は高いところから低いところ」に…
先進国の
所得階層
後発国の
所得階層
生産性が高くても、
全体の所得水準が低いので…
ピラミッド自体が
上方に…
ピラミッド自体が
下方に…
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
企業の時価総額と経済成長①
70
企業名 国
1 NTT
2 GE
3 ロイヤルダッチシェル
4 AT&T
5 エクソン
6 コカ・コーラ
7 メルク&Co.
8 フィリップモリス
9 トヨタ自動車
10 日本興業銀行
11 ロシュ
12 富士銀行
13 住友銀行
14 マイクロソフト
15 インテル
日
米
蘭
米
米
米
米
米
日
日
瑞
日
日
米
米
企業名 国
1 エクソンモービル
2 GE
3 マイクロソフト
4 シティグループ
5 BP
6 バンク・オブ・アメリカ
7 ロイヤルダッチシェル
8 ウォルマート
9 トヨタ自動車
10 ガスプロム
11 HSBC
12 P&G
13 ファイザー
14 J&J
15 サウジ基礎産業公社
米
米
米
米
英
米
蘭
米
日
露
英
米
米
米
沙
企業名 国
1 アップル
2 アマゾン
3 マイクロソフト
4 アルファベット
5 バークシャーハサウェイ
6 フェイスブック
7 アリババHD
8 テンセントHD
9 JPモルガン
10 J&J
11 エクソンモービル
12 ビザ
13 中国工商銀行
14 バンク・オブ・アメリカ
15 ロイヤルダッチシェル
米
米
米
米
米
米
中
中
米
米
米
米
中
米
蘭
出所)1995、2006:Financial Times「The Global 500」、2018:https://www.180.co.jp
世界の企業の時価総額ランキング
1995 2006 2018
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
企業の時価総額と経済成長②
71
出所)IMF「World Economic Outlook2018」
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
企業の時価総額と経済成長③
72
出所)IMF「World Economic Outlook2018」
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
知識社会とテクノロジー
73
工業化社会
問題は明確
その解決が大事
知識社会
問題が不明確
その発見が大事
市場の
飽和と
成熟化<例>
とにかく「作れば
売れる」時代
<例>
何を作るべきかす
らわからない時代
知識・情報を扱うITの発達
社会の変化を促す 技術の発達を促す
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
Software eats the World
74
IT/
Software
製造 流通
小売
建設教育
医療
金融
スマートファクトリー、
マスカスタマイゼーションなど
配送管理や在庫管理などの
デジタル化、ロボットや自
動運転等による省力化など
CRM、e-コマースなど
一次
産業 圃場管理や栽培管理などの
デジタル化、ロボットやド
ローン等による省力化など
建機管理や現場管理のデジタル化、
インフラメンテナンスの自動化など
電子決済・電子通貨、アルゴリ
ズム運用、与信審査・不正検知、
ブロックチェーンなど
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
ソフトウエアが食べるのは?
75
情報の
インプット
思考
分析
判断
情報の
アウトプット
IoTでできそう…
AIでできそう…
知識社会における競争力の源泉である
人の知的活動が、機械に置き換わる?
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
統計→データマイニング→機械学習→AI
76
解析学的分析
データマイニング
機械学習
A
• 可視化
• 各種検定
• 多変量解析
…回帰、PCA など
• アソシエーション
ルール
• 決定木 など
• サポートベクターマ
シーン
• 協調フィルタリング
• ランダムフォレスト
など
• ディープラーニング
など
コンピュータ
パワーの
増大
いわゆる
3Vデータの
多様化
ディープ
ラーニングで
Break through
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
AIへの二つのアプローチ
77
エキスパートシステムや
コーパスなど
ディープラーニングを
はじめ、機械学習
脳の中にある「知識」そのもの
に着目し、それらをアルゴリズ
ムやデータベースとして構造化、
これをもとに推論・判断・処理
情報処理のアルゴリズムを工夫
(ディープラーニングの場合は
脳の神経回路の模倣)すること
で、学習・認識・処理
<分野>自動応答、各種の審査
や評価(人事・採用、病気、
与信力など)
<分野>認識・認知(画像、音
声、言語)、各種予測モデル
構築
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
例えば…
78
リンゴは
 食べ物だ
 赤い
 甘酸っぱい
 生食でもジャムでもOK
ある程度確かな
既知の知識や情報
 論理をプログラム化
 データベース化・参照
 彼女はリンゴ好きかな?
 明日は売れるだろうか?
不確かで未知・
未経験の知識や思考
1)器(例:神経回路を模
したプログラム)を作る
2)正解(例:リンゴ好きの
人達の属性データ)を投入
3)なぜだか判別可能!
機械学習以前 以後
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
ディープラーニングって?
79
多層パーセプトロン(ニューラルネットワーク)
畳み込み層(画像等)
X以上
なら1
重みw入力データ それは
ネコか?
1:Yes
0:No
0 1 0
0 1 0
0 0 0
フィルタ
畳み込み プール化
・・・
「学習」って?
1)正解データ(ネコの有=1、無
=0とした画像)を大量に用意
2)ピクセル化して上記のアルゴリ
ズムに読み込ませる
3)より適切に判別できるxやw、
フィルタに収束するまで繰り返し
演算する
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
「正しい民主化」のために…
80
y = f (x1,x2,x3,……)
説明or予測
したい対象
説明or予測の
仕組みやロジック
説明or予測の
もとになる材料
eg.ある商材の売れ行き eg.多変量解析や機械学習 eg. 価格、所得、天候…
回帰など多変量解析 機械学習
 「なぜ?」が分かる
 モデリングに手数がかかる
 予測精度は劣ることが多い
 「なぜ?」が分からない
 データを突っ込めばいい
 予測精度は勝ることが多い
簡単で精度も高いので、機械学習によるモデリングに走りがちだが…
結果、致命的なミスを冒すリスクもないではない
☞ 事前にデータを探索的に扱うプロセスって手間だけど大事!
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
過去の技術革新と似て非なる点
81
所得階層
【かつての技術革新】
肉体労働やルーティンワーク
など比較的下位層を代替
<例>産業革命に伴うラッダイ
ト運動
【AIなどのインパクト】
知識社会におけるナレッジ
ワーカーなど、比較的中~上
位層を代替する可能性
<例>弁護士や法務事務、医療
関係の診断・読影など
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
AIが浮き彫りにした「人間って何?」
82
AIによって、
物理作業のみでなく知的作業も機械で可能に…
【Q1】人が人として担うべき
タスクやミッションとは、
いったい何だろう?
【Q2】いずれ膨大な時間が
余ってしまうことになるが、
さて、どう過ごそうか?
知識社会=知性の時代から「産みの苦しみ」「創造の喜び」など
「人間臭い部分」が価値の源泉となる経済社会へ?
【参考】
 Industry4.0:ドイツが生産技術に着目して提唱した、FA化の次のIoTの時代
 Soceity5.0:わが国が産業社会に着目して提唱した、情報化の次のAIの時代
 Humanity6.0:(あくまで私個人が…)経済社会における価値創出に着目し
て提唱する、知識社会に次ぐ「人」本位の社会
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
人に残るものって何だろう?
83
テクノロジーが置き換えてきたもの
肉体労働
/物理作業
記憶・反復
/定型作業
思考・判断
/非定型作業
感性・情操
/創造的作業
体力や年齢等に
左右されやすい
左右されない or
経験・蓄積が大事
テクノロジー 人間
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
仮想通貨とブロックチェーン
84
一般的な法定通貨
中央銀行経済主体 経済主体
経済主体 経済主体
価値や流通を
集中的に管理
経済主体経済主体
そんなのイヤ、もっと自由であるべきだ!
ブロックチェーンによる仮想通貨
中央銀行経済主体 経済主体
経済主体 経済主体
暗号で二重使用を
防止、管理者不要
のP2P流通を実現
経済主体経済主体
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
スマートコントラクトとICO
85
 記載する情報は、なにも「取引
履歴」だけである必要はない!
 発行する主体は、なにも「中央
銀行」である必要はない!
スマートコントラクト
ブロックチェーンに契約情報
を記載、ネットワークで真正
性や第三者への対抗力を担保
企業やNPOが「自社サービス
の受益権」を担保に独自通貨
を発行、資金調達の一手段に
公証役場や法務局がいらない
世界になる(かも?)
やがて世界中の個々人が、
自分の通貨(株)を売り出す
世界になる(かも?)
「権威の相対化」を価値流通面で支えるインフラへ
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
どんな変化がありうるだろうか?
86
知的活動がAIに委ねられ、
人間性が競争力の源泉に
情報の非対称性が解消し、
様々な権威が相対化
グローバルな市場の融合で
国を超えた同一労働同一賃金に
テクノロジーの民主化で、
やる気があれば道具も入手可能
個人としての
機会と脅威
SNSで人間関係が切り替わる
のではなく積み重なる時代に
ブロックチェーンの普及で
価値の担保や流通が多元化
シェアエコで、資産保有に
伴う有利・不利は縮小
組織からの
解放と不安
社会における
多様性と分断
データの生産要素化で
プラットフォーマーが台頭
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
とはいえ…情けは人の為ならず
87
経済とは、相互依存の体系
実は、現実経済でも…
 1990年代終盤、金融システム危機以降の日本経済
… 持たざる経営が流行って企業が資金余剰主体化、家計の貯蓄超過の
縮小と政府の資金不足が拡大し、慢性的な国内全般の内需低迷へ
 2000年代初頭、三位一体改革以降の都市と地方
… 地方への財政移転の先細り・頭打ちで地方の地域経済が疲弊、都市
にとっても移出先市場の縮小や生産要素の供給制約となって成長制
約に ユーロ危機を契機とした欧州経済の苦境
… ドイツなど債権国による債務国への緊縮財政要請で債務国市場が
縮小、債権国にとっても輸出先市場の縮小となって停滞が長期化
貸す?
あげる?
投資?
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
そもそも対立軸が間違っていたのかも?
88
結果の平等
(所得分配)
機会の公平
(資源配分)
市場を重視
政府を重視
再分配に
否定的
再分配に
肯定的
混合経済
など
新自由主義
など
昨今の
世相?
でも、ホントに
目指すべきは…
AIによって昨今、巻き起こっている
BI(この場合はBasic Income)の
議論は、こうした変化の兆しや一端
かも?
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
最後に…
89
自分に嘘をつくことは、自分の人間性を殺
すことに等しい
それでも、工業化社会においてはそれが求
められたが、知識社会やその次に来る時代
には、むしろハンディになる(かも?)
よって、組織や社会の中で自分に嘘をつか
ずに生きる術を身につけることは、来るべ
き時代への大事な備えの一つ(では?)
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
以降のルール
 「正解」はありません。それぞれの考え方であり、
選択肢以外の考えもありえます。なので、「間
違ってるかも…」とためらう必要はありません。
 「どれを選ぶのか?」だけでなく、「それはなぜ
なのか?」を考えてください。その考えの意味や
価値は、往々にして後者の中にあります。
 あと…言葉としてうまく伝わるかわかりませんが、
「選択肢の裏側」といったことも少し、意識して
みてください。
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
91
実績と可能性
あなたは突然、明日から知らない国に旅行することにな
りました。その国に住むある人物に会うことが目的です。
ただ、言葉や文化もわからないし、土地勘もありません。
このため、ガイドとしていずれか一人を雇うことができ
ます。あなたの選択と、その理由を教えてください。な
お、費用はいずれも同額とします。
A:知識・情報豊富なベテラン。ただ、新たなことを調
べたり、学ぶのはちょっと苦手。
B:新たなことを調べたり、学ぶのは得意な若手。ただ、
知識・情報はあまり持っていない。
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
92
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
93
お金と時間
その国への航空便には、通常、二つのルートがあります。
いずれも「帯に短し、襷に長し」なのですが、あなたな
らどちらを選びますか。
あなたの選択と、その理由を教えてください。なお、到
着の期限など時間的制約はないものとします。
A:地理的条件や過去の実績からほぼ確実な到着が見込
めるが、少々、割高なルート
B:ハリケーンなど天候トラブルに見舞われ、遅延した
り、到着地変更も多いが、割安なルート
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
94
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組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
95
根拠とバイアス
航路が決まって、次は宿。でも、何せ言葉も土地勘もな
いので、どこを選べばいいのかわかりません。
例えば以下のようなソースの中で、あなたはどのような
ものを重視しますか。最も重視する情報や、その理由も
含めて教えてください。
A:宿のコーポレートサイト
B:雑誌やまとめサイトの評価
C:渡航経験のある知人の口コミ
D:最初に選んだガイドのアドバイス
E:自分の直感
F:その他
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組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
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97
理性と感情
ようやく現地について、あらかじめ予約してあった宿に
到着し、チェックインを…と思ったものの、あれ、フロ
ントクラークがいません。仕方ないので呼び鈴を鳴らし
たものの、5分、10分が経ち…ようやくなんとか。
涼しい顔で詫びもせず、「お客様、こちらにお名前…」
と切り出す様を見て、さて、あなたはどう感じますか。
A:待たせるだけ待たせてお詫びもせず、まったくなっ
てないな
B:ずいぶん遅れたけど、もしかしたらトラブルでも
あったんだろうか
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99
データ?
チェックインも終わったので、まずは腹ごしらえ。店も
料理も全くわからないのですが、幸いにして空港で「飲
食店データブック」なるものを手に入れました。
紹介のテキストや口コミコメントはよくわからないので
すが、同書には「味」「栄養」「見た目」「価格」「原
材料」「雰囲気」などの項目ごとの各店舗の評点が一覧
になっています。これをもとにお店を選ぶ場合、あなた
はどういう選び方をしますか。
A:全項目の合計点(or平均点)が高いところを選ぶ
B:自分が重視する2、3の項目が高いところを選ぶ
C:一覧表をみながらなんとなく選ぶ
D:その他
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100
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101
見解と事実
選んだお店に着いて、料理を選ぼうとメニュー表を見た
ものの、値段ぐらいしかわかりません。ガイドに説明し
てもらったものの、食材も調理方法もなじみがないもの
ばかりで、どれを選べばいいのかさっぱり。
幸いにして、ガイドはよく来る店のようなので、じゃあ
彼(or彼女)に任せましょう。さて、あなたはどのよう
な質問を投げかけますか。
A:(自分は)どれを選んだらいいだろうか
B:(君なら)どれを選ぶだろうか
C:(君は)いつもどれを選んでいるのかな
D:(みんなは)だいたいどれを選んでいるのかな
E:その他
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102
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組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
103
成果と資源
さて翌日。ガイドによれば、今日の午後に目的の人物で
あるX氏とのアポイントがやっととれたのだとか。
ただ、あいにく同じ時間帯に、あなたの会社の現地法人
から「大きな商談が成立間近なので、本社の人間として
立ち会ってほしい」とのリクエストが入りました。
さて、あなたはどうしますか。理由も教えてください。
A:X氏とのアポを優先し、商談を断念する
B:商談を優先し、X氏とのアポを再調整する
C:X氏と会う時間を遅らせ(or切り上げ)、商談後(or
前)に向かう
D:その他
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104
器用であることと、正直であること
X氏はあなたの会社の今後のビジネスにとって、おそら
く欠かせないパートナー。なので今日のミッションは、
同氏との良好な関係を築くこと。
ただ、残念ながら先方はあなたの会社やその市場環境な
どについて思い込みや誤解もあっていささか過大評価し
ているようで、なかなか話がかみ合いません。こんな時、
どうしますか。理由も含めて教えてください。
A:まずは良好な関係を築くことが大事だし、好意的に
評価されているのなら、X氏に話を合わせておく
B:もしかしたら今日、良好な関係は築けないかもしれ
ないが、思い込みや誤解を解くために説明しておく
C:その他
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105
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組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
106
組織と自分
X氏との話も首尾よくいき、盛り上がった結果、最後に
同氏からある提案がありました。あなたの会社に「今、
必要なこと」に思えたので上司に報告しましたが、色よ
い返事はもらえません。どうやら、それをやることで社
内の別部門に面倒をかける懸念があることが原因。
さて、あなたならどうしますか。
A:一旦、心の奥にしまって、きっぱりあきらめる
B:引き続き、上司を説得する
C:視点を変えて、支障が生じる懸念があるその別部門
から説得してみる
D:バイパスして、上司の上司にかけあう
E:その他
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組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
107
佐賀大学大学院キャリアデザイン
組織の中で、「嘘」をつかずに生きる ※あくまで個人の見解です
ご静聴、ありがとうございました。
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20181107 組織の中で嘘をつかずに生きる(佐賀大学)

Editor's Notes

  1. どういうことを伝えるべきか、いろいろ考えた。たぶん、多くの人は、研究にしろ、ビジネスにしろ、「組織」の中で働くだろう。あるいは、起業など自ら「組織を作る」ということもあるかもしれない。 現代の複雑な社会でそれなりに価値を残すにはそれが何であれ、「組織」をうまく使いこなすことも大事。ただ同時に、それが「矛盾」や「限界」の要因ともなる。 その一方、これは次週の冒頭により詳しく述べるが、現代社会では「個と組織」の関係性も変化してきた。矛盾するようだが、それを許容する組織でなければ今後、生き残れないし、また逆に個の側では自ら属する組織やコミュニティをそういう風に作り替えていくということも大事。言い換えれば、ともすれば対立しがちな「組織の力学」と「個人の思い」をいかに調和させていくか、これはマネジメントにおける永遠の課題だが、おそらくより一層重要になる、というか、それができなければ生き残れない時代になっていくのではないか、ということ。 そういったことを念頭に、役所を一つの「ケース」としてお伝えできればと思う。
  2. まず簡単に自己紹介。もともと自治体に入った契機は、大学時代、地域経済を専攻したことが大きい(それまでは、実はIBMやMSなどIT系に、と思っていた)。 ご存知の方もいるかもしれないが、自治体の行政職はいろんな部署に行く。実際、私も水産、土木、医療・福祉、教育、税を経て今、産業関係。3~4年おきに「転職」しているようなもの。 なお、個人でブログやFacebook、さらには電子書籍などもあるので、今日の話に興味をお持ちいただいたり、個別に尋ねたいこと等あればどうぞ。
  3. さて、今日の話題について。私は大学を出てずっと自治体なので「キャリアデザインの素材」としてはあまり面白くないと思う。もっとも、そもそも、人が人に生き方を教える、というのは正直、説教臭くなりがちであまり好きではない。自分の若いころを思い出すと説教を垂れる年寄りに対してあまりいい思い出はない。(皆さんはどう?) それでも「皆さんにお伝えできる何か意味があるもの」を考えたとき、「組織に長く居るからこその組織と個人のせめぎあい」辺りは面白いんじゃないかと。つまり、説教というよりは自分をケーススタディの素材としてみてみる、という視点。自分が常々、大事にしているのは冒頭のタイトルである「自分に嘘をつかずに生きる」ということ。 ついては、今週は私自身の経験や実例をもとに「何を考え、行動してきたのか」をご紹介したい。言わんとすることは、「組織の中で自身の問題意識を貫くには、それなりに軋轢や行き詰まりもある」ものの、「その結果、処遇など経済的な部分はともかく、職業人として他では得難いものが得られる」し、時代の方向感としても「そうした人材が今後、求められていくのではないか?」といったこと。最初に無力感ややるせなさ、理不尽さを感じる話から入るが、どうか最後には何らかの希望や可能性を感じ取ってもらえればと思う。 そのうえで、次週までの間に、今日の最後にご案内する「あなたならどうしますか?」といったいくつかの点について考えてきていただきたい。次週、皆さんの意見をぜひ楽しみにしている。
  4. 最初に一つ、これはお決まりのエクスキューズとして。たぶん、傍目にはいろいろ当たり障りのある話もすると思うし、そうでなければ意味がないと思っているけど、それはあくまで一つの見方・考え方なので。 あと、一件、役所をdisっているように見えて、実はだからこそやりがいや可能性がある、といった趣旨なので、そこは一応、誤解なきよう。
  5. ではまず、「役所ってどんなところなのか?」から。
  6. (間を置く、イメージさせる)
  7. 「役所に勤めてます」と言って、よくあるのがこれ、「クジゴジで楽だよね」って。ただ、実際はそうでもない…正確には「そういう人とそうではない人とのばらつきが大きい」のが現実。 後で述べるように、個々人の考えや姿勢で仕事の質が左右されやすく、また、そうなって仕方ない組織人事上の制度など構造的な問題もある。 ちなみに、そういう中、しばしばスタッフにはこういうことを言うことが多い。
  8. 実際に、私自身が役所に入って以降、何を考え、どう行動してきたかをまず簡単に振り返ってみたい。 20代の頃、水産振興や用地買収、シンクタンク派遣といった時期だが、とかくまずは「自分」だったと思う。何かにつけて「一歩先に出る」ことを考えていた。そして30代になって、医療・福祉や教育に携わったが、この頃は「マネジメント」を学んだ時期。言い換えれば、自分を「周囲や状況の中で考える」といったようなこと。さらに40代には、税や産業など主に経済分野。ここでは、割と自分自身の地域経済や都市と地方といったライフワーク的な問題意識を実践に移した時期。 こうやって振り返ると、面白くなかったと言えば嘘にはなる。周りを見ると皆が皆、そうではないようだが、直接の仕事を一歩超えた部分で問題意識や目的意識をもって臨めば、意外にやりがいも得るものもある。
  9. だが、そうやってこだわって働く人ばっかりかというとそうではないので割に合わないことも多い。しばしば言うのは「正直者がバカを見る」組織であること。 まず1点目、民間ではずいぶん変わってきたが、役所は未だ年功序列で横並び。やろうがやるまいが、給料も処遇も変わらない。それから2点目、いわゆる「古くて新しい課題」「みんながあきらめていたこと」といった「寝た子を起こす」と、だいたい嫌われる。なぜなら、やってもやらなくても給料変わらないから余計なことだし、巻き込まれたくないんだろう。とはいえ3点目、みんなそんな風に「ことなかれ」で過ごすと「使えない人間」になる。なので、いくらか厄介な課題が持ち上がるとまじめにやってきた人間に限って所管の分野の外の仕事であっても「助けてくれ」と担ぎ出されがち。 「だったら、辞めちゃえばいいじゃん」なんだが…それでも未だ残っているのは自分なりに何か、得るものや可能性を感じているんだろう。
  10. 実例として、これまで正直者がバカをみたワースト3を。 第3位は40歳前後、上司から「もうちょっと従順になればすぐにでも昇格させる」という打診。だが、その世界の制度や風土に様々な異を唱えていた頃なのできっぱり断った。挙句、まったく関係のない部署に異動。 第2位は30代半ば、後にも述べるが専門職の領分に仕事の範囲を広げ、大きな改革に取り組んでいた頃。だが、かなり中途半端なタイミングで異動し、担っていた仕事は3分割、ともに取り組んでいたチームは解体。興味深かったのが、引き継いだ3人はほぼ同年代だが、翌年、晴れてご昇格…どう考えても粛々と卒なく以上の仕事はしていなかったはずなんだけど。 ワースト1は最近の話、前の前の部署でそれなりに大きなプロジェクトを仕上げつつあった段階で、志半ばで異動。結果、やっぱりうまく引き継いでもらえず、これは事業系の行政職にしては異例だが2年で出戻り。一応、昇格扱いだが残業代は出ず、実質減収という笑えない話。
  11. また、同じ役所でも自治体と省庁は微妙に違う。省庁の場合、ほぼ完全に縦割りで役職段階も多いため、「リソースの獲得競争」が熾烈。なので隙間や潜在的課題を自ら取りに行く、といった風土がある。 他方、自治体の場合、縦割りとはいえ人事も予算も部局横断でやるし、役職段階もシンプル。なので「下手に動いて波風立てるよりは」といった意識になりがち。だから、「毎年毎年、何か新しいことをやっている」という人間は希少種らしい。
  12. (どのぐらいいると思います?) 10の部、100の課、70の現地機関 教職員や警察官を除いて3,300名 教職員が7,700名 警察官や警察事務などが10,000名
  13. うちの組織について「このままじゃ、だめだよね」という問題意識が割と強く、2年前にはこんな提案をした。言わんとするのは、昔のように正解がはっきりしない時代、組織はより創造的になるべきだし、すると、いかな年功序列と言えどもそれにそぐわない役職層は解任すべきで、また、現場が試行錯誤しやすいように頭が軽い組織構造や柔軟な政策形成過程とすべきじゃないか、といったこと。 もちろん、まともにとりあげられることはなかったけど。
  14. こういう組織で働くに当たって、考え方はおそらく二通り。一つは器用にお利口にふるまうこと。君子危うきに近寄らず、上に対しては異を呈さない、仕事は生活の糧と割り切る。うまくやれば出世できるし、組織のマジョリティなので敵も少ない。ただ、あんまりおもしろい仕事はできないし、組織を出たら使い物にならない。 他方、もう一つは不器用だが正直に生きること。三遊間のゴロを自ら拾う、上にも異を唱える、仕事について生活の糧より以上の意味を見出す。割と冷遇されやすいし、組織内に敵も増えるが、仕事は面白いし、組織を辞めても足場が残る。 いずれが優劣ということではなく、生き方の違い。ただ、後者から見て前者は、「自分の仕事について、身内に胸を張って話せるの?」と思うことは多い。
  15. 次に、そうは言えども、みんな、今迄みたいにお利口さんなだけではだめじゃないのか、という点。
  16. (間を置く、イメージさせる、場合によっては挙手を求める)
  17. 月並みだが、現代社会ってしばしば「正解がない時代」と言われる。かつての工業化社会では、問題もはっきりしてて、わかりきったことを「正しくこなす」ことが大事だった。しかしその後、経済のグローバル化や市場の成熟化などを背景に、以前とは違って問題自体が不明確で、その発見や定義そのものが重要な時代になっていく。例えばものづくりの企業なら、「何を」「なぜ」作るのかそのものが問われる、といった具合。要は、ドラッカーやダニエルベルといった識者が言う知識社会であり、知識が重要な生産要素に。 これは自治体も同じで、以前なら、物産や観光やまちづくりなど、国や偉い人が考えたことをなぞればよかった。だが、そんなことをしても地域の浮揚にはまったくつながらない、というのがここへきて、はっきりしてきた。
  18. 具体例を一つ。これはうちの産業部局でここ数年、議論していることの一つ。 佐賀県は過去十数年、工場誘致で相当な成果。これは若者を地域に定着させたい、という意図からのもの。なぜなら、佐賀県では高校卒業後の県外流出率が進学・就職ともに全国ワースト5に入るが、こういう県は全国で佐賀と奈良だけだからだ。 同じ時期、確かに県内総生産をみると機械系の製造業が割と伸びている。だが、高卒就職者の県外就職率を産業別にみると、皮肉なことにこの時期、製造業への就職者の県外就職率が10~15%ほど上昇。つまり、工場誘致は定説どおりに若者の定着にはつながらなかったわけだ。 背景は都市部と比較した賃金水準の低さや就業機会の多様性の欠如。例えば47都道府県の賃金と県外就職率を見ると一定の相関がある。また、賃金の背景の一つは労働生産性であり、これも一定の相関がある。工場を呼ぼうが製造業振興を図ろうが、生産の向上を通じた賃金・処遇の改善につながらないと若者は定着しない…当然と言えば当然だが、かつては「工場さえあれば」という思い込みが政策形成を支配していたのも事実。 この点を踏まえた取組については、またあとで触れる。
  19. 別の例をもう一つ。「地方創生レントシーキングモデル」という言葉は、私自身の造語だが、自治体にいるとこういった話がこの十年ほど、やたら多い。 どういうことかというと…どことは言わないが、在京大手が「ご提案」と称して提案先名だけを入れ替えた提案を持ってくる、地方は「それはそれは」と仰々しく受け取って予算化する、しかし、その手の提案は地域に根付いたものではないので、たいがい成果はあがらない、で、税金をどぶに捨てるような結果に終わるが、その点に提案者はコミットする気もさらさらない、といった話。なかには、そもそもその予算が省庁で作られたプロセス自体に、この提案主体が関わっている、ということも。 こういう例を見るにつけ、いつも思うし、また、提案者にも言うのが、「結局、自力で民間のマーケットを開けないから、地方に流れるカネにたかってるだけでしょ」ということ。提案する側にも、受け入れる側にも、「東京という権威」への信仰のようなものがあって、そこに「正解」を求めているのかもしれないが、昔ならいざ知らず、それが通用する時代ではない。
  20. 「正解」がないにもかかわらず、正解を求めようとする…ある意味、従順でお利口な「いい子」。ただ、そのことが最近、組織の中はもちろん、世の中を「おかしくしていないか」と感じることが多い。そしてそれは、かつての工業化社会から抜け出せていないからではないか、と思う。 工業化社会では、問題も正解も明確だったから上意下達の組織で事足りた。その中で仕事を粛々とこなす従順なワーカーが重宝され、その効率を担保するために規格化・画一化を追求した。 ただ、これを今のような正解が見えない時代に当てはめてしまうと、ちょっと困ったことになる。よく見かける例で言えば、先ほどの工場誘致と若者定着が一例だが、そもそも問題自体を間違える、しかしそれに気づかない、さらにはそれに「おかしい」と思っても試行錯誤の余地がない、だから間違ったことを効果も上がらないまま延々と続けてしまう、といった具合。そんなことで果たして、いいんだろうか。
  21. さて、この上意下達、典型的なのは教育分野。文科省を頂点に、こういったピラミッドがあるのは言うまでもない。その大義は「ナショナルミニマム」、つまり、あまねく広く世の隅々に一定水準以上の教育を、ということ。それ自体はおかしなことではないし、特に工業化社会では経済的にも成果をあげた。 だが、時代も変わったのに、この仕組みは依然、残り、それに文科省や教育委員会の保身であったり、現場の抑え込みといった動機で「箸の上げ下ろしまで文科省で」といった部分だけが残っている。教育委員会に赴いた頃、今の言葉で言えばまさにデザイン思考だが、こうした仕組みや風土が現場の現実と政策や制度の乖離を生んだり、現場の創造性や当事者意識の喪失を招いていることを強く感じた。 このため、現場の裁量を重視した支援事業や、教育委員会の教職との間での距離感を縮めるための仕組みなどに取り組んだところ。後で述べるように、志半ばで異動になったものの、当時、新聞には連載され、また、現場のみならず教育委員会の教職からも根強い支持があったと思う。
  22. 当時、こだわった一つがこれ。教育委員会の教育職が、問題が起こったり、何か伝達事項があったりしたときに言っていたのは「伝えました」という話。でも、常々、「で、伝わったの?」ということを聞き返していた。似たような言葉だが、列挙すればこんな違いがある。つまるところ、「相手」や「対象」を意識しているかなんだが、創造的な組織であるためには一体、いずれが大事だろうか。 当時、現場にも教育委員会にも言っていたのは「教育現場では、アチコチに矛盾の風船が膨らむに膨らんでいるのに誰も針を刺そうとしない。だったら、自分は外様なのでその一穴を開けるから、あとは当事者の皆さんが引き継いでほしい」ということ。組織やコミュニティが「お利口さん」ばかりで、外から見たら非常識とかナンセンスといったことに陥らないためにも大事なこと。
  23. 次に、イノベーション云々というのはもうずっと言われている。実は「お利口さんではダメ」というのはこの点にも通じる。 かつては異論や違和感は厄介事だった。実際、効率という一点のみで考えれば余計な手間がかかるだけ。 でも今は、むしろそれらはイノベーションの種という捉え方になってきている。クレームには潜在的なウォンツが潜む、だから企業もカネを払ってでも集めようとする、そんな時代。すると、組織として「不都合な真実」に向き合う勇気も必要だ、役所がどうかは別として。
  24. 先に、「定説どおりの工場誘致では若者は定着しない」という話をした。この点で、5~6年前から一つの対立軸として持ち出したのがITをはじめとする知識産業の振興。 もちろん、「そんなこと言ったって、都会じゃないんだから」という議論は庁内的にもかなり根強かったのは事実。だが、都会のような「数うちゃ当たる」はできなくても、地方ならではの方法論があるんじゃないか、と。例えば需要側では潜在需要を深堀りすれば必要な規模のマーケットは創出できるはず、供給側では仲介者が創発を促せば限られたプレイヤーでもイノベーションを起こせるはず、といった具合。 こういった議論を当時、1年ほど内部で繰り返すとともに、その説得材料として外部では関係者によるボランティアベースでのフィージビリティスタディを行い、事業化につなげた。
  25. そういった議論を経て、施策ベースでITを「産業」としてフォーカスし、製造業や企業誘致ほどではないものの(これらは未だ、一つの課がある)、政策リソースを割いたのがH25~26頃から。様々な施策に取り組んだ結果、民間ベースでも、例えば地場のITベンダーがデータビジネスやAI、VRなどに取り組み始めるとともに、人材育成の場なども充実。
  26. この結果、過去4年で従事者数自体はそう変わらないが、労働生産性は大きく上昇。全国31位から15位への躍進であり、福岡とほぼ遜色ない。この背景には、地元企業のビジネスの高度化や、IT関連の企業や施設の誘致・開設などがある。 つまり、「定説では難しい」とか、「できない」と言われていることでも、やり方次第でできることもあるし、そのためにはやっぱり、異論を大事にしなきゃ、可能性の芽を摘んでしまうという話。
  27. さてでは次に、時々、バカをみながらも割と正直にやってきた、そういう生き方のためにはどのようなことが大事なのか、について。
  28. (間を置く、イメージさせる、場合によっては少し具体例をあげて挙手を求める、「反知性主義」とか)
  29. とはいえ実際、組織の中で「正論」を張ろうとすると結構、大変。バカ真面目にやっていくと、だいたい「後任者が引き継げない」と言われたり、ネグレクトされたり、かといって自分でやろうとしても回らない、といった状況に陥ったりする。 つまるところ、あらゆる組織の類には、現状維持バイアスが働くからだ。だって、今までそれでやってこれたんだから、その「居心地のいい場所」から好んで抜け出そうとするなんてよほどのことがなきゃ、やりたがらないもの。
  30. この現状維持バイアスを背景に、これまでの役所生活の中で「結構狡猾だよなあ」としみじみ実感するのが、「仕事は認めても、人事ではしごを外す」というやり口。 例えば教育委員会の頃、先ほど言った「脱!上意下達プロジェクト」が軌道に乗り、新たな課を作って1年、「さて、これから」という時期に異動。課が新設されて一応は異動したのだから、その主導者が1年で外れるのはあんまりないこと。ちなみに出ていった後、案の定、むしろ以前よりもその反動で上意下達色が強まったと聞く。 あるいは今、産業企画課にいるが、先に言った「規模のハンディをつながりで乗り越える」というのをやり始めたのが5~6年前。だが、うちの役所は未だ、製造業や工場誘致が好きなんだろう、これもこれからという時期に異動。ただ、結局、その後、行き詰まったらしく今年の4月、晴れて(?)出戻りで戻ってゼロからやり直し。 そもそも、うちの役所には財政的にもそんなことやっている余裕はないはずだが、人事にはそういうことは関係ないらしい。
  31. (単に見るだけだったらきれいだけど…そういう目で見るとなんとなくこの光景も「異様」に見えませんかね?)
  32. じゃあ、どうすればそういった世界の中で、自分の問題意識を貫くことができるのか…結局はそれなりに「拠り所を持つ」ことに尽きる。 一つは、組織の外に足場を持つこと。常々、肝に銘じているのは「役所の常識は世間の非常識」。また、自身の仕事の在り方として「役所の究極のミッションは役所がなくても回る世の中を作る」というのもある。だから組織の外にどれだけ多様な足場を持つかは大事で、それが困難な時、支えになってくれたことは多い。 そうすることでフィルターを介さない率直な声が聞けるし、3~4年で定期異動する人間じゃなく、より長くその世界に関わる当事者にDNAを引き継ぐこともできる。
  33. 自分の経験も交えて、ただ、当たり障りあるので固有名詞は出さないが…皆さんも、こんな例を目にしたことはないだろうか。「改革派で売り出した政治家がいつの間にか守旧派の急先鋒に」とか「現場重視と言っていたのにいつの間にかトップダウンばかり」とか。 こういうケースのほとんどは、周囲をイエスマンで固めて不都合な真実が上がってこなくなった、自身も探求や推察を忘れて居心地の良さに安住した、そして地位やポストを守ることが目的化した、といったことから生じるもの。そういった、自分自身の中にある現状維持バイアスを払しょくするには、その相対化のために様々な世界とのかかわりをもつことが大事だ。
  34. 実際、この組織の外の足場というのは仕事にも生かせる。役所で産業系の仕事をしてて最ももどかしいのは、自分でビジネスができないこと。他方、おかげで役所は「競争相手」になることがない。その結果、どんなプレイヤーに対しても等距離外交ができるし、多方面の情報が入り、世の中を俯瞰できる強みがある。 考えようによっては、「誰もが気づいていない大事な問題」に最初に気づくことができるわけだ…ここは役所の仕事の最大の醍醐味かもしれない。
  35. 具体例を一つ。創業やイノベーションに当たって資金調達は大きな課題。特に佐賀のように、圧倒的に大きな地銀が一行だけあって、金融市場がいわば寡占化している中では銀行側もなかなかリスクをとらないのでなおさら。 このため、一つはクラウドファンディングのファンドレイザーに対し、どこに対してもイーブンかつオープンに協定を締結、調達成功額の1割を成功報酬として払う制度を創設。現時点で県内地銀系2者と民間企業が協定締結先。 また、もう一つは、金融機関を対象としたピッチイベントを開催。資金調達を希望する起業家等が、銀行やVCが一堂に会した場でショートプレゼンを行う。県内でよくあるのが最大手の地銀に融資を申し出るが門前払いを食うケース。だが、これだと「あるところが門前払いしても別のところが…」となるので資金の出し手側にも競争原理が働く。 いずれのケースも、互いに競争する相手をイーブンに競わせることで政策課題の解決だったり、真の顧客への価値提供につなげるもので、役所でないとなかなかできないと思う。
  36. もう一つの例として、10月にオープンした産業スマート化センター。「テクノロジーとオープンイノベーションのハブ」をコンセプトに、AI・IoTを利活用したビジネスの高度化を支援する施設。協力企業が提供するアプリケーションやデバイスの体験をはじめ、導入に向けた人材育成や個別相談、企業間マッチングなどの機能を提供。 協力企業として、県内IT企業はもとより、県外、さらには海外の様々な企業約50社が支援。当然、お互いにライバル関係にある企業もあるが、それらも含めてソリューションの紹介・提供ができるのは、これも役所の立ち位置あってこそ。
  37. こういった仕事をしていると、器をプロデュースする、いわば「座組み力」みたいのが大事と改めて思う。自分なりに3原則みたいなものがあって、ご紹介するとこちら。 常にヘッジをかける、我田引水に走らないプレイヤーをコアにおく、「手札」を多様化するために常に「蓄積」していく、といったところ。
  38. 組織で正論を張るための拠り所、二つ目はエビデンス。データをはじめ、事実根拠に基づく議論は、「思い込み」を打破するには極めて有能。また、「俯瞰」のためには、公的統計等を用いて「全体像」を知るのも大事。 そうすることで、組織の内・外でコミュニケーションやディスカッションをするための共通言語が得られる、それらへの洞察を通じて思い込みを超えた共通理解が形成できる、などといったことが得られる。
  39. 具体例として、先にあげた人材流出の件。まずありがちな議論だが、「若者が出ていく」ことを「認知」や「愛着」の議論に帰結させることは未だ少なくない。それが全く関係ないとは言わないが、その一端は「見たいものしかみない」「不都合な真実をみようとしない」というのがある。結果、教育や体験学習に結論を求め、何も変わらないまま。これはたぶん、そのことで責められる教育という分野が、例えば自治体の首長部局等にとってはその組織構造上、責任範囲の外なので「責任転嫁しやすい」なんてのもあるかもしれない。 だが、それは不毛だし、正しくもない…ので、これは2年前にやったことだが、「もっと経済社会的要因が重要」として、重回帰モデルを作って「8割は賃金や就業機会の問題」と提起した。結果、庁内の議論も以前よりは科学的なものに変わっていった。
  40. また、あわせて、この人材流出が地域の経済社会にとってどのような意味を持つのか、という問題提起も。つまり、「なぜその問題が大事なのか?」という点。 わが国では高度成長期以来半世紀ほど、「地方が都市にヒトやカネを拠出し、それら生産要素を都市に重点投下して、その成長の果実を地方に再分配することで移出先市場とする」といった成長モデルでやってきた。これを示すのが左のグラフで、点は各都道府県、横軸は国で言う貿易収支、縦軸は国から地方への財政移転。青の点、つまり90年代までは負の相関、つまり、横軸で民間ベースの収支尻が赤字の県には縦軸で国からより多くの財政移転がある、という関係があった。だが、オレンジの点、つまり2000年代にはほぼ、こうした関係は瓦解。 他方、右のグラフは横軸は同じだが、縦軸は高校生の県外就職率。収支尻が赤字の県はより多くの高校生が出ていくという構図は90年代も2000年代も変わっていない。相関係数を時系列でグラフ化すると下のとおりだが、以前のように人やカネを都会に拠出してもその見返りは得られない、ならば地方には何が残るのか、という時代になってきた。
  41. そうした現状認識や問題定義をもって、当時、全体としてこういう枠組みで取り組むこととした。人材流出県からの脱却には賃金水準の改善と就業機会の多様化が必要、これは先のモデルから得られること。するとこれは、人を留めることができる自立的で持続可能な経済社会の構築、ということだろう。つまり、かつてのような、人を輩出してその見返りを期待するというモデルからの脱却。 そうした問題意識のうえで、まずはITなどやわらかい産業の振興が必要であり、これは先に「規模のハンディを」として触れたこと。で、そのためには生産要素としての人と資本が必要、このうち資金調達については先に触れたが、人については次にご紹介。
  42. H28以降、施策を拡充。 従来、例えばWebサイトや合同企業説明会、相談窓口の開設等を展開。ただ、これだけでは力不足として、H28には高校生の県内定着のため、学校と企業を橋渡しする支援員を配置し、H29には大卒者の県内還流のため、奨励金などを創設。さらにH30からは、企業側の「採用力」向上への支援拠点「さがHRラボ」を開設。 これらの結果、例えば高校生の県内就職率の改善幅が47都道府県で最大になったり、さが就活ナビの閲覧者数が倍以上増えるなど一定の成果。
  43. 私の場合、公的統計をはじめ割とデータを扱って政策形成に活かすことが多いが、昔と比べて変わったなあと思うことを一つ。 昔は、データ活用と言えばもっぱら「検証」だった。つまり、定説や事例から仮説を得て、データで検証・普遍化するというやり方。これは、データの収集・分析にコストがかかったということがある。実際、今のようにデータ一つとってもWebでは手に入らないので、図書館通いを強いられるといった具合。 だが、今はこの仮説構築の前にデータを「探索」のために用いるということが多い。それが可能になったのはまさにICTのおかげだろう。以前と比べて収集も分析もかなり低コスト。そうすることで目下の政策課題の周辺含めた様々な状況を俯瞰し、よりよい仮説が得られるのは間違いない。
  44. ところでこの点、何もデータに限らない。もう少し一般化すると、昔はデータにしろ、あるいはケース教材やフィールドワークの対象などの事例にしろ、事実は主に、仮説の検証と一般化のために用いられた。しかし、先に言ったように正解が分からない、あるいはそもそもそんなものがない時代になって、事実はむしろ、問題の発見や定義に用いられるようになった。 結果、データなど定量的事実については、従来の解析的な分析手法に加え、データマイニングや機械学習など探索的分析手法へと多様化していった。他方、ケースやフィールドといった定性的事実についても、例えばMBAにおけるケースメソッドや、シリコンバレーなどで注目されたデザイン思考など、やはり事実に探索的にアプローチしてインサイトを得る、といった考え方がフォーカスされるようになった。 これらいずれにおいても、重要なのはイマジネーションとインサイト。つまり、対象の側に足場を置き、その状況を想像しながら、内在的に洞察していく、といったスタンスやノウハウだ。
  45. 組織で正論を張るための拠り所、3点目はいわば「先見の明」と言っていいだろうか…現状維持バイアスに満ちた組織は「未来」に視点が行かない、だが、だからこそ、そうした提言や行動を積み重ねていけば、いずれそれが説得力やプレゼンスになる、といったこと。 このためには、視野を広げ、兆しを掴むということが大事。そして、そこで得たものは自分なりの物事の見方・考え方に生きてくるし、これは組織を離れても大きな財産になるはず。
  46. 先見の明と言っていいかどうかわからないが、各部署で新たに手掛けたものがその後、世の中的にも広がっていったり、指示されたという例は少なくない。細かくは言わないが、こうしたことの積み重ねが少なくとも組織内では一定の説得力になっていく、というのは経験上、いくらかはあるようだ。
  47. さて、組織の中で、現状維持バイアスに流されず、自分に嘘をつかずに正論を張る、というのは確かに難しい。だが、そのことによって得難い物が得られるのも事実。 組織の中には確かに敵も多いが、組織の外には味方や支援者も多い。役人は辞めたらぬれ落ち葉になりがちなので、結構、大事なこと。データを使っていろんな物事を説明、俯瞰できる。実は役人は、こういうことが苦手なことも多い。さらには経済社会の行く末について、それなりの見立てなどもできてくる。実は役人は、所管する分野以外には疎いのも事実だ。 つまり、労力に対して直接的に、経済的に報われることを目的としなければ、あながち悪いことではない。
  48. では講義の最後に、実は今って、いろんな「可能性」に満ちた時代なんだ、ということについて。
  49. (間を置く)
  50. まず一つの時代の変化は、「人の口に戸は立てられない」時代ということ。かつては、権威や権力を維持するために情報を独占する、という手法が成り立った。仕事も、決まり決まった正解に向かって「粛々と付き従わせればいい」時代だった。「余計なことは考えるな」という言葉、これまで、複数の上役から度々、言われたことだ。 しかし今は、そんなことしようとしても無理。背景はWebやSNSの浸透だ。「情報統制」なんて、統制している側の自己満足に過ぎない。そういう中、「いい仕事をしてもらうには、情報を独占するのではなく可能な限り共有し、納得してもらい、当事者意識を喚起する」といった方向に変わらざるを得なくなっている。
  51. これは実際、自分自身がこれまでのチーム内で原則としているルールの一つ。まず、情報共有が容易になったことで、ともすれば情報の「洪水」や「氾濫」と言われる。それは事実だが、でも、暗中模索よりは情報過多の方がよほどいい。だから共有する側ではなく、受け取る側が判断すべき。 次に、いわゆる「ホウレンソウ」は大事だが、これもやり方や考え方は変わっていく。下から上への報告は、通常、報告する側に一定の心理的ストレスを与え、これが情報不足に陥る要因になる。だから都度の報告は不要、ICTでついでの折に共有してくれればいい、としている。 最後に、「迷ったら6割で上げる」というルール。完全を期して時間を浪費し、上げてはみたものの根っこから見直しが必要、なんてことは時々ある。そういう手戻りは必要なことだが、モチベーションを失わせるというのはよくあること。 もっとも、先にも言った年功序列の役所組織ではこういう考え方はまだマイノリティ。とはいえ、世代が変われば大きく変わるはず。だって、現場は既に昔のような仕事の仕方ではもたなくなりつつあるんだから。
  52. 知識社会への流れやITの発達は、情報の非対称性を解消させてきた。つまり、昔のように地位や立場がなければ入ってこない情報というのが少なくなってきたということ。より多くの人々に情報が行き渡るようになり、個々人が様々な見方・考え方に接するようになると、いわゆる「大本営発表」のようなものの虚実が見えてくる。なのでこれまで、情報を「独占」することで権威を保ってきたというやり方も通用しなくなる。 私はこれを「権威の相対化」と呼んでいるが、こういった例はビジネスやマネジメント、メディア、政治、教育など各分野の底流だ。
  53. 権威の相対化という点では、最近ちょっと痛快だったのがこの事件。ご覧になった方もいるだろうか。 先に触れた統計や機械学習からAIに至る流れ、これを駆動してきたのは、いわばオープンイノベーション的なトレンド。実際、機械学習やAIで用いられる言語であるRやPythonってオープンソース。 なので、やっている側は、知の共有あってこその創発ということがよくわかっている…はずで、そんな立ち位置からのアカデミズムの「かつての常識」に対するアンチテーゼなのだと思う。
  54. 次に、時代の変化の二つ目として、ソーシャルグラフの築かれ方がある。昔はライフステージ、例えば学校の卒業や就職、転職等の節目ごとに「切り替わる」のが普通だった。だから私たちの世代は、小学校時代の友人が今、どこで何をしているのかなど知っているケースは少ない。 でも今は違う。SNSのおかげでソーシャルグラフは切り替わるのではなく、むしろ「積み重なる」ようになっている。だから、仕事で困ったときに「そういえば昔の友人が」と助けを求めることだってできないわけではない。 このことの持つ意味は小さくなくて、個々人にとってその時、属している組織が以前よりはかなり相対的になっていく。先に、組織の外に足場を持つことの重要性に触れたが、その足場が個人と組織の関係性においては「リスクヘッジ」にもなるし、そう考えれば何も今、いる場所にがむしゃらにしがみつく必要もない。
  55. この点を、自分自身を例に考えてみたい。90年代前半、いろいろな仕事をしていたが、残念ながら当時の関係者との付き合いはほとんど続いていない。しかしその後、電子メールが普及し、2000年代前半に関わった方々とは、未だに時折、付き合いがある。さらにはここ10年ぐらいでSNSが普及、そうなると「畑違いの前の部署での人脈が、今の仕事にも」という例が日常的に起こるようになった。 相手が今、何をやっていて何を考えているのか、というのが分かればこちらもアプローチしやすいし、そうした選択肢をいかに多様に持てるかが仕事の質を左右しつつある。
  56. 変化の3つ目はテクノロジーの民主化。かつては、情報の収集・分析はとかく高コストだった。私もそうだったが、先にも言ったようにデータを拾うにもイチイチ、図書館通い、紙から転記して表計算とか、モノによっては手計算。可視化のためのグラフも手書き、といった状態。だが、今はずいぶん変わった。必要なデータはWebでだいたい手に入るし、計算も可視化もPCでGUIでできる。プレゼンシートもパワーポイントで作れるし、何度でも試行錯誤できる。 そうなると、ナレッジワークにおいても考え方が変わってくる。先に「検証から探索へ」と言ったが、データもツールも、以前のように「最初に、それだけのコストをかける意味があるのか吟味して取り掛かる」から、「まずはとにかくなんでもトライしてみて、使えるものを選ぶ」という時代。
  57. 以下、いくつかご紹介を兼ねて。まず、政策形成の分野では昨今、Evidence-Based Policy-Makingと言われる。データなど事実根拠に基づく政策立案。 総務省が一昨年から、この自治体向けのアワードをやっているが、佐賀県は2年連続受賞。うち、初回は統計分析課、昨年は私自身の取組。
  58. それから次に、この部分ではなぜかしら、佐賀県は総務や情報セクションなどの反応が鈍いが、自治体によるテクノロジーの利活用も最近、盛ん。しばしば聞くのはチャットボットによる問い合わせ対応で、これは佐賀市も木村情報技術のシステムを使ってやっている。あるいはRPAもいろんな自治体で見られるが、役所の仕事にはかなり効果的だと思う。さらには音声認識による会議録作成なんかも増えてきた。 他にも、例えばインフラの維持補修や介護のケアプラン作成、ごみ処理装置の運転などをAIでやるといった例も出てきている。
  59. こういったことは、以前であれば専門家、例えば統計であれば統計学に精通した者、機械学習やAIであればエンジニアでなければできないと思われていたが、今はちょっと違ってきている。いくつかご紹介したい。 まず、実務だけでなくアカデミズムでも使われる統計分析パッケージにRというのがあるが、普通はコードが書けないと使えない。だが、このExploratory、GUI、つまりドラッグアンドドロップでデータの加工整形から可視化、さらには統計モデルの推計までやれる。学生・教師には無料版も。7月に日経ビジネスに掲載されたが、実は個人的に、ゼミの後輩がシリコンバレーでやっている企業で、先月、オープンした産業スマート化センターにもデモ利用の環境を提供いただいたので試してみてほしい。 それから、機械学習も、今はコードを書かなくてもGUIでやれる。いろいろあるが、一つ、紹介するとマイクロソフトのAzure Machine Learning。クラウドで誰でも使えるし、計算時間が数日がかりと言ったものでない限りは無料なので試してみてはどうだろうか。 さらに、「そんな、統計とか機械学習とか言われても…」という人にもチャンスがある。マイクロソフトやIBM、Google、アマゾンなどがやっているのがコグニティブAPI。音声認識や画像認識、テキスト処理等々、ディープラーニングをはじめとする機械学習の成果を活かした様々な判別器をクラウドで提供しており、これらを自分が開発するソフトやアプリの「部品」として組み込める。マイクロソフトやIBMには無料枠も。 要は、機会はどんな人にも開かれており、学ぶかどうか、使うかどうかはあなた次第、なわけだ。
  60. 具体例をいくつか。一つはクラウドソーシングで、これは融通するのは労力とかスキル。Web上に大手のプラットフォームがいくつかあるが、「こういう作業をしてほしい」とクライアントが募ると、登録したワーカーが手を上げて作業をするという仕組み。ちなみに写真はWebではなく多久市のローカルシェアリングセンターという施設で、ここが面白いのは大手のWebプラットフォームと組んで、ネットではなく地域社会というリアルの世界でワーカーを募ってそれをやろうとしているところ。 それから、二つ面はクラウドファンディングで、これは融通するのはお金。これもWeb上に大手のプラットフォームがいくつかあるが、製品開発やイベントなどで資金を必要とする人がお返しなどを示して募り、賛同者が寄付をする。写真はクラウドファンディング総合研究所というところのイベントだが、実はこここは最近、佐賀に本社を移転した。 さらに三つ目、最近、しばしば聞くのがカーシェアやライドシェア、民泊。いずれも「持つ」のではなく、必要な時だけ借りて使うという考え方で、カーシェアは駐車場ひとつとってもコストがかかる都市部で浸透しているし、民泊はインバウンドとの関係で注目されてきた。それでも佐賀には一見、縁がなさそうだが、この写真は自動車ではなく自転車で、佐賀市がこういったものを始めている。 さらには、学びをテーマにしたシェアリングサービスというのもあって、これは多久市の企業の例。まだ創業間もない企業だが、アプリを通じて「学びたい人」と「教えられる人」を仲介するというもの。モノに限らず、こういったコトについても今後、シェアリングエコノミーが広がっていくと思う。
  61. それから次は、ものづくりの話。デジファブ=Digital Fabrication、つまりモノづくりのデジタル化。3Dプリンタという言葉、お聞きになったことがあると思う。ちなみに現物をご覧になったことがある方はいるだろうか? かつては何か工業製品を作ろうと思っても生産設備が必要で、それも数百万、数千万と簡単ではなかった。だが今は、試作程度であれば3Dプリンタで可能。また、最近では金属やカーボンを使ったプリントもできる。 だから、こういった機器を一般の人々に有料だが安価で使わせるような市民工房、いわゆるFabLabといったものが出てきたり、アイディア一つでハード系の企業を起こしたりといった例もでてきた。いわゆるメイカームーブメントといった動き。写真は佐賀市にあるFabLab.SAGA。
  62. ITが世界をどう変えたのか、一言で言えば「個人と世界の関係」を変えた、ということだろう。 情報収集が効率的になって遠い世界の片隅の出来事でも見えるようになった、意思疎通、特にSNSが端的だが見知らぬ誰かとも話ができるようになった、情報発信が容易になって誰もが世の中にいろんな形で提起ができるようになった。結果、自分からみた「手が届く世界」が広がり、また身近になった。 その結果、その気になれば世の中や自分を取り巻く様々な出来事について、より広い視野からより深く考えるとか、その中で正しいこととか大事なことを見つけたら自ら問題提起し、賛同者を募るなんてことが、少なくともやりやすくなったのではないだろうか。
  63. ただし、これは他方で注意が必要なことも。 見える、話せる、提起できるという3点、裏返せばこういうことも言える。「見たいものだけを見る」「ウマが合う人達だけでまとまる」「独りよがりでも場合によっては世界に影響を与えられる」…そして3点目と1点目がつながれば、これは結構な悪循環だ。昨今、見かける社会の分断やポピュリズムといったこととも無縁ではない。 すると、「見たくないものをこそ見る」「会わない人とも付き合う」「俯瞰し、内省する」といったことが重要。それがないと、世の中はかえって混乱に陥るだけなのかもしれない。
  64. 以上3点、マネジメントの面での地位や立場による知識・情報の格差の縮小、キャリアデザインの面での特定組織への帰属がもつ意味の相対化、ナレッジワークの面でのテクノロジーの民主化、これらがあわさると「『個』が『組織』を超えていく時代」になりつつあると言えるだろう。 例えば、何らかの変化や創造をもたらすイノベーターは、特定の組織を必要としなくなるかもしれない。そういえばかつてのメイカームーブメントとかはその一例。あるいは、そういう、組織を要しないイノベーターと組織に依存するフォロワーとの格差が拡大していく可能性もある。昨今、知識社会とともに格差社会と言われて久しいが、その底流とも言えるだろう。さらには、今のような固定的な組織は必要なくなり、あらゆる組織の類が個々のプロジェクトに応じて柔軟に生成・消滅していく、そんな時代になる可能性も。 もちろん、こうした変化への対応や、その中での不安定さといった課題はある。とはいえ、息が詰まるような組織の中で試行錯誤しながらあがいてきた自分からみれば、自由で創造的であり、魅力的なのも事実だ。皆さんがこれから生きる未来は、今よりきっと、希望や可能性があるものになっていくと私は思う。
  65. 一週目は、個人としての皆さんに「機会」が広がり、組織もまた、その方向に代わっていかざるを得ない時代になっているなど、いわば「希望的観測」で終わった。言わんとしたのは「どこで働こうと、つまり、器が何であれ、やろうと思えば、即物的な見返りや報われることを求めない限りは何でもやれる時代」ということ。 だが、物事には何事も二面性がある。より良い意思決定のためには、表と裏と両方を複眼的にみることが大事。実際、時代はそうしたポジティブな要因だけでなく、ネガティブな、つまり、「それをやらなきゃくいっぱぐれる」という方向にもまた、動いている。二週目の今日は、まず、そうした話を冒頭、させてもらったうえで、後半はいくつか、要因した質問があるので、これについて皆さんならどう考えるか、ということについて話ができればと思う。
  66. グローバル化といわれて久しい。ここと、人や生活を考えるに当たっては、経済学で言う要素価格均等化という概念が重要。 かつて国境など境界が存在した時代、所得階層もその境界ごとに形成された。なぜなら、境界を越えて生産要素が動いたり、あるいは企業の立地選択が行われることは少なかったから。だから、境界の向こうとこちらで生産性が同じでも、賃金水準が違うということは往々にしてありえた。 ところが、この境界がなくなってマーケットがボーダレスに統合されるようになると話が違ってくる。要は「国境を超えた一物一価」のように、国が違っても同じ生産性なら同じ賃金に収斂していく。 例えば昨今、中国やインドなど後発国のエンジニアでも、シリコンバレーの企業等と取引して高い報酬を得るなんてのは左の例。あるいは、貿易を通じてより安い海外の工業製品が入ってくる結果、国内の同種産業の労働者の賃金が切り下がっていくなんてのは右の例。 縦割りだった市場が、いわば横割りになっていく、だから同一の国や地域での格差が広がる、そういうことだ。
  67. この一端は、各国企業の株式時価総額にも。1990年代半ば、バブル崩壊後とはいえ、わが国企業の特に金融系がランキング入りしていた。ただその後、2000年代半ばにはトヨタ自動車以外は姿を消し、欧米の金融系や石油関係が伸びている。ただ、これらもその後の世界金融危機やその発端となった資源価格の高騰及び急落で姿を消し、代わっていわゆるGFAMAといわれるIT界の大手や、中国の2大ITグループが台頭。
  68. 経済成長率も、この一端を示している。1980年代、わが国は欧米を上回る経済成長を示していたが、その後、バブル崩壊に伴って1990年代半ばからは下回るようになった。 結果、2000年を基準とした場合、GDPの規模はアメリカと比して20%、欧州と比して15%ほど、下回るに至っている。
  69. さらにこの図に、中国を加えるとこういう図になる。同じく2000年を基準とした場合、中国は約4.5倍と急成長した。結果、ITや金融系の企業が時価総額ランキングに入るものうなずけるだろう。 背景の一つはアメリカの金融緩和で、この時期、米市場の拡大に伴って経常赤字が拡大、その一定部分が中国の経常黒字につながった。もっともその後は、金融危機を契機に、アメリカの経常赤字が縮小し、欧州が経常黒字に転じた結果、中国をはじめ新興国の経済成長はやや鈍化してきている。
  70. そういった経済全体の力学がある中で、前回触れた知識社会と実はITは極めて親和性が高い。工業化社会から知識社会へという社会の変革を促してきた部分と、社会の変革が技術の発達を促してきた部分と両方ある。 なぜなら、ITは「知」そのものを扱うから。
  71. それで、最近、しばしばいわれるのがこの言葉。もともとはもう十年程前、アメリカのエンジニアが提唱した考え方。製造業や小売業は既にかなりIT化が進んできているし、流通や金融、一次産業にも。今後は建設や医療、教育などもそうなっていくだろう。
  72. それで、先ほどの「Software Eats the World」だが、じゃあ、ソフトウエアが食べるのは何なのか?ソフトウエアとは情報処理のプロセス。その中で、AIやIoTで従来、人が担ってきた知的活動も代替し得るようになりつつある。これらは実は知識社会における競争力の源泉。それがソフトウエアに食べられる、というと、じゃあ、人には何が残るんだろうか、という問いが残る。
  73. ちなみに、そうした流れが生じたのはひとえにITによる恩恵、具体的にはデータが大量かつ多種多様に入手できるようになったこと、それから計算速度が飛躍的に向上したことが大きい。厳密に境目があるわけではないが、今のAIブームも、根っこはここから来ている。
  74. ともあれ、そういったことでデータサイエンスとAIは密接に関係している。ただ、最初にいろんなAIを紹介したが、実は大きく分けて二つのアプローチがある。 このうち左側は、エキスパートシステムや知識データベース、コーパスと言われるアプローチ。他方、右側はディープラーニングという言葉をお聞きになったことがある方もいると思うが、それらをはじめ、機械学習によるアプローチ。 左側のアプローチの関心事は、脳の中にある「知識」そのもの。これをアルゴリズムやデータベースに落として推論や判断する。なので、自動応答や各種の審査・評価といったものに向いている。 他方、右側のアプローチの関心事は、情報処理の仕組みやシステム。で、実際にディープラーニングの場合は脳の神経回路を模したもの。だから画像や音声などの認識、様々な予測モデルの構築などに向いている。 AIの発達から言えば、今の第三世代と呼ばれるものは右側。しかし、かといって左側が劣っているというわけではなく、むしろ実用例としては左の方が多い。というのはいずれも一長一短あり、向き不向きがあるから。
  75. もう少しわかりやすく解説するとこう。例えばリンゴがあったとする。赤いとか、甘酸っぱいとか、そういう、確かで既知の情報であれば、論理をプログラム化したり、知識をデータベース化すればなんとかなる。 ただ、こういう問いはどうだろう…例えば「気になるあの子はリンゴ、好きだろうか?」といったようなもの。これはさすがに、データベースやプログラムには落とせない。つまり、不確かで未知の情報だ。 しかし、私達人間はそういうことについても「なんとなく」見立てができる…もちろん、当たることもあれば外れることもあるけど。そういう中、世の中には面白い人がいるもので、「だったら、論理やデータベースにできなくても、『同じようにリンゴが好きな人がどういう人なのか?』というデータを何らかの器に大量に読み込ませれば、『この人がリンゴが好きかどうか?』が判断できる機械が作れるんじゃないか?」と考えた。実際には長い歴史があるが、でもそれがある時、思いの他、うまくいって今のAIブームが起きている。 さっき言った機械学習以前のAIと以後のAIってエッセンスはこういうもので、確かに右側のような問いに応えられるようになると、さも「人間らしい」振舞いに近づいてはくる。
  76. さてでは、先ほどの二つのアプローチのうち、辞書はわかりやすいと思うが、脳の神経回路、つまりディープラーニングはわかりづらいかもしれない。さっきの仮想通貨同様、やや技術的になるが解説してみたい。 例えばネコの画像があったとする。脳の神経回路の一番表層には「それはネコかどうか」を判断する神経細胞があって、Yes or Noで判定する。ただ、そこに至るには、実はもっと多層の網の目のような神経細胞のネットワークがあって、低次の情報から高次へと伝播する判断が、最終的に先ほどの答えにたどり着く。 こいつをソフトウエアのアルゴリズムとして作って、この一つ一つの神経細胞が「Yes or Noの境目をどこに置くか(x)」と「次の細胞にどの程度の重みで伝えるか(w)」を大量データを使って繰り返し演算し、収束させていくという考え方自体は、もう数十年前からあった。私もいくつかのデータで試したことがあるが、ほとんど規則性のないデータでもほぼ十中八九、「当てる」ことができる数理モデルが得られる。数学的に言うと「非線形関数の再現性が高い、柔軟なアルゴリズム」ということだ。 ただ、厄介なのは、技術的な言葉で「過学習」というが、こういうやり方の場合、だいたい、「学習用データは精密に再現するが、ホントに判別や予測したい未知のデータでは使えない」という結果に陥りがち。なのでずいぶん長い間、実用には使えなかった。 ところが、これはほんのこの数年のことだが、あるエンジニアがこの神経回路網の手前に、画像の圧縮技術でいう「畳み込み」を行えば、未知のデータでも精度高く判別できるモデルが得られることを発見した。画像に適当なフィルターをかけてデータを加工・縮約するというプロセスを何回か、繰り返す、というもの。ちなみに、ここにあるフィルタは9マス中、真ん中の1段目と2段目が1で他は0だが、これを画像に適用するとどういうものが得られるかわかるだろうか?通常、こういうのを使うと輪郭抽出ができたりする。 今の画像解析や音声認識、あるいは機械翻訳には、正確にはテーマによってバリエーションがあるものの、こういった技術がベースになっている。
  77. テクノロジーの民主化が進む中、やや技術的になるが、気になることを一つ。何かを数学的・統計的に説明する、あるいは予測する場合、こんな風に表現できる。ここでyは説明や予測の対象、xはその材料、fが仕組みやロジック。昨今、こういったことが飛躍的に進んできたのは、xが容易かつ大量に収集できるようになってきたことと、fの手法が多様化してきたこと。 その中で、このfだが、大きく分けると従来からの多変量解析と、昨今、発達してきた機械学習の二つがある。前者は解析学的に、平たく言えば行列計算などで数学的に答えを導くもの、他方、後者は大量のデータをもとに、膨大な収束演算でとにかく答えに近づこうとするもの。 この両者、対比してみると面白いんだが、予測の手間や精度は、実は機械学習の方が圧倒的に有利。だが、決定的に重要な点として、これはアルゴリズムにもよるが機械学習の場合、多くは予測の仕組みやロジックがブラックボックスになってしまう。つまり、複雑すぎて人間には理解できないから。 その結果、最近、よくあるのが、とりあえずデータがあれば機械学習に放り込んで予測のためのモデルを作る、といったやり方。ただこの場合、何せ仕組みがわからないので、間違った変数の使い方がなされていないかどうかすらわからない。最近、よく言うのが、「AIや機械学習の正しい民主化のためには、データサイエンスの民主化も必要」ということだが、モデリングの前に探索的にデータを見ることが大事という点、頭の片隅にでもおいておいてもらえれば、何かの時には役に立つかもしれない。
  78. また、AIは従来の技術革新とはちょっと違った社会的なインパクトを持つ。かつての技術革新は、例えば馬車が蒸気機関車に置き換わるとか、手作業の生産過程が機械に置き換わるといったように、どちらかといえば所得階層の相対的に下位の層を機械に置き換えてきた。 でも、AIなど昨今のテクノロジーのインパクトが及ぶのはナレッジワーカー、知識社会におけるむしろこの中位から上位の層だ。つまり、もしかしたら皆さんもその一部、なのかもしれない。
  79. AIの発達について、時々言われるのは「それが人間理解を促す」という議論。私なりに整理するとだいたいこんな感じ。 AIによって物理作業のみでなく知的作業も機械で可能になってくると、逆説的だが、人が担うべきものとは何ぞやということが問われる。また、生産活動から日常生活まで効率的になることで、それを考える時間も否応なしに出てくるはず。 結果、もしかしたら、これまでの知識社会、つまり「知性の時代」から、「人間性」「人間臭いもの」が価値の源泉となる時代になっていくのではないか、とも思う。
  80. ITに限らず、テクノロジーを技術一般として考えると…その発達史は、より低次の作業から高次の作業へと置き換える対象を広げてきた。最初は物理作業、次に定型作業、さらに非定型作業。で、今、残っているのはより創造的な作業。 考えてみれば、この図の左側ほど年齢や体力などに左右されやすく、右側ほど左右されない、あるいはむしろ蓄積がモノをいう世界。たぶん、人と機械の折り合いって、この図の右側にシフトしていくんだろう。そういう時代に皆さんは、何を自分の存在意義として主張できるだろうか。
  81. 次に仮想通貨。一般的な法定通貨は中央銀行が管理。価値の裏付けには「信用」が必要で、これには相応の権威や権限が必要だから。ただ、世の中には「そういった中央統制型の経済では不自由」という考え方もある。 そういった人達が考え出したのが、ブロックチェーンによる仮想通貨。これは中央銀行のようなものが存在せず、個々の経済主体が相互にやりとりをする。じゃあ、その価値をどう担保するかというと、これは相互の信頼。 たとえていえば、法定通貨の場合、真正な大福帳が中央銀行に一冊、あるようなもの。対して仮想通貨なり、ブロックチェーンの場合は、取引に関わる全ての経済主体がそれぞれ、同じ大福帳を持っていて「みんな同じものだよね」ということが貨幣価値の根拠になっている。
  82. あえて時間を取って仮想通貨について説明したのは、こういう社会的インパクトがあるから。ブロックチェーンの場合、まず、記載するのは取引履歴である必要はない。 まずハッシュ関数は基本、なんでも同じ長さのデータに要約できるので、するとテキストとかでもいいし、実際、メールの改ざんチェックなどにも使われている。ここを応用して、商取引などの契約書をブロックチェーンで、という考え方、いわゆるスマートコントラクトが出てきた。普及すれば公証役場や法務局がいらなくなるかもしれない。 あるいは、中央銀行がないというのは、誰でも発行主体になれるということ。なので、ICOという考え方が出てきた。これは企業やNPOなどが自社サービスの受益権を担保に独自の仮想通貨を発行し、資金調達をするというもの。これももし今後、普及していけば、やがて世界中の個々人が独自通貨を発行する世界になるかも…「お前さんの株、上がったよ」というのがいわば現実になるわけだ。 いずれも、先に述べた権威の相対化を「価値の流通」の面から支えるインフラになる可能性がある。まだなかなか世の中に浸透していないが、リトアニアなど先進例もあるので、いずれ変わっていくだろう。
  83. さて、ここまで述べたテクノロジーやその社会的影響について、触れていない点も含めて掲げると、例えばこういった変化が考えられる。これを「個人」「組織」「社会」としてみると、こういう時代になっていくのではないだろうか。 まず個人としてみた場合、テクノロジーの民主化や情報の非対称性の解消、シェアエコの普及などは「機会」「チャンス」ではある。その気になればなんでもできる、というわけだ。でも他方、やるかどうかで差もついてしまうし、それは例えばグローバル化に伴う国境を超えた同一労働同一賃金への収斂など経済社会的な力学からも加速するだろう。つまり、機会とともに「脅威」もあるわけだ。 次に組織としてみると、権威の相対化や、ソーシャルグラフの変化は、おそらく既成の組織の存在意義をより小さくしていく。それは個人にとっての自由であり、いわば束縛からの「解放」でもあるが、同時に「依存できない」という「不安」にもつながる。 さらに社会という軸でみると、個々人の機会の拡大や組織からの解放は「多様性」の許容につながる。ブロックチェーンによる価値流通の多元化はこれを後押しするだろう。だが同時に、それは何をもって社会統合を維持するのかという新たな問題も生み出すし、適切な解決策が見いだせなければ「分断」にもつながるかもしれない。
  84. ここまで、個にとっての機会や可能性と、他方で個にとっての脅威や社会の格差や分断といったような話をした。とはいえ、最後にお伝えしたいのは、「情けは人の為ならず」ということ。 経済システムとは相互依存の体系だ。誰かがりんごを作って、別の人に売る。買う人がお金を持っている限り、売ることができる。とはいえ、お金が尽きたら…売った人が得たお金を「貸す」「あげる(寄付・贈与)」「投資する」かしないと、買う側も買えないし、売る側も売り続けられない。 実際、現実経済でも、こうしたことが成長制約となるといった例が増えてきている。90年代終盤の金融システム危機を契機とした持たざる経営で、本来、借り手であるべき企業セクターは資金余剰主体に転換、家計の貯蓄超過の縮小や政府の資金不足の拡大を招き、慢性的な国内市場の縮小・停滞となって企業に対しても成長制約となっている。2000年代初頭の三位一体改革は、先にグラフを示したように地方への財政移転を縮小させたが、今ではこれが都市にとっての移出先市場の縮小や生産要素の供給制約となって跳ね返っている。海外でも、例えばユーロ危機などはわかりやすい例で、債権国による債務国への財政リバランスの強要が、債権国にとっても輸出先市場の縮小を招いて危機からの脱却を長引かせた。 しばしばいわれるように、債権と債務は経済システム全体としてみればキャンセルアウトされる。だから、誰かの債権は誰かの負債であり、黒字と赤字、勝者と敗者、強者と弱者といったものはすべからく表裏一体で、独り勝ちを続けることはできない。
  85. A…スムーズ、無難、予定調和。反面、面白みはないかも。でも、「そういう彼or彼女を雇ったうえで自分がどうするか(学ぶ、考えるのは自分、とか)」次第では… B…結構手間もかかるし、苦労やトラブルもあるかもしれないし。でも、そのプロセス自体を楽しめるかもしれないし、状況変化にはむしろ強いかも。 ※ ホントの選択は、「誰を選ぶのか?」ではなく、「その結果、自分は何をするのか?」なのかもしれない。チームメンバーを選ぶ際には常に言えることの一つ。
  86. A…お金はかかるけど、円滑、スムーズで確実。とはいえちょっとつまらない感じもしないではない。でも、「早く着く」ということを可能性と捉えられれば、その限りじゃないかな。 B…トラブルで心も時間も費やすリスクはあるものの、もしかしたらそれも楽しいかもしれない。あと、「安上り」ということを可能性として捉えれば、何かできることがあるかも。 ※ ホントの選択は、「どちらを選ぶのか?」ではなく、「その結果、自分には何ができるのか?」なのかもしれない。資源配分を考える際には常にありうることの一つ。
  87. A…客観的に見えて実は提供者側の主観であり、自己満足の部分も。とはいえ、当事者だからこそ知りうるもの、こだわり等はあるはずで… B…母数はおそらく一番多いので客観的ではある。が、その分、「平均」であるのも事実で、すると「平均と自分との乖離」を考慮しなきゃいけない。 C…客観的だし、信頼できる意見かもしれない。でも、自分と知人とは趣味嗜好も違うはずだし、評価者自体のバイアスもあるだろうから。 D…同上 E…自分の判断なんで、間違っても割り切りはできるかもしれないし、ある程度情報をさらった後ならあてにもなるかもしれないけど。 ※ それぞれの選択肢にどういう「メリット」があるのかより以上に、「デメリット」や「限界」があるのかを理解しておくことがこの手の判断には重要。人はだいたい、都合のいいことしか見ようとしないので。
  88. A…感情を素直に受け止める、殺さないのは大事。でも、そこだけに終始すると後につながらないし、たぶん、対人関係が広がらないまま、狭い視野で終わる。 B…察することで、もしかしたら違ったものが見えてくるかもしれないし、コミュニケーションの幅もおそらく広がる。でも、「いい子」で終わるともしかしたらつまらない人間になっちゃうかも。 ※ 感情は行動の「動機」や「エネルギー」に、だからこれはこれで大事。でも、よりよい行動の結果を求めるのであれば、他方で理性も大事。バランスや使い分けの問題。
  89. A…まとめサイトなどでよくあるやり方。悪くないが、ホントに「好み」に合っているのかは微妙。また、合計や平均が高いからとて、それは見方を変えれば「個性がない」とも言える。 B…妥当なように見えて、「その他の項目」を考慮していないため、実はクリティカルなミスを招くことも。例えば、「いいと思ったけど財布が間に合わなかった」とか。 C…意外にそれなりの納得いく結果が得られるかもしれない…「直感」に近いように思えるけど、実はそうやって探索的にデータを見ることで結果、ベターな選択になることがある。 ※ データがあるからって、データそのものが答えを導いてくれるわけではない。データを扱うのはあくまで自分であり、自分の側に評価する軸や仮説がないと、結局、何も見えてこない。
  90. A…一番ありがちだし、悪くはないけど、とはいえ、ガイドが自分事として答えてくれるかはわからないよね。 B…これも悪くはないけど、とはいえ、ガイドと自分の好みがあっているとは限らないよね。 C…事実を聞いているわけだから信頼はできそうだけど、でもガイドがホントのことを言っているとは限らないよね。 D…これも事実を聞いているわけだから信頼はできそうだけど、でもガイドがどこまで知っているかはわからないよね。 ※ 他人に質問を投げかける時には、「見解」を聞くべき場合と「事実」を聞くべき場合がある。ここを間違えちゃうといい情報は得られない。
  91. A…もともとのミッションは面談だから、順当な判断。とはいえ、商談は単に断念するだけでいいのかどうかは考えてもいいかも。 B…もともとのミッションからすれば優先順位的にさてどうかなとは思う。でも、商談の方がメリットが大きいならそういう判断もあっていいかも。 C…一見、どちらも面目が立ちそうだし、優等生的な回答にも見える。でも、結局、どっちも中途半端に終わるということもないではない。 ※ 何かで成果をあげるためには、「やること」より以上に「やらないこと」を決めるのが大事。とはいえ、「やらないと決めたこと」について、もし低コストな代替策があるのなら、それはそれで模索するというのもあっていい。なんにせよ、考えることを止めないこと。
  92. A…悪く言われているわけではないのだし、とりあえずはそれでもいいかもしれない。でも、先々、訂正等しなきゃいけなくなったときに、結構大変かもしれない。 B…そのことでもしかしたらうまくいかないかもしれないけど、後の苦労は少ない。 ※ 事実に向き合うには勇気が必要だが、誤解や嘘を重ねに重ねた挙句、軌道修正するコストに比べれば小さなもの。もちろん、かといってなんでもかんでもそうである必要はないんだけど…
  93. A…組織人としてはあるべき態度かも。でも、多くの人は、しまっているうちに忘れ去ってしまうものだったりもする。 B…問題意識を大事にするという点では悪くはないかもしれない。でも、「面倒な部下」になるのは間違いないので、そのコストやリスクを許容しなきゃね。 C…器用ではあるし、首尾よくいけばスムーズかもしれないけど、上司にしてみれば顔をつぶされたと感じるよね。 D…結構な力業だし、時として必要なこともあるけど、でもこれも上司にしてみれば顔をつぶされたと感じるよね。 ※ いろんなやり方があるので、ケースバイケースってところだろうか。ただ、大事なのは結論や論点対立そのものより以上に、それは「なぜ?」なのかを掘り下げること。すると実は一致点が見えてくることがある。