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2015年因果フェススライド

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2015年8月6日因果フェス@東大駒場で発表したスライドです。

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2015年因果フェススライド

  1. 1. 哲学から見た 「因果」概念のレビュー 大塚 淳(jotsuka@lit.kobe-u.ac.jp) 神戸大学人文学研究科
  2. 2. 「数ある統計学の問題のなかでも、因果推論は 最も重要で、最も捉えがたく、そして最も無視 されてきたものの一つである」 ー P. Dawid (1979)
  3. 3. 科学的主張、その要件 1. 有意味 o その主張が真(ないし偽)になるのはどのような状況であるのか が明確でなければならない o ☓ 「天秤座の今日のラッキーカラーは紫色です」 2. 検証可能 o 実際に上の状況を経験的データによって確証できるのでなければ ならない o ☓ 「この宇宙のどこかにIQ100以上のカタツムリがいる」
  4. 4. 因果的主張、その要件 1. 有意味 o 「XはYの原因である」:この主張はいつ・いかなる条件下において 真(ないし偽)とされるのか? o 因果命題の真理条件 (truth condition)の策定 2. 検証可能 o 上述の条件は、実際にどのようなデータ・経験によって評価・検証 されるのか? 因果の 意味論 因果の 認識論 因果概念はこの両局面 において問題視されてきた
  5. 5. アウトライン 1. 因果の形而上学 2. 因果の規則説 3. 反事実条件説 4. 介入主義と因果グラフ 5. 因果性:新しいパラダイム?
  6. 6. 因果の形而上学 • アリストテレスの四原因 o 質料因 / 形相因 / 目的因 / 作用因 • 近世(デカルト):作用因の強調 o 「物質のあらゆる変化、すなわち物質の形のあらゆる相違は、運動 に依存する」 o それゆえ「被造物については、目的因でなしに、作用因を検討すべ きである」 (『哲学原理』, 1644)
  7. 7. 作用因とは何か • 因果力を持つ o 転がるボールAが静止しているボールBにぶつかりそれを動かす のは、前者がなんらかの力(power / force)を持つから • 必然性を持つ o 他の原因が働かない限り、ボールBは運動を開始せざるを得ない。 つまり因果的決定は必然的である。
  8. 8. ヒュームと規則説 David Hume (1711-1776)
  9. 9. 因果力の批判 「我々が見出しうるのはある出来事がもう一つの出来事に続いて 起こる、ということだけである。原因が行使する作用や力といっ た類のもの、あるいは原因とその結果と目されるものの間の繋が りなどを把握することはできない。」 – ヒューム、『人間悟性論』 「因果力」や「因果的連関」といったもの自体は 決して観察されない(認識論的懐疑)
  10. 10. 因果 = 恒常的連接 「我々は原因を、何らかの出来事がそれに続くもの、 と定義することができる。そこではおよそ前者に類似 するものが生じると、続いて後者に類似するものが生 じる。」 – ibid. 我々の経験に与えられるのは こうした「恒常的連接」だけ(経験主義)
  11. 11. ピアソンと規則説 Karl Pearson (1857-1936)
  12. 12. 因果概念の批判 「原因が知覚のシーケンスの一部を引き起こしたり強制したりす る、というような考えは、科学的には無意味である」 「(正しく理解された限りでの)原因とは、経験の流れの中の 一つの段階にすぎないのであって、何かその内部に存する必然的 連関の一段階を指すのではない。」 – Grammar of Science (1892) 因果性という概念は無意味なので 科学から追放すべき!
  13. 13. 因果から確率へ • じゃあ何が有意味で科学的なのか? o Pearsonの答え: 相関係数 o Associationという概念に明確な意味を与える (因果性と違って、「恒常的連接」にはちゃんとした 意味論がある!)
  14. 14. 規則説:まとめ • 「因果力」概念の否定 o 認識論的に:そんなものは見つからない (Hume) o 意味論的に:そんなものは無意味 (Pearson) • 因果性 = 恒常的連接 o 認識論的に:それが観察できることの全て (Hume) o 意味論的に:相関だけが明確な意味を持つ (Pearson)
  15. 15. Humeの二つ目の定義 全然「言い換え」じゃない・・・ 「我々は原因を、ある出来事がそれに続くもの、と定 義することができる。そこではおよそ前者に類似する ものが生じると、続いて後者に類似するものが生じる。 言い換えれば、もし前者が生じなかったとしたら、後 者も決して生じなかっただろう。」 相関 反実仮想 (counter- factual)
  16. 16. 反事実条件文の問題 • 「何について」の言明なのか? o この現実世界のありようについての言明ではない(反事実) o 「そうであり得たかもしれない」世界について • 可能世界意味論 (S. Kripke) o この世界の他に複数の世界を考える o 各世界において命題の真偽値を評価する
  17. 17. 反事実条件文の評価 「仮にCならば、Eだっただろう(C ☐→ E )」が真 ↓↑ いかなるCかつ~Eの世界に対しても、 より現実世界に似ているCかつEの世界が存在する • 可能世界の「類似性」の想定 o 任意の可能世界のペアにつき、どちらがより現実世界に 似ているかを決められる
  18. 18. Lewisの反事実条件説 C が E に因果的に依存する iff • C ☐→ E かつ ~C ☐→ ~E • (つまり「 仮にCだったらEで、仮に~Cだったら~E」 ) これによって因果命題に明確な意味を与える (つまり因果命題とは可能世界についての命題) Lewis (1973)
  19. 19. Lewis理論の問題 • 実際問題、どのようにして 1. 世界間の類似性を測る? 2. 各世界での命題の真偽値を定める? o これらが解決されない限り、与えられた因果命題を実際に 評価/検証することはできない • Lewisは因果の意味論を提供するのみ。 我々はさらにその認識論も知る必要がある。
  20. 20. 介入主義因果と 因果グラフ理論
  21. 21. 問題と対策 • 反事実条件アプローチの問題: o 「仮にC (~C)だったらE (~E)だっただろう」 o どのようにして実現されていない可能世界のことを知るのか? • 提案 o 実際にそうした可能世界を作り上げてしまえば良い o → Cに介入して、それに応じてEがどう変わるかを調べる
  22. 22. 介入主義因果:定義 Pearl (2000), Woodward (2003) C が E の原因である if Cに対するなんらかの介入によって、 Eの確率分布を変化させることができる C E P(E) I do(C = c’) ≠ P(E|do(C=c’)) ?
  23. 23. 因果モデル意味論 • 因果モデル: M = < G, P > o G = <V, E> は変数 V 上の有向グラフ o P は V 上の確率分布 • 介入 = 因果グラフGの改変 o 介入後の分布は改変グラフ G’ ともともとの確率分布 P から計算可能。 (Spirtes et alの操作定理, Pearlのdo計算)
  24. 24. 介入計算 喫煙を禁止すると発ガン率はどう変わる? 1. Sへの介入により P(S) = 0 と設定 2. 介入後分布 P(Cancer | do(~S)) をマルコフ条件から計算: P(結果) = P(結果 | 原因) P(原因) Drinking Smoking Cancer
  25. 25. 介入計算 Drinking Smoking Cancer グラフ改変: 介入によりSをD から切り離す P(S) = 0, P(~S) = 1に設定 P(結果) = P(結果 | 原因) P(原因) 観察可能
  26. 26. 因果効果の推定 • XのYに対する因果効果 o これは一般に とは異なる(交絡) • 因果効果の推定 o do 計算 (Pearl), 操作定理 (Spirtes et al.) o 傾向スコア分析 (Rosenbaum & Rubin)
  27. 27. 因果構造の推論 • 条件付独立性を使用するもの o PC, IC*アルゴリズムなど o (マルコフ条件 +) 忠実性(faithfulness/stability )を仮定 o 欠点:特殊な三つ組構造(unshielded-collider)のもとでしか 因果の向きを決定できない • 二変数間の因果の向きの推論 o 午後のお話
  28. 28. まとめ:因果グラフ理論 • 因果の意味論だけでなく、認識論も提供 o 因果効果の量的推定 (do calculus, Rubin’s framework) o 因果構造の質的推論 (因果探索アルゴリズム、その他) o → 因果的主張をデータに基づき検証する枠組みを与える
  29. 29. というわけでめでたく 因果が「科学化」された わけですが なんでこんなに時間 かかったの?
  30. 30. 仮説:パラダイムの違い
  31. 31. 経験論 vs 合理論 • 経験論(Empiricism) o 我々の知識はすべからく経験に由来しなければならない o 17世紀イギリス経験論:Locke, Berkeley, Hume • 合理論(Rationalism) o 経験に由来しない知識も、世界の理解のためには必要 o 17世紀〜大陸哲学:デカルトの神、カントのカテゴリー
  32. 32. 実証主義 (Positivism. 19世紀後半. Mach, Duhem, Pearson) o 「科学理論は最終的にはすべて感覚データに還元される」 経験主義の歴史 経験主義 (17世紀. Locke, Berkeley, Hume) o 「我々の知識はすべからく経験に由来しなければならない」 論理実証主義 (Logical positivism. 20世紀初頭. Carnap etc.) o 実証主義のアイデアを論理学&確率論を用いて遂行 o 科学と形而上学の線引き
  33. 33. 経験主義の枠組み • 基本概念 o 知覚、感覚データ、出来事、標本(の集合) • 科学の目的 o 予測ないし「思考の経済」 • 方法/道具立て o 述語論理(Frege, Russell) o 確率論(Kolmogorov) 経験主義 「パラダイム」
  34. 34. クーンのパラダイム論 基本概念 価値方法論 何を目指す べきか 世界をどう 記述するか どのように 研究するか ここに収まらないもの = 非科学 or 形而上学
  35. 35. 経験主義パラダイム 基本概念 価値方法論 予測 出来事、 標本空間 相関、回帰 ここに反実仮想や 因果性が入る余地はない それらは科学でなく、 形而上学に属する!
  36. 36. 因果分析のパラダイム 基本概念 価値方法論 介入評価、 説明 可能世界、 有向グラフ do計算、 傾向スコア
  37. 37. パラダイムの違い=世界観の違い だから・・・ 1. 同じ道具/データを扱っているようでも、その理論 的意味合いは全く異なりうる。 2. パラダイム間の対話は没交渉に終わりがち。 3. パラダイムシフトの時代は科学者がやたら哲学づく。 あるいは哲学者が跋扈する。
  38. 38. 結論 1. 因果性の体系的研究のためには、その意味論・ 認識論の双方が必要。 2. 経験主義のパラダイムからは、因果性は「見え ない」。 3. 因果分析の興隆は、統計学の非経験主義的(合 理主義的・実在論的)潮流を示す?
  39. 39. 参考文献 • 規則説 o Hume, D. (1748). An Enquiry Concerning Human Understanding. o Pearson, K. (1892). The grammar of science. W. Scott. • 反事実条件説 o Lewis, D. (1973). Causation. The Journal of Philosophy, 70(17), 556–567. • 介入主義 o Pearl, J. (2000). Causality: Models, Reasoning, and Inference. CUP, o Spirtes, P., Glymour, C., & Scheines, R. (2000). Causation, Prediction, and Search. The MIT Press. o Woodward, J. B. (2003). Making Things Happen: A Theory of Causal Explanation. OUP. • パラダイム論 o Kuhn, T. S. (1962). The Structure of Scientific Revolutions. U. Chicago Press

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