More Related Content Similar to Evidence-Based Education Policyと日本の英語教育学 (20) More from Takunori Terasawa (14) Evidence-Based Education Policyと日本の英語教育学2. 概要
1. エビデンスベースト とは何か
2. エビデンス階層
3. 小学校英語の政策決定を
エビデンスの観点から振り返る
4. 良質のエビデンスを得るために
必要な研究デザイン
5. 英語教育研究向けエビデンスの
ガイドラインをつくる
2
5. EBP: Evidence Based Practice
EBM: Evidence Based Medicine
(根拠に基づいた医療)
Evidence Based Education Policy
(or Evidence Informed EP)
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Bridges, Smeyers, & Smith (2009)
Evidence-Based Education Policy:
What Evidence? What Basis? Whose
Policy?
10. オックスフォード大学EBMセンターのガイドライン(拙訳)
(Oxford Centre for Evidence-based Medicine, 2009)
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1a ランダム化比較実験の系統的レビューで結果に均質性あり、 1b 個々のランダム化
比較実験のうち信頼区間の狭い、1c 治療群が全員生存あるいは非治療群が全員死亡
2a コホート研究の系統的レビューで結果に均質性があるもの、2b 個々のコホート研究。
質の低いランダム化比較実験も含まれる、2c アウトカム研究,生態学的研究
3a 症例対照研究の系統的レビューで結果に均質性があるもの、3b 個々の症例対照研
究
4 一連の症例を集めたもの
5 明確な批判的吟味のない,あるいは,生理学,基礎実験,原理的な議論に基づく専
門家の意見
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信頼度低 5 A 狭義のSLA、認知科学、脳科学
B 外国語習得過程 C 情意面の心理学
D’ 事例報告(デザイン劣)
政策エビデンス
としての信頼度高
D 研究校等の事例報告(デザイン良)
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信頼度低 5 A 狭義のSLA、認知科学、脳科学
B 外国語習得過程 C 情意面の心理学
D’ 事例報告(デザイン劣)
E 早期英語経験者比較(デザイン良)
政策エビデンス
としての信頼度高
D 研究校等の事例報告(デザイン良)
E’ 早期英語経験者比較(デザイン劣)
33. 実証研究(科学的エビデンス) 順位
シナプス(神経細胞の結合)の数は3歳前後にピーク、その後減る 8
生後6ヶ月~12ヶ月の乳児に英語を聞かせたところ、/l/ から /r/ に音が
変わると脳波も変化した
スウェーデン語のL2学習者を調査したところ、母語話者に近いVOT習得
と習得開始時期に有意な相関があった(早いほどNSに近いVOT)
8歳以降に米国に移住した人の文法性判断テストの成績は、母語話者や
7歳以前移住者より低かった
X社の児童英会話教室に通ったことがある生徒(13-15歳)を追跡し、
標準テストを受けさせた.対照群より経験群の点数の方が高かった
全国の小学校で「総合的な学習の時間」に英語に触れた者を追跡し、
センター英語の成績を調査した.経験者の平均点の方が高かった
P市(教科として小英実施)と隣のQ市(未実施)の出身者(25-34歳)
に英語力を尋ねた(自己評価設問使用).P市の出身者のほうが英語が
できると答えた者が多かった
政府によって検討中の小学校英語プログラムを実験校に先行的に導入。
経験者を追跡し、成人後に英語力を測定した結果、経験者の英語力は
対照群より高かった。
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50. EBP ≠ 万能薬
EBP = べからず集
能登 (2010, EBM入門書) の基本メッセージ
– 誇張された“科学的効果” にだまされない
– バイアスの大きい “科学的効果”は
割り引いて理解する
EB-ELTの場合?
– 科学的英語教育にだまされるな
– 「英語教育の科学」すべてを
真に受けない
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51. EBMと教室研究で事情が違う
1. 短期目標(エンドポイント)の有無
医療 終局的な成果(治癒・ 生存)の代理指標としてコンセンサスが
得られている指標が多数ある
教育 代理指標に関するコンセンサスはほぼない
2. 効果が発現するまでの時間
医療 比較的短期・中期
教育 非常に長期
3. 実験(とくにRCT)の困難度
医療 一般的
教育 困難
4. ランダムサンプリングの困難度
医療 困難(通常、疾病は低確率の現象)
教育 コストは大きいが可能(教育上の介入は低頻度現象ではない)
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Bridges, D., Smeyers, P. & Smith, R., (ed.). (2009). Evidence-based education policy:
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JASTEC プロジェクトチーム (1986, 1987, 1988, 1989).「早期英語学習経験者の追跡
調査:第 1, 2, 3, 4 報」『日本児童英語教育学会研究紀要』5, 6, 7, & 8. (ペー
ジ略)
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プリコット.
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