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HLCワークショップ (2016年3月27日) 「言語と社会」の測り方・入門―量的アプローチの根本思想― 寺沢 拓敬 (東京大学社会科学研究所/学振特別研究員PD)

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「言語と社会」の測り方・入門―量的アプローチの根本思想―
寺沢 拓敬 (東京大学社会科学研究所/学振特別研究員PD)

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  1. 1. HLCワークショップ (2016年3月27日) 「言語と社会」の測り方・入門 ―量的アプローチの根本思想― 寺沢 拓敬 (東京大学社会科学研究所/学振特別研究員PD) 1
  2. 2. 自己紹介 2 応用言語学
  3. 3. 研究内容 1. 日本社会における 言語(とくに英語) をめぐる世論 2. 仕事と英語 3. 英語教育制度史 4. 応用言語学の方法論 『「日本人と英語」 の社会学』 (研究社、2015) 『「なんで英語やるの?」 の戦後史』 (研究社、2014) 3
  4. 4. 本日のスケジュール 1. なぜ量的研究を選ぶのか? 2. 量的アプローチの下位分類 3. 統計手法 – 相関係数 – クロス集計 – クロス表の検定(カイ2乗検定) 4. 様々なデータ収集の方法 4
  5. 5. なぜ量的研究を 選ぶのか? 5
  6. 6. 議題1 Q. 社会言語学や言語教育学では量的アプ ローチが最も使われている。研究対象に よってはこれ以外の選択肢がほぼない場 合もある。ではなぜ量的研究はこれほど 重視されているのか? 量的に研究するといかなる 意義が得られるのか? (i.e. 量的研究のメリット) 6
  7. 7. • ヒューマンに必然的につきまとう認知バイアス のある部分を軽減できる – 大数の直感的観察は困難 – 観察した事例すべてを等しい重み付け で直感的に理解することは不可能 – ある事象が「偶然の範囲内かどうか」 を直感的に判断することは困難 – 3つ以上の変数の関係を直感的に理解するのは困難 • 大量観察に伴うバイアスと無関係の現象に無理 に適用すると「ナンセンスな計量研究」に e.g. 英語母語話者1名と初学者1名の英語力を数値的に比較 量を計る(統計学に思考を預ける)意義 7
  8. 8. 議題2 Q. その他の非量的手法に比べて、量的研究 にはどのようなメリット・デメリットがある か? Q2a. 質的研究(フィールドワーク等)に比 べて、量的研究の利点は?弱点は? Q2b. 歴史的手法(資料調査等)に比べて、 量的研究の利点は?弱点は? 8
  9. 9. ランダム化 比較実験 準 実験 調査観察研究 歴史 計量 質的 共変量の 自動調整 ○ × × × × 介入 ○ ○ × × × 同時代性 ○ ○ ○ ○ × 分析単位 数値 数値 数値 意味 意味 対話的な データ収集 × × × ○ × 9
  10. 10. 10
  11. 11. 量的アプローチの 下位分類 11
  12. 12. 量的研究のいろいろ(分類例) データ 分析方針 1 実験(ランダム化比較実験・準実験) 2a ランダム抽出調査 単純集計 2b 包括的要約 2c 因果モデル 3a 有意抽出調査 単純集計 3b 包括的要約 3c 因果モデル 4a 全数調査 単純集計 4b 包括的要約 4c 因果モデル 12
  13. 13. (1) 介入の有無 • 介入あり 実験 – 因果的な効果がわかる • 介入なし: 観察調査 – わかるのは相関関係のみ – ただし、特定の統計手法を用いることで因果 効果を推測することは可能 13
  14. 14. 分析実例: 1 実験 • 社会言語学にはほぼ例なし • ただし、ランダム化比較実験はたとえば 心理言語学には多数の例あり。 • 準実験は外国語教育研究で多数の例あり。 14
  15. 15. (2) 抽出の種類 ランダム抽出調査 推測統計を利用して母集団に一般化可能。莫 大なコスト。 有意抽出調査 母集団に一般化は不可能。実施コストは比較 的少ない。 全数調査 分析結果は母集団の特徴そのもの。きわめて 莫大なコスト。 15
  16. 16. ランダム抽出 (random sampling) 16
  17. 17. (3) 分析方針 単純集計 平均値やパーセンテージの算出。 およびその簡単な比較。 洗練された統計的要約 因子分析や対応分析などの多変量解析を用いて、 多要因・多次元にわたる複雑なデータを理解が容 易になるレベルにまで圧縮する。 因果モデルに基づく仮説検証 「原因変数→結果変数」というモデルに基いて仮 説を設定し、その正否を統計的に検証する。 17
  18. 18. 2a ランダム 抽出調査 単純集計 国立国語研究所による定点経年調査 包括的要約 社会階層と英語学習目的の関係 (寺沢 2015: 5章) 2b 2c 因果モデル 外国人との接触が第二外国語学習に対する態度 に与える影響(寺沢 2015: 7章) 3a 有意抽出 調査 単純集計 Twitterアンケート機能による方言意識調査 3b 包括的要約 言語学習の動機づけ研究 (e.g. Apple, Silva, & Fellner 2013) 3c 因果モデル Variationist approach 4a 全数調査 単純集計 日本語学習者数の推計 4b 包括的要約 自分が担当している全クラスの学習者の状況を 把握する場合。(例:スピーキングテストとラ イティングテストとの相関。1組, 2組, … k組 の成績の差。授業アンケートの結果の特徴) 4c 因果モデル 18
  19. 19. 社会階層と英語学習目的 (寺沢, 2015, 5章) id occup gen 英米が好 きだから 仕事上有 用だから 海外旅行 に必要 … 学習するつ もりはない 1 正規W 男 No Yes No … No 2 非正規 女 Yes No No … No 3 主婦 女 No No Yes … No 4 正規B 男 Yes Yes No … No 5 正規W 女 Yes No No … No 6 非正規 男 No No No … No 7 無職 女 No No No … Yes 8 正規B 女 No No No … Yes 9 正規W 男 No No No … Yes … … … … … … … … 19
  20. 20. クロス集計 英米が好 きだから 仕事上有 用だから 海外旅行 に必要 … 学習するつ もりなし 男・正規W 5人 12人 10人 … 98人 男・正規B 3人 4人 9人 … 212人 男・非正規 1人 … … … … … … … … … 女・正規W … … … … … 女・正規B … … … … … 女・非正規 … … … … … … … … … … … 20
  21. 21. 21 対応分析 (correspondence analysis)
  22. 22. 外国人との接触が第二外国語学習に対する態度に与える影響 (寺沢 2015: 7章) 22
  23. 23. 外国人との 接触頻度 第二外国語に興味あり vs. 興味なし 就学年数 Gender 年齢 統制変数 原因変数 結果変数 23
  24. 24. 24
  25. 25. 統計手法(演習) 25
  26. 26. 議題3 Q. 計量分析において相関係数とは何か。 その簡潔な定義を書いて下さい。 参考)ウィキペディアの「色々な相関関係」のページ 26
  27. 27. 相関係数 (正式名称: Pearsonの積率相関係数) ※ データの個数 の偏差の総和 の偏差の総和 の偏差』の積」の総和 の偏差』と『 「『 の分散 の分散 の共分散 と y x y x y x y x s s s r y x xy 27
  28. 28. 演習 (相関係数) 実際のデータに基づいて (1) 散布図の出力 (2) 相関係数の算出 28
  29. 29. 議題4 • 専門的には、ピアソンの積率相関係数(r) は連続変数xと連続変数yの直線的関連を数 値化したものである。 このような指標を用いて量的 分析を行う時、「相関のある /なし」はどのように定義さ れるべきか? 29
  30. 30. 議題5 カテゴリカル変数同士の連関 ーーーーーーーーーーーー Q. 長野県松本安曇野地域では、特定の動詞 (例、食べる、する)の勧誘表現として「た べり。」 「すり。」 (たべr+i, すr+i)が使 われる。この表現の使用にはどうやら男女差 があるような気がする。では、どのような証 拠があれば、「すり」表現とジェンダーに連 関があると言えるか? 30
  31. 31. データ分析演習 クロス集計 /r/ /…/ Total Middle Class 50人 (50%) 50人 (50%) 100人 (100%) Working Class 20人 (20%) 80人 (80%) 100人 (100%) 31
  32. 32. 演習課題 長野県松本安曇野地域では、勧誘の表現として 「動詞辞書形(-u)+iya」が広く使われている。 例 「しましょう。」→「すりや。」(sur[u] + iya) 「行きましょう。」→「行きや。」(ik[u] + iya) 「歌いましょう。」→「歌いや。」(uta[u] + iya) 同地域の出身者30人にこの表現を使うかどうか 尋ねたアンケートがある。このデータから、この 表現の使用(i.e., 使っているという自覚)は、(a) ジェンダー、(b) 年齢、(c) 出身地と関連があるか 分析しなさい。 32
  33. 33. 議題6 • カテゴリカル変数xとカテゴリカル変数yの クロス集計を行う。 この時「関連のある/なし」 をどのように定義すべきか? 33
  34. 34. 日常語 vs. 学術界における用法 vs. 統計用語 34 その分野の先行研究・理論から 「取るに足らない」と判断されたもの χ2 = 0.0 Prob (χ2, df=…) < 0.05 etc 何らかのつながり 統計界 学術界 日常語 「関連あり」
  35. 35. データ収集方法 35
  36. 36. 一般化可能性 高い 一般化可能性 低い 研究デザイン 制約的 研究デザイン 自由 社会調査の 2次分析 フィールドアンケート ウェブ アンケート ウェブアンケート (調査モニター型) マクロ統計 (例:官庁統計、 全学テ) 様々なデータ収集方法 36 質的研究 (インタビュー等)
  37. 37. フィールドアンケート 自力で収集、広義のフィールド調査 Variationist sociolinguistics: インフォーマントにアンケートやインタビューを行い、特定の 変種を使用するかどうかを調査 教室調査 教室でアンケートを配り、生徒の外国語学習に対する動機づけ を調査 関係者への調査 知人のネットワークを利用し、公立学校の 英語教師にアンケートを依頼。 英語教育改革に対する態度を調査 参考書 竹内・水本 (2012) 37
  38. 38. 社会調査データの2次分析 要点 既存の大規模学術調査(多くはランダム抽出)のう ち、データアーカイブに寄託されているものを分析。 アーカイブ – 東京大学社会科学研究所SSJDA – 大阪大学質問紙法にもとづく社会調査データベース – ICPSR(米国。データアーカイブの先駆け) 参考書 – 佐藤・池田・石田 (2000) – 某学会の無理解に対する「怒りの啓蒙」 寺沢拓敬 (2013, April 23)「外国語教育研究・応用 言語学における『社会調査の2次分析』」(個人ブログ) http://d.hatena.ne.jp/TerasawaT/20130423/1366726991 38
  39. 39. 文献案内 (☆: 特にオススメ) 三浦省五ほか編『英語教師のための教育データ分析入門』大修館書店 代表的な分析手法の「概略的なイメージ」を短時間で理解するのには良い。数 式はほとんどなく入門書の入門書といった雰囲気。まずこの本から入って、次 に本格的な計量分析の教科書に進むのも効果的なはず。 ☆竹内理・水本篤編『外国語教育研究ハンドブック』松柏社 「概略的なイメージの速習」と「原理の深い理解」のバランスがとれている。 必要最低限とはいえきちんと数式が出てくる点、そして、質的研究にも目配り がなされている点で、応用言語学の学生の入門書として最適。 ☆太郎丸博『人文社会科学のためのカテゴリカルデータ解析入門』ナカニシヤ出版 カテゴリカルデータに焦点化し、数理的な面から原理的に解説。数式は多いが、 理系学生向け教科書とはちがい small steps で進んで行くため、ついていくの は容易。事例は社会学のものが多いが、手法の面では社会言語学で必要なもの をほぼカバーしている。 数理社会学会監修『計量社会学入門』世界思想社 従来のメソドロジーの教科書と違い、手法のみに特化せず、手法とデータ、対 象、理論をひとつのパッケージとして解説する点が新しい。取り扱う内容の多 くは言語研究とずれるが、読み物として読んでおいて損はない。 39
  40. 40. Useful web links • ㈱ 教育測定研究所・西原史暁氏による 「オンラインで無料で読める統計書22 冊」 http://id.fnshr.info/2013/08/11/online-stat-books/ • 京都女子大学小波秀夫氏による「統計学 演習のページ」(自習リソース) http://ruby.kyoto-wu.ac.jp/Statistics/Training/ 40

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