攻略記事の書き方
フリーライター
DiGRAゲームメディアSIG代表
鴫原 盛之
ゲームライターコミュニティ01用
自己紹介
鴫原 盛之(Morihiro Shigihara)
1993年よりゲームライター活動を開始。1997年~
2002年までゲームセンター勤務と店舗開発(※店
長経験2年半)に従事。その後、携帯コンテンツの
営業などの職を経て2004年よりフリーに。ゲーム
雑誌、webサイトへの寄稿をはじめ、攻略本・関連
書籍の執筆経験多数。2009年よりコンテンツ文化
史学会、2012年よりDiGRA JAPAN正会員、2014年
よりゲームメディアSIG代表に。
最近の主なお仕事
●●●●「『ここだけ』にしたくないゲームの話」
(KindleKindleKindleKindle)
●●●●共著:「デジタルゲームの教科書」 ●●●●共著:「ビジネスを変える『ゲームニクス』」
<ゲーム雑誌>
 ファミ通DS+Wii
 サッカーゲームキングなど
<WebWebWebWebサイト>
 GAME Watch
 Itmedia(ねとらぼ)
日経トレンディネット
 エキサイトゲームナビなど
●●●●制作協力:「人はなぜゲームにハマ
るのか」
ご参考:今までに執筆を手掛けた
攻略本など(一部)
●「グラディウス・ポータブル」公式ガイド
●「極魔界村」オフィシャルコンプリートガイド
●「『トリガーハート エグゼリカ』アーカイヴ・アンカー」
●「『NewスーパーマリオブラザーズWii』任天堂ゲーム攻略本」
●「『マリオカートWii』任天堂ゲーム攻略本」
●「『WCCF IC 08-09』監督術読本」
●「アルカディア カードゲームコンプリートvol.3」
●「アルカディア カードゲームコンプリートvol.4」
●「スーパーマリオ3Dランド」
●「『大乱闘スマッシュブラザーズX』任天堂ゲーム攻略本」
●「怒首領蜂大往生 ブラックレーベルEXTRA」初心者向けガイドブック
●「Wii Uでとことん楽しむ『ファミコンリミックス』」
●「ファミ通DS+Wii」付録:「大乱闘スマッシュブラザーズfor3DS」
「攻略記事」とは?
webメディア全盛の現代における攻略記事とは?
cf.ゲームの世界観、基本ルールなどを解説した記事は・・・単なる「紹介記事」
 ※メーカーの公式資料や、他人の記事をただ書き写しただけのものも同様
cf.作品の良し悪しを論じてまとめたものは・・・これは「レビュー記事」
・攻略記事≒ライターのオススメゲーム紹介記事 という図式が基本。
 自身が評価に値しないと考えるゲームで記事を書くのは(受け仕事でなければ)
基本的にやってはいけない。読者に対して面白いと思わないゲームをわざ
わざすすめるのは意味がない。無論、特定のメーカーの太鼓持ちもダメ。
 ※人気タイトルに固執する必要はない。たとえ執筆時点で不人気のゲームで
あっても、記事をとおしてオススメする形になっていればオーケー。
・単なるクソorバカゲー呼ばわりするためダケにやっちゃダメ!
 これでは乞食ブログや、通販サイトによくある罵倒だけのカスタマーレビューと
同レベルでプロ失格。そもそも、そんなものはゼニにならない。
・自分の腕自慢目的でやるのもダメ!
  上記の大雑把な定義を満たすのが何よりも先決。(腕自慢は同人でやれ)
大雑把な定義:読者がゲームの腕を上げることができ
る、ライター自身が体得した情報が載っている記事。
攻略ライターに必要なスキル
ゲームの腕(当たり前)
「文芸」のスキルはほぼ必要ナシ!
・あればあったで個性が出せて自身の作風の確立にはつながるが、「攻略記事」と
して読まれる情報が載っていることが先決。どんなに文章が面白くても、攻略情
報がなければそれは攻略記事ではない。
・攻略記事の場合、伝えたい遊び方やゲーム内容を言葉に脳内変換して日本語と
して最低限通じる文章が書ければオーケー。あとは場数を踏んで慣れるのみ!
※ただし、ライター未経験者の場合は、初めのうちは担当編集者(できれば、雑誌
や書籍の編集、校正経験者)の添削を受けるのがマスト。
Q.どのぐらいの「腕」が基準? ウメハラさんみたいな、いわゆるプロゲー
マークラスの「腕」が必須なのか?
A.ノー。それだと攻略ライターは世界で数名しか資格がないことになる。(無
論、非凡な腕がないよりはあったほうがいい)
要は、読者に対して任されたゲームがうまくなるためのコツやテクニックなど
を教えられるだけの腕を持っていればいい。
攻略ライターの商品は「文芸」や「文章」では
なく、「攻略のための情報」である。
攻略記事を書く前に・・・
腕に自信のないゲームの攻略記事は書くな!
・自信がないなら即断れ! 目先の小遣いに引かれて受けるな!!
・自分の好みじゃないゲームの場合も、慣れるまでは書かないほうがいい!
 ※愛着の無さが文章にどうしても出てしまい、その結果として読者の気分を損ねるリ
スクが高まるから。→自身の信用にも跳ね返ってくる。
・どうしても受けたいなら、「しばらくやり込んでみて、できるかどうか判断します。」と返
答すべし。(※ただし、その分コストはかさむ)
・攻略記事は、リリースや紹介記事を書くのと同じノリで受けてはいけない!執筆の依
頼を受けてから初めて触り、ほんの数回遊んだだけで書いていいものではない。
(※やり込みが足りないと、執筆中に絶対に行き詰まる)
・通常の紹介記事よりも原稿料を高くしてもらうのが当たり前!
 ※攻略情報を発見するための時間や「技術料」が対価となって然るべき。
攻略記事を書くにあたっては、自分の得意・不得意ジャンルやタイト
ルを把握し、仕事を受ける際の判断基準となる一種の物差しを常
に持っておく必要がある。
考察:ゲームの腕を上げるには?
・パクる。
・食わず嫌いにならず、面白そうだと思ったゲームはどんなジャン
ルのゲームでも遊ぶのが(おそらく)基本。
○やってていい「パクり」:上手だなと自分が思う信頼できる人からの口コミ、他人
がプレイしているところを直接見たり聞いたりしてうえでマネをする。
×やってはいけない「パクり」:非公式のネット動画や個人ブログ、攻略サイト。
※Wikipediaもウソが多いので却下。「神プレイ」なるタイトルもアテにするな!
※まず自分で遊んで、どこかで詰まったらパクる。遊ぶ前からパクるのはダメ!
鴫原の経験から:他人からパクったパターンが自分でもできるように
なったら、そこからさらに進化したオリジナル攻略パターンにアレ
ンジできるようになるまでやり込む。
※今思うと、これが自身の腕を上げるのに最も役立ったかも?
警告!:改造・チートは絶対に使うな!!!!!!!!!!!
腕が上がった気にはなれても本当に上がったとは言えない(=ゲームのドーピン
グ)。 ※そもそも、インチキでクリアした情報を「攻略」と言ってはいけない。
※ただし! やっていい「パクり」と、やってはいけない「パクり」がある。
執筆時のポイント(らしきもの)
「クリアしただけ」のレベルでは記事を書いてはいけない。
どうせやるなら記名原稿で勝負せよ
 自身の宣伝になり、執筆時に責任感も自然と出るから。
「なぜ、どうやってクリアできたのか?」を言葉で説明できるだけの腕と情報の両方
を持つことで、初めて執筆のスタートラインに立てる。
繰り返しプレイして発見した、攻略のコツを要する場所とその方法をピックアップし、
記事のボリューム内に納まるようにポイントを絞り込む。同時に、必要な写真の
点数もある程度決めてしまう。
  ※攻略のポイント抽出の基本的な考え方
  自分がプレイして引っかかった場所≒読者もおそらく引っかかる!
・マニア、ゲーマー用語は原則として使わない。
・課金(レアガチャ引き等)を前提とした記事にはしない。
 例:神ゲー、リセマラetc.(※「ゲーマー」も私的にはNG)
 →最初から「読む人を選ぶ」(間口を狭める)ことにつながるから。
執筆時のポイント(らしきもの)2
文章を長くするぐらいなら、画面写真や動画を
使って説明するなどの方法を考える(※詳しく
は後述)。
現代のwebメディアはスマホで読む人が多いこともあり、長文は
飽きられる原因につながりやすい。
稚拙な表現は避ける。
 ex.語尾に「~だぞ。」「~ぞ。」などをつける
使ってはいけない表現:ネットスラング全般
 ※記事がいかにも安っぽく見えてしまうから。
 ex.「キリッ」「wktk」「乙。」「大杉。」「ワロス」「www」「氏ね」etc.
画面写真の使用について
(撮影時のコツ)
・毎回多めに取っておく。(取り忘れ、取り直しは大幅な時間ロスになる)
・原稿提出後も、(未使用分も含め)なるべくとっておく。(校正時に役立つ)
攻略記事において画面写真の使用は必須!
撮影は絶対に手を抜かず、少しでも見栄えのいいものが取るれよ
うにとことんまでこだわれ!!
鴫原的最重要ポイント
(理由)
・絵があれば読み手がイメージしやすいから。(さらに、連続写真や写真に矢印
を書き添えるなどの補足説明を加えるとより分かりやすくなる場合もある。)
・文字だけだと読みにくい:読んでいて疲れる(読むのをやめられてしまう)から。
・写真にこだわっていない(手を抜いている)記事は見ればすぐわかる。
・文章表現力よりも、むしろ撮影の技術のほうが経験・力量差が出やすい。
ご参考:記事中の画面写真の比較
〇よい例 ×悪い例
例:「敵を攻撃して得点を稼ぐコツ」の攻略・解説
に写真1枚を使うと想定した場合
ある程度先へ進んだ場面。見た目が
派手で、ゲーム独特の世界観を
写し出すことで読者の目を引く。
開始直後の場面。ゲームが盛り上がる
前段階ゆえ殺風景で目を引かず、
解説に必要な情報量も自ずと少なく
なる。
※写真はコナミのファミリーコンピュ
ータ版「グラディウスII」。
(C)KONAMI 1988
webメディア全盛時代の課題
プレイ動画をいかに活用するか?
(動画使用のメリット)
・使い方次第で、文章や写真では細かく説明できない部分を伝えら
れる(※特にアクション系)。
・インカムを使用して音声も録音すれば声でも解説ができる。
(問題点)
・編集にどうしても時間がかかる(その分利益が減る)
・ゲーム、文章の技術に加えて動画編集のスキルやPC、キャプチャ
ーボードなどの機材・アプリケーションの調達が必要になる(同じく
元手が増える)。(※クライアントによっては機材が借りられる)
・実況の際は自身のトークスキルも当然必要になる。(※プロのゲー
ム実況者は既に日々ボイストレーニングをする時代である)
応用編(らしきもの)
・長年仕事をしていると、事前にどのくらいの労力が必要
かがだいたいわかるようなる。
 ex.「スーパーマリオ」シリーズ(難易度は毎回ほぼ一緒)
 労力が事前にわかる = ギャラ交渉がしやすくなる!
・締切りの数日前までに原稿を書き終えておくと記事のク
オリティが総じて上がる。 
 →あとで編み出したパターンに差し替えたりできるから。
・メーカーから必要な情報を引き出せるコネクションを作る
となおよい。
 →キャラクターの固有名詞、得点の計算式をあらかじめ
聞いておく、アップデート予定日を把握しておく etc.
その他:私論などいろいろ
趣味で攻略ブログや実況動画をやるぐらいなら、商業メ
ディアで仕事をする時間に割くべき。
・経験上、編集者やメーカー、読者に確実に見てもらうことで(ライターとしての)
腕が鍛えられるから。(個人のサイトにただ書いただけではムリ)
 ※ちなみに、鴫原は個人サイトで攻略記事や実況動画を作ったことはタダの一
度もナシ。
 (そんなヒマがあるなら仕事にしてゼニにする!)
・個人サイトの攻略記事や動画サイトで、ゲーム画面・動画を著作権の権利者を
無視して勝手にアップしていないか?
 ※プロならそこいらのオタクちゃんと同レべルでは絶対ダメ!!
 「みんながやってるからいいじゃん?」「宣伝してやってるからいいじゃん?」
 いいワケがない!  プロのライターとしては一切認められない(F**K!!)。
ゲームの腕だけでなく、執筆からクライアントやメーカーと
の交渉や調整まで全部できて、初めてプロとして攻略記
事が書けるライターを名乗る資格がある(と思われる)。
Web媒体ならではの課題・問題点
オンライン対応ゲームの場合、アップデートがあるとゲームの内容自体が大き
く変わることが往々にしてある。
FPSや対戦格闘などの対人戦の攻略記事の場合、相手にも恵まれないと強
くなれない、クオリティの高い攻略記事が書けない。
よって、過去に書いた攻略情報が役に立たなくなる場合もある。ちなみに、
パッケージ版でも(人VS人の)対戦ゲームは攻略トレンドが日々変化する。
※メーカーに原稿チェックを回している最中にアップデートが実施され、リライ
トせざるをえなくなったこともあり(苦笑)。
紙媒体時代からの問題点:プレイ時間のかかるRPGやシミュレーション系はハッ
キリ言って割がよくない。(※キャラの育成やマップ移動等に時間を食うから)
さらに、セーブデータが1個しか作れないスマホアプリなどの場合は、レベルを
上げてしまうと初期レベル時の攻略記事用の画面写真が取れなくなってしまう。
オンラインゲームでランダムマッチング方式の場合は、自分のレベルにふさ
わしい相手に毎回出会えるとは限らない問題も・・・。
チーム対戦の攻略記事の場合、チーム全員のギャラはどうする? 例えば5
人のチームで攻略した場合、原稿料も5倍になるの?
攻略ライター的視点による
編集者・クライアントへの要望
・著者校正はなるべくさせてほしい
 たまに、メーカーが勝手に内容を書き換えることがあるから(苦笑)
・掲載予定日、掲載が完了したら、その都度連絡が欲しい
 売上を確定させると安心するから。
 ※特に、掲載予定日がズレて締め日をまたがれて振込が遅れた
場合は最悪! ライターのモチベーション、信頼度が大きく低下する。
・PV数、読者からの反応をなるべく教えてほしい
→自分たちも、サイトの発展に協力したいという意味。PV数が上がら
なければ、結局広告料収入~自身の原稿料アップにもつながらない。
→当然、自身のスキルアップの参考にもなるから。
ご参考(CM)
攻略記事に関するものも含め、ゲームメディア界
隈の諸問題は拙著、Amazon Kindle版「『ここだけ』
にしたくないゲームの話」にも書いてあります!
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「『ここだけ』にしたくないゲームの話」
ご清聴ありがとうございました。
本プレゼンファイルは後日、日本デジタルゲーム
学会 ゲームメディアSIGのFacebookページでも
公開予定です。
https://www.facebook.com/digrajapan.gamemedia
鴫原のTwitterアカウント
(ご感想などはこちらへ)
@m_shigihara

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