SlideShare a Scribd company logo
1 of 7
Download to read offline
JWEIN14 ☞☞
ソーシャルゲームにおける互恵的利他主義に基づ
く協調行動
Cooperation based on Reciprocal Altruism in a Social Network Game
高野 雅典
Masanori Takano
株式会社サイバーエージェント
CyberAgent, Inc.
takano masanori@cyberagent.co.jp
和田 計也
Kazuya Wada
(同 上)
wada kazuya@cyberagent.co.jp
福田 一郎
Ichiro Fukuda
(同 上)
fukuda ichiro@cyberagent.co.jp
キーワード: Data Mining, Evolutionary Game Theory, Reciprocal Altruism, Snowdrift Game, Social Network
Game
概要
相互の協調はヒトをはじめとして多くの動物に見られる現象であり,社会を形成する上で重要な要素であ
る.そのため協調行動について様々な実験的・理論的研究がなされており,多くの証拠が得られてきた.しかしな
がら,それらの研究のほとんどは我々が生活する現実世界に比べ非常に簡略にモデル化されている.このようなモ
デル化はヒトの社会的行動を分析するために重要な事であるが,そこで得られた証拠が現実世界で適用可能である
ことを検証することも重要であろう.ヒトの社会性に対する定量的な研究において,ソーシャルゲームのデータ分
析は強力な手段である.ソーシャルゲームは多くのプレイヤーが前述のような研究よりも制約の少ない環境で社会
的な相互作用をすることができ,また,すべてのプレイヤーの行動はログとして記録可能だからである.我々は協
調行動の進化を説明する理論的枠組みの一つである互恵的利他主義に焦点を当て分析した.そのために,ソーシャ
ルゲームにおいて Snowdrift ゲームに類似した状況に焦点を当て,その状況でのプレイヤーの振る舞いを協調的・
非協調的に分類した.その分類に基づき,互恵的利他主義に基づく協調行動について分析を行った.その結果,プ
レイヤー間に互恵関係が存在すること,互恵関係によりゲームが有利になりうることが確認された.そして,その
ような互恵関係の構築には相手に協調することに加え,(ゲーム上のデータとしてはほとんど意味のない)コミュ
ニケーションが重要であることが示された.加えて,非協調的なプレイヤーに対して「自分と相手の両方に利益が
あるにも関わらず相手の利益になるようなことはしない」というような懲罰行動の存在も示された.
1. は じ め に
相互の協調はヒトをはじめとして多くの動物に見られる
現象であり,社会を形成する上で重要な要素である [Fehr
03, Smith 00].しかし,他個体に協力する利他的な個体
は,利己的な個体と相互作用すると搾取され,利己的な
個体だけが高い利益を得るため,相互の協調状態は不安
定である [Axelrod 06].それにもかかわらずヒトは社会
的生活を営む上で相互に協調し合っている.したがって,
ヒトは進化の過程において相互の協調関係を維持するメ
カニズムを獲得してきたはずである [Barkow 95].
協調行動が進化するためには,利他的な個体が利己的
な個体との相互作用を避け,利他的な個体同士で相互に
協調し合うことが必要である.前述のように利他的な個
体は利己的な個体に搾取されてしまうからである.その
ような状態を維持する仕組みとして,血縁選択,直接互
恵,間接互恵,空間互恵,マルチレベル選択の 5 つが提
案されている [Nowak 06].それらについて様々な実験
的・理論的研究がなされており,多くの証拠が得られて
きた [Rand 13]. それらの研究のほとんどは我々が生活
する現実世界に比べ非常に簡略化された環境で実施され
ていることが多い.このような簡略化はヒトの社会的行
動を分析するために重要な事であるが,そこで得られた
証拠が現実世界で適用可能であること検証することも重
要であろう [Rand 13].
ヒトの社会に対する定量的な研究において,インタラ
クティブなオンラインゲームのデータ分析は強力な手段
である [Castronova 06, Bainbridge 07, Szell 10, Szell
12, Szell 13].オンラインゲームは多くのプレイヤーが前
述のような理論的・実験的研究よりも制約の少ない環境で
行動することができ,すべてのプレイヤーのすべての行
動はログとして記録可能だからである.そこで我々はオ
ンラインゲームの一種であるソーシャルゲーム (例えば,
神撃のバハムート ∗1
,ガールフレンド(仮)∗2
など) を
対象として進化ゲーム理論の観点でプレイヤーの協調行
動について分析する.以下に述べるように,ソーシャル
ゲームの環境は進化ゲーム理論のような理論的研究が想
定している環境に似た特徴を持つからである.ソーシャ
ルゲームではプレイヤーの利益はゲームという性質上,
総合ランキングを争うためのポイントなど,単一の定量
的な値で表現され,ゲーム理論の利得のように扱うこと
ができる.また,そのポイント獲得はプレイヤー間の相
互作用に依存するため,ポイントを獲得するために協調
と競合を含む複雑な相互作用をうまくやる必要がある.
本稿では直接互恵に基づいた協調行動(互恵的利他主
義)に焦点を当てる.互恵的利他主義とは,後で見返りが
期待できるならば,即座に自分の利益とならなくても,相
手に対して利他的に振る舞うというものである.互恵的
利他主義は人 [Gruji´c 10, Gruji´c 12, Rand 11] や霊長類
[長谷川 00] でその存在を観測されており,また,それだ
けでなくチスイコウモリ [Wilkinson 90] や魚類 [Bshary
06] などでも,その可能性が示唆されている.また,進
化ゲーム理論に基づいた数理解析やシミュレーションに
よって,理論的にも互恵的利他主義が相互の協調の維持
に有効であることが示されている [Lindgren 91, Nowak
93, Axelrod 06].
互恵性に基づく協調行動が成立するためには,次の 3
つの条件を満たしている必要がある [長谷川 00].1) 個体
間の社会関係が長期にわたって続くような集団に所属し
ていること.2) 個体が互いに個体識別し,過去の振る舞
いを記憶可能であること.3) 協調する個体の損失よりも,
協調される個体が受ける利益のほうが大きいこと.これ
らが満たされる場合,協調者は相互作用の相手の行動履
歴から「相手に協調した場合に自分が相手からの見返り
を期待できるか否か」を判断できる.そして,もし期待
できるのであれば,協調行動をすることで将来の自分自
身の利得を向上させることができる.このように協調者
が協調相手の選別をすると,非協調者は相互作用を避け
られてしまい協調者を搾取して利得を得ることができな
くなる [Hauert 02].また,協調者が非協調者を識別する
ことで,協調者から非協調者へ懲罰を与えることができ,
非協調的な振る舞いを抑制することも可能になる [Rand
09].
本研究の目的は,理論的・実験的研究よりも制約の少
ない環境であるソーシャルゲームにおいて,互恵的利他
主義に基づく協調行動は成立しているか? 成立している
のであればどのように成立しているか? について知るこ
とである.本研究が分析対象とするソーシャルゲームの
状況は記憶力を持つプレイヤーがギルドという数十人程
度のグループを組んで協力して他のプレイヤーと競争を
するため,上記の 3 条件を満たしており,互恵的利他主
∗1 http://shingekinobahamut.jp
∗2 http://vcard.ameba.jp
義に基づく協調行動が成立している可能性がある(詳細
は後述).そのため,最初に互恵的利他主義に基づく協
調行動が成立していることを確認し,それが利得に与え
る効果,それの成立を促進している要因について分析を
する.
2. 分析対象と方法
2・1 ゲームの基本情報
本研究ではガールフレンド(仮)というカードバトル
系ソーシャルゲームを分析の対象とする.表 1 に分析対
象ゲームの基本情報について示す.対象ゲームは,プレ
イヤーはカードを集めデッキを構成し,そのデッキを使っ
て様々な課題を達成する.ステータスの高いカードを集
めるとデッキは強力になり,様々な場面で有利になるた
め,ステータスの高いカードを集めることが,このゲー
ム全体を通してのプレイヤーがゲームをプレイする大き
な動機の一つである.ステータスの高いカードはガチャ
と呼ばれるくじや後述するようなイベントでランキング
上位になることで手に入れることができる.
プレイヤーは基本的にギルドというグループに所属す
る.ギルドは 1∼50 名程度のプレイヤーで構成される(人
数制限あり).所属しないことも可能であるが所属しな
いことはゲームをプレイする上で不利であり,アクティ
ブなプレイヤーは基本的にギルドに所属しているためこ
こでは考えない.また後述する相互作用において誰が何
をしたかは適宜画面に表示されるため,互いの行動を認
識することが可能である.したがって分析対象のゲーム
の環境は前述の互恵的利他主義が成立する条件 1, 2 を満
たしている.本稿ではギルド内の相互作用について分析
したいため,分析対象期間中に 5 人以上のアクティブメ
ンバーが存在するギルドに所属するプレイヤーのデータ
を分析した.
対象のゲームでは複数のコミュニケーション手段があ
り,相互にメッセージを送り合う “あいさつ” と,各ギル
ドに用意されている “掲示板” がある.あいさつの方が掲
示板より利用プレイヤー数が多いため,ここではあいさ
つを分析対象とする.あいさつとはプレイヤー間で 30 文
字以内の文字列メッセージを送る手段であり,何度でも
コスト無しで可能である.各プレイヤーに送られたメッ
セージはそのプレイヤーのプロフィール画面でだれでも
閲覧することができる.ゲーム中ではコミュニケーショ
ンを活性化させるため様々な場面であいさつを促す作り
になっている.基本的にはプレイヤーからプレイヤーへ
の 1 対 1 のメッセージ機能であるが,ギルドメンバー全
員,または,(後述するレイドボスとの)バトルに参加し
たプレイヤー全員にメッセージを送ることもできる.
表 1 分析対象ゲームの基本情報
運営会社 株式会社サイバーエージェント
ゲーム名 ガールフレンド(仮)
URL http://vcard.ameba.jp
イベント名 たすけて!マイヒーロー ―お花見編―
イベント形式 レイドバトル
イベント期間 2013/3/25 16:00 ∼ 2013/4/8 14:00
分析対象期間 2013/4/5 0:00 ∼ 2013/4/8 14:00
1. Quest
Player
Their point gain
increase by 1.5 times
5. Ranking
Guild members
2. Find a boss
→ Battle Start
3. Call for help
4. Attack
No. 1: Mark(12040pt)
No. 2: Smith(11010pt)
No. 3: Emily(11005pt)
No. 4: Ken(9015pt)
図 1 レイドイベントの概要.1. プレイヤーはレイドボスを発見
するために “クエスト” を実行する.2. プレイヤーがレイ
ドボスを発見したらそのボスとバトルを開始し,攻撃してイ
ベントポイントを得る.3. ボスは非常の高い HP を持つの
で,プレイヤー単独で倒しきることは難しい.ボスを倒すた
め,プレイヤーは自分の所属するギルドのメンバーに救援を
求めることができる.4. 救援に応え,バトルに参加したプ
レイヤーは一回の攻撃につき通常の 1.5 倍のイベントポイン
トを獲得することができる.5. このようにして獲得したイ
ベントポイントによってプレイヤーはランキングを競う.
2・2 イベントの仕様
調査対象のイベントは,レイドイベント(図 1)と呼
ばれるタイプのもので,プレイヤーは強大な敵(レイド
ボス ∗3
)を攻撃し,“イベントポイント” を獲得し,その
ポイントに基づいてランキング競争をするというもので
ある.ランキング上位になればなるほどイベント終了時
に強力なカードやアイテムを報酬として獲得することが
できるため,プレイヤーにとってランキングの順位を上
げることは重要である.
プレイヤーはレイドボスを探し出すために “クエス
ト ∗4
” というアクションを実行する.レイドボスを発
見したらプレイヤーはそのボスとバトルを開始し,攻撃
してイベントポイントを得る.ボスは非常に高い HP を
持つので,プレイヤー単独で倒しきることは難しい.そ
のため,そのボスを倒すためにプレイヤーは自分の所属
するギルドのメンバーに救援を求めることができる.救
∗3 レイドボスは HP のみを持ち,プレイヤーは攻撃されること
はない.「プレイヤーが攻撃ポイントを消費して大量の HP を
持つレイドボスを倒す」ことを繰り返してポイントを稼ぐ.
∗4 クエストとはカードバトル系のソーシャルゲームの基本アク
ションの一つで,“体力” というパラメータを消費して経験値
を稼ぐアクションである.通常は数秒で 1 アクションが完了
する.レイドイベント期間中は,このアクションを続けている
と,レイドボスが一定確率で出現する.
援に応え,バトルに参加したプレイヤーは一回の攻撃に
つき通常の 1.5 倍のイベントポイントを獲得することが
できる.このようにして獲得したイベントポイントによっ
てプレイヤーはランキングを競う.
ランキングにはプレイヤー個人のイベントポイントで
順位を争うものと,ギルドメンバー全員の合計イベント
ポイントで順位を争うものの二種類が存在する.両方で
上位になるためには,プレイヤーが各々イベントポイン
トを稼ぐとともに,ギルドメンバー全員がイベントポイ
ントを稼ぐ必要がある.
イベントポイントはレイドボスを攻撃すると与えたダ
メージに比例して獲得することができる(攻撃した時点
でポイントは獲得できるので,倒さなくてもポイントは
獲得できる).したがってプレイヤーのデッキが強力であ
るほど一回の攻撃あたりのダメージが大きく,獲得イベ
ントポイントも多くなる.レイドボスは倒すたびに HP
が多くなっていくので,イベントの後半では何度も攻撃
しなければレイドボスを倒すことはできないが,レイド
ボスは一度に 1 体までしか相手にできない.そのため,
一旦遭遇する,または,救援依頼に応えて攻撃するとそ
のボスを倒すか,一定時間経過 ∗5
してボスが逃げるまで
は他のボスに遭遇したり,他のプレイヤーの救援依頼に
応えることはできない.
プレイヤーがレイドボスを攻撃すると “攻撃ポイント”
を 1/4 を消費する.すなわち攻撃ポイントが最大の状態
でプレイヤーは 4 回攻撃ができる.攻撃ポイントの主な
回復方法は 2 種類あり,プレイヤーは攻撃ポイントを時
間経過,もしくは,アイテム(1 つ 100 円相当)によっ
て回復させることができる(アイテムはゲーム上の報酬
として配布されることもある).
つまり,このイベントでは「同じギルドのプレイヤー
を救援して通常の 1.5 倍のポイントを取得する」,「何も
できないような無駄な時間を無くす」などをして攻撃ポ
イントや時間・アイテムといった資源をできるだけ効率
的に使用してポイントを稼ぐことが重要である.そのた
め本稿ではプレイヤーの “有利さ” をイベントポイント
に対する課金の効率の良さ(課金効率)と考え,それを
ゲーム理論の利得に対応するものとして考える.
2・3 焦点を当てるシナリオと協調行動の定義
対象とするゲームではプレイヤーは多様な行動ができ,
様々な形での協調行動が可能であるため,あらゆる協調
行動を追跡することは難しい.そのため,下記で追跡し
やすい協調行動を 1 つ定義し,それの頻度をそのプレイ
ヤーの “協調行動の傾向” と考える.
そのために本稿では,前述のイベントにおいて次の状
∗5 この時間は 1∼2 時間(レイドボスの種別により異なる)に
設定されており,ランキング上・中位層においては,その間な
にもしないことはランキングで他のプレイヤーに大きく差を付
けられてしまう時間である.
況に焦点を当てる.
• 複数人でレイドボスを攻撃している
• レイドボスの残り HP が非常に少ない
この状況ではレイドボスの残り HP が少ない(残り HP
< 攻撃力)ため,そのレイドボスを攻撃しても,獲得で
きるイベントポイントは通常より少ない(使用した攻撃
ポイントに対してコストパフォーマンスが悪い)∗6
.レ
イドボスは一度に 1 体までしか相手にできないため,そ
のボスを倒さない限りは遭遇したプレイヤーと救援中の
ギルドメンバーは他のボスを攻撃することはできず,イ
ベントポイントを稼ぐことができない.
表 2 2 者でレイドボスを攻撃しており,レイドボスの HP が非常
に少ない状況における利得行列.この状況で攻撃したプレイ
ヤーは利得 α,そのとき攻撃しなかったプレイヤーの利得は
β である.両プレイヤー共に攻撃しなかった場合は両者とも
に利得は γ である.レイドボスの HP が非常に少なく一方
が攻撃した時点でこの状況は解消されるため,両者ともに攻
撃するという状況は発生しない.
攻撃する  攻撃しない
攻撃する -, - α,β
攻撃しない β,α γ,γ
最も単純なレイドボスとのバトルに参加しているプレ
イヤーが 2 名の場合,利得行列を書くと表 2 のように表
現することができる.基本的な関係は β > α > γ である.
この状況での攻撃は効率の悪い行為なので α < β,しか
し,どちらも攻撃しないと,その間に他のプレイヤーが
イベントポイントを稼いでしまうので,最も利得が低い
(γ).また,残り HP は攻撃力以下なので,両者共に攻
撃することはない(どちらかが攻撃した時点でこの状況
は解消される).ただし互いの状況の違いによって,一
方の α,β,γ と他方の α,β,γ は異なりうる(例えば,攻
撃力に差がある場合,攻撃力が低いプレイヤーの攻撃の
効率は高いプレイヤーよりも高いなど)∗7
.この非対称
性によって互恵的利他主義の成立条件 3 は成立しうる.
表 2 の状況は,両者は共に最悪の状況は回避したいも
のの,そのためのコストを自分は支払いたくないという
ジレンマ構造を持ち,その意味で Snowdrift ゲーム(チ
キンゲーム)∗8
の持つジレンマ構造 [Doebeli 05, Smith
∗6 一方で,レイドボスの残り HP が十分である場合は “残り
HP > 攻撃力” であるため,そのレイドボスを攻撃すると,そ
の攻撃力に応じたイベントポイントが獲得でき効率的である
∗7 さらに場合によってはこの大小関係も変わり得る.例えば寝
る直前であれば,次の日には攻撃ポイントは完全に回復してい
る.そのため,攻撃ポイントをいくら消費したとしても少しで
もイベントポイントを得られるように「攻撃する」方が利得が
高く,α > β である.
∗8 Snowdrift ゲームは次のような状況について考えている: 2
人の車のドライバーが吹雪の中で吹き溜まりに捕まっている.
そのとき,それぞれのドライバーは車を降りて除雪をする(協
調),除雪をせずに車の中にとどまる(非協調)のどちらかを
選択できる.少なくともどちらかが除雪をすれば両者は先に進
むことができるが,除雪にはコストがかかるため除雪をすると
利得はその分低くなってしまう.しかしどちらも除雪をしない
と両者ともに先に進むことができず利得は得られない.
03] に類似していると言える.本稿ではこの状況におい
て攻撃する行為を Snowdrift ゲームにおける除雪行動と
考えて,バトルに参加していた全プレイヤーに対する最
後に攻撃したプレイヤーの “協調行動” とする.
このように本稿で焦点を当てる状況における協調的な
行動とは通常の攻撃より効率の悪い行動である.そのた
めにプレイヤー i の攻撃 j について効率の良さを表す攻
撃効率 aij を以下のように定義する.
aij = eij/M(ei) (1)
ここで eij はプレイヤー i の j 回目の際に取得したイベ
ントポイント,M(ei) はプレイヤー i が各攻撃で取得し
たイベントポイントの中央値である.本稿では攻撃強度
が 0.4 以下である場合を協調行動と定義する.
3. 分 析 結 果
まず,プレイヤーに互恵性が存在しているか否かにつ
いて調査する.そのために,プレイヤー i とプレイヤー
j の間の互恵度 rij を考える.本稿では互恵度を以下のよ
うに定義する.
rij = min(Cij,Cji)/max(Cij,Cji) (2)
ここで,Cij は i が j に協調行動をした回数,Cji は j が
i に協調行動をした回数である.つまり両者が相互に協
調をし合っていれば互恵度 rij は 1 に近づき,協調が一
方的であるほど 0 に近づく.この指標は Cij,Cji の少な
くともどちらかが 0 より大きい時だけ(少なくとも 1 回
以上の協調行動が行われた関係について)計測した.
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
0.00 0.25 0.50 0.75 1.00
Degree of Reciprocity
Density
図 2 互恵度 rij の密度分布
図 2 に rij の密度分布を示す.多くのプレイヤー間の
互恵度がほぼ 0 である一方,プレイヤー間の互恵度が高
い場合もある程度存在しており,互恵関係を築いている
プレイヤーが存在していたことがわかる.
それでは互恵関係はプレイヤーの利得(ゲーム上の有
利さ)にどのような影響を与えているのか.それについ
て知るために,互恵関係がプレイヤーのイベントポイン
表 3 イベントポイント pi に対する互恵関係の効果に関する回帰
分析結果.∗ ∗ ∗,∗∗,∗ はそれぞれ 0.1%,1%,5% 水準で
有意であることを示す(以降の図表も全て同様).
パラメータ 回帰係数 (標準誤差)
lnsi 0.2503860 (0.0038763)∗∗∗
Li 0.0365205 (0.0002105)∗∗∗
fi 0.2243505 (0.0075161)∗∗∗
Intercept 8.4280065 (0.0394362)∗∗∗
トに与えた影響について分析する.もし互恵関係を持ち
相互に協調し合うことがゲーム上有利なのであれば,プ
レイヤー i と互恵関係にあるプレイヤーの数 fi がプレイ
ヤー i のイベントポイント pi の増加に寄与しているはず
である.それについて調べるために,以下に示すモデル
を考える.
pi ∼ Negative − Binomial(ri) (3)
lnri = β1 lnsi + β2Li + β3fi + β4 
これはプレイヤー i のイベントポイント pi を,プレイ
ヤー i のレベル Li
∗9
,互恵関係にある相手の数 fi で説明
しようとするものである.ここでは協調行動を相互に 1
回以上している場合に両者は互恵関係であるとした.ま
た,イベントポイントは課金額 si に比例するはず ∗10
な
ので,それの対数をモデルに組み込んでいる.このモデ
ルは,ポアソン分布に基づく一般化線形モデルでは過分
散の傾向が見られたため,ポアソン分布に基づく一般化
線形混合モデル(ランダム効果はギルドごとに掛かると
した)と負の二項分布に基づく一般化線形モデルの AIC
をそれぞれ計測し,最小になる負の二項分布に基づく一
般化線形モデルを採用した.上記モデルによる回帰分析
を si > 0 であるプレイヤーから 15000 人分のデータをラ
ンダムサンプリングして実施した.
このモデルに基づく回帰分析の結果を表 3 に示す.イ
ベントポイントに影響を与えると考えられる課金額 si と
レベル Li を調整したもとで,互恵関係にある相手の数
fi が正であった.したがって fi が多いほどイベントポイ
ント pi を多く獲得できることがわかる.そのため,互恵
関係を持つことがゲームを進める上で有利(高利得)で
あったと言える.
それでは,どのようにして互恵関係は構築されたのか.
それについて調べるために,式 (4) に示すモデルを考える.
Cij ∼ Poisson(λij) (4)
lnλij = β1 lnC′
iCj + β2Cji + β3gij + β4gji +
β5Li + β6Lj + β7mi + β8 + σi
これはプレイヤー i がプレイヤー j に協調した回数 Cij
を,プレイヤー j から協調された回数 Cji,相互のあい
∗9 プレイヤーは基本的にレベルが高ければ高いほど,そのプレ
イヤーのデッキは強力になり一回の攻撃で得られるイベントポ
イントは多くなる.
∗10 課金によって体力回復のためのアイテム購入が可能であるた
め.
表 4 プレイヤー間の協調頻度に関する回帰分析結果
パラメータ 回帰係数 (標準誤差)
lnC′
iCj 0.6210306 (0.0041205)∗∗∗
Cji 0.0122157 (0.0006525)∗∗∗
gij −0.0008443 (0.0004852)
gji 0.0021324 (0.0004206)∗∗∗
Li 0.0004757 (0.0002047)∗
Lj −0.0019128 (0.0001950)∗∗∗
mi −0.1066716 (0.0022965)∗∗∗
Intercept −0.1003971 (0.0283909)∗∗∗
さつ行動の回数 gij,gji,各々のレベル Li,Lj,プレイ
ヤー i の所属するギルドのアクティブメンバー数 mi(j
も同じギルドに所属),プレイヤー i が所属するギルド
ごとのランダム効果 σi で説明しようとするモデルであ
る.Cij は基本的にはプレイヤー i の協調された回数の
合計 C′
i とプレイヤー j の協調した回数の合計 Cj の積
に比例するはずなので,それの対数をモデルに組み込ん
でいる.このモデルは,ポアソン分布に基づく一般化線
形モデルでは過分散の傾向が見られたため,ポアソン分
布に基づく一般化線形混合モデル(ランダム効果はギル
ドごとに掛かるとした)と負の二項分布に基づく一般化
線形モデルの AIC をそれぞれ計測し,最小になるポアソ
ン分布に基づく一般化線形混合モデルを採用した.上記
モデルによる回帰分析を Ci,C′
j > 0 である全組み合わせ
から 30000 個のデータをランダムサンプリングして実施
した.
このモデルに基づく回帰分析の結果を表 4 に示す.協
調回数に関連があると思われる協調・被協調回数 C′
i,Cj
とレベル Li,Lj を調整したもとで,Cji,gji が正であっ
た.したがって他のプレイヤー i から協調してもらうた
めには,プレイヤー j はプレイヤー i に対して協調行動
をし,自分からコミュニケーションを取ることが重要で
あると思われる.また,mi が負であることから少人数
のギルドの方が,より互恵関係が成立しやすいことがわ
かる.
次に,あるプレイヤーがレイドボスを単独で倒しきれ
ずギルドメンバーに救援を依頼した際に,そのギルドメ
ンバーが救援に応じるか否かという点に着目する.救援
依頼にギルドメンバーが応じた場合,依頼したプレイヤー
はボスを倒しやすくなる.そして,救援に参加したプレ
イヤーは効率的な攻撃行動ができ,かつ,通常の 1.5 倍
のイベントポイントを得る事ができるため,両者にとっ
て利益がある関係である.したがって,救援依頼プレイ
ヤーがだれであるに関わらず,救援に参加することは救
援プレイヤーにとって利益があるはずである.
このような状況において,プレイヤーの救援に応える
行動はプレイヤー間の社会的関係にどのように影響を受
けたかについて調べる.そのために,式 (5) に示すモデ
表 5 プレイヤー間の救援頻度に関する回帰分析結果
パラメータ 回帰係数 (標準誤差)
lnHiH′
j 0.8891775 (0.0064618)∗∗∗
Cji 0.0066710 (0.0018601)∗∗∗
gij 0.0089753 (0.0007516)∗∗∗
gji 0.0066472 (0.0007328)∗∗∗
Li 0.0063142 (0.0002365)∗∗∗
Lj −0.0046951 (0.0002432)∗∗∗
mi −0.0692416 (0.0012895)∗∗∗
Intercept −0.4414666 (0.0218464)∗∗∗
ルを考える.
Hij ∼ Negative − Binomial(rij) (5)
lnrij = β1 lnHiH′
j + β2Cji + β3gij + β4gji +
β5Li + β6Lj + β7mi + β8
これはプレイヤー i がプレイヤー j の救援に応えた回数
Hij を,プレイヤー j から協調された回数 Cji,相互の
あいさつ行動の回数 gij,gji,各々のレベル Li,Lj,プ
レイヤー i の所属するギルドのアクティブメンバー数 mi
(j も同じギルドに所属)で説明しようとするモデルであ
る.Hij は基本的にはプレイヤー i が救援依頼に応えた
回数の合計 Hi とプレイヤー j の救援依頼をした回数の
合計 H′
j の積に比例するはずなので,それの対数をモデ
ルに組み込んでいる.このモデルは,ポアソン分布に基
づく一般化線形モデルでは過分散の傾向が見られたため,
ポアソン分布に基づく一般化線形混合モデル(ランダム
効果はギルドごとに掛かるとした),負の二項分布に基
づく一般化線形モデルの AIC を計測し,最小になる負
の二項分布に基づく一般化線形モデルを採用した.上記
モデルによる回帰分析を Hi,H′
j > 0 である全組み合わせ
から 30000 個のデータをランダムサンプリングして実施
した.
このモデルに基づく回帰分析の結果を表 5 に示す.救援
回数に関連があると思われる救援・救援依頼回数 Hi,H′
j
とレベル Li,Lj を調整したもとで,Cji,gij,gji が正で
あった.したがって,相互に利益のある状況においても
相手に相互作用してもらうためには,相手に対して協調
行動をし,相互にコミュニケーションを取ることが重要
であると思われる.また,mi が負であることから少人
数のギルドの方が,このような相互作用がより発生しや
すいことがわかる.したがって双方に利益がある状況に
おいても,プレイヤーは相互作用の相手を選別しており,
自分にとって非協調的なプレイヤーよりも,協調的なプ
レイヤーを選択する傾向にあることがわかる.
4. 考 察
本研究では理論的・実験的研究に比べて制約の少ない
環境において,ヒトの互恵的利他主義に基づく協調行動
がどのように成立しているかについて知るために,ソー
シャルゲームにおけるプレイヤーの協調行動を分析した.
その結果,分析対象ゲームの社会において,特定の相手と
の相互の協調関係が存在すること,それによってそういっ
た関係を持たないプレイヤーよりも高い利得を獲得して
いた.ここから分析対象ゲームの社会は互恵的利他主義
に基づく相互の協調が成立しており,互恵的利他主義に
ついて分析ができる社会関係が存在していたと言える.
そのような互恵関係を築く(相手に協調してもらう)た
めには,相手に協調し自分が協調的であることを示すと
共に,コミュニケーションを取ることが重要であることが
示された.前者は協調行動をすることによる「自分は協
調的である」というシグナル [Andr´e 10] である.これは
協調行動(非効率な攻撃)が必要になるため,送信者のコ
ストは高く,かつ受信者に利益を与えるシグナルである.
したがって,シグナルの信頼性(協調したプレイヤーが
協調的である可能性)は高い.一方後者は,単なる 30 文
字以内のメッセージ ∗11
であり,送信者のコストも受信者
の利益もほとんど 0 である.興味深いことに,前述の信
頼性の高いシグナルが存在しているにもかかわらず,互
恵関係の構築にこのような低コストのシグナルも寄与し
ていた.このような一見無意味なシグナルはグルーミン
グなどと呼ばれ,ヒトにおいては視線 [Kobayashi 97]・
うわさ話 [Dunbar 04] などとして観測されており,個体
間の社会的関係の構築に重要であることが示唆されてい
る.類人猿においても毛づくろい [Kobayashi 97]・擬似
的性行為 [Clay 12]・表情模倣 [Mancini 13] などとして
観測されている.
また,相互作用をすれば両者が利益を得るような状況
においても,自分に対して協調的であるプレイヤーであ
るほど相互作用を頻繁にする傾向にあった.すなわち,
協調的なプレイヤー同士は相互に利得を得ることができ,
一方で非協調的なプレイヤーは相互作用を避けられ利得
を得にくかったと言える.その結果,協調的なプレイヤー
は非協調的なプレイヤーよりも高い利得を得ることがで
きたと思われる.このような非協調的な相手を避けるよ
うな行為は,その振る舞いに対する懲罰のような効果を
持つと考えることができ [Rand 11],非協調的な振る舞
いを抑制するような効果があった可能性がある.
このように,理論的・実験的研究のようにモデル化さ
れていない環境において,互恵的利他主義・グルーミン
グ・懲罰の 3 つのメカニズムが協調に有効に働きうるこ
と,それらがヒトとヒトの相互作用から自発的に発生し
うることを定量的に示した.またそれは小さいグループ
であるほど発生しやすい傾向にあった.
本研究はゲーム中のイベントの最終段階について行っ
た静的な分析を行ったものである.ゲームのプレイヤー
は常に入れわかり,プレイヤーは新たなプレイヤーと出
∗11 意気込みを伝えたり,救援のお礼や励ましなどに使われる傾
向がある.
会い,そこでそれぞれの社会関係を構築し続けている.
また,そこで生じる社会的ジレンマの強度や種別も動的
に変化する.したがって,そこでのダイナミクスについ
て分析し知見を得ることは重要であり,今後の課題とし
たい.
謝 辞
本稿作成にあたり,詳細なコメントと洞察に富む助言
を与えて頂いた一ノ瀬元喜助教に心からお礼を申し上げ
たい.
♦ 参 考 文 献 ♦
[Andr´e 10] Andr´e, J.-B.: The evolution of reciprocity: social
types or social incentives?, The American naturalist, Vol.
175, No. 2, pp. 197–210 (2010)
[Axelrod 06] Axelrod, R.: The Evolution of Cooperation:
Revised Edition, Basic Books (2006)
[Bainbridge 07] Bainbridge, W. S.: The scientific research
potential of virtual worlds., Science (New York, N.Y.), Vol.
317, No. 5837, pp. 472–6 (2007)
[Barkow 95] Barkow, J.: The Adapted Mind: Evolutionary
Psychology and the Generation of Culture, Oxford Univer-
sity Press, USA (1995)
[Bshary 06] Bshary, R. and Grutter, A.: Image scoring and
cooperation in a cleaner fish mutualism., Nature, Vol. 441,
No. 7096, pp. 975–978 (2006)
[Castronova 06] Castronova, E.: On the Research Value
of Large Games: Natural Experiments in Norrath and
Camelot, Games and Culture, Vol. 1, No. 2, pp. 163–186
(2006)
[Clay 12] Clay, Z. and Zuberb¨uhler, K.: Communication dur-
ing sex among female bonobos: effects of dominance, solici-
tation and audience., Scientific reports, Vol. 2, p. 291 (2012)
[Doebeli 05] Doebeli, M. and Hauert, C.: Models of cooper-
ation based on the Prisoner’s Dilemma and the Snowdrift
game, Ecology Letters, Vol. 8, No. 7, pp. 748–766 (2005)
[Dunbar 04] Dunbar, R. I. M.: Gossip in evolutionary per-
spective., Review of General Psychology, Vol. 8, No. 2, pp.
100–110 (2004)
[Fehr 03] Fehr, E. and Fischbacher, U.: The nature of human
altruism, Nature, Vol. 425, No. 23, pp. 785–791 (2003)
[Gruji´c 10] Gruji´c, J., Fosco, C., Araujo, L., Cuesta, J., and
S´anchez, A.: Social Experiments in the Mesoscale: Humans
Playing a Spatial Prisoner’s Dilemma, PLoS ONE, Vol. 5,
No. 11, p. e13749 (2010)
[Gruji´c 12] Gruji´c, J., R¨ohl, T., Semmann, D., Milinski, M.,
and Traulsen, A.: Consistent Strategy Updating in Spatial
and Non-Spatial Behavioral Experiments Does Not Promote
Cooperation in Social Networks, PLoS ONE, Vol. 7, No. 11,
p. e47718 (2012)
[Hauert 02] Hauert, C., De Monte, S., Hofbauer, J., and Sig-
mund, K.: Volunteering as Red Queen mechanism for coop-
eration in public goods games., Science (New York, N.Y.),
Vol. 296, No. 5570, pp. 1129–32 (2002)
[Kobayashi 97] Kobayashi, H. and Kohshima, S.: Unique
morphology of the human eye, Vol. 387, No. 6635, pp. 767–
768 (1997)
[Lindgren 91] Lindgren, K.: Evolutionary phenomena in
simple dynamics, in Langton, C. G., Taylor, C.,
Farmer, J. D., and Rasmussen, S. eds., Artificial Life II,
pp. 295–312, Addison Wesley Publishing Company (1991)
[Mancini 13] Mancini, G., Ferrari, P. F., and Palagi, E.:
Rapid facial mimicry in geladas., Scientific reports, Vol. 3,
p. 1527 (2013)
[Nowak 93] Nowak, M. and Sigmund, K.: A strategy of win-
stay, lose-shift that outperforms tit-for-tat in the Prisoner’s
Dilemma game., Nature, Vol. 364, No. 6432, pp. 56–58
(1993)
[Nowak 06] Nowak, M.: Five rules for the evolution of coop-
eration, Science, Vol. 314, No. 5805, pp. 1560–1563 (2006)
[Rand 09] Rand, D. G., Ohtsuki, H., and Nowak, M. A.: Di-
rect reciprocity with costly punishment: generous tit-for-tat
prevails., Journal of theoretical biology, Vol. 256, No. 1, pp.
45–57 (2009)
[Rand 11] Rand, D., Arbesman, S., and Christakis, N.: Dy-
namic social networks promote cooperation in experiments
with humans, Proceedings of the National Academy of Sci-
ences, Vol. 108, No. 48, pp. 19193–19198 (2011)
[Rand 13] Rand, D. and Nowak, M.: Human cooperation.,
Trends in cognitive sciences, Vol. 17, No. 8, pp. 413–25
(2013)
[Smith 00] Smith, J. M. and Szathm´ary, E.: The Origins of
Life: From the Birth of Life to the Origin of Language,
Oxford University Press, USA (2000)
[Smith 03] Smith, J. and Harper, D.: Animal Signals, Oxfold
University Press (2003)
[Szell 10] Szell, M. and Thurner, S.: Measuring social dy-
namics in a massive multiplayer online game, Social net-
works, Vol. 32, No. 4, pp. 313–329 (2010)
[Szell 12] Szell, M., Sinatra, R., Petri, G., Thurner, S., and
Latora, V.: Understanding mobility in a social petri dish.,
Scientific reports, Vol. 2, p. 457 (2012)
[Szell 13] Szell, M. and Thurner, S.: How women organize so-
cial networks different from men., Scientific reports, Vol. 3,
p. 1214 (2013)
[Wilkinson 90] Wilkinson, G.: Food Sharing in Vampire
Bats, Sci Am, Vol. 262, No. 2, pp. 76–82 (1990)
[長谷川 00] 長谷川 寿一, 長谷川 真理子:進化と人間行動, 東京
大学出版会 (2000)

More Related Content

Viewers also liked

ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介
ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介
ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介IGDA Japan
 
GCS2013 itowponde 0622
GCS2013 itowponde 0622GCS2013 itowponde 0622
GCS2013 itowponde 0622英明 伊藤
 
モバクソゲーの歴史
モバクソゲーの歴史モバクソゲーの歴史
モバクソゲーの歴史Rinjin Ayashii
 
【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析
【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析
【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析zyanki
 
Cedec2015_「消滅都市」運用の一年
Cedec2015_「消滅都市」運用の一年Cedec2015_「消滅都市」運用の一年
Cedec2015_「消滅都市」運用の一年gree_tech
 
月商数千万のソーシャルゲームを作る方法
月商数千万のソーシャルゲームを作る方法月商数千万のソーシャルゲームを作る方法
月商数千万のソーシャルゲームを作る方法Ryo Akabane
 
Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営 消滅都市の事例から-
Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営  消滅都市の事例から-Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営  消滅都市の事例から-
Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営 消滅都市の事例から-gree_tech
 
20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up
20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up
20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up正志 井澤
 
【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)
【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)
【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)Developers Summit
 
Monetization bootup
Monetization bootupMonetization bootup
Monetization bootupsenakamura
 
失敗から学ぶ データ分析グループの チームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumi
失敗から学ぶデータ分析グループのチームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumi失敗から学ぶデータ分析グループのチームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumi
失敗から学ぶ データ分析グループの チームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumiTokoroten Nakayama
 
ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版
ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版
ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版小林 信行
 
データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜
データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜
データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜Daisuke Nogami
 
データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016
データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016
データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016Tokoroten Nakayama
 
[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShell
[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShell[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShell
[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShellAmazon Web Services Japan
 
DeNAの分析を支える分析基盤
DeNAの分析を支える分析基盤DeNAの分析を支える分析基盤
DeNAの分析を支える分析基盤Kenshin Yamada
 
Crypttech LOG SIEM 2015
Crypttech LOG SIEM 2015Crypttech LOG SIEM 2015
Crypttech LOG SIEM 2015Mustafa Kuğu
 

Viewers also liked (20)

ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介
ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介
ソシャゲと家庭用のユーザーの違いと重なり_小山友介
 
GCS2013 itowponde 0622
GCS2013 itowponde 0622GCS2013 itowponde 0622
GCS2013 itowponde 0622
 
進化経済学会2013春ポスターセッション
進化経済学会2013春ポスターセッション進化経済学会2013春ポスターセッション
進化経済学会2013春ポスターセッション
 
モバクソゲーの歴史
モバクソゲーの歴史モバクソゲーの歴史
モバクソゲーの歴史
 
【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析
【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析
【SED】勉強会 第5回ソーシャルゲームの行動解析
 
Cedec2015_「消滅都市」運用の一年
Cedec2015_「消滅都市」運用の一年Cedec2015_「消滅都市」運用の一年
Cedec2015_「消滅都市」運用の一年
 
月商数千万のソーシャルゲームを作る方法
月商数千万のソーシャルゲームを作る方法月商数千万のソーシャルゲームを作る方法
月商数千万のソーシャルゲームを作る方法
 
Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営 消滅都市の事例から-
Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営  消滅都市の事例から-Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営  消滅都市の事例から-
Cedec2015 お客様に驚きを提供する運営 消滅都市の事例から-
 
ゲーム産業講義2015年1月
ゲーム産業講義2015年1月ゲーム産業講義2015年1月
ゲーム産業講義2015年1月
 
20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up
20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up
20130727 ソシャゲkpi分析 tokyowebmining28_izawa_up
 
【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)
【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)
【14-B-2】グリーを支えるデータ分析基盤の過去と現在(橋本泰一〔グリー〕)
 
Monetization bootup
Monetization bootupMonetization bootup
Monetization bootup
 
失敗から学ぶ データ分析グループの チームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumi
失敗から学ぶデータ分析グループのチームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumi失敗から学ぶデータ分析グループのチームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumi
失敗から学ぶ データ分析グループの チームマネジメント変遷 (デブサミ2016) #devsumi
 
ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版
ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版
ゲームデザイナーのためのキャラクター表現&コンセプトメイキング:抜粋版
 
データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜
データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜
データに振り回されて失敗した あんなことやこんなこと+α  〜なぜ数字の手助けが必要になるのか、その理由と分析の実践例〜
 
データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016
データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016
データ分析グループの組織編制とその課題 マーケティングにおけるKPI設計の失敗例 ABテストの活用と、機械学習の導入 #CWT2016
 
[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShell
[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShell[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShell
[AWSマイスターシリーズ] AWS CLI / AWS Tools for Windows PowerShell
 
DeNAの分析を支える分析基盤
DeNAの分析を支える分析基盤DeNAの分析を支える分析基盤
DeNAの分析を支える分析基盤
 
23.6
23.623.6
23.6
 
Crypttech LOG SIEM 2015
Crypttech LOG SIEM 2015Crypttech LOG SIEM 2015
Crypttech LOG SIEM 2015
 

More from Masanori Takano

書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリング
書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリング書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリング
書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリングMasanori Takano
 
WWWにおける社会科学
WWWにおける社会科学WWWにおける社会科学
WWWにおける社会科学Masanori Takano
 
サイバーエージェントにおける計算社会科学研究
サイバーエージェントにおける計算社会科学研究サイバーエージェントにおける計算社会科学研究
サイバーエージェントにおける計算社会科学研究Masanori Takano
 
Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会
Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会
Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会Masanori Takano
 
Analysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming Service
Analysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming ServiceAnalysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming Service
Analysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming ServiceMasanori Takano
 
WWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッション
WWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッションWWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッション
WWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッションMasanori Takano
 
ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見
ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見
ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見Masanori Takano
 
仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談
仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談
仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談Masanori Takano
 
論文紹介: Tweetment effects on the tweeted experimentally reducing racist harass...
論文紹介: Tweetment effects on the tweeted  experimentally reducing racist harass...論文紹介: Tweetment effects on the tweeted  experimentally reducing racist harass...
論文紹介: Tweetment effects on the tweeted experimentally reducing racist harass...Masanori Takano
 
サイバーエージェントにおける計算社会科学
サイバーエージェントにおける計算社会科学サイバーエージェントにおける計算社会科学
サイバーエージェントにおける計算社会科学Masanori Takano
 
論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena
論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena
論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomenaMasanori Takano
 
社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響
社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響
社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響Masanori Takano
 
ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)
ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)
ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)Masanori Takano
 
野良ビッグデータへのお誘い
野良ビッグデータへのお誘い野良ビッグデータへのお誘い
野良ビッグデータへのお誘いMasanori Takano
 
Lightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network Game
Lightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network GameLightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network Game
Lightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network GameMasanori Takano
 
サラリーマンのための計算社会科学
サラリーマンのための計算社会科学サラリーマンのための計算社会科学
サラリーマンのための計算社会科学Masanori Takano
 
社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性
社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性
社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性Masanori Takano
 
ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料
ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料
ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料Masanori Takano
 
論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...
論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...
論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...Masanori Takano
 
データにまつわるWeb業界の仕事について
データにまつわるWeb業界の仕事についてデータにまつわるWeb業界の仕事について
データにまつわるWeb業界の仕事についてMasanori Takano
 

More from Masanori Takano (20)

書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリング
書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリング書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリング
書籍「計算社会科学入門」第9章 統計モデリング
 
WWWにおける社会科学
WWWにおける社会科学WWWにおける社会科学
WWWにおける社会科学
 
サイバーエージェントにおける計算社会科学研究
サイバーエージェントにおける計算社会科学研究サイバーエージェントにおける計算社会科学研究
サイバーエージェントにおける計算社会科学研究
 
Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会
Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会
Webとメディアと社会的分断 @ WWW論文読み会
 
Analysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming Service
Analysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming ServiceAnalysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming Service
Analysis of the Changes in Listening Trends of a Music Streaming Service
 
WWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッション
WWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッションWWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッション
WWW論文読み会 発表資料: Computational Health セッション
 
ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見
ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見
ソーシャルビッグデータ・オープンデータによる社会構造変化の発見
 
仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談
仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談
仮想社会におけるソーシャルサポート効果の検証: ピグパーティにおけるいじめ相談
 
論文紹介: Tweetment effects on the tweeted experimentally reducing racist harass...
論文紹介: Tweetment effects on the tweeted  experimentally reducing racist harass...論文紹介: Tweetment effects on the tweeted  experimentally reducing racist harass...
論文紹介: Tweetment effects on the tweeted experimentally reducing racist harass...
 
サイバーエージェントにおける計算社会科学
サイバーエージェントにおける計算社会科学サイバーエージェントにおける計算社会科学
サイバーエージェントにおける計算社会科学
 
論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena
論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena
論文紹介 Explaining the prevalence, scaling and variance of urban phenomena
 
社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響
社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響
社会関係の数と親密さのトレードオフが社会構造に与える影響
 
ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)
ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)
ヒトと社会を理解するための計算社会科学(社会情報システム学シンポジウム 基調講演資料)
 
野良ビッグデータへのお誘い
野良ビッグデータへのお誘い野良ビッグデータへのお誘い
野良ビッグデータへのお誘い
 
Lightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network Game
Lightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network GameLightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network Game
Lightweight Interactions for Reciprocal Cooperation in a Social Network Game
 
サラリーマンのための計算社会科学
サラリーマンのための計算社会科学サラリーマンのための計算社会科学
サラリーマンのための計算社会科学
 
社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性
社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性
社会関係の強さに基づく社会的グルーミング戦略の適応性
 
ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料
ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料
ソーシャル系Webサービスのデータを用いた社会科学 資料
 
論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...
論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...
論文紹介: What’s in a like- attitudes and behaviors around receiving likes on fac...
 
データにまつわるWeb業界の仕事について
データにまつわるWeb業界の仕事についてデータにまつわるWeb業界の仕事について
データにまつわるWeb業界の仕事について
 

Recently uploaded

Utilizing Ballerina for Cloud Native Integrations
Utilizing Ballerina for Cloud Native IntegrationsUtilizing Ballerina for Cloud Native Integrations
Utilizing Ballerina for Cloud Native IntegrationsWSO2
 
知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptx
知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptx知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptx
知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptxsn679259
 
LoRaWANスマート距離検出センサー DS20L カタログ LiDARデバイス
LoRaWANスマート距離検出センサー  DS20L  カタログ  LiDARデバイスLoRaWANスマート距離検出センサー  DS20L  カタログ  LiDARデバイス
LoRaWANスマート距離検出センサー DS20L カタログ LiDARデバイスCRI Japan, Inc.
 
論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video Understanding
論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video Understanding論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video Understanding
論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video UnderstandingToru Tamaki
 
Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。iPride Co., Ltd.
 
論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...
論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...
論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...Toru Tamaki
 
Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。iPride Co., Ltd.
 
LoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアル
LoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアルLoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアル
LoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアルCRI Japan, Inc.
 
論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Games
論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Games論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Games
論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Gamesatsushi061452
 
新人研修 後半 2024/04/26の勉強会で発表されたものです。
新人研修 後半        2024/04/26の勉強会で発表されたものです。新人研修 後半        2024/04/26の勉強会で発表されたものです。
新人研修 後半 2024/04/26の勉強会で発表されたものです。iPride Co., Ltd.
 

Recently uploaded (10)

Utilizing Ballerina for Cloud Native Integrations
Utilizing Ballerina for Cloud Native IntegrationsUtilizing Ballerina for Cloud Native Integrations
Utilizing Ballerina for Cloud Native Integrations
 
知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptx
知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptx知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptx
知識ゼロの営業マンでもできた!超速で初心者を脱する、悪魔的学習ステップ3選.pptx
 
LoRaWANスマート距離検出センサー DS20L カタログ LiDARデバイス
LoRaWANスマート距離検出センサー  DS20L  カタログ  LiDARデバイスLoRaWANスマート距離検出センサー  DS20L  カタログ  LiDARデバイス
LoRaWANスマート距離検出センサー DS20L カタログ LiDARデバイス
 
論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video Understanding
論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video Understanding論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video Understanding
論文紹介:Selective Structured State-Spaces for Long-Form Video Understanding
 
Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その22024/04/26の勉強会で発表されたものです。
 
論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...
論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...
論文紹介:Video-GroundingDINO: Towards Open-Vocabulary Spatio-Temporal Video Groun...
 
Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。
Amazon SES を勉強してみる その32024/04/26の勉強会で発表されたものです。
 
LoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアル
LoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアルLoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアル
LoRaWAN スマート距離検出デバイスDS20L日本語マニュアル
 
論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Games
論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Games論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Games
論文紹介: The Surprising Effectiveness of PPO in Cooperative Multi-Agent Games
 
新人研修 後半 2024/04/26の勉強会で発表されたものです。
新人研修 後半        2024/04/26の勉強会で発表されたものです。新人研修 後半        2024/04/26の勉強会で発表されたものです。
新人研修 後半 2024/04/26の勉強会で発表されたものです。
 

ソーシャルゲームにおける互恵的利他主義に基づく協調行動(予稿)

  • 1. JWEIN14 ☞☞ ソーシャルゲームにおける互恵的利他主義に基づ く協調行動 Cooperation based on Reciprocal Altruism in a Social Network Game 高野 雅典 Masanori Takano 株式会社サイバーエージェント CyberAgent, Inc. takano masanori@cyberagent.co.jp 和田 計也 Kazuya Wada (同 上) wada kazuya@cyberagent.co.jp 福田 一郎 Ichiro Fukuda (同 上) fukuda ichiro@cyberagent.co.jp キーワード: Data Mining, Evolutionary Game Theory, Reciprocal Altruism, Snowdrift Game, Social Network Game 概要 相互の協調はヒトをはじめとして多くの動物に見られる現象であり,社会を形成する上で重要な要素であ る.そのため協調行動について様々な実験的・理論的研究がなされており,多くの証拠が得られてきた.しかしな がら,それらの研究のほとんどは我々が生活する現実世界に比べ非常に簡略にモデル化されている.このようなモ デル化はヒトの社会的行動を分析するために重要な事であるが,そこで得られた証拠が現実世界で適用可能である ことを検証することも重要であろう.ヒトの社会性に対する定量的な研究において,ソーシャルゲームのデータ分 析は強力な手段である.ソーシャルゲームは多くのプレイヤーが前述のような研究よりも制約の少ない環境で社会 的な相互作用をすることができ,また,すべてのプレイヤーの行動はログとして記録可能だからである.我々は協 調行動の進化を説明する理論的枠組みの一つである互恵的利他主義に焦点を当て分析した.そのために,ソーシャ ルゲームにおいて Snowdrift ゲームに類似した状況に焦点を当て,その状況でのプレイヤーの振る舞いを協調的・ 非協調的に分類した.その分類に基づき,互恵的利他主義に基づく協調行動について分析を行った.その結果,プ レイヤー間に互恵関係が存在すること,互恵関係によりゲームが有利になりうることが確認された.そして,その ような互恵関係の構築には相手に協調することに加え,(ゲーム上のデータとしてはほとんど意味のない)コミュ ニケーションが重要であることが示された.加えて,非協調的なプレイヤーに対して「自分と相手の両方に利益が あるにも関わらず相手の利益になるようなことはしない」というような懲罰行動の存在も示された. 1. は じ め に 相互の協調はヒトをはじめとして多くの動物に見られる 現象であり,社会を形成する上で重要な要素である [Fehr 03, Smith 00].しかし,他個体に協力する利他的な個体 は,利己的な個体と相互作用すると搾取され,利己的な 個体だけが高い利益を得るため,相互の協調状態は不安 定である [Axelrod 06].それにもかかわらずヒトは社会 的生活を営む上で相互に協調し合っている.したがって, ヒトは進化の過程において相互の協調関係を維持するメ カニズムを獲得してきたはずである [Barkow 95]. 協調行動が進化するためには,利他的な個体が利己的 な個体との相互作用を避け,利他的な個体同士で相互に 協調し合うことが必要である.前述のように利他的な個 体は利己的な個体に搾取されてしまうからである.その ような状態を維持する仕組みとして,血縁選択,直接互 恵,間接互恵,空間互恵,マルチレベル選択の 5 つが提 案されている [Nowak 06].それらについて様々な実験 的・理論的研究がなされており,多くの証拠が得られて きた [Rand 13]. それらの研究のほとんどは我々が生活 する現実世界に比べ非常に簡略化された環境で実施され ていることが多い.このような簡略化はヒトの社会的行 動を分析するために重要な事であるが,そこで得られた 証拠が現実世界で適用可能であること検証することも重 要であろう [Rand 13]. ヒトの社会に対する定量的な研究において,インタラ クティブなオンラインゲームのデータ分析は強力な手段 である [Castronova 06, Bainbridge 07, Szell 10, Szell 12, Szell 13].オンラインゲームは多くのプレイヤーが前 述のような理論的・実験的研究よりも制約の少ない環境で 行動することができ,すべてのプレイヤーのすべての行 動はログとして記録可能だからである.そこで我々はオ ンラインゲームの一種であるソーシャルゲーム (例えば,
  • 2. 神撃のバハムート ∗1 ,ガールフレンド(仮)∗2 など) を 対象として進化ゲーム理論の観点でプレイヤーの協調行 動について分析する.以下に述べるように,ソーシャル ゲームの環境は進化ゲーム理論のような理論的研究が想 定している環境に似た特徴を持つからである.ソーシャ ルゲームではプレイヤーの利益はゲームという性質上, 総合ランキングを争うためのポイントなど,単一の定量 的な値で表現され,ゲーム理論の利得のように扱うこと ができる.また,そのポイント獲得はプレイヤー間の相 互作用に依存するため,ポイントを獲得するために協調 と競合を含む複雑な相互作用をうまくやる必要がある. 本稿では直接互恵に基づいた協調行動(互恵的利他主 義)に焦点を当てる.互恵的利他主義とは,後で見返りが 期待できるならば,即座に自分の利益とならなくても,相 手に対して利他的に振る舞うというものである.互恵的 利他主義は人 [Gruji´c 10, Gruji´c 12, Rand 11] や霊長類 [長谷川 00] でその存在を観測されており,また,それだ けでなくチスイコウモリ [Wilkinson 90] や魚類 [Bshary 06] などでも,その可能性が示唆されている.また,進 化ゲーム理論に基づいた数理解析やシミュレーションに よって,理論的にも互恵的利他主義が相互の協調の維持 に有効であることが示されている [Lindgren 91, Nowak 93, Axelrod 06]. 互恵性に基づく協調行動が成立するためには,次の 3 つの条件を満たしている必要がある [長谷川 00].1) 個体 間の社会関係が長期にわたって続くような集団に所属し ていること.2) 個体が互いに個体識別し,過去の振る舞 いを記憶可能であること.3) 協調する個体の損失よりも, 協調される個体が受ける利益のほうが大きいこと.これ らが満たされる場合,協調者は相互作用の相手の行動履 歴から「相手に協調した場合に自分が相手からの見返り を期待できるか否か」を判断できる.そして,もし期待 できるのであれば,協調行動をすることで将来の自分自 身の利得を向上させることができる.このように協調者 が協調相手の選別をすると,非協調者は相互作用を避け られてしまい協調者を搾取して利得を得ることができな くなる [Hauert 02].また,協調者が非協調者を識別する ことで,協調者から非協調者へ懲罰を与えることができ, 非協調的な振る舞いを抑制することも可能になる [Rand 09]. 本研究の目的は,理論的・実験的研究よりも制約の少 ない環境であるソーシャルゲームにおいて,互恵的利他 主義に基づく協調行動は成立しているか? 成立している のであればどのように成立しているか? について知るこ とである.本研究が分析対象とするソーシャルゲームの 状況は記憶力を持つプレイヤーがギルドという数十人程 度のグループを組んで協力して他のプレイヤーと競争を するため,上記の 3 条件を満たしており,互恵的利他主 ∗1 http://shingekinobahamut.jp ∗2 http://vcard.ameba.jp 義に基づく協調行動が成立している可能性がある(詳細 は後述).そのため,最初に互恵的利他主義に基づく協 調行動が成立していることを確認し,それが利得に与え る効果,それの成立を促進している要因について分析を する. 2. 分析対象と方法 2・1 ゲームの基本情報 本研究ではガールフレンド(仮)というカードバトル 系ソーシャルゲームを分析の対象とする.表 1 に分析対 象ゲームの基本情報について示す.対象ゲームは,プレ イヤーはカードを集めデッキを構成し,そのデッキを使っ て様々な課題を達成する.ステータスの高いカードを集 めるとデッキは強力になり,様々な場面で有利になるた め,ステータスの高いカードを集めることが,このゲー ム全体を通してのプレイヤーがゲームをプレイする大き な動機の一つである.ステータスの高いカードはガチャ と呼ばれるくじや後述するようなイベントでランキング 上位になることで手に入れることができる. プレイヤーは基本的にギルドというグループに所属す る.ギルドは 1∼50 名程度のプレイヤーで構成される(人 数制限あり).所属しないことも可能であるが所属しな いことはゲームをプレイする上で不利であり,アクティ ブなプレイヤーは基本的にギルドに所属しているためこ こでは考えない.また後述する相互作用において誰が何 をしたかは適宜画面に表示されるため,互いの行動を認 識することが可能である.したがって分析対象のゲーム の環境は前述の互恵的利他主義が成立する条件 1, 2 を満 たしている.本稿ではギルド内の相互作用について分析 したいため,分析対象期間中に 5 人以上のアクティブメ ンバーが存在するギルドに所属するプレイヤーのデータ を分析した. 対象のゲームでは複数のコミュニケーション手段があ り,相互にメッセージを送り合う “あいさつ” と,各ギル ドに用意されている “掲示板” がある.あいさつの方が掲 示板より利用プレイヤー数が多いため,ここではあいさ つを分析対象とする.あいさつとはプレイヤー間で 30 文 字以内の文字列メッセージを送る手段であり,何度でも コスト無しで可能である.各プレイヤーに送られたメッ セージはそのプレイヤーのプロフィール画面でだれでも 閲覧することができる.ゲーム中ではコミュニケーショ ンを活性化させるため様々な場面であいさつを促す作り になっている.基本的にはプレイヤーからプレイヤーへ の 1 対 1 のメッセージ機能であるが,ギルドメンバー全 員,または,(後述するレイドボスとの)バトルに参加し たプレイヤー全員にメッセージを送ることもできる.
  • 3. 表 1 分析対象ゲームの基本情報 運営会社 株式会社サイバーエージェント ゲーム名 ガールフレンド(仮) URL http://vcard.ameba.jp イベント名 たすけて!マイヒーロー ―お花見編― イベント形式 レイドバトル イベント期間 2013/3/25 16:00 ∼ 2013/4/8 14:00 分析対象期間 2013/4/5 0:00 ∼ 2013/4/8 14:00 1. Quest Player Their point gain increase by 1.5 times 5. Ranking Guild members 2. Find a boss → Battle Start 3. Call for help 4. Attack No. 1: Mark(12040pt) No. 2: Smith(11010pt) No. 3: Emily(11005pt) No. 4: Ken(9015pt) 図 1 レイドイベントの概要.1. プレイヤーはレイドボスを発見 するために “クエスト” を実行する.2. プレイヤーがレイ ドボスを発見したらそのボスとバトルを開始し,攻撃してイ ベントポイントを得る.3. ボスは非常の高い HP を持つの で,プレイヤー単独で倒しきることは難しい.ボスを倒すた め,プレイヤーは自分の所属するギルドのメンバーに救援を 求めることができる.4. 救援に応え,バトルに参加したプ レイヤーは一回の攻撃につき通常の 1.5 倍のイベントポイン トを獲得することができる.5. このようにして獲得したイ ベントポイントによってプレイヤーはランキングを競う. 2・2 イベントの仕様 調査対象のイベントは,レイドイベント(図 1)と呼 ばれるタイプのもので,プレイヤーは強大な敵(レイド ボス ∗3 )を攻撃し,“イベントポイント” を獲得し,その ポイントに基づいてランキング競争をするというもので ある.ランキング上位になればなるほどイベント終了時 に強力なカードやアイテムを報酬として獲得することが できるため,プレイヤーにとってランキングの順位を上 げることは重要である. プレイヤーはレイドボスを探し出すために “クエス ト ∗4 ” というアクションを実行する.レイドボスを発 見したらプレイヤーはそのボスとバトルを開始し,攻撃 してイベントポイントを得る.ボスは非常に高い HP を 持つので,プレイヤー単独で倒しきることは難しい.そ のため,そのボスを倒すためにプレイヤーは自分の所属 するギルドのメンバーに救援を求めることができる.救 ∗3 レイドボスは HP のみを持ち,プレイヤーは攻撃されること はない.「プレイヤーが攻撃ポイントを消費して大量の HP を 持つレイドボスを倒す」ことを繰り返してポイントを稼ぐ. ∗4 クエストとはカードバトル系のソーシャルゲームの基本アク ションの一つで,“体力” というパラメータを消費して経験値 を稼ぐアクションである.通常は数秒で 1 アクションが完了 する.レイドイベント期間中は,このアクションを続けている と,レイドボスが一定確率で出現する. 援に応え,バトルに参加したプレイヤーは一回の攻撃に つき通常の 1.5 倍のイベントポイントを獲得することが できる.このようにして獲得したイベントポイントによっ てプレイヤーはランキングを競う. ランキングにはプレイヤー個人のイベントポイントで 順位を争うものと,ギルドメンバー全員の合計イベント ポイントで順位を争うものの二種類が存在する.両方で 上位になるためには,プレイヤーが各々イベントポイン トを稼ぐとともに,ギルドメンバー全員がイベントポイ ントを稼ぐ必要がある. イベントポイントはレイドボスを攻撃すると与えたダ メージに比例して獲得することができる(攻撃した時点 でポイントは獲得できるので,倒さなくてもポイントは 獲得できる).したがってプレイヤーのデッキが強力であ るほど一回の攻撃あたりのダメージが大きく,獲得イベ ントポイントも多くなる.レイドボスは倒すたびに HP が多くなっていくので,イベントの後半では何度も攻撃 しなければレイドボスを倒すことはできないが,レイド ボスは一度に 1 体までしか相手にできない.そのため, 一旦遭遇する,または,救援依頼に応えて攻撃するとそ のボスを倒すか,一定時間経過 ∗5 してボスが逃げるまで は他のボスに遭遇したり,他のプレイヤーの救援依頼に 応えることはできない. プレイヤーがレイドボスを攻撃すると “攻撃ポイント” を 1/4 を消費する.すなわち攻撃ポイントが最大の状態 でプレイヤーは 4 回攻撃ができる.攻撃ポイントの主な 回復方法は 2 種類あり,プレイヤーは攻撃ポイントを時 間経過,もしくは,アイテム(1 つ 100 円相当)によっ て回復させることができる(アイテムはゲーム上の報酬 として配布されることもある). つまり,このイベントでは「同じギルドのプレイヤー を救援して通常の 1.5 倍のポイントを取得する」,「何も できないような無駄な時間を無くす」などをして攻撃ポ イントや時間・アイテムといった資源をできるだけ効率 的に使用してポイントを稼ぐことが重要である.そのた め本稿ではプレイヤーの “有利さ” をイベントポイント に対する課金の効率の良さ(課金効率)と考え,それを ゲーム理論の利得に対応するものとして考える. 2・3 焦点を当てるシナリオと協調行動の定義 対象とするゲームではプレイヤーは多様な行動ができ, 様々な形での協調行動が可能であるため,あらゆる協調 行動を追跡することは難しい.そのため,下記で追跡し やすい協調行動を 1 つ定義し,それの頻度をそのプレイ ヤーの “協調行動の傾向” と考える. そのために本稿では,前述のイベントにおいて次の状 ∗5 この時間は 1∼2 時間(レイドボスの種別により異なる)に 設定されており,ランキング上・中位層においては,その間な にもしないことはランキングで他のプレイヤーに大きく差を付 けられてしまう時間である.
  • 4. 況に焦点を当てる. • 複数人でレイドボスを攻撃している • レイドボスの残り HP が非常に少ない この状況ではレイドボスの残り HP が少ない(残り HP < 攻撃力)ため,そのレイドボスを攻撃しても,獲得で きるイベントポイントは通常より少ない(使用した攻撃 ポイントに対してコストパフォーマンスが悪い)∗6 .レ イドボスは一度に 1 体までしか相手にできないため,そ のボスを倒さない限りは遭遇したプレイヤーと救援中の ギルドメンバーは他のボスを攻撃することはできず,イ ベントポイントを稼ぐことができない. 表 2 2 者でレイドボスを攻撃しており,レイドボスの HP が非常 に少ない状況における利得行列.この状況で攻撃したプレイ ヤーは利得 α,そのとき攻撃しなかったプレイヤーの利得は β である.両プレイヤー共に攻撃しなかった場合は両者とも に利得は γ である.レイドボスの HP が非常に少なく一方 が攻撃した時点でこの状況は解消されるため,両者ともに攻 撃するという状況は発生しない. 攻撃する  攻撃しない 攻撃する -, - α,β 攻撃しない β,α γ,γ 最も単純なレイドボスとのバトルに参加しているプレ イヤーが 2 名の場合,利得行列を書くと表 2 のように表 現することができる.基本的な関係は β > α > γ である. この状況での攻撃は効率の悪い行為なので α < β,しか し,どちらも攻撃しないと,その間に他のプレイヤーが イベントポイントを稼いでしまうので,最も利得が低い (γ).また,残り HP は攻撃力以下なので,両者共に攻 撃することはない(どちらかが攻撃した時点でこの状況 は解消される).ただし互いの状況の違いによって,一 方の α,β,γ と他方の α,β,γ は異なりうる(例えば,攻 撃力に差がある場合,攻撃力が低いプレイヤーの攻撃の 効率は高いプレイヤーよりも高いなど)∗7 .この非対称 性によって互恵的利他主義の成立条件 3 は成立しうる. 表 2 の状況は,両者は共に最悪の状況は回避したいも のの,そのためのコストを自分は支払いたくないという ジレンマ構造を持ち,その意味で Snowdrift ゲーム(チ キンゲーム)∗8 の持つジレンマ構造 [Doebeli 05, Smith ∗6 一方で,レイドボスの残り HP が十分である場合は “残り HP > 攻撃力” であるため,そのレイドボスを攻撃すると,そ の攻撃力に応じたイベントポイントが獲得でき効率的である ∗7 さらに場合によってはこの大小関係も変わり得る.例えば寝 る直前であれば,次の日には攻撃ポイントは完全に回復してい る.そのため,攻撃ポイントをいくら消費したとしても少しで もイベントポイントを得られるように「攻撃する」方が利得が 高く,α > β である. ∗8 Snowdrift ゲームは次のような状況について考えている: 2 人の車のドライバーが吹雪の中で吹き溜まりに捕まっている. そのとき,それぞれのドライバーは車を降りて除雪をする(協 調),除雪をせずに車の中にとどまる(非協調)のどちらかを 選択できる.少なくともどちらかが除雪をすれば両者は先に進 むことができるが,除雪にはコストがかかるため除雪をすると 利得はその分低くなってしまう.しかしどちらも除雪をしない と両者ともに先に進むことができず利得は得られない. 03] に類似していると言える.本稿ではこの状況におい て攻撃する行為を Snowdrift ゲームにおける除雪行動と 考えて,バトルに参加していた全プレイヤーに対する最 後に攻撃したプレイヤーの “協調行動” とする. このように本稿で焦点を当てる状況における協調的な 行動とは通常の攻撃より効率の悪い行動である.そのた めにプレイヤー i の攻撃 j について効率の良さを表す攻 撃効率 aij を以下のように定義する. aij = eij/M(ei) (1) ここで eij はプレイヤー i の j 回目の際に取得したイベ ントポイント,M(ei) はプレイヤー i が各攻撃で取得し たイベントポイントの中央値である.本稿では攻撃強度 が 0.4 以下である場合を協調行動と定義する. 3. 分 析 結 果 まず,プレイヤーに互恵性が存在しているか否かにつ いて調査する.そのために,プレイヤー i とプレイヤー j の間の互恵度 rij を考える.本稿では互恵度を以下のよ うに定義する. rij = min(Cij,Cji)/max(Cij,Cji) (2) ここで,Cij は i が j に協調行動をした回数,Cji は j が i に協調行動をした回数である.つまり両者が相互に協 調をし合っていれば互恵度 rij は 1 に近づき,協調が一 方的であるほど 0 に近づく.この指標は Cij,Cji の少な くともどちらかが 0 より大きい時だけ(少なくとも 1 回 以上の協調行動が行われた関係について)計測した. 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.00 0.25 0.50 0.75 1.00 Degree of Reciprocity Density 図 2 互恵度 rij の密度分布 図 2 に rij の密度分布を示す.多くのプレイヤー間の 互恵度がほぼ 0 である一方,プレイヤー間の互恵度が高 い場合もある程度存在しており,互恵関係を築いている プレイヤーが存在していたことがわかる. それでは互恵関係はプレイヤーの利得(ゲーム上の有 利さ)にどのような影響を与えているのか.それについ て知るために,互恵関係がプレイヤーのイベントポイン
  • 5. 表 3 イベントポイント pi に対する互恵関係の効果に関する回帰 分析結果.∗ ∗ ∗,∗∗,∗ はそれぞれ 0.1%,1%,5% 水準で 有意であることを示す(以降の図表も全て同様). パラメータ 回帰係数 (標準誤差) lnsi 0.2503860 (0.0038763)∗∗∗ Li 0.0365205 (0.0002105)∗∗∗ fi 0.2243505 (0.0075161)∗∗∗ Intercept 8.4280065 (0.0394362)∗∗∗ トに与えた影響について分析する.もし互恵関係を持ち 相互に協調し合うことがゲーム上有利なのであれば,プ レイヤー i と互恵関係にあるプレイヤーの数 fi がプレイ ヤー i のイベントポイント pi の増加に寄与しているはず である.それについて調べるために,以下に示すモデル を考える. pi ∼ Negative − Binomial(ri) (3) lnri = β1 lnsi + β2Li + β3fi + β4  これはプレイヤー i のイベントポイント pi を,プレイ ヤー i のレベル Li ∗9 ,互恵関係にある相手の数 fi で説明 しようとするものである.ここでは協調行動を相互に 1 回以上している場合に両者は互恵関係であるとした.ま た,イベントポイントは課金額 si に比例するはず ∗10 な ので,それの対数をモデルに組み込んでいる.このモデ ルは,ポアソン分布に基づく一般化線形モデルでは過分 散の傾向が見られたため,ポアソン分布に基づく一般化 線形混合モデル(ランダム効果はギルドごとに掛かると した)と負の二項分布に基づく一般化線形モデルの AIC をそれぞれ計測し,最小になる負の二項分布に基づく一 般化線形モデルを採用した.上記モデルによる回帰分析 を si > 0 であるプレイヤーから 15000 人分のデータをラ ンダムサンプリングして実施した. このモデルに基づく回帰分析の結果を表 3 に示す.イ ベントポイントに影響を与えると考えられる課金額 si と レベル Li を調整したもとで,互恵関係にある相手の数 fi が正であった.したがって fi が多いほどイベントポイ ント pi を多く獲得できることがわかる.そのため,互恵 関係を持つことがゲームを進める上で有利(高利得)で あったと言える. それでは,どのようにして互恵関係は構築されたのか. それについて調べるために,式 (4) に示すモデルを考える. Cij ∼ Poisson(λij) (4) lnλij = β1 lnC′ iCj + β2Cji + β3gij + β4gji + β5Li + β6Lj + β7mi + β8 + σi これはプレイヤー i がプレイヤー j に協調した回数 Cij を,プレイヤー j から協調された回数 Cji,相互のあい ∗9 プレイヤーは基本的にレベルが高ければ高いほど,そのプレ イヤーのデッキは強力になり一回の攻撃で得られるイベントポ イントは多くなる. ∗10 課金によって体力回復のためのアイテム購入が可能であるた め. 表 4 プレイヤー間の協調頻度に関する回帰分析結果 パラメータ 回帰係数 (標準誤差) lnC′ iCj 0.6210306 (0.0041205)∗∗∗ Cji 0.0122157 (0.0006525)∗∗∗ gij −0.0008443 (0.0004852) gji 0.0021324 (0.0004206)∗∗∗ Li 0.0004757 (0.0002047)∗ Lj −0.0019128 (0.0001950)∗∗∗ mi −0.1066716 (0.0022965)∗∗∗ Intercept −0.1003971 (0.0283909)∗∗∗ さつ行動の回数 gij,gji,各々のレベル Li,Lj,プレイ ヤー i の所属するギルドのアクティブメンバー数 mi(j も同じギルドに所属),プレイヤー i が所属するギルド ごとのランダム効果 σi で説明しようとするモデルであ る.Cij は基本的にはプレイヤー i の協調された回数の 合計 C′ i とプレイヤー j の協調した回数の合計 Cj の積 に比例するはずなので,それの対数をモデルに組み込ん でいる.このモデルは,ポアソン分布に基づく一般化線 形モデルでは過分散の傾向が見られたため,ポアソン分 布に基づく一般化線形混合モデル(ランダム効果はギル ドごとに掛かるとした)と負の二項分布に基づく一般化 線形モデルの AIC をそれぞれ計測し,最小になるポアソ ン分布に基づく一般化線形混合モデルを採用した.上記 モデルによる回帰分析を Ci,C′ j > 0 である全組み合わせ から 30000 個のデータをランダムサンプリングして実施 した. このモデルに基づく回帰分析の結果を表 4 に示す.協 調回数に関連があると思われる協調・被協調回数 C′ i,Cj とレベル Li,Lj を調整したもとで,Cji,gji が正であっ た.したがって他のプレイヤー i から協調してもらうた めには,プレイヤー j はプレイヤー i に対して協調行動 をし,自分からコミュニケーションを取ることが重要で あると思われる.また,mi が負であることから少人数 のギルドの方が,より互恵関係が成立しやすいことがわ かる. 次に,あるプレイヤーがレイドボスを単独で倒しきれ ずギルドメンバーに救援を依頼した際に,そのギルドメ ンバーが救援に応じるか否かという点に着目する.救援 依頼にギルドメンバーが応じた場合,依頼したプレイヤー はボスを倒しやすくなる.そして,救援に参加したプレ イヤーは効率的な攻撃行動ができ,かつ,通常の 1.5 倍 のイベントポイントを得る事ができるため,両者にとっ て利益がある関係である.したがって,救援依頼プレイ ヤーがだれであるに関わらず,救援に参加することは救 援プレイヤーにとって利益があるはずである. このような状況において,プレイヤーの救援に応える 行動はプレイヤー間の社会的関係にどのように影響を受 けたかについて調べる.そのために,式 (5) に示すモデ
  • 6. 表 5 プレイヤー間の救援頻度に関する回帰分析結果 パラメータ 回帰係数 (標準誤差) lnHiH′ j 0.8891775 (0.0064618)∗∗∗ Cji 0.0066710 (0.0018601)∗∗∗ gij 0.0089753 (0.0007516)∗∗∗ gji 0.0066472 (0.0007328)∗∗∗ Li 0.0063142 (0.0002365)∗∗∗ Lj −0.0046951 (0.0002432)∗∗∗ mi −0.0692416 (0.0012895)∗∗∗ Intercept −0.4414666 (0.0218464)∗∗∗ ルを考える. Hij ∼ Negative − Binomial(rij) (5) lnrij = β1 lnHiH′ j + β2Cji + β3gij + β4gji + β5Li + β6Lj + β7mi + β8 これはプレイヤー i がプレイヤー j の救援に応えた回数 Hij を,プレイヤー j から協調された回数 Cji,相互の あいさつ行動の回数 gij,gji,各々のレベル Li,Lj,プ レイヤー i の所属するギルドのアクティブメンバー数 mi (j も同じギルドに所属)で説明しようとするモデルであ る.Hij は基本的にはプレイヤー i が救援依頼に応えた 回数の合計 Hi とプレイヤー j の救援依頼をした回数の 合計 H′ j の積に比例するはずなので,それの対数をモデ ルに組み込んでいる.このモデルは,ポアソン分布に基 づく一般化線形モデルでは過分散の傾向が見られたため, ポアソン分布に基づく一般化線形混合モデル(ランダム 効果はギルドごとに掛かるとした),負の二項分布に基 づく一般化線形モデルの AIC を計測し,最小になる負 の二項分布に基づく一般化線形モデルを採用した.上記 モデルによる回帰分析を Hi,H′ j > 0 である全組み合わせ から 30000 個のデータをランダムサンプリングして実施 した. このモデルに基づく回帰分析の結果を表 5 に示す.救援 回数に関連があると思われる救援・救援依頼回数 Hi,H′ j とレベル Li,Lj を調整したもとで,Cji,gij,gji が正で あった.したがって,相互に利益のある状況においても 相手に相互作用してもらうためには,相手に対して協調 行動をし,相互にコミュニケーションを取ることが重要 であると思われる.また,mi が負であることから少人 数のギルドの方が,このような相互作用がより発生しや すいことがわかる.したがって双方に利益がある状況に おいても,プレイヤーは相互作用の相手を選別しており, 自分にとって非協調的なプレイヤーよりも,協調的なプ レイヤーを選択する傾向にあることがわかる. 4. 考 察 本研究では理論的・実験的研究に比べて制約の少ない 環境において,ヒトの互恵的利他主義に基づく協調行動 がどのように成立しているかについて知るために,ソー シャルゲームにおけるプレイヤーの協調行動を分析した. その結果,分析対象ゲームの社会において,特定の相手と の相互の協調関係が存在すること,それによってそういっ た関係を持たないプレイヤーよりも高い利得を獲得して いた.ここから分析対象ゲームの社会は互恵的利他主義 に基づく相互の協調が成立しており,互恵的利他主義に ついて分析ができる社会関係が存在していたと言える. そのような互恵関係を築く(相手に協調してもらう)た めには,相手に協調し自分が協調的であることを示すと 共に,コミュニケーションを取ることが重要であることが 示された.前者は協調行動をすることによる「自分は協 調的である」というシグナル [Andr´e 10] である.これは 協調行動(非効率な攻撃)が必要になるため,送信者のコ ストは高く,かつ受信者に利益を与えるシグナルである. したがって,シグナルの信頼性(協調したプレイヤーが 協調的である可能性)は高い.一方後者は,単なる 30 文 字以内のメッセージ ∗11 であり,送信者のコストも受信者 の利益もほとんど 0 である.興味深いことに,前述の信 頼性の高いシグナルが存在しているにもかかわらず,互 恵関係の構築にこのような低コストのシグナルも寄与し ていた.このような一見無意味なシグナルはグルーミン グなどと呼ばれ,ヒトにおいては視線 [Kobayashi 97]・ うわさ話 [Dunbar 04] などとして観測されており,個体 間の社会的関係の構築に重要であることが示唆されてい る.類人猿においても毛づくろい [Kobayashi 97]・擬似 的性行為 [Clay 12]・表情模倣 [Mancini 13] などとして 観測されている. また,相互作用をすれば両者が利益を得るような状況 においても,自分に対して協調的であるプレイヤーであ るほど相互作用を頻繁にする傾向にあった.すなわち, 協調的なプレイヤー同士は相互に利得を得ることができ, 一方で非協調的なプレイヤーは相互作用を避けられ利得 を得にくかったと言える.その結果,協調的なプレイヤー は非協調的なプレイヤーよりも高い利得を得ることがで きたと思われる.このような非協調的な相手を避けるよ うな行為は,その振る舞いに対する懲罰のような効果を 持つと考えることができ [Rand 11],非協調的な振る舞 いを抑制するような効果があった可能性がある. このように,理論的・実験的研究のようにモデル化さ れていない環境において,互恵的利他主義・グルーミン グ・懲罰の 3 つのメカニズムが協調に有効に働きうるこ と,それらがヒトとヒトの相互作用から自発的に発生し うることを定量的に示した.またそれは小さいグループ であるほど発生しやすい傾向にあった. 本研究はゲーム中のイベントの最終段階について行っ た静的な分析を行ったものである.ゲームのプレイヤー は常に入れわかり,プレイヤーは新たなプレイヤーと出 ∗11 意気込みを伝えたり,救援のお礼や励ましなどに使われる傾 向がある.
  • 7. 会い,そこでそれぞれの社会関係を構築し続けている. また,そこで生じる社会的ジレンマの強度や種別も動的 に変化する.したがって,そこでのダイナミクスについ て分析し知見を得ることは重要であり,今後の課題とし たい. 謝 辞 本稿作成にあたり,詳細なコメントと洞察に富む助言 を与えて頂いた一ノ瀬元喜助教に心からお礼を申し上げ たい. ♦ 参 考 文 献 ♦ [Andr´e 10] Andr´e, J.-B.: The evolution of reciprocity: social types or social incentives?, The American naturalist, Vol. 175, No. 2, pp. 197–210 (2010) [Axelrod 06] Axelrod, R.: The Evolution of Cooperation: Revised Edition, Basic Books (2006) [Bainbridge 07] Bainbridge, W. S.: The scientific research potential of virtual worlds., Science (New York, N.Y.), Vol. 317, No. 5837, pp. 472–6 (2007) [Barkow 95] Barkow, J.: The Adapted Mind: Evolutionary Psychology and the Generation of Culture, Oxford Univer- sity Press, USA (1995) [Bshary 06] Bshary, R. and Grutter, A.: Image scoring and cooperation in a cleaner fish mutualism., Nature, Vol. 441, No. 7096, pp. 975–978 (2006) [Castronova 06] Castronova, E.: On the Research Value of Large Games: Natural Experiments in Norrath and Camelot, Games and Culture, Vol. 1, No. 2, pp. 163–186 (2006) [Clay 12] Clay, Z. and Zuberb¨uhler, K.: Communication dur- ing sex among female bonobos: effects of dominance, solici- tation and audience., Scientific reports, Vol. 2, p. 291 (2012) [Doebeli 05] Doebeli, M. and Hauert, C.: Models of cooper- ation based on the Prisoner’s Dilemma and the Snowdrift game, Ecology Letters, Vol. 8, No. 7, pp. 748–766 (2005) [Dunbar 04] Dunbar, R. I. M.: Gossip in evolutionary per- spective., Review of General Psychology, Vol. 8, No. 2, pp. 100–110 (2004) [Fehr 03] Fehr, E. and Fischbacher, U.: The nature of human altruism, Nature, Vol. 425, No. 23, pp. 785–791 (2003) [Gruji´c 10] Gruji´c, J., Fosco, C., Araujo, L., Cuesta, J., and S´anchez, A.: Social Experiments in the Mesoscale: Humans Playing a Spatial Prisoner’s Dilemma, PLoS ONE, Vol. 5, No. 11, p. e13749 (2010) [Gruji´c 12] Gruji´c, J., R¨ohl, T., Semmann, D., Milinski, M., and Traulsen, A.: Consistent Strategy Updating in Spatial and Non-Spatial Behavioral Experiments Does Not Promote Cooperation in Social Networks, PLoS ONE, Vol. 7, No. 11, p. e47718 (2012) [Hauert 02] Hauert, C., De Monte, S., Hofbauer, J., and Sig- mund, K.: Volunteering as Red Queen mechanism for coop- eration in public goods games., Science (New York, N.Y.), Vol. 296, No. 5570, pp. 1129–32 (2002) [Kobayashi 97] Kobayashi, H. and Kohshima, S.: Unique morphology of the human eye, Vol. 387, No. 6635, pp. 767– 768 (1997) [Lindgren 91] Lindgren, K.: Evolutionary phenomena in simple dynamics, in Langton, C. G., Taylor, C., Farmer, J. D., and Rasmussen, S. eds., Artificial Life II, pp. 295–312, Addison Wesley Publishing Company (1991) [Mancini 13] Mancini, G., Ferrari, P. F., and Palagi, E.: Rapid facial mimicry in geladas., Scientific reports, Vol. 3, p. 1527 (2013) [Nowak 93] Nowak, M. and Sigmund, K.: A strategy of win- stay, lose-shift that outperforms tit-for-tat in the Prisoner’s Dilemma game., Nature, Vol. 364, No. 6432, pp. 56–58 (1993) [Nowak 06] Nowak, M.: Five rules for the evolution of coop- eration, Science, Vol. 314, No. 5805, pp. 1560–1563 (2006) [Rand 09] Rand, D. G., Ohtsuki, H., and Nowak, M. A.: Di- rect reciprocity with costly punishment: generous tit-for-tat prevails., Journal of theoretical biology, Vol. 256, No. 1, pp. 45–57 (2009) [Rand 11] Rand, D., Arbesman, S., and Christakis, N.: Dy- namic social networks promote cooperation in experiments with humans, Proceedings of the National Academy of Sci- ences, Vol. 108, No. 48, pp. 19193–19198 (2011) [Rand 13] Rand, D. and Nowak, M.: Human cooperation., Trends in cognitive sciences, Vol. 17, No. 8, pp. 413–25 (2013) [Smith 00] Smith, J. M. and Szathm´ary, E.: The Origins of Life: From the Birth of Life to the Origin of Language, Oxford University Press, USA (2000) [Smith 03] Smith, J. and Harper, D.: Animal Signals, Oxfold University Press (2003) [Szell 10] Szell, M. and Thurner, S.: Measuring social dy- namics in a massive multiplayer online game, Social net- works, Vol. 32, No. 4, pp. 313–329 (2010) [Szell 12] Szell, M., Sinatra, R., Petri, G., Thurner, S., and Latora, V.: Understanding mobility in a social petri dish., Scientific reports, Vol. 2, p. 457 (2012) [Szell 13] Szell, M. and Thurner, S.: How women organize so- cial networks different from men., Scientific reports, Vol. 3, p. 1214 (2013) [Wilkinson 90] Wilkinson, G.: Food Sharing in Vampire Bats, Sci Am, Vol. 262, No. 2, pp. 76–82 (1990) [長谷川 00] 長谷川 寿一, 長谷川 真理子:進化と人間行動, 東京 大学出版会 (2000)